青い花・英語版で気になった所を挙げていこう:2巻その1

英語版の翻訳の気になる点を、続けて参りましょう。

今回は日本語版の2巻(英語版だと1巻後半)ですね。


なお、毎度丁寧なコメントをいただけるアンさんから「英語版を持ってないと、何のことかよく分かんないですねぇ」というメッセージをいただいていましたが(とはいえ、「へぇ~と思える面白さはあるけれど」という但し書きも送ってもらっていました。でも「へぇ止まりで、何か思うことを挙げるとかにはつながりにくいですねぇ」というのが実際という感じのようですね、やはり)……

日本語版の『青い花』がないと全く意味不明であり続けたのを通り越して、恐らく誰も持っていないと思われる英語版『Sweet Blue Flowers』の話はマジで何のこっちゃ状態の極みかと思うんですけど、まぁせっかくなので、作品とは関係なくとも英語の小話なんかとして多少意味なくはない感じになるのを目指しつつ、翻訳版であるSBFがより良いものになっていくこと(日本語本来のニュアンスが消えていたような場合の補足とかで)を願って、順番に通して見ていこうかと思います。

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(2) p. 30:"I CAUSE OTHER PEOPLE TROUBLE." (「私は、他の人に迷惑をかけるんだよ」)

この台詞の「I」は、恭己自身のことを指しているの?(これに続く小学生の女の子も、"ARE YOU A BAD GUY?"(「あなたは悪い人なの?」)と言っている。)

個人的には、この部分は恭己の演じる役であるヒースクリフを指しているのかと思ったが(日本語の原文では、日本語の大きな特徴である「主語の省略」により、誰を指しているのかは不明)、この英語のフレーズで、恭己は自分自身のことを言っていることになるんかな?


A. 個人的には、このフレーズで、恭己は自分が演じるキャラクターのことを指しているのだと思う。4コマ目の英文("He doesn't know ...")が、その読み方を支持しているだろう。

しかし、この英文は、日本語の文章にありそうな曖昧さをうまく捉えているようにも思う。つまり、恭己は表向きヒースクリフのことを話しているが、彼女自身のことを話している可能性もあるのだ。実はこのことについては、『That Type of Girl』のp. 80で書いていた:

(以下『That Type of Girl』翻訳文の再引用)

ただ同時に、恭己は、一歩下がって自分の状況を診断することで、自分自身および他者に対する自分の行動に対し、ある程度の責任を持つことができる。例えば、『星の王子さま』主演の初等部生の少女にかけていた言葉は、恭己が自分をヒースクリフになぞらえて話しているようにも見えるといえよう:「ちょっと困った男の人」で「周りの人がね 困っちゃう」のだが、「一概に悪い人とはいえないかな」と語るのだ。


(⇒追加の独り言:)当初送った質問メッセージに、「次のコマで恭己は『HE』を使っているから、『I』を使っている問題の台詞は明らかに自分のことっぽい気がするんだけど…」という内容を入れ忘れてしまいましたが、逆にFrankさん自ら、「次にHeが来るからこそ、Iもヒースクリフのことを指しているのではないか(もちろん、自分のことも暗喩している)」ということを挙げてくれていました。

まさに、日本語の曖昧さを英語でも表した、妙訳という所でしょうか。


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(2) p. 64:"WHAT'S YOUR FIRST NAME AGAIN?"(「下の名前、何でしたっけ?」)

日本語版原典のこの部分では、康はあきらの名前を尋ねているわけではなく、単に"I couldn't remember your name just a while...!"(「一瞬、名前を思い出せなかった...!」という旨の台詞。実際は「あ~よかった  ちょっとあわてた  名前なんだっけかなーって」)という感じで謝っているだけなので、大きな違いはないけれど、同じではないことは確かだね。


A. このページの3コマ目で、既に康はあきらの苗字を呼んでいるので、該当の部分では明らかに下の名前を思い出そうとしている。なので英文でも、日本語の原文は、"Sorry, I can't remember your first name..."(「すみません、下の名前が思い出せなくて」)と訳すのが最も自然だと思う。

しかし、この文章は長すぎて、4コマ目の吹き出しには収まらないように見える。なので、"WHAT'S YOUR FIRST NAME AGAIN?"という訳が、代替案として妥当ではないかと思う。


(⇒追加の独り言:)
追加で以下のメッセージを送りましたが、その後、3巻以降の気になる点質問メッセージとかも同時並行で進めており、情報が錯綜している状態だったので、この追加メッセージは、送ったまま特に返事がない感じですね(以下全部同様)。

とはいえせっかくなので、以下、追加でFrankさんに送ったメッセージだけ掲載しておこうと思います。


もしかしたら日本語・英語の文法構造の違いのせいで英語だと変に聞こえるかもしれないけど、日本語だとこの台詞は、

「あなたの苗字を思い出せなかった!(過去形)
(→でも、たったついさっき『やっと思い出せた!』ということを言外に暗示している)」

…という意味なんだ。

ということで、厳密に言うと、康はここであきらの下の名前を聞いているわけでは決してないんだけど、もしかしたらそれは多分、日本語では下の名前を呼ぶことはあまりないので(特にこの二人のような、そんなに親しくない男女の関係では)、文化の違いに基づいているだけなのかもしれないね。


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(2) p. 89:キャラクター索引について……あの索引の項目は、「名前を与えられたキャラクター」を全てリストアップしている?

