続・青い花の同人誌『That Type of Girl』日本語訳その50:エピソードタイトルの由来

新章のラストは、付録の追加で、タイトルの由来について述べるものでした。

僕も『青い花』各話サブタイの由来に関してはこないだ長々とまとめていたわけですが、考察本に収録されることになる、Frankさんによるまとめの翻訳を、以下示していくといたしましょう。

 

###############

That Type of Girl(そっち系のひと)~第二版~
志村貴子青い花』に関する考察

著/フランク・へッカー 訳/紺助

 

(翻訳第50回:第二版269ページから272ページまで)

付録5:各話のサブタイトル

青い花』の各話のタイトルの内、その全てとは言わないまでも多くは、様々な小説、詩、歌、映画からの引用、あるいはそれらを連想させるものとなっている。これらの一部は、VIZ Media版の巻末にある注釈で確認することができる。この付録では、ほぼ全てのタイトルの出典(またはその可能性)を紹介している;ただしこの中には、ある程度推測によるものもあることに注意されたい。また各話の日本語タイトルを、括弧内に併記した(※訳注:原文ではローマ字で書き下してあるが、本訳文では、『青い花』原典通りのタイトルを併記することにする)。

英語版第一巻

#1 「Flower Story」(花物語)。吉屋信子による1924年刊のエス小説集より(このタイトルは通常、「Flower Tales」と翻訳されることが多い)。

 #2 「Stand by Me」(スタンド・バイ・ミー)。ロブ・ライナー監督による1986年公開の映画、またはその主題歌として使用されたベン・E・キングによる1961年の曲より。

 #3 「Spring Breeze」(春の嵐)。ヘルマン・ヘッセによる1910年刊の小説『ゲルトルート』の邦題より。

 #4 「Waking Up in the Morning」(朝めざめては)。ハインリッヒ・ハイネの詩『Morgens steh' ich auf und frage 』の邦題より。

 #5 「Secret Flower Garden」(秘密の花園)。フランシス・ホジソン・バーネットによる1911年刊の小説『The Secret Garden』の邦題より。

 #6 「Beautiful Youth」(青春は美わし)。ヘルマン・ヘッセによる1916年刊の小説『Schön ist die Jugend』の邦題より。

 #7-9 「嵐が丘」(「Wuthering Heights, Part 1-3」)。エミリー・ブロンテによる1847年刊の小説より。藤が谷公演の原作である。

 #10 「Young Leaves」(若葉のころ)。1996年放送の日本のTVドラマ、およびその主題歌であるビー・ジーズによる1969年の曲『First of May』の邦題より。

 #11 「A New Day」(新しき日)。恐らく、ロマン・ロランによる1904-12年刊行の小説『Jean-Christophe』の最終巻である第十巻『La Nouvelle Journée』の邦題に由来するものであろう。

 #12 「Don't Say Goodbye」(さよならは言わないで)。河合その子による1986年の曲(彼女のナンバーワンヒット『青いスタスィオン』のB面)、ジャクソン5による1971年の曲『Never Can Say Goodbye』の邦題、または(可能性は低いが)モシェ・ミズラヒ監督による1986年の映画『Every Time We Say Goodbye』の邦題などより。

 #13 「Love Is Blindness」(恋は盲目)。恐らく、ジャニス・イアンによる1976年の曲『Love Is Blind』の邦題に由来するものであろう。

英語版第二巻

#14-15 「A Midsummer Night's Dream, Parts 1 and 2」(夏の夜の夢)。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲より。

 #16-17 「The Happy Prince, Parts 1 and 2」(幸福の王子)。オスカー・ワイルドによる1888年の作品集『The Happy Prince and Other Tales』収録の物語より。

