英作文で使える便利なつなぎ言葉のまとめ・注意点:therefore編

世界的に著名な言語学者、マーク・デイビスさん(便利なコーパス・COCAの開発者)が「文頭のBut」を用いていたことに端を発していた接続詞ネタですが、前回までの記事ではマーク・ピーターセンさんの素晴らしい書籍で触れられていた例文(→「財布をなくした」「今310円しかない」をつなげるにはどうするのが良い?)を中心に、「so」や「because」の使い方を見ていました。

そちらはカジュアルな会話的な例文だったわけですけど、今回は、より文語的・きちっとした英文レターのような「書き言葉」で使える接続詞・接続副詞の例を見ていこうと思います。

 

まず、「so」が口語的過ぎるというのは既に触れていました。それゆえ、この語は学校のレポートや論文、あるいはキチッとしたビジネスレターといったお堅い表現が期待される場面では決して使わない方がいい単語といえるわけですが…

(しかし、アメリカ人の大学院生のレポート(レポートといっても、自分の研究結果を論文形式でまとめる形の、結構しっかりしたものです)を見ていると、案外気軽に使われまくっていて……という話から少し脱線もしていましたけど、まぁネイティブの大学院生ですらキチッとした作文ができてないことが多い/案外適当な使い方をしている……というのは、我々非ネイティブの英語学習者には(「まぁネイティブでもできてないんだし…」と思えて)心強い点といえる気もします。

 なお、どう考えても相応しくないsoの使い方だったので、添削時に全部赤字訂正し、コメントを加えて返しました。)

…一方、「because」や「since」は、こちらは話し言葉で全く違和感なく使えるのみならず、書き言葉でも軽過ぎない感じで、論文のようなかなりフォーマルな場面でも完璧に使うことのできる万能選手という感じですね。


とはいえもちろん、前回書いていた通り、becauseやsinceは「なぜなら~であるから」という強い因果関係を導く接続詞ですし、そもそも接続詞ネタ最初の記事で最初の注意点として挙げていた通り、この単語は一つの文の中で主節と従属節(=理由を述べるbecause節)をつなげる役割のあるものであり、独立した二つの文(=ピリオドで分けられた二文)をつなぐには不向き(というか、英文法のルール上、できない)といえるわけです。

実際レポートや論文を書いてみると分かると思うのですが、「○○は××であった。したがって、△△を…」とか、「○○は××であった。よって、△△は…」とか、まぁ他にも「ゆえに…」「その結果として…」「それを踏まえて…」とか、そういうつなぎ言葉を使って次の文を導入していきたいというのは、やはり作文にもリズムがありますから、人情としてどうしてもあるんですね。

今回はそういった場面で使いたくなるつなぎ言葉の使い分け・注意点のまとめという形になります。


まず、「したがって」というフレーズで辞書を引いたら恐らく最初にヒットしてくるであろう「therefore」についてから参りましょう。

マーク・ピーターセンさんは本の中で「日本人の書いた英文には、センテンスの冒頭に“Therefore,"がいやに多い。」と書かれていましたが、まさしくぐうの音も出ないほど、「よくご存知で(笑)」といえてしまうぐらい、これは我々日本語話者が形式ばった英作文をする際、ついつい使ってしまう単語の代表格だといえましょう。

それは取りも直さず、これは日本語の「したがって」「ゆえに」にピタリ当たる(ように見える)語であり、我々が論文などの堅い文を書く際についついその表現を多用してしまうことの裏返しなわけですが、実際とても堅い表現であり、論文のようなキッチリした文章には非常に相応しい単語ともいえるんですけれども、ここにも実は「so」と同じような罠があるのです。


thereforeという単語も「so」同様、非常に緊密な因果関係を導く言葉であり、基本的には「(前の文を受けて)当然、必ずそう言える。それしか考えられない」という意味での「したがって」であり、論理的にその帰結以外のものは認められないつながりでしか使ってはいけない(まぁ「使っちゃダメ」は言いすぎなまでも、完全に相応しいというかピッタリなのは、そういう場面といえます)…ってことがあるんですね。


改めて、マーク本で挙げられていた、具体的な、典型的に見かける不適切なthereforeの使用例を紹介させていただきましょう。

 

The symptoms continued to show no signs of abating. Therefore, we increased the daily streptmycin dosage by 3.5%.

