前回の記事では鼓膜切開術という、耳にチューブを通して中耳の機能を復旧させるという素晴らしい技術を見ていましたが、そこで、似て非なるものとして、鼓膜を切開する手術(ただしチューブは入れない)であるmyringotomyというものが比較対象として挙げられており、普通にHEALTH LIBRARYの独立記事もあったんですけど…
…まぁパッと見、前回見ていたtympanostomyとの違いはチューブを入れるか否か程度に思えたので、これはもうスキップでいいかなと思っ……たものの、強烈に時間がない日が続いており、「似た内容だし下手したら丸々コピペでいけるんじゃないか…?」という邪な心が湧いてきたため、やっぱり見てみることにしてみました(笑)。
何気に前回のチューブ記事よりも若干長めだったので、わざわざ長いのを見る意味も…と思えたものの、逆に、チューブナシなのに長いということは、何か新しい知見があるのかもしれません。
ということで早速参りましょう。
(※色々調べても、やっぱり今回の技法も「鼓膜切開術」という日本語が割り当てられていることが多いんですけど、前回の手技との違いを出すため、こちらは「鼓膜穿孔術」という表記で行こうと思います。
…というかそもそも、前回の手法は「チューブを設置する」がメインなわけですし、そちらが「切開術」ではなく「鼓膜ストーマ手術」みたいな別の名前の方がいいのではないか…って気がしますね。)
鼓膜穿孔術(Myringotomy)
鼓膜穿孔術とは、鼓膜に対して行われる手術のことです。鼓膜に小さな切開を加えることで、中耳から液体が排出されるようになります。鼓膜穿孔術は、滲出性中耳炎(耳の中の液体)の治療として最も頻繁に推奨されるものです。平均して、鼓膜穿孔術からの回復には約4週間かかります。
概要
鼓膜穿孔術とは何?
鼓膜穿孔術とは、耳鼻咽喉科(ENT)の専門医が中耳の液体を排出するために行う手術です。鼓膜穿孔術は片耳に行うことも、両耳に行うこと(両耳鼓膜穿孔術)もあり得るものとなっています。
鼓膜穿孔術(myringotomy)と鼓膜切開術(tympanostomy)の違いは何?
鼓膜穿孔術では、担当の外科医が鼓膜に小さな穴を開けることになります。場合によっては、鼓膜切開術と呼ばれる付随手術も一緒に行うことがあるかもしれません。鼓膜切開術では、担当医が鼓膜穿孔術による切開部にイヤーチューブを留置します。イヤーチューブは、耳の中の圧力を均一化し、感染症の再発を防ぐのに役立つものです。
鼓膜穿孔術はいつ必要となるの?
鼓膜穿孔術が必要となるかもしれないのは、以下の症状を伴う小児や成人です:
- 頻繁な耳の感染症(急性中耳炎)
- 外傷、重度の感染症、または鼓膜破裂による耳出血
- 平衡感覚に問題を抱えている
- 難聴または音がくぐもって聴こえる
- 発語の遅れ(小児の場合)
- 耳性気圧外傷(気圧の変化による耳の痛み)
若い方ほど耳の感染症により罹りやすいため、ほとんどの鼓膜穿孔術は子供に対して行われます。しかし、多くの大人にも鼓膜穿孔術が必要です。気圧外傷は、成人が鼓膜穿孔術を受ける、最も一般的な理由です。
鼓膜穿孔術の目的は何?
鼓膜穿孔術の主な目的は、中耳に溜まっている液体を外に排出させることです。この液体は水であったり、血液であったり、膿であったりします。
手順の詳細
鼓膜穿孔術の前には何が行われる?
担当医が、耳鏡と呼ばれる器具を使って耳の検査を行います。聴力検査や血液検査も行われるかもしれませんし、鼓膜造影検査―鼓膜が圧力の変化にどの程度反応するかを測定する検査―も行われる可能性が高いでしょう。
担当医に、鼓膜穿孔術がご自身に適した手法だと判断された場合、術前の指示リストを受け取ることになります。一般的に、鼓膜穿孔手術当日の深夜0時以降は、何も食べたり飲んだりしてはいけません。また、信頼できる友人や家族に、診察の行き帰りのための運転手をお願いする必要がありましょう。
鼓膜穿孔術の施術中は何が行われる?
ほとんどの場合、鼓膜穿孔手術は、不快感をなくすために全身麻酔下で行われます。しかし、診察室で、局所麻酔が使用される場合もあるかもしれません。鼓膜穿孔手術では、鼓膜をはっきり見ることができるよう、担当の外科医が小さな拡大鏡を使うことになります。次に、鼓膜に小さな穴を開け、中耳から液体が排出されます。場合によっては、切開した部分にイヤーチューブ(鼓膜切開チューブ)を入れることで、鼓膜切開術を行うこともあります。このイヤーチューブによって、中耳からの排液の継続が可能となります。
切開部は自然に治癒するので、縫合する必要はありません。鼓膜穿孔手術が終わると、担当の外科医がガーゼで耳を覆ってくれることでしょう。手術開始から終了まで、鼓膜穿孔術の所要時間は約15~20分です。
鼓膜穿孔術は痛い?
