前回は「水系レクリエーション関連感染症」について見ていましたが、子供の頃によく聞いていたけれど大人になってからは聞かない気のする、懐かしい響きを持った「水疱瘡(みずぼうそう)」や「水いぼ」なんかは一切取り上げられていませんでした。
気になったので、水疱瘡(これも、正式名称は水痘(すいとう)ですが)を意味する英語「chickenpox(チキンポクス)」でクリーブランド・クリニックの記事を検索した所、当然疾患解説としてのHEALTH LIBRARY記事はヒットしてきましたが、やはりライブラリー記事は異様に長く、時間のない今はちょっと見てる暇がなかったため、より一般向け読み物系記事に当たるhealth essentialsシリーズの方で検索してみた所、意外なことにたった1記事しかヒットしてきませんでした。
それがこちら、水ぼうそうと帯状疱疹との関係について書かれたものですが(↓)…
…こちらはそこまで長くなく、今回も水遊びとの関係については書かれていないようではあるものの、帯状疱疹との関連も面白い点なので、せっかくですし今回はこちらを見ていくといたしましょう。
いいえ、水疱瘡に罹ったことがないならば、帯状疱疹に罹ることはありません(No, You Can’t Get Shingles if You’ve Never Had Chickenpox)
しかし、予防接種を受けていないなら、帯状疱疹の人から水疱瘡をうつされる可能性はあります
水疱瘡(※以下、より正式な医学用語で文字数も短い「水痘」とします)と帯状疱疹の関係は、最初は少し混乱します。なぜなら、水痘と帯状疱疹は同じウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)によって引き起こされるからです。また、両疾患に対するワクチンはどちらも現在利用可能ですが…どちらも特定のグループにのみ必要となっているからです。今回は、家庭医であるジェフリー・ブラウンDO(オステオパシー医師)に、「水痘の作用順序」についての説明をお願いしました。水痘と帯状疱疹から身を守るために、個人の病歴に応じて何をしなければならないかについて、ブラウン医師が情報を共有してくださいます。
水痘と帯状疱疹の関係
数十年前まではまだワクチンが存在せず、ほとんど全ての人が子供の頃に水痘に罹っていました。水痘は通過儀礼のようなものであり―遅かれ早かれ全ての子供に起こるものだったのです。実際に、「水痘パーティー」を開いて、わざと自分の子供をウイルスに感染させる親もかつては見られました。アメリカでは、40歳以上の約99%がこのウイルスに感染しています。
「通常、子供の頃に水痘にかかると、体はウイルスを撃退します」とブラウン医師が説明しています。「しかし、完全に身体から取り除かれるわけではないのです。水痘帯状疱疹ウイルスは、何年も何年も体内の神経の根元のどこかに潜伏し、静かにそこに留まっているのです。私たち医師はそれを潜伏期と呼んでいます。」
水痘に罹った人のほとんどは、ウイルスが再びその醜い頭をもたげることなく、一生を終えます。しかし、一定の割合―約10%―で、ウイルスが帯状疱疹として再活性化する方もいらっしゃるのです。
「帯状疱疹は、ほとんど水痘のようなもの: その続編と考えられます」とブラウン医師が話しています。これは同じウイルスですが、症状は少し異なります―そして、帯状疱疹は一般的に50歳以上の人を襲うため―より重症になり得るのです。
帯状疱疹は、帯状疱疹後神経痛(PHN)、脳の炎症(脳炎)、および細菌感染といった重篤な副作用を引き起こすケースもあります。そういった合併症は、70歳以上の方や免疫力が低下している方に起こりやすいです。
水痘は「1回きり」で終わりですが、それとは異なり、帯状疱疹は複数回罹る可能性があります―ちょうど、映画の続編が何本も存在し得るのと同じだと言えるものです。
ワクチンがどう状況を変えたのか
水痘と帯状疱疹は、かつては避けがたい存在でした。ほぼ全ての人が水痘に罹っていたのです。そして帯状疱疹は、誰もが振らなければいけないサイコロの目のようなものでした。
現在では、ワクチン開発のおかげで、どちらの症状も概ね予防可能となっています:
- ProQuad®(プロクアッド)とVarivax®(バリバックス)はいずれも水痘を予防します。
- Shingrix®(シングリックス)は帯状疱疹に対する最新のワクチンで、既に水痘に罹ったことのある50歳以上の全ての方に推奨されています。また、以前のワクチンはこれほど効果的ではなかったため、2020年にシングリックスが発売される前に帯状疱疹ワクチンを接種した方にも推奨されています。