(症状は依然として緩和の兆しを見せなかった。したがって、毎日のストレプトマイシンの投薬量を3.5%増加した。)

 

(※注:ちなみに、同じ例文を用いた他の不適なパターンとして、前半と後半を「..., so we...」のように「コンマso」でつないだものと、後半の「Therefore, we...」を「Because we...」にした文も一緒に紹介されていました。

 これはもう完全に復習ですね。「, so...」は、響きが口語的過ぎてこのような文体(学術論文や、フォーマルなビジネスレター)には全く合っていないこと、そして「Because」の方は、それだと後半の文が従属節しか存在しない、中途半端な非文になっているため、文法的におかしい…ってのが問題点という形です。)


話をthereforeに戻しますと、改めて、この例文では、前半と後半が、thereforeという極めて固い因果関係でつなげられるものにはなっていないというのが、不適切と判断されてしまう理由になります。


症状が良くならなかったのなら、言うまでもなく、別の薬を試したり、投薬のタイミングや方法を変えたりなど、「投薬量を3.5%増やす」以外にも、現実的に可能な方法は他にいくらでもあるわけです。

それなのに、「どう考えても、必然的に、これ以外のことは考えられないのです」ということを意味するthereforeを使って、さも「(治らなかったから、言うまでもなく当然、)投与量を3.5%増量したのです」と言わんばかりの結論を導くのは、いささか論理的におかしなものとなっている、ということですね。

thereforeを使った際は、「果たして続く結論は、それ以外に一切可能性のあるものが存在しないといえるだろうか…?」と自問すべき所だといえ、僕は実際自分で英文を書く際は十分気をつけるようにしています。


また、thereforeに関してはもう一つ、マークさんが大変役に立つ話をくれていたのでそちらも紹介させていただきましょう。

これは別の本からの抜粋ですが(最初の著作『日本人の英語』になります)、この例文(↓)を挙げて…

Our first attempt met with failure. Therefore, we revised our approach to the problem.(われわれの最初の試みは失敗に帰した。ゆえにその問題への接近法を改訂した。)

…こちらは、まぁ百歩譲って「therefore」でつなぐのが論理的に破綻しているとまではいえないとしても、以下のようなアドバイスが続いていました。

 

このセンテンスの表現しようとする因果関係は、本当はthereforeを使うほど堅くないが、どうしても使うというのなら、まずコンマ抜きにして

  • Our first attempt met with failure. Therefore we revised our approach to the problem.

にすれば、少しましである。なぜかというと、コンマで区切った"Therefore,"は、区切っただけで、一つの節のような重さができて、本来大げさな表現が一段と大げさに聞こえてくる。しかし、コンマ抜きにするという直し方より、もっと目立たないように、

  • Our first attempt met with failure. We therefore revised our approach to the problem.

のようにセンテンスの中に「大げさ」を少し隠した方がまだましである。

しかし、本当はただの

  • Our first attempt having met with failure, we revised our approach to the problem.

にしても、因果関係は十分表現されるであろう。


この直後にはさらに、先ほど引用した『日本人の英文には"Therefore,"がいやに多い…』という文と、マークさん自身によるその理由推察の文が続き、その後にもまた、「なるほど~」と思える結論的アドバイスが掲載されていました。

 

それはともかくとして、thereforeに関してもっとも勧めたいのは、原則として冒頭にコンマで区切った"Therefore,"を一切使わないことである。どんなことを書こうとしても、この書き方だけは使う必要はないのである。


そう、特に日本語の「したがって、…」という語にドンピシャピッタリであるため、我々はしばしばコンマで区切って「Therefore, ...」と文を始めてしまいがちなんですけど、マジでいかなる場合でもその表現を使って良くなる/英文としてスッキリすることは皆無なようで、コンマ区切りのこのフレーズは一切使う必要がないんですね。

