前回、コレステロールというもの自体には善も悪もなく、こいつ自身は脂肪酸とつながって存在するアルコールかつステロイドの一種(…といっても、お酒っぽくも、ステロイド剤っぽくも全くないけど)に過ぎない、単なる1種類の物質なのです、なんてことを長々とくっちゃべっていました。
そして、実際日常生活の場で善玉悪玉と呼ばれるものは、中性脂肪(グリセリンのトリプル脂肪酸エステル)とコレステロール(これも脂肪酸が1つくっついた、エステルの形がほとんど)という、生体内に存在する2大脂質が異なる割合で詰められた「コンパクトな油入りボール」の種類の違いで区別されているものなのです、という所まで触れていました。
(ちなみにこの油入りボールは、何だかんだ生体内でめっちゃ重要な役割をしている脂質というものを、体の隅々にまで運ぶため=血流に乗せるために、血液になじませる目的で形成されているものだ、という話もしていました。
丸はだかの脂質は、「水と油」で反発しあってうまく血流に乗れませんから、この油入りボールはドチャクソ重要なのです)
そんなわけで、その辺の話を今回は詳しく見ていきましょう。
…まぁあくまで単なる生化学的な知識でしかないので、その辺を知ったからといって、コレステロール値が改善される、なんてことにはつながらないんですけどね。
でもまぁ教養として知っておく分には悪くないといえましょう。
まず、その「油入りボール」は、専門用語で「リポタンパク質」と呼ばれます。
lipoはlipidから派生した語で、lipidは脂肪を意味する一番広い意味の英語(fatやoilなんかが、より狭い意味の脂・油で、日常ではより使われる単語ですね)ですから、「リポタンパク質」は、まぁいっちゃえば「アブラタンパク質」「シボー入りタンパク質」みたいな感じだということです。
ちなみに「○○タンパク質」という単語ですが、これは別にタンパク質成分のみを指す言葉ではなく、油入りボール全体を指す言葉となっています。
紛らわしいので、「リポタンパクボール」とでも改名してほしい限りですね。
でもまぁ名前なんてどうでもいいでしょう。
ちなみに、その、リポタンパクボールの内のタンパク質成分のみの部分は、「アポリポタンパク質」と呼ばれています。
(簡単に「アポタンパク質」と呼ばれることもありますが、apo-というのは「その他の」「~を除いた」「~から離れた」的な意味なので、「アポリポタンパク質」ときちんと書くことで『リポタンパク質の、その他の部分を除いたタンパク質成分』の意味になりますから、「アポタンパク質」だけでは「何の一部なのかな?」と漠然としているともいえて、良くない表現な気もします。
…でもまぁ、基本的に「アポタンパク質」といえば「アポリポタンパク質」のことを指すことが多いので別に問題はないですし、それ以上に、こんな細かすぎることは例によって入門編ではマジでどうでもいい話なんですけどね…!)
つまり、細かい名前はともかくとして、血液に溶けこめる便利な油玉『リポタンパクボール』というものは、アポリポタンパク質がボールの皮(表面)、そしてその中身に中性脂肪とコレステロール脂質とが含まれるという、概ねこの3つから成る物質だということなわけです。
そして、一口にボールといってもピンポン玉・野球ボール・サッカーボール・バスケットボール…と様々な大きさ重さのものが存在するように、リポタンパクボールも、その大きさ&比重(密度)によって種類分けされています。
例によってWikipedia博士が非常に分かりやすくまとめた表を載せてくれていたので、丸っと引用させていただくとしましょう。
まぁ、名前とか具体的な割合とかは本当にどうでもいいんですが、一応軽く触れるだけしておきましょうか。
この表は、上から順番に「大きくて、スカスカ」なものから並んでいます。
なので、例えるなら、この5つは、昭和の女の子が遊んでそうなゴムマリ→バレーボール→ソフトボール→ゴルフボール→パチンコ玉…みたいな並び順でしょうかね?