鼓膜穿孔手術中の痛みは、麻酔によって防がれます。しかし、手術後に軽い痛みや不快感を感じることはあるかもしれません。不快感を和らげるために、市販の鎮痛剤を服用すると良いでしょう。また、担当医が痛み止めの点耳薬を処方することもあるかもしれません。全ての薬は、指示通りに服用することを心がけてください。
鼓膜穿孔術の後は何が行われる?
鼓膜穿孔手術後は、耳が詰まったように感じられるかもしれません。これは通常の副作用であり、聴力が改善するまでには数日かかることがあり得ます。
担当医から術後の詳しい指示リストが渡されることでしょう。回復を確実なものにするために、このガイドラインに忠実に従う必要があります。一般的には、以下をお心がけください:
- 全ての薬を完全に担当医の指示通りに服用すること
- ガーゼを定期的に交換すること
- 頭を水につけるのは避けること
- 入浴やシャワーを浴びるときは耳栓をすること
リスク/メリット
鼓膜穿孔術の利点は何?
鼓膜穿孔術には多くのメリットがあります。例えば、以下のようなことが可能です:
- 耳の感染症の頻度の減少
- 体液の滞留による難聴の回復
- 耳の痛みや圧迫感の緩和
- 平衡感覚の改善
- 子供の言語能力や学業成績の向上
鼓膜穿孔術のリスクや合併症は何?
他の外科手術と同様、鼓膜穿孔術にはいくつかのリスクが伴います。起こり得る合併症には以下が含まれます:
- 回復しない場合の、鼓膜への永久的な穴
- 聴力障害を引き起こす可能性がある、鼓膜の硬化
- 手術による外耳道の損傷
- 鼓膜の瘢痕化
- 過剰出血
- 感染症
- 慢性的な排膿
- 麻酔に対するアレルギー反応
回復と見通し
鼓膜穿孔術後の回復期間はどのくらいかかる?
ほとんどの患者さんは、4週間ほどで完全に回復します。イヤーチューブを入れた場合は、6~12ヵ月以内に自然に抜けるはずです。
いつ仕事や学校に復帰できる?
鼓膜穿孔術後、ほとんどの患者さんは1~2日で仕事や学校に戻ることが可能となるでしょう。通常の生活に戻っても安全な時期については、担当医にお尋ねください。
医師に連絡する時
いつ医療機関に連絡すべき?
最近鼓膜穿孔術を受けた方は、副作用に注意し続けることが肝要です。以下のような症状が現れたら、かかりつけの医療従事者にご連絡ください:
- 発熱や悪寒など、感染の兆候
- 薬で改善しない痛み
- 赤み、腫れ、または耳からの過度の出血や分泌物
- 聴力障害
- 吐き気および嘔吐
- 咳
- 息切れ
- 胸痛
クリーブランド・クリニックからのメモ
耳炎、鼓膜外傷、あるいは耳の中の液体が原因となるその他の症状に頻繁に見舞われる場合、鼓膜穿孔術で症状を和らげることが可能です。この一般的な手術法は、中耳から液体を排出し、痛み、感染症、および聴力障害などのリスクを軽減する一助となります。鼓膜穿孔術がご自身に適しているかどうか、かかりつけの医療従事者に相談してみてください。
…全く、これっぱかしも新しい知見はありませんでした(笑)。
しかも画像もなかったため、まるで何の意味もない記事でしょうもなさすぎましたけど(毎度、勝手に引用しておいて酷い言い草にも程がありますが(笑))せっかくなので、前回イラストしかなかったため、今回は(チューブを留置しない手術ではあるわけですが)実物のイヤーチューブの写真をお借りしてみようと思います。
検索したらトップに出てきました、ノースカロライナはグリーンズボロにあります、耳センターの記事に、大変分かりやすいものがありました。
これは内視鏡的なものによる鼓膜の写真だと思いますけど、本当にこんな青いチューブがすっぽりピッタリ収まるものなんですねぇ~。
さらに、色…はまぁ耳の中に入って見えないのでどうでもいいですけど(笑)、大小・形状も様々なものが、小児科医系の論文で紹介されていました。
他にもいくつかあったものの、フリーアクセスの記事ではないかもしれないので、1つだけの引用に留めておきましょう。
まぁ異物を入れずに済むならそれに越したことはないのかもしれませんけど、よく出来たもののようですし、せっかく(?)穴を開けるなら、チューブを入れて機能をより改善させるのも乙な気がします、「耳にこれを入れるよー、カッコいいね!」という感じで、子供が喜びそうなのも素晴らしいですね…!