前回で「紛らわしい英単語」シリーズを一通り終えていましたが、今回からは先述の通り、いただいていたコメントに対しての返信や補足事項を取りあげて、また少し話を広げさせていただこうかと思います。
コメントは全て、毎度大変にご丁寧で温かい感想・メッセージを送っていただけるアンさんからのものですね。
基本的にご質問やその他話が広がりそうなネタだけをピックアップさせていただく予定ですが、そもそもこのシリーズの前の、一連の電話ネタに関連した記事で受け取っていたコメントもまだいくつか触れずじまいで保留状態だったのがいくつかある中で唐突に始まったマギ単シリーズだったわけですけど、とりあえずは一連のシリーズでもらっていたコメントから見ていこうかと思います。
その後、また保留中のコメントに戻っていく予定です。
…と、振り返ってみたら、一連のマギ単シリーズは、実は「その1」として通し番号を振る少し前から、もう似たような記事を始めていた形だったんですね。
今回はその、前座的な記事から参りましょう。
内容としては、こちら改めてリンクを貼りましたが(↓)、主に「感情を表現する形容詞、-ingと-ed型の使い分けにご注意」という話に触れていた記事にいただいていたコメントになります。
では早速まずはコメントを引用させていただき、その後コメントへのコメントを付ける形で見ていこうと思います。
「You're all set」と「It's all set」は、結局どちらでも大丈夫っていうことなんですね。
主語を物にするか人にするかって、難しいですよね。
「interest」、あやふやな感じで使ってましたねぇ。当たり前ですが、ちゃんと使い分けられてたんですね。「I'm exciting!!」も、言っちゃうかもですねぇ。いや、もう曖昧に濁す感じで「So exciting!!」とか言いそうです笑(実際、言います笑)
意味が変わるのは、やっぱりちょっと怖いですけど、まぁ多分言いたいことは通じてますよね笑
あと、自分が迷うやつですけど、例えば、「日本語は難しい」とか、そんな感じのざっくりした文章…これって、主語は「日本語」だと思うんですけど、「Japanese is difficult.」で通じますよね?更に、「日本語を話すのは難しい」となると、なんとなく、話すのは自分だし、難しいと感じるのも自分だから、主語は私じゃないの?って思ってしまうんですよね。
まぁそこで、「It's difficult to speak Japanese.」って、言われたらわかりますけど、、、それなら、これも「interest」と同じようにingとedでよくないですか?笑
⇒主語の使い分けは、ぶっちゃけおっしゃられているように、主語を省いちゃうのが最強かもですね(笑)。
結局は、英語を職業とするわけでもないならば、マジで通じればそれでいいわけで、なるべく簡潔にしてしまうことこそが、コミュニケーションを図る上での王道にして正道ともいえましょう。
この辺の、ちょうどコメントで触れられていた他の点も含め、結局はあまりにも日本語と英語の言語構造が違いすぎて、直訳的に変換することが極めて難しい、ってのに尽きるように思えます。
これに関して、改めてまた一つ、日本を発つ前に色々読み漁っていた英語関連本の中にあった、大変興味深い話が満載で、いわゆる「目から鱗」的な話の多かった良書のことを思い出しました。
せっかくなので、また一部、「この本は素晴らしいですよ」という宣伝も兼ねて、引用紹介させていただこうかと思います。
それがズバリこちら、Amazonではもう中古本の取り扱いしかない、実に発売はもうほぼ30年近くも前(!)になる、『英語らしさに迫る』(木村哲也さん著)という本ですね!