 #18 「Winter Fireworks」(冬の花火)。太宰治による1946年の戯曲より。

 #19 「The Bells of Spring」(春の鐘)。蔵原惟繕監督による1985年公開の映画作品より。

 #20 「Tsujigahana」(辻が花)。中村登監督による1972年公開の映画作品より。

 #21-24 「Rokumeikan, Parts 1–4」(鹿鳴館)。三島由紀夫による1956年の戯曲より。藤が谷演劇部が上演した。

 #25 「Faster Than Love」(愛より速く)。恐らく、斎藤綾子による1998年刊の小説に由来するものであろう。

英語版第三巻

#26-29 「Rokumeikan, Parts 5–8」(鹿鳴館)。上記参照。

 #30 「After the Banquet」(宴のあと)。三島由紀夫による1960年刊の小説より。

 #31-33 「The Door into Summer, Parts 1–3」(夏への扉)。ロバート・ハインラインによる1957年刊の小説より。

 #34 「As You Like It」(お気に召すまま)。ウィリアム・シェイクスピアの戯曲より。

 #35 「A Planet in Love」(恋する惑星)。ウォン・カーウァイ監督による1994年公開の映画『重慶森林』の邦題より。

 #36 「First Love」(はつ恋)。恐らく、イワン・ツルゲーネフによる1860年刊の小説『Pervaya lyubov』に由来するものであろう。

 #37 「The Lily of the Valley」(谷間の百合)。オノレ・ド・バルザックによる1835年刊の小説『谷間のユリ』より。

 #38 「A Christmas Carol」(クリスマス・キャロル)。チャールズ・ディケンズによる1843年刊の小説より。

英語版第四巻

#39 「A Little  Princess」(小公女)。フランシス・ホジソン・バーネットによる1905年刊の小説より。

 #40-41 「Melody, Parts 1 and 2」(小さな恋のメロディ)。ワリス・フセイン監督による1971年公開の映画『Melody』の邦題より。

 #42 「Froth on the Daydream」(日々の泡)。ボリス・ヴィアンによる1947年刊の小説『L'Écume des jours』より。この小説はその後、利重剛監督によって2001年に『クロエ』のタイトルで映画化もされた。

 #43 「The Best Little Girl in the World」(鏡の中の少女)。スティーブン・レヴェンクロンによる1978年刊の小説、およびその後サム・オスティーン監督によって1981年に映画化された作品による。日本語のサブタイトル(直訳すると「the girl in the mirror」)が、本作の邦題である。

 #44 「On a Spring Night」(春の夜に)。直接の引用ではないかもしれないが、このサブタイトルは宮崎吾朗監督による2006年公開の映画『ゲド戦記』で手嶌葵が歌った曲とタイトルが同じである。

 #45 「The Three Musketeers」(三銃士)。アレクサンドル・デュマによる小説より。藤が谷演劇部による上演舞台作品の原作となった。

 #46 「Heavenly Creatures」(乙女の祈り)。ピーター・ジャクソン監督による1994年公開の映画作品の邦題より(邦題を直訳すると「maiden's prayer」となる)。もう一つの可能性としては、テクラ・ボンダジェフスカ=バラノフスカが1856年に作曲し、以後幾度となく収録されている『Maiden's Prayer』という曲も、このサブタイトルの由来になっている可能性がある。

 #47 「Crime and Punishment」(罪と罰)。フョードル・ドストエフスキーによる1866年刊の小説由来で、この作品は手塚治虫によって1953年に漫画化もされた。

 #48 「A Flower of This World」(この世の花)。北條誠による1955年刊の小説、それを原作とした穂積利昌監督による1955年公開の映画、および島倉千代子が歌ったその主題歌より。

 #49 「Unrequited Love」(片恋)。恐らく、イワン・ツルゲーネフによる1858年刊の小説『Asya』の邦題に由来するものであろう。

 #50 「Even Though I'm Waiting for You」(君待てども)。恐らく、中村登監督による1949年公開の映画、およびその作中で歌われた、平野愛子による同名の曲に由来するものであろう。他の可能性としては、1974年に放映された山際永三監督による同名のTVドラマが由来の可能性もある。

 #51 「Wandering the World of the Seventh Sense」(第七官界彷徨)。尾崎翠による1931年刊の小説より。こちらはまた、浜野佐知監督による尾崎の生涯を描いた1998年公開の映画『In Search of a Lost Writer: Wanderings in the Realm of the Seventh Sense』(『第七官界彷徨 尾崎翠を探して』)のタイトルにもなっている。

 #52 「Sweet Blue Flowers」(青い花)。本作のタイトルより。この日本語タイトルは、ノヴァーリスによる1802年公開の未完小説『Heinrich von Ofterdingen』の邦題を由来とするものである可能性もある。

 

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

###############

 

いくつか、僕も見落としていた点に触れていただけていました。

例えば『罪と罰』で手塚作品も挙げられていましたが、それはまぁ小説の漫画化に過ぎないのでいいとして、何気に音楽ネタで発見があった感じですね。

 

一つは、まさかの『小さな恋のメロディ』!

