配偶者向けの永住権申請手続きにおいて、最も手間がかかると思われる書類、DS-260(移民ビザ申請書)の実際の中身を、前回までで一通り見終えていました。
DS-260に関して、特に補足という程でもないですけどいくつか触れることで話題が広がりそうなものがあったので、今回はそちらを見ていくといたしましょう。
ちょうど前回の質問セクションで、そこでも括弧書きで軽く注を加えていたんですけど、こんなものが聞かれていました(↓)。
Q: アメリカの法が定める予防接種ワクチンを受けたことを証明する書類がありますか?
この質問があるということは、実際に証明しなければいけないということに他ならないんですけど、これに関連して、移民ビザを取得するためには、まず健康診断を受ける必要があります。
しかも健康診断なら何でもいいわけではなく、一応タイミングとしてはこないだ申請の流れをフローチャートで見ていた通り、DS-260の申請後・面接の前までなので、例の3年待ちの期間ですから急ぐ必要は皆無ではあるのですが、アメリカ大使館が指定する病院で、移民ビザ用の健康診断を受けて来なければなりません。
ちなみに僕が永住権を申請する際も、アメリカ国務省の指定する病院に行って受けて来ました。幸いそこまで遠くはなく、車で3, 40分程度の所でしたが、アメリカ現地でも数が限られているこの指定病院は、日本だとどうやら数える程しかないようです。
大使館ページはリンクカードが上手く取得できなかったので、スクショを掲載するとしましょう、指定病院は、以下の通り、なんと全国でたったの5か所!

しかも東京×2、沖縄×2なので、事実上、東京・神戸・沖縄の3か所でしか受けられないんですね。
とはいえ、一昔前は聖母病院一択だったようなので、神戸と沖縄でも実施できるようになって少しは便利になったのかもしれません。
いずれにせよ、この健康診断は必須なので、特に南北両端の地域にお住みの方なんかは、たかが健康診断のために泊りがけで旅行をしなければいけない形になりますから、その場合は大変お手間をおかけしてしまい恐縮です。
ただ、健康診断自体は特に面倒なものでもなく、普通に問診や血液検査なんかがあったぐらいに記憶しています。
まぁ健康診断自体は特に問題もないと思うのですが、もう一つ、先ほど質問でも見ていた通り、アメリカが要求する予防接種も必須となります。
具体的にはどんな予防接種が要求されるのでしょうか?
それは、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)がまとめてくれているので、以下のワクチンページ(↓)が参考になる感じですね。
表としてもまとめられていましたが、全年齢について書かれた長いもので、ここでは成人の情報が重要ですから、18~64歳の対象者の部分のみ抜粋してみました。
こんな感じですね。
| ワクチン名 | 18〜64歳の接種要否 | 補足・備考 |
|---|---|---|
| DTP/DTaP/DT (小児用:ジフテリア・破傷風・百日咳混合) |
対象外 | 成人には適用されない |
| Td/Tdap (成人用:破傷風・ジフテリア・百日咳) |
必要(場合による) | 過去の接種履歴により判断。Tdap未接種の場合は必要 |
| ポリオ(IPV) | 必要(場合による) | 一次接種歴がない成人はACIP指針に基づき必要 |
| 麻疹・おたふく・風疹(MMR) | 必要(1957年以降生まれ) | 1957年以降生まれの人は原則必要 |
| ロタウイルス | 対象外 | 乳児専用ワクチン |
| Hib (インフルエンザ菌b型) |
対象外 | 乳幼児専用ワクチン |
| A型肝炎 | 通常対象外 | 12か月〜18歳が対象。成人は原則不要 |
| B型肝炎 | 必要(59歳以下) | 60歳未満は接種が推奨される |
| 髄膜炎菌(MenACWY) | 通常対象外 | 11〜18歳が対象 |
| 水痘(Varicella) | 必要 | 既往歴またはワクチン接種証明が必要 |
| 肺炎球菌(PCV) | 通常対象外 | 65歳未満では特定条件下のみ必要 |
| インフルエンザ | 必要(時期による) | 渡航時期が10月〜3月に該当する場合は必要 |
| COVID-19 | 必要(対象年齢) | 米国が指定するワクチンを規定回数接種していること |
この内、ポリオやDTP(DTPは成人は必須ではありませんが)、それから麻疹・風疹ワクチンなんかは、日本人ならほぼ100%確実に接種しているので問題ないとして、COVID-19も、僕は当時大学で接種が必須だったので受けましたが、僕の場合は、Tdapと呼ばれる、破傷風・ジフテリア・百日咳の三種混合ワクチンを受けてくるように、指定病院の健康診断時にパネル医師から言われました。
このワクチンは、10年ごとのブースターが推奨されるものとはいえ、一応もし子供の頃に受けていたら受けなくてもいいかもしれないようなことも言っていたので母親に聞いてみたんですけど、僕はどうやらこの三種混合は受けたことがなかったとのことです。
そんなわけで、僕はこの「Tdap」と呼ばれるものを受けて来たのですが、これはアメリカでは非常に広く普及しているもので、近所の薬局で、当日行っても確実に受けられるぐらいに簡単にアクセスできる感じでした。
とはいえ、日本ではそこまで普及している予防接種ではないようなので、おそらくこれは受けていない方のほうが多いと思われるため、僕同様、受けてくる必要があるわけですが……
…まさに普及していないからこその問題点として、これまたこの予防接種を受けられる医療機関は日本だとやや限られているのかもしれません。
とはいえ大使館指定病院レベルで受けにくいものではなく、それなりに大きい病院なら予約を受け付けていることが多いと思います。
「Tdap」や、日本語ならやっぱり「三種混合ワクチン」で調べると出てくる形ですね。
かかりつけの病院があれば、受けられるか聞いてみるといいかもしれません。
ちなみにTdapを受けたことがなかった僕は、その証明をする必要もなかったということで、母子手帳の英訳コピーなんかを提出する必要もありませんでした(そっちの方がTdapを受けるよりも確実に手間なので、むしろなくてよかったのかもしれません)。
とはいえ、水痘ワクチンなんかも必須で、これは僕は罹ったことがあるのか、自分自身でも不明なのに何で証明書を提出しなくても良かったんだろう?…と思いましたが、これはまさに、健康診断で抗体検査をして、抗体があることが証明されたからなんだと思います。
もしワクチンを受けておらず、罹ったこともないのであれば、水痘ワクチンも必須となる感じですね。
ただ、B型肝炎は、ワクチンを受けたことも多分ないし、これは罹ったこともないと思うから抗体もないはずなんですけど、なぜ受けなくて良かったのかは不明です。
もしかしたら罹ったことがあったのかもしれませんし、もしかしたら健康状態を見て、「これだけ健康なら受けなくていい」とパネル医師に判断されたのかもしれません(まぁそんな抜け道があるなら、「必須」とはならない気もしますが…)。
いずれにせよ、健康診断後に、パネル医師から「移民ビザ申請のために、このワクチンを受けてきてください」と書かれた紙を渡されるので、それに従えばいいだけの話ではある形です。
(そして改めて、Tdapはおそらく日本人のほぼ全員が受けたことがないと思うので、少なくともその予防接種は必須になるかと思います。)
やや面倒なステップではありますが、指定病院を予約し、健診後、言われた通りの予防接種を受けてくるだけの単なる作業行程とも言える感じですね。
(Tdapの予防接種は痛みも発熱もなく、まったく軽いものでした。)
では次回は、また別のポイントに触れてみようと思います。