配偶者向けの永住権申請手続きで、配偶者側が提出する必要のあるDS-260(移民ビザ申請書)の実際の中身を、前々回までで一通り見終えていました。
これに関連して、前回は健康診断およびワクチン予防接種の話に触れていましたが、もうひとつ、この申請以外ではあまり聞かないものについて見ておこうと思います。
それが、犯歴証明書こと、警察証明!
移民ビザを申請する人は、DS-260で「これまで有罪になったことはありますか?」という質問に答えるとともに、大使館にその「警察証明」というのを提出する必要があります。
こないだもチラッと書いていた通り、僕はH-1Bビザという大学がスポンサーとなって取得していた雇用ビザから永住権の申請だったため、大学側での雇用で身元の保証はされているからか、僕自身はこの警察証明というのを取得したことがないんですけど、アメリカ大使館には専用のページも用意されている、正式な用語の証明書のようです。
大使館のリンクカードはなぜかはてなブログでは取得できず壊れており、また他に画像もないので、今回もアイキャッチ用にスクショをペタリと貼っておくといたしましょう。

まぁ貼るほどの内容でもなく、日本国籍で日本でしか暮らしたことがない方は日本での警察証明を取得すればいいだけという当たり前の話でしかないんですけど、一応僕の場合は、「国籍のある国以外で12ヶ月以上暮らしたことがある」に該当するので、提出の必要がある際はアメリカの警察証明も必要となるようですね…と思ったら、
注:アメリカの警察証明書は以前住んだことがあっても提出する必要はありません。
という注があったので、僕が例えばアメリカ市民権を申請する場合も、日本の警察証明だけで良さそうです。
この耳慣れない証明書ですが、先ほどのスクショページのすぐ下にある通り、東京に住んでいる場合は警視庁に、東京都以外に済んでいる場合は県警察本部に申請したら得られるものだということです。
(まぁ、東京の「県警」にあたる組織が警視庁なので、要は都道府県の警察本部に申請するというだけな話だと思いますが)
ちなみに、この書類は移民ビザ申請用にしか交付されないもので、第三者がアクセスすることは決してできない(本人ですら、移民ビザの申請番号と一緒にじゃないと発行できない)ため、仮に有罪歴のある方でも、プライバシーの問題は厳密に担保されている形だと言えましょう。
また、この書類は封緘(ふうかん:密封されていて、開いたら分かるようになっていること)されているので、開けたら無効になっているタイプの厳密な法的文書ですね。
(言うまでもなく、内容改竄や差し替えを防ぐため)
ちなみに前回見ていた「パネル医師による健康診断結果」も封緘されて送られてくるものであり、僕は自分の永住権申請の際はこちらを受け取って自分で郵送しましたが、噂に聞く封緘書類とはどんなものなのか楽しみに見てみましたけど、単に「開けたら無効」ということが書かれているだけの、何の変哲もないショボい封筒でガッカリだったような気がします(というか、記憶に残ってすらいない…言うほど別に楽しみでもありませんでしたし(笑))。
まぁそれはともかくとして、この犯罪歴について、これまた言うまでもないことではありますが、犯罪歴がある方は、やっぱり移民ビザの取得がかなり困難になってしまう可能性が高いと思います。
とはいえ、「スピード違反で切符を切られたことがある」程度のものであれば、これは全く問題ないと言いますか、このレベルのものはそもそも申請する必要すらなかったような気がします。
…が、僕は幸い交通違反をしたこともないため特に意識しなかったんですけど、実際はどうなのか、一応チェックしておくとしましょう。
DS-260で聞かれている質問は、以下の形でした。
Have you ever been arrested or convicted for any offense or crime, even though subject of a pardon, amnesty, or other similar action?
この質問で問われているのは、逮捕(arrested)または有罪判決(convicted)を受けた犯罪行為(crime)であるため、やはり交通違反(violation)は対象外と考えて良さそうですね。
一応チェックしてみたら、アメリカの移民業務に詳しい法律事務所のサイト(↓)に、こんな記述がありました。
The only exception is traffic violations—if the only citation you’ve ever received was for a minor traffic issue, you don’t need to mention it. For everything else, you do.