これらのワクチンの登場は、水痘に罹ったことのない人がより多く登場してくるということを意味しています。これは素晴らしいニュースですね!しかし、どのワクチンが必要で、どのワクチンが必要でないかを見極めるのが難しくなる可能性もあります。
水痘の予防接種を受けたことがある(そして一度も罹ったことがない)方は、帯状疱疹ワクチンを心配する必要はありません、とブラウン医師が説明しています。
しかし、だからといって注意を完全に放棄していいというわけではありません。周りの誰かが病気になった場合、それでもまだブレイクスルー感染(※ワクチンを打っていても感染・発症してしまうこと。通常、自然感染よりも、症状は軽く発症期間も短くなる)から身を守る必要があります。これは自分自身の健康のためだけではありません: ワクチンを受けられない方にとっても重要なことなのです。
ブレイクスルー感染症から身を守る
水痘ワクチンを接種すると、90%以上の人がウイルスを避けることが可能となります。しかし―ワクチンは非常に効果的ですが―感染を100%防ぐものではありません。
つまり、身近な人が水痘や帯状疱疹に罹患した場合には、防御策を講じることが重要となるわけです。
「もし誰かが水痘や帯状疱疹に罹っていて、感染力を有す水疱のステージにある場合、その人があなたにウイルスを感染させ、あなたが水痘に罹る可能性があるわけです」とブラウン医師が述べています。
具体的には、水痘帯状疱疹ウイルスの主な感染拡大経路である水疱に触れないようにする必要があります、とブラウン医師が語っている通りです。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)はまた、水痘や帯状疱疹に罹った人が水疱を掻きむしったときに、ウイルス粒子を吸い込んでしまう可能性があることも付記しています。
運悪く水痘にブレイクスルー感染してしまった場合でも、安心してください: ワクチン接種を受けている方が水痘に感染した場合、ワクチン未接種の方に比べて症状が軽いことが多いです。ただし、帯状疱疹のワクチン接種は、50歳になってから―または既に50歳以上の場合―、水痘感染が落ち着いた後に受ける必要があることを覚えておくようにしてください。
結論
- 水痘に罹ったことがある方は帯状疱疹に罹るリスクがあるので、対象年齢に達したら帯状疱疹の予防接種を受けるべきです。
- 水痘の予防接種を受け、かつブレイクスルー感染症に罹患したことがない場合は、帯状疱疹の予防接種を受ける必要はありません。
- 水痘の予防接種を受け、ブレイクスルー感染症に罹ったことがある場合は、対象年齢に達した時点で帯状疱疹の予防接種を受けるべきです。
- 水痘に罹ったことがなく、水痘ワクチンを接種したことがない場合は、できるだけ早く水痘の予防接種を受けるべきです。どこかの時点で水痘にブレイクスルー感染しない限り、帯状疱疹ワクチンは必要ありません。
ワクチン接種の有無や免疫の有無にかかわらず、周囲の誰かが水痘や帯状疱疹に罹患している場合は、常に防護策を講じる必要があります。そうすることはあなた自身を守るだけではありません: 予防接種を受けていない方への感染拡大を防ぐことにもなるのです。
「一度罹ったら一生罹らない」として有名な水疱瘡ですが、実は帯状疱疹が発症するリスクはあるので、危険であることには変わらないんですね。
帯状疱疹は、発症中がとんでもなく痒みと痛みでキツいのは言うまでもなく、「表面的な症状が治ってからも、一生地獄の神経痛が続くことがある」と言われていますから(このウイルスは、症状がなくてもずっと体の中の神経のどこかに潜んでいるものなので、ある意味自然と言うか当然の話にも思えます。記事内でも、帯状疱疹後神経痛(PHN)として挙がっていました)、「言うてまぁ今時そんなの罹んないでしょ」とは思えるものの、やっぱり予防接種を打つに越したことはないのかもしれません。
…あっ!
今さら…というか冒頭の前置きを書いていた時点で気付いてたんですけど、そもそも水ぼうそうとか水イボって、「水」がつくから水遊びで感染するものだとか安易に思っちゃってましたが、これはウイルス性の病気なので、もちろんプールで感染することもあるものの、基本は空気感染で、全然「水遊びがメイン」ってわけでもなかったんですね、完璧に名前につられた思い違いをしてしまっていました!!
そりゃ前回の記事で特にこれらが取り上げられていなかったのも納得です。
(逆に、水は生物にとって理想の棲家ですから、微生物=細菌の感染が取り沙汰されていたのも自然な話で、非生物であるウイルスが出てこないのも当然だったわけですね。)
(ワクチン接種以外、あまり気を付けようもありませんが)どなた様もこの危険なウイルスにはぜひお気を付けてお過ごしください。