パラパラと最初の方を再読してみたら、やっぱりめっちゃくちゃべらぼうに面白く素晴らしい内容だったので、一部省略しながら、第一章の途中、20ページ分ぐらいを引用させてもらおうかな、と思います。
まだ扱ってる書店もあるかもしれませんし、絶版ではないんじゃないかな、と思うので(特に根拠はないですが…)、興味が出た方はぜひお手に取っていただきたい限りですね。
では、大変に学びのある本書、序盤からの引用です。
英語らしさに迫る(木村哲也)
序章 英語らしい表現とは
(前置き部分、省略)
英語らしい表現とは何か
よく「英語らしい英語」ということを言いますが、これは一体どういうことでしょうか。英語を注意深く読んだり聞いたりすることを長年続けているとだんだん分かってくることですが、日本人が日本語で考えた文章を英訳すれば出てくる英語と、そのようなプロセスでは絶対に出てこない英語というものがあるのです。簡単に言えば、この後者が「英語らしい英語」ということになります。このような英語は、逆にいえば「日本語らしい日本語」の対極に位置するわけで、和訳する場合にもいろいろ工夫が必要です。
本書では日本語と英語の比較のための≪視点≫をいくつか設けて、「英語らしい」とはどういうことなのか、さまざまな角度からその本質に迫ってみたいと思います。
(一部省略)
ところで、「日本語的発想に基づく英語はよくない」と主張する人もいますが、私は必ずしもそうは考えません。結果的に見れば日本語的発想の英語と同じ表現を使う英米人もいくらでもいるわけで、否定までする必要はないのです。要は、言いたいことがきちんと通じればよいわけです。
一方、英語らしい英語表現というのは漫然と英語学習を続けていても身につくものではありません。英米で長年生活した帰国子女等の場合は別として、一般の英語学習者はそれなりの努力をする必要があります。
第一に必要なことは「英語らしさ」という観点を持つ、ということです。日本語と英語の特徴的な表現とはどういうものか、ということを知っておけば、「なるほど!これは日本語風の言い方だな」「これはいかにも英語的だな」と区別が付けられるようになります。
(一部省略)
「日英語の比較」というのはきちんとした学問分野になっていますから、専門の著作や論文が数多く公刊されています。しかしこれらのアプローチは「音韻の比較」や「形態の比較」など、方法論が厳密すぎて実際的ではありませんし、英語らしい英語表現を身につけられるようになるかどうかという実用的な問題とは直接関係ありません。本書ではそういった学問的なアプローチではなく、英語のより深い理解と表現力の養成という観点から、発想と表現形式について比較をします。
≪日英比較・7つの視点≫本書では7つのポイントを≪視点≫として取りあげ、逐次、例文を挙げながら説明していきます。
1. 名詞的 vs. 動詞的
英語は名詞中心構文が顕著で、主語が文構造の必須条件であるのに対し、日本語は動詞が文の中心であり、述語動詞のみで文が成立する。
(以下、視点2-7は省略)
この≪視点≫だけでは抽象的で分かりにくいのですが、実際に用例を見ていけば納得いただけるはずです。基本例文として、合計110の例題を各章の冒頭に掲げてあります。本文の解説を読み始める前に、必ず自分で英訳してみてください。これは完璧な英作文をすることが目的ではありませんから、いざこういうことを言わなければならないという場面に遭遇したら、自分ならこう表現するだろうという気持ちで、あまり文法や単語の使い方にこだわることなく、のびのびと英訳してみてください。また、各章に多数の練習問題を挿入してありますので、例題を応用して解答してください。いずれの場合も示してある英文はthe answerではなく、an answerであるというつもりで受け止めていただければ結構です。
なお、本文中の英文で×印の付いている英文は、誤文ないしはその情況では不適切であることを示します。必ずしも非文法的な英文ばかりではありませんが、間違って覚えないように気をつけてください。
第1章 名詞が英語表現の中心
▶英語で何と言うか考えましょう―――
- 頭が痛い。
- いつ髪を切ったのですか。
- 弟はとても歌がうまい。
(以下の例題は省略)
――――――
(※上述の≪視点1≫が、ここで改めて、目立つ四角の枠内に強調して記述されています。)まず第1の視点、「名詞的」対「動詞的」という比較をしてみましょう。≪視点≫として挙げた見出しの左側が英語の特徴で、右側が日本語の特徴です。つまりこの場合は、英語は日本語よりも名詞的で、日本語は動詞が中心という特徴があるということです。もちろん、英語には動詞が無いなどということではなく、一般的に言えば名詞も動詞も重要な役割を果たしていますが、日本語と比較してみると、英語では名詞が中心的な役割を果たす構文が非常に顕著に見られます。そういう英語を日本語でも名詞的に訳すと失敗することが多く、逆に日本語の動詞の表現が英語だとピタッと名詞で済むケースはたくさんあります。
「私は頭痛を持っている」
日本語では動詞が文の中心で、いわゆる主語は必須の条件になっていません。「分かりました」と言えばいいのであって、「私は分かりました」などと主語を言うのはまったく不自然です。それに対し、英語の場合は
I see.