(唯一の例外は交通違反です―もしもこれまでに受けた違反が軽微な交通問題だけであれば、そのことを申告する必要はありません。それ以外の場合は、全て記載します。)
ということで、やはりスピード違反や一時停止忘れといった軽微な違反は申告不要のようです。
ただし、あくまでも「軽微な(マイナー)」であるため、もしも、
- 大幅なスピード違反で逮捕された(警察署に連行)
- 複数回違反し、重大な過失運転や危険運転とみなされた
- 免許停止処分・執行猶予・裁判を経て判決が下された
- 飲酒運転
などであれば、これはマイナーの域を超えているため、一応申告した方が良さそうです。
特にアルコール絡みの話は、まぁ僕は大使館の人間でもないので絶対的な話ではなく、あくまでも印象論でしかないですけど、これは少なくとも申告は絶対にすべきで…
(そもそも、反則金で済む軽微なスピード違反とは違い、飲酒運転は罰金刑にあたる刑事罰に相当するため、警察証明に記載されるものですから、ここを隠しちゃうとビザ申請が却下される可能性が著しく高まります)
…改めてあくまで個人的な所感ですが、大使館はアルコール・ドラッグ関連の犯罪には、極めてセンシティブで厳格だと思います。
もちろん1回の飲酒運転による罰金歴があるだけで移民が不可能になるとは思えませんが、「酒気帯び運転が複数回」とかでも、かなり難色を示される可能性が高いのではないかと思われます。
一応また現地法律専門家の意見を確認しておくとしましょう。
飲酒運転は英語でDUIと呼ばれますが…
こちらの法律事務所の「DUI歴があっても、アメリカのビザは取得できる?」という質問に対する回答では、
- 一度のDUIであれば、それだけで自動的に申請却下の対象となるわけではない
- ただし、不許可原因ではないけれど、領事館から面接時にアルコール・薬物に関する医師診断を受けるよう求められる可能性がある
- 「2件以上」または「危険運転や他の悪要素」がある場合、重大な問題となる可能性が強まる
とありますね。
また、「一度のDUIであれば、グリーンカード保持者の再入国にも大きな影響はなし」ともありましたけど、そういえば僕は永住権保持ということで安全圏から偉そうに物申してますけど、あくまでこれは「アメリカに永住する権利」であり、「永久保証」でも何でもないので、例えば帰省時に羽目を外して危険な飲酒運転をして刑事罰を受けたりしたら、普通に剥奪されてしまう可能性があるものと言えそうです。
(もちろん、日本に限らず、アメリカで重大な犯罪を犯しても、剥奪→強制帰還になる可能性もあると思います。)
とはいえまぁ、僕は幸いお酒も飲まず普段は車も運転しないので、その辺の「普通の人が容易にやってしまいかねない結構重たい罪」を犯すことはまずないので安心なんですけど、僕の話はともかくビザ申請に話を戻しますと、やはり、アルコール摂取からの不法行為は、日本よりもアメリカは厳しい気がするといいますか、個人的に驚いた点として、アメリカでは、
というのは、その辺ゆるゆるといいますか何の規制もない日本で育った身としては、「そうなの?!」とビックリすることでした。
一応州によって違いはあるそうですけど、ほとんどの州で路上飲酒は確実に違法だと思いますし、特別な許可を得たフェスや会場なんか以外では、完全に開かれた空間でお酒を飲むことは不可能だと思います。
(もちろんレストランのテラス席なんかでビールを飲むことはできるものの、厳密に敷地内限定になっているはずです。)
これはやっぱり、アルコールの酩酊状態が社会に与える影響が大きいからで、翻って、そこを守れない人は移民することに難色を示されるのは仕方がない点かとも思います。
…とはいえまぁ飲酒運転は一発アウトではないという法律事務所の見解もあったものの、それ以上に、どんなに軽微な刑でも犯してしまった時点でほぼ確実にアウト、下手したら移民ではなく観光目的でもアメリカ入国が断れる可能性大になる……というものは、やはり、ドラッグ関連だと思います。
改めて、僕は法律の専門家でも海外渡航のスペシャリストでも何でもないのであくまで印象論ですが、ドラッグ関連の犯罪歴があったら、残念ながらアメリカ移住は諦めなければいけないレベルになる印象が非常に強いです。
まぁ印象論だけでもあれですし、アメリカ移民局(USCIS)の公式見解を見ておきましょう。
こちら、Inadmissibillity and Waivers(不許可と免除)というPDFファイル(https://www.uscis.gov/sites/default/files/document/foia/Inadmissibillity_and_Waivers.pdf)の記述ですが…
2. Violation of any controlled substance law. Any violation of any laws, foreign or domestic, relating to illegal drugs can be a ground of inadmissibility.