(まぁ、そこまで中身の密度に差はないですけど)
一番でかくてスカスカなものは、キロミクロンと呼ばれる粒子ですが、こいつだけ名前が全然違うだけあって、あんまり健康診断とかで名前が登場することはなく、日常生活でお目にかかることも滅多にない、仲間外れな感じですね。
サイズも他のやつらと比べて桁違いに大きいですし、こいつだけ比重が1未満なので、水より軽い感じです。
まぁ、存在量としては油入りボールの大部分を占めていますが、割とどうでもいいので、「そういうのがいます」で放置でいいでしょう。
ちなみにこいつは「カイロミクロン」と呼ばれることもありますが、これは、アメリカ英語の発音に近づけてるのかもしれませんね。
…いやでも、アメリカ英語なら「カイロマイクロン」になるので、中途半端っちゃ中途半端な呼び名になってる感じも否めませんが…。
続いてVLDL、IDL、LDL、HDLという似通った横文字が続きますが、こいつらは単に「そのボールが、どれぐらいズッシリしているか」をいっているだけで、そんなに違いがありません(特に最初の3つ)。
ラスト2文字DLがDensity Lipoprotein(○○密度リポタンパク質)の略称で、「どのぐらい密なのか」を、そして先頭の文字で、
・Very Low(超低)
・Intermediate(中間)
・Low(低)
・High(高)
…を指しているという、冷静に考えたら全くややこしくない、逆に単純すぎる名前のやつらなのでした。
(ちなみに、一番カスカスのキロミクロンは、この一連の流れにのっとって、Ultra Low Density(ウルトラ低密度)で、ULDLと呼ばれることもありますね。まぁあんまりそうは呼ばれず、キロミクロンのCMの方が使われてる略称だと思いますが。)
ベリー低密度と中間密度の2つは、Wikipediaの表内にも記載されている通り、速やかにLDLに変換されるので、こいつらも割とどうでもいい脇役といえましょう。
やはり、健康診断でもおなじみ、LDLとHDLの2つが、いわゆる「コレステロール値」で重要な指標で、前回チラッと書いた通り、LDLが悪玉、HDLが善玉コレステロールと呼ばれているものになります(これも前回触れた通り、その呼称は徐々に使われなくなっているようですが)。
結局、LDLの方が大きくてスカスカ、HDLの方が小型でアブラがびっしり詰まったずっしりボールなわけですけど、表をぱっと見て分かる通り、ボールの密度が大きく(サイズは小さく)なるにしたがってコレステロール(特に、脂肪酸がつながったエステル体)の割合が大きくなるのですが、何気に一番密度の大きい肝心のHDLでは、LDLと比べてコレステロールの割合はガクッと小さくなっているので、必ずしもそうではないのが悩ましい所です(何じゃそりゃ)。
まぁ、別にそれぞれのボールで中性脂肪やコレステロールがどのぐらいの割合になっているかというのは(あと他にも、何というアポリポタンパク質が使われているのか、という点含め)全く重要な話じゃないので、気にしなくてもいいでしょう。
いずれにせよ、現実世界での通称や含まれる脂肪の種類の割合はともかく、LDLとHDLの2つの内、前者が多すぎると「健康面に不安あり」とされて警告を食らう感じ(また、HDLが少なすぎても、これも逆に良くなく、警告を食らいますが)ですね。
なぜそうみなされているのか、その辺の仕組みについては、もったいぶるほどの話でもないんですけど、いい分量になってしまったのでまた次回持ち越しとさせていただきましょう。
…えっ?今回、名前見ただけで終わり…?!
まぁ、新しい用語大量でややこしい部分ですからね、ある程度丁寧に見る必要があるのも仕方ないですね(←言い訳。…っていうか、改めて記事アップ後に読み直してみましたが、丁寧に見た割に、あんまり分かりやすくもなかったかも…)。
まとめると、「大きく分けて、血液運搬用の油入りボールにはCM(キロミクロン)とLDLとHDLがあり、サイズとズッシリ感で分けられている。健康上、特に気をつけるべきは、LDL!」というのが、今回の記事の全てでしょう(相変わらず、ほぼ一言で済む話に3000文字もかけてしまいました)。
ということで、次回、LDLやHDLについてさらに詳しくみていきましょう。