 

僕も上の話を聞くまではよくそうしてしまっていましたが、そういうニュアンスを知らない日本語話者はこの表現をあまりにも多用してしまいがちなので、注意が必要といえましょう。

(なお、「日本語話者は…」と書いたものの、中国人の学生のレポートや論文原稿なんかを添削する機会もままあるのですが、実際中国人の英文でもめっちゃ目立ちます。
 特に日本語に限らず、こういう分かりやすいつなぎ言葉を使って文を接続してしまうのは、第二外国語を運用する際のあるあるなのかもしれませんね。

…実際、アメリカ人ネイティブの学生のレポートを見直してみましたが、論理関係がそんなに堅くない場面でthereforeが使われていることは多少あったものの、「Therefore, ...」という仰々しいコンマ区切りの表現は、(直近2人の子のレポートを見た限り)全く存在しませんでした。
 ネイティブの目からすると、冒頭コンマの「Therefore, ...」は大げさすぎるというのは間違いなさそうですね。)

 

ちなみにこの話(冒頭に置くよりも…うんぬん)は、「しかしながら、…」でおなじみ、howeverなんかでも似たようなことを聞きますね。

こちらは、必ずしも「大げさすぎて使われない」というわけでは全くないですけど、文頭に置く一辺倒より、文の途中、例えば主語の後や主語+動詞の後とかに捻じ込むような形で置く方が、いかにも小慣れた英文っぽさが醸し出せる(その他の章で、マーク・ピーターセンさんもそうおっしゃっていました)ため、僕自身、しばしば使うテクニックといえます。


というか「therefore」以外のつなぎ言葉(接続詞)でも似たようなことが書かれていたので、それらはスペースがあれば次回以降また触れようかなと思いますが、「however」の方は、どの本のどの章で触れられていたのか思い出せなかったので、他の実際の生英語の使用例を紹介してみましょう。


今回は論文の話をしているので、生命科学系論文の要約をまとめた、LSD(ライフサイエンス辞書)のコーパスをお借りしてみました。


LSDコーパスで「however」を検索してみると……

LSDコーパスでの「however」検索結果より

デフォルトの「1語前でソート」だと、前に何も存在しない「冒頭のHowever」しかヒットしてこなかったので、上記スクショは「1語後でソート」をクリックした状態ですが、8, 11, 12, 21…番なんかが、冒頭ではなく、あえてまず主語から普通に文を始め、途中いきなり「…, however, ...」を挟んでいるやつですね。


形がシンプルだし、意味も取りやすそうだったので、21番の論文をクリックしてみましょう(↓)。

 

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

ノースカロライナ大学チャペルヒル校のSheiko研究室の論文のようですが、↑のコーパス検索結果にも表示されている通り、

「These combinations are, however, commonplace in biological tissues, and...」
(しかしながら、これらの組み合わせは、生体組織では当たり前のように行われており、…)

というこんな形が、典型的なhoweverを文中に挟む使い方ですね。


この「however」は、文の途中にあるとはいえ、butやbecauseという純粋な接続詞とは違い、「同じ一文中で、文と文をつなぐ」役割では決してなく、ただ挿入する場所を文頭から途中に変えているだけというのが特徴といえましょう(逆に、二文をつないだら誤り)。

実際別に英語にそこまで慣れ親しんでいない僕ですら、こっちの方が何となく小洒落て洗練された英語っぽい気がしますし(まぁ、日本語にはない構造なので、その意味で英語っぽく見えてるだけともいえますが)、この辺も、ちょっとの工夫でそれっぽい感じにできるかもしれない、便利な英作文の小手先テクニックって感じですね(笑)。

 

…と、当初は類似のつなぎ言葉を全部まとめて、一覧できる便利ページにしようと思っていたのですが、thereforeは一番汎用されがちかつポイントもいくつかあったため、これだけでかなり長くなってしまいました。

正直ちょっと細かすぎる話な気もしますが、また次回、続きのつなぎ言葉をまとめていくといたしましょう(もう残りは全部一気にいっちゃえるように思います)。

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