とまず主語が来ないとだめです。主語は必須の条件。もちろん"Come here."や"Stand up."といった命令文や"Got up at 8:00."など日記の文章のように、表面上は主語のない英文もありますが、それは例外的に許されている構文であって、文法的にも様々な制約があります。とにかく英語は原則として主語がないと文が成立しません。逆に言えば、何を主語にもってくるかが、英文構成を考える上ではカギになるということです。
日本語は主語がなくてもかまいません。動詞の部分に主語が含まれてしまっていると言っても過言ではないほどです。また、それ以外の部分でも日本語では動詞を使って表現するのが普通であるところを、英語では名詞を使うことがよくあります。それを比較してみましょう。
1. 頭が痛い。
I have a headache.
この場合の主語は何かというと、「頭」ととらえてもいいのですが、英語の場合、一番自然には、I have a headache.
と「人間」が主語になります。日本語の場合、「頭」というものがacheという状態にある、すなわち状態的な表現です。喉が痛い、おなかが痛い、目がかゆいなど、みな同じ形になります。ところが英語の場合には、これをheadache「頭痛」という名詞、しかも数えられる名詞にしてしまうのです。これは第2章で述べる<HAVE vs. BE>にも関係してくるのですが、「私は頭痛を持っている」という所有の構文で表現します。これは日本語では非常に奇妙な表現と言わざるを得ません。そこで日本語の発想に近い表現を考えると、
頭が 痛い。
My head aches.という表現形式になります。これも英語としてきちんと通じます。『ロングマン現代英英辞典(新版)』には同じ例文が載っていますから、間違いではありませんが、
I have a headache.
の方がはるかに自然で、実際によく使われる表現形式です。「頭が割れるように痛い」時は
I have a splitting headache.
となります。「頭が痛い」という状態がひとつの名詞に凝縮されているわけです。それを主体者である「私」が所有している。headacheのほかにも「おなかが痛い」stomachache、「背中が痛い」backache、「のどが痛い」sore throatなど、みな名詞にまとめてしまう点が英語らしいところです。「わき腹が痛い」であれば、
I have a pain in my side.
と表現します。
2. いつ髪を切ったのですか。
When did you get a haircut?
「髪を切る」という動作が英語でどう表現されるかというと、get a haircutが一番自然です。When did you get a haircut?
「切る」という部分が動詞になるのではなく、「“髪の毛を切るコト”をあなたはいつ手に入れたのですか」という表現になるのです。例題の英文とよく似ていますが、
When did you get your hair cut?
もよく使われる表現です。こちらは動詞中心です。さてここで、学校で教わる「切ってもらう」という表現は何かを考えてみますと、
I had my hair cut.
<have+目的語+過去分詞>の形が代表的なものです。これも英語として正しいのですが、動詞中心の表現です。haircutというのは日本語に無理に訳せば「散髪」。女性の場合には普通「散髪」とは言いませんが、英語ではこのhaircutは女性にも使えます。「髪を切る」というひとつの名詞になっているわけです。それを私がgetするということです。名詞中心の表現の特徴は、形容詞を付けて表現を具体化することができる点です。たとえば、
You got a neat haircut.