これ、僕は曲の邦題が『小さな恋のメロディ』だと思っていて、この記事では「Wikiepdiaには『メロディ・フェア』というタイトルで掲載されているけど、この曲は『小さな恋のメロディ』という素晴らしい邦題を使って欲しかったぜぇ~」とかまで書いてたんですけど、Frankさんから、

「Wikiepdiaによると、この曲の邦題は『メロディ・フェア』であるようなので、本節で由来には記述しなかった」

…というメッセージをいただいていまして、改めて調べ直してびっくり、この曲、普通に曲そのものに、公式では邦題がついていない形(「メロディ・フェア」という英語そのまま)だったんですね!


「いや、絶対『小さな恋のメロディ』のはずなんだが…」と思って手持ちの曲を見てみても、実際に、まさかの『メロディ・フェア』表記でした……。

長年、完全に誤解していた感じですね…!

恐らく、この曲が流れてきた際、親なんかが「おっ!小さな恋のメロディ!」と言っていたような記憶が強いみたいなことが多分あって、それで自分も「この曲は小さな恋のメロディという曲なんだ」と、刷り込み的に覚えてしまっていたのかもしれません。


というわけで、何度も繰り返し「個人的には、このタイトルは音楽由来ではないかと思う…」とか抜かしてましたが、正式にいえば、映画由来としかいえない感じだった形ですね(笑)。

誤情報を声高に叫び続けてしまっており恐縮の限りですが、誤解を認識して正確な情報に辿り着けて、個人的には何よりでした。

 

そしてもう一点は、12話の『さよならは言わないで』ですが、こちらも、こないだのまとめ記事で僕は「映画かなぁ、いやでも、ジャクソン5の曲の邦題でもあるね…」とか書いていたんですけど、Frankさんは全く別の可能性を独自に挙げられていました。

それが、河合その子さんの同名曲で、もちろん僕もWikipediaの曖昧さ回避ページ(↓)でそちらを目にはしていたんですけど……

ja.wikipedia.org
…B面曲でかなりマイナーな印象があったこと、および個人的に若干世代からずれており河合その子さんのメジャーっぷりに気付かなかったこともあってスルーしていたわけなんですけれども、Frankさんから「この曲は大ヒットしたようだし、発売の年と志村の年齢とを考慮すると、個人的にはこれが由来ではないかと思う。志村が思春期にこのレコードを手にし、思い出の曲となっている可能性は高いのではないか」というメッセージをいただきまして、言われてみたら「ホンマや!!」と気付いた感じですね。

 

この曲収録の『青いスタスィオン』は、Wikipeidaによると、「おニャン子クラブ会員が在籍中にリリースされたシングルとしては最も売上が多いシングル」とのことで、そこまでの大ヒットなら間違いなしですね。

僕は普通にアイドルソングも男女問わずかなり聴いていて相当好きですが(ちなみに、志村さんもアイドルおよびアイドル曲は非常にお好きだったと記憶しています)、やはり個人的には90年代以降が中心で、おニャン子はちょっとカバー手薄でした。

「作詞:秋元康/作曲:後藤次利」のゴールデンペアなんて、普通にクッソ好きすぎるわ、ってことで、こちらの由来はもう間違いなく確実に、この曲だったという形に更新させていただこうと思います(笑)。

(ちなみに、後藤さんがご結婚されたのが、まさに河合さんだったんですね。)


残念ながら公式動画が存在しなかったのでこの曲を貼るのは控えておきますが、改めて、見落としていた点に気付くことができて何よりでした。

 

では次回は、最後のチェック的な感じで、他にもいくつか改訂した部分があったので、そこだけ改めて取り上げさせていただこうかと思います(例によって、ただの記事の水増しですけど(笑))。

『こいいじ』7巻、https://www.amazon.co.jp/dp/B07652CMFHより

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村