光るマウス!効果絶大の美白薬!!

ベンゼンの六角形リングにOHが2つ付いたやつの内、隣の角同士に付いてる偉大な物質(の土台物質)・カテコールについて前回は見ていましたが、続いて別の位置に付いてるやつにも軽く触れておきましょう。

まずは1つ飛ばしにOHがくっついたもの、名前だけはもう出していましたが、こちら慣用名で、ゾルシノール

構造も既に前回見ていたので省略しますが、これは、正直、一般生活的には全くなじみがないですし、生命科学系の研究などでも、僕自身、これ自体は使ったことも、見たことも聞いたこともありませんでした。

性質としては、カテコールと同じく酸化されやすい性質があり(まぁちょっと構造が違うだけで、実質ほとんど同じ分子にすぎないので当然かもしれませんが)、酸化されるとピンク色の粉になるとのことです。

その酸化されやすさを活かして、こいつも殺菌剤として使われているようですが、それよりもより広く使われているのは、車のタイヤ・ゴムの原料としてのようですね。

ゾルシノールの販売代理店をされてらっしゃる企業による、「こちら、ガンガン成長しております!」という力強いPR記事なんかも目につきました。

www.value-press.com

工業的にも、有能&有望な物質のようですね。

一方、個人的な親しみの点でいうと、こちらは酸化するだけでピンクになるという非常に色が付きやすい性質があるからか、これ単体ではなく、もう少しちょちょいっといじってやる必要がありますけど、これの誘導体は、さる有名な蛍光物質として、研究の現場で活躍している、なんて点に注目したいですね。

それが、フルオレセイン、さらにそれを改良したFITCと呼ばれている、色鮮やかにボワァ~ッと光るニクイやつ!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/フルオレセインより

フルオレセイン自体は赤っぽい粉末ですが、水に溶かすと、水中では緑の蛍光を発する物質ですね。

改造されすぎててもはやレゾルシノールの面影もありませんが、最上部は、レゾルシノールが2つくっついた形(OH同士が手をつないだ感じ)で、多少の面影が残っているといえるのではないでしょうか。

これは、安価な蛍光物質としてよく使われているもので、僕もFITCなんかは実験で使ったことがあります。

使い道は……例えば分かりやすい一例でいうと、何かの薬にこいつをくっつけて注射して、その薬がその組織に留まるかそれとも全身に広まっていくのかどうか…といった薬物動態を見る実験などなどで使われるわけです。

蛍光というのは目で見ることができますから、その薬がどこへ運ばれたか、一目瞭然で行方を追うことができるんですね!

こちらはFITCではないですが、似たような蛍光分子の例として、理研の方が開発された「Kaede」という割と新しい蛍光物質の利用例の論文が目に付いたので、面白いので絵面だけ紹介させていただきましょう。

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Monitoring cellular movement in vivo with photoconvertible fluorescence protein "Kaede" transgenic miceより

光るマウス、何か可愛くて、いいっすね!
(ちなみに、左側のAは、以前話に出したHeLa細胞の染色ですね。)

なお、蛍光物質といえば、以前GFPの名も出しましたが、GFPはタンパク質であり、かなりデカい高分子なので、目的の分子に気軽にくっつけることができない場面もままあります。

一方FITCみたいな低分子の色素ならば、高分子と比べるとくっつけたとき邪魔にならないので(デカすぎると、そのくっつけた薬の性質が変わっちゃう可能性もありますしね)、こっちの方が便利なことが多いわけです。


一方、フルオレセインといったこの辺の蛍光物質は日常生活でも色つき入浴剤なんかに使われており(もちろん全ての色がこいつ由来ではなく、これ以外にも色々な着色料が使われていますが)、それなりになじみのあるものといえるかもしれませんね。

さらに、Wikipediaに写真つきで紹介されていましたが、セントパトリックス・デーというカトリックのお祝い・お祭りの日がアメリカにはあるんですけど、その日は緑色のものを着て人々が集まり、子供たちが楽器を弾きながらパレードで歩いたり…みたいな感じになっています。