と言えば、「髪を切って素敵になりましたね」となります。気に入らなければa strange haircutと言えばよいのです。ところが、先ほどの動詞中心の表現で考えてみますと、
× I had my hair cut strangely.
という言い方はありません。英語らしくなくなってしまうのです。また、
× When did you cut your hair?
はダメです。これでは自分で自分の髪を切ったことになります。また極端な例では「頭を刈った」というつもりで
× I cut my head.
と言った人がいるそうですが、これは自殺行為です。
いずれにせよ、「~される・~してもらう」は<get+名詞>で表せる場合が多いので、ぜひ覚えて活用してください。
(練習問題、略)
3. 弟はとても歌がうまい。
My brother is a very good singer.
「~がうまい」はbe good atという熟語を中学校で教わりますから、My brother is good at singing.
のような英語表現を考える方が多いでしょう。これも決して間違いではありませんが、日本語の発想に近い英語です。では英語らしい表現はどのようなものかというと、
My brother is a very good singer.
とするのが一番自然です。これは「歌手である」ということとは全然違います。職業とは関係なく、be a good singerという形で「歌がうまい」ということになるのです。ただしあいまいな場合もあります。次の文の意味を考えてみましょう。
Jane is a beautiful singer.
この英文は例題と異なり、「美人の歌手」(=a singer who is beautiful)という解釈が普通で、ジェインはプロということになりますが、例題同様の「歌がとてもうまい人」(=a person who sings beautifully)という解釈も可能です。この場合はプロ歌手である必要はありません。
それはともかく、この表現形式は日本語と大分違いますから、ぜひマスターして使いこなしてください。慣れてしまえばいろいろ応用がききます。たとえば「走るのが速い」という場合に、「速い走者」という名詞表現は日本語としては不自然でしょう。「彼は非常に速い走者である」よりは、「彼は走るのが速い」の方がずっと日本語らしい。日本語は動詞中心だからです。英語の場合には、
He can run very fast.
と言ってももちろん通じるし、正しい英語なのですが、
He is a very fast runner.
の方がはるかに英語らしい。名詞が中心であることがお分かりでしょう。また、日本語では本などを「読むのが速い」というのを「速い読者」などとはいえませんが、英語なら"He can read rapidly."の意味で
He is a rapid reader.
と表現することができますし、「彼はたくさん本を読む」も"He reads a lot."のほかに
He is an avid reader.
などと表現することができます。同様に「彼は射撃がとてもうまい」を"He can shoot very well."の代わりに名詞構文を使って
He is a very good shot (=marksman).
のように片づけることができます。もう少し例文を補足しておきますから、発想の切り替えをする練習問題として考えてみてください。
(練習問題、略)
7番(※注:念のためこれだけ触れておくと、「7. 私は眠りが浅い →(解答例)I'm a light sleeper.」でした)の応用になりますが、「寝る子は育つ」を『ライトハウス和英辞典』では
A healthy baby is a sound sleeper.
と表現しています。このsleeperという名詞も日本語の発想からは使えない単語の一つでしょう。
このように日本語では名詞を使わずに動詞表現を使うはずの場面で、英語は名詞表現を活用します。ですから次のような英文は大変翻訳しにくいものです。
(結構長めのTime誌の例文、略)
いかがでしょうか。このへんまでは入門の程度といえます。4番以降は日本語からは想像もつかないような形の英語が登場します。
…という所で、ここまでは入門程度とのことですが、これだけでも「ふ~む、なるほど~!」と思えることがいっぱいある感じでしたねぇ~。
素晴らしくためになる内容だと思います。
…と、これを踏まえて、ここで改めてコメントに戻ってみる予定でしたが、20ページ以上も引用させていただいたため、記事がすっかり長くなってしまいました。
中途半端すぎますけど、次回また、コメントの方に触れる所から再開させていただこうかと思います。
サクッと終わると思うので、次回はまた別のコメントにも触れていく予定です。