(2. 規制薬物法違反。国内外を問わず、違法薬物に関する法律違反は、入国不許可事由となり得ます。)
こちらは2番目の項目ですけど、1番は「不道徳な犯罪は入国不許可対象」という一般的な宣言でしたが、その次に具体的な例として、まず薬物違反が挙げられていました。
一応、USCISが公開している不許可事由のウェイバー(免除)に関する判例を公開しているPDFファイルでは、
「唯一、マリファナ 30グラム以下の単回所持で有罪判決を受けた場合に限り、不許可免除となる可能性はある」
という決まりなんかも明示されていましたけど、それはあくまでも「例外条件として認められる可能性もある」という法令に過ぎず、この判例ファイルはそこを満たしていても結局「ウェイバー申請は却下となった」というものなので、やはりドラッグ関連はかなり厳しい道のりになっているようです。
(その「例外的に移民不許可のウェイバーが認められる条件」としては、「犯罪からの更生が見られる」のはもちろんのこと、「米国市民や永住者である親・配偶者・子に重大な困難が生じる」かつ「刑期が15年以上前に終了している」というかなり限定的なもののようで、これを満たさないと、微量のマリファナ所持の初犯でも認められないケースがあると示してくれているのが上記PDFですね。)
個人的には、もちろんドラッグの所持・利用は違法であり勧められるものではない(のみならず、酒もタバコもやらない僕は、自分では絶対にやることはないですが)、というのは間違いないのですが、しかし、
「それに一度でも手を出したらもう社会的に死にも等しい重罪人であり、抹殺しても良い非人間」
みたいな扱いは、それは絶対に違うんじゃないかな、と思えるため、僕自身は使ったことがある人を白い目で見たり差別したりは本当に全くありません。
(前もどこかの記事で書いていましたが、偉大な物理学者であるファインマンさんも著書で語っていた通り、「中毒で脳や身体機能に害が及ぶ可能性が高い」という点が僕のドラッグに手を出さない最大の理由であり、正直どんな感じなのか好奇心はありますし、やってみた方の経験談とかは非常に興味深いものだとすら思えます。)
とはいえもちろん「違法である」というルールはルールですし、それを守らなかったのを咎められるのは仕方ない面もあるとともに、こと移民受け入れに関しては、社会に混乱をもたらす可能性が極めて高いのは歴史を見ても、そして何気にアメリカの一部の地域では現在進行形で大きな問題になっているのからも明らかな通り否定しがたい事実ではあるので、ここが厳しいのは仕方ないのかなぁ、とも思えてしまいます。
なので、アメリカに入国したい・旅行したいと思っている方は、薬物関連の犯罪だけは何としても、絶対に避けなければいけないものであるということを、この機会に触れてみた形でした。
まぁ、「犯してもいい罪」なんてあまりないわけですけど(笑)、入国・移民に関してはドラッグは本当に尋常じゃなく厳しい目が向けられるのでご注意ください、という話ですね。
(ビザ免除プログラムのESTAも取得できなくなるので、移住のみならず、本当に数日のアメリカ旅行すら不可能になってしまうはずです。)