もしそうなら、索引にはなかった名前付きキャラとして、このページに「工藤」という生徒が出てきた。

でもこの子は非常にマイナーなキャラクターなので、リストアップする価値はないかもしれないけどね。

A. 見落としていたよ、ありがとう!

索引に加えたが、またしても改行エラーが発生してしまった。いくつか細かく修正したので、確認されたし。


(⇒追加の独り言:)
どうも、Frankさんの使われている組版ソフトはやはり英語専門(英文組版に特化)のようで、日本語が混じると、しばしば謎の改行(改ページ)や文字間スペースの問題が発生してしまっています。

ちょっといじると解決することもあるので、Frankさんとともに、細かい点(数文字減らしたり増やしたりなど)を随時修正している形です。

最終PDF・印刷版のみならず、ブログにアップしたキャラ索引の方も、最終版に合わせて(工藤さんの新項目他)更新しておこうと思います。


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(2) p.125:電車の中吊り広告

これ、英語版だと、旅行の宣伝がされてると思うよね?

でも日本語原文では、右半分は「ロードショー」と、たぶん何かの映画のことが書かれていて、あきらは「今度 観に行こうよ」と言っているんだ。

英語では、旅行について語ってる感じ…?(「(旅行先で何かを)見に行こうよ」的な)


A. そう、ここはちょっと、読んだ時に混乱した記憶がある。

英訳では、左側の広告は明らかに観光客に向けた広告で、鎌倉や江ノ島に行くことを勧めている。

しかし、右側の広告が何を意味しているのかは、隠れてしまって100%明らかではない。

一番下には、「DAY...PS」と書かれている。英語のネイティブスピーカーなら、このギャップを頭の中で埋めて「DAY TRIPS」と解釈し、これも観光広告だと思い込むだろう。

しかし、あきらとふみの会話では、明らかに映画を見に行くことを言っているのだ。


気になる点:「Roadshow」の部分は右の広告の一番上の行にあるものということだね?では、右の広告の下の行、吹き出しで見えなくなっている行の空白を、日本人の読者ならどのように埋めるのであろうか?


⇒(追加メッセージ:)
そう、右側の上は、「全国ロードショー」と書かれており、下は、「リアル○○ド」と書いてある(○は吹き出しに隠れて読めない)。

最初一瞬、描かれている女の子たちの絵からも、これは「リアルフレンド」という映画のタイトルなのかなと思ったが、スペースは明らかに1-2文字分しかないので、これは不可能…。

最後の前の文字は、カタカナの「ル」に見えるので、「リアル○ルド」となるけど……このパターンで浮かぶのは、「リアルギルド」ぐらいしかない……どうも描かれている絵の雰囲気とは似つかわしくないけど、それ以外の可能性は浮かばないし、これが最善の予想かな?

⇒(追加の独り言:)↑というメッセージを送ってまだ返信はもらってませんが、どなたか「リアル○ルド」(最後のルは、右半分のレの部分しか見えないので、もしかしたら違う文字かも…?)で浮かぶワードがありましたら、お伝えいただけるとありがたいです(笑)。

 

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(2) p. 130:"I CAN'T BELIEVE THIS."(「こんなこと信じられない」)

訳すのが難しいのかもしれないけど、ここでのふみの言葉は「信じられない」という意味ではなく、単純に"What the heck..."といったニュアンスのものである(※実際の日本語台詞は「なにそれ…」)。

もしかしたら、「こんなこと信じられない」に通じる意味もあるのかもしれないけど、個人的な印象では、ちょっと違うニュアンスの台詞になっているような気がする。


A. ふーむ、"I can't believe this"と、"what the heck"は、実は英語でも似たような意味を持っている:"what the heck?!"は、驚きと不信感が混ざったようなニュアンスで使われるだろう。

しかし、アメリカのティーンエイジャーは"what the heck?!"とは決して言わないように思う。これは古くさい感じで、年寄りが言いそうなこと、あるいは古い本の中のティーンの登場人物が言いそうなことなのだ―つまり、"gosh darn it!"とか、"goodness gracious!"とかみたいなものなわけだ。

最も自然で慣用的な(アメリカ)英語は、恐らく "what the fuck?!"であろう。でも、そんな汚い言葉を使うのはふみらしくないので、ここでは"I can't believe this"で代用できるのではないかと思う。


⇒(追加メッセージ:)
マジで?!「What the heck」が古くさいとは知らなかった。

ただ、この後SBFを読んでいたら、確かどこかの場面で、誰かが使っているのを一度だけ見た記憶があるよ。

どこの誰の台詞だったかは忘れたけど、まぁとにかく、この場面ではそんなに元の意味とも違わないようなので、SBFの訳が一番いいのかもね。

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…という所で、これで日本語版2巻部分で気になったポイントのまだ半分程度ですが、また続きは次回といたしましょう。


最後の、SBF作中で出てきた「What the heck」、気になったので、改めてもう一度チェックしておこうと思います(見つけたら次回…)。

英語版『放浪息子』2巻表紙、https://www.amazon.com/dp/1606994565より

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