3月17日が当日で、パレードとかはその週末に行われることが多いと思いますが、この日は緑が聖なる色であり、緑の服を着ていない子はつねられたりぶん殴られたりしても文句をいえないとかいうクソみたいな風習らしいですけど、それはともかく、特に有名なのが、シカゴ川に大量のフルオレセインを流し込み、川まで緑に染め上げる、なんてのがあるみたいです。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/フルオレセインより

僕も誘われて一度だけパレードの観客として参加したことがありますが、川までは見なかったものの、本当に全員緑のものを身につけていて、なかなか面白いもんだなぁと思いました(小学生並みの感想)。

ちなみに、Wikipediaによると、日本でももう大分昔から表参道とか横浜とかで結構大々的にパレードが行われているんですね。

全く知りませんでしたが、東京タワーが緑にライトアップされたこともあったようです。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/聖パトリックの祝日より

ハロウィンとかもいつの間にかいきなり定着しましたし、こういうのも、もしかしたらお祭り好きの日本でも今後流行っていくものかもしれませんね。
(でも、上述の通りもう結構歴史のあるイベントのようなので、いきなり大流行することもまぁないでしょうか。)


…とそんな感じで結構生活に密着した感じであったレゾルシノール(といってもこいつ自身より、誘導体の方がメインかもしれませんが)ですが、続いては、フェノールにもう1つOHが反対の位置(パラ位)につながった物質、こちらさんのお名前は、ヒドロキノン

これは、こいつ自身が有能物質であり、カテコールより、レゾルシノールより、名前自体は圧倒的に、特に女性になじみがある物体かもしれませんね。

これ自体が主役なので、改めて構造を貼っておきましょう。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒドロキノンより

一般的には英語読みに近いハイドロキノンとも呼ばれているこいつ、主な用途はみなさまご存知、美白効果の美容液!

個人的には、親分子であるフェノール(ベンゼン環にOHが1つだけ→対角線上にもう1つOHがついてハイドロキノン)の怖さを知っているだけに、この美白効果って、正直、キレイに白くするというより、肌のタンパク質やその他成分を完全にぶっ壊してぶっ殺して最早死んだも同然の状態にして蒼白くなっているだけなのでは…?とうっすら思うものの、ある程度の濃度であれば、まぁちょうどいい具合に、健康被害はなく邪魔なものだけ消し去る感じで美白の効果が得られるのかもしれませんね。

薬として認可されて売られている以上、そこまで危険性が高いものなわけはありませんし。

…といってもその辺の副作用・危険性や法規制については今でもまだ議論がなされている最中のようですが、逆にいうと利用可否について議論がされ続けるぐらい、こいつは本当に結構強い化学物質であることの裏返しでもあるといえるので、まぁ確かな効果はあるのではないかと思います。

美容業界は、正直ある程度の知識があると、「ん~?それ大丈夫ぅ?」とか「それちょっとおかしくない…?」的な話も散見されるわけですが、ハイドロキノンで検索して一番上にヒットしたこちらの記事↓は、しっかり科学的知見にも基づいており、副作用を含め丁寧にまとめてくれている、とてもいい内容でした。

流石トップ記事!

pluskirei.com

記事の最後にも似たようなことがちょろっと触れられていましたが、兄弟分子カテコール・レゾルシノール同様、ハイドロキノン非常に酸化されやすい物質で、酸化されると毒物に分類されるパラベンゾキノンという物質が生じますから、なるべく早く使い切った方がいいし、古すぎるハイドロキノン入りクリームは使わない方がいいとはいえるように思います。

…とまぁ何となくネガティブめなことばかり書きましたけど、正しい用量で上手く使えば、実際これはとても効果的な美白薬といえるのではないでしょうか。


そんな感じで、フェノールにOHがもう1つ付いたこども分子、どいつも結構な有能っぷりを見せてくれていましたね(一部は孫分子がより有能という感じでしたが)。

しかし、-OHが3つ以上ついたやつは、どうもパッとするやつがいなかったので、フェノールの直属チルドレン分子は、この辺にしておきましょう。

次回は、さらに別の官能基がついたベンゼン・フェノール類を見ていこうと思っています。

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