ここ最近の記事では、幾多の脱線を経て耳のネタを見ており、鼓膜の話なんかに触れながら、ついでなんで前回は鼓膜破裂についての記事を垣間見ていました。
今回も、そこで取り上げられていたものから1つ、適度な短さであった読みやすそうな記事を参考にさせていただきましょう……それが記事タイトルにも挙げました、バロ・トラウマ!
…と言ってもそれは英単語をベタ読みしただけで、そんな日本語表記は普通しませんけど、とはいえそれぞれの単語要素の意味を考えれば何のことかは推測がつくものになっている感じでしょうか……
「バロ」は、「バロメーター」であまりにもおなじみと言えますが、「バロメーター」自体が「転じて、何かの調子の指標」みたいな感じで「そもそもバロメーターって何だ?」と思うものかもしれませんけど(笑)、これはズバリ、「気圧計」なんですね。
「メーター」が計測器なのは小学生でも知っていますから、「baro」ってのはズバリ、「気圧・重圧・重量」みたいな意味になります。
一方の「トラウマ」ですが、何気にこれもカタカナ語だと別の意味というか本義ではない方の意味=「心の傷・精神的に苦痛を覚えた体験」みたいな感じでしかないと思うのですがここではそういう意味ではないため、結局単語要素に分解してもよぉ分からんじゃん、って話だったかもしれませんけど(笑)…
…実はトラウマという語は、原義的には精神医学で使われる「辛い体験」という意味とは違い、皮膚が切れるとか、膜が破れるといった、「物理的な傷」、つまり「外傷」という意味なんですね。
伝統と信頼のメリアム・ウェブスター辞書(↓)も、TRAUMAという語の「1a」つまり第一義に、
- an injury (such as a wound) to living tissue caused by an extrinsic agent
(外因性の物質によって引き起こされる生体組織の損傷(傷など))
と定義しています。
(サイコロジー(心理)的な定義は、bとcに挙げられています。)
(スクショを撮ろうと思いましたが、リンクカードにそのまんま定義が表示されていたので、リンクカードの掲載にしておきました↓)
とはいえまぁ、古典的な医学用語のTRAUMAは「(物的)外傷」ですが、英語でも普通に、利用頻度的には「心的外傷」という我々日本人がイメージする「トラウマ」の方がメインらしく、利用頻度順で並んでいるであろう、Google検索トップに表示されるOxford辞書の定義(こちらはスクショにしてみました↓)では…
1番に、
- 深く心を痛める、あるいは心をかき乱されるような経験。
「子供の死のような個人的なトラウマ」
…が来て、続く2番に【MEDICINE (医学用語)】として、「physical injury(身体的外傷)」が来ている感じですね。
…って、こんなにゴタゴタ見る程の話でもなかったですけど(笑)、いずれにせよ今回の「バロ・トラウマ」はまさに医学用語の原義である「外傷」という意味であり、結局Barotraumaというのは、そのまんまその2語を並べた「気圧外傷」、より分かりやすくいえば、車で山を登ったり飛行機で高度が一気に変わった時に耳がツンとするアレが、特に酷くて怪我にまでなってしまった際に外傷となって現れることという、それだけの話でした。
ということで、現象自体はどなたも理解できる(というか経験されたことがある)であろうあの耳ツン、医学的にどんな話なのか、前置きが長くなり過ぎたので早速参りましょう。
気圧外傷(Barotrauma)
「気圧外傷」とは、気圧や水圧の急激または著しい変化によって引き起こされる病状の総称です。気圧外傷のほとんどは深刻なものではなく、治療しなくても症状は治まります。しかし、場合によっては生命を脅かすこともあるかもしれず、早急な治療が必要になることもあり得ます。
概要
気圧外傷とは何?
気圧外傷は、気圧(大気圧)や水圧の急激な変化が身体にダメージを与えた際に起こるものです。飛行機耳(耳損傷性気圧外傷)は、気圧外傷の一般的な例です。気圧外傷、特に肺に影響を及ぼす気圧外傷は、深刻な医学的問題となる可能性があります。
気圧外傷の例は何?
気圧外傷の例には、以下が含まれます:
耳性気圧外傷(飛行機耳)
このタイプは中耳に影響を及ぼします。耳性気圧外傷は、スキューバダイビングや飛行機での飛行中に起こり得るものです。耳性気圧外傷では、耳が詰まったように感じられ、聴こえにくくなることがあるかもしれません。稀に、気圧外傷は鼓膜破裂を引き起こすこともあります。
副鼻腔性気圧外傷(副鼻腔圧迫または気圧性副鼻腔炎)
気圧や水圧の突然あるいは極端な変化によって副鼻腔が圧迫され、痛むことがあり得ます。肺性気圧外傷と同様、副鼻腔性気圧外傷もスキューバダイビングと関連しています。
症状と原因
何が気圧外傷を引き起こすの?
気圧外傷は、気体の性質に関する17世紀の発見を象徴するものです。物理学者ロバート・ボイルは、酸素のような気体を含む物体にかかる圧力と、その気体が占める空間の大きさの関係を発見しました。
ボイルの法則では、気体―肺、副鼻腔、または耳の中の空気など―は、外圧が高くなると占める空間が小さくなります。外圧が下がると、気体はより多くの空間を占めるようになります。気圧外傷は、外気圧や水圧が、身体が安全に適応できる速度よりも速く変化したときに起こるものなわけです。
ボイルの法則は、飛行機に乗っている間、飛行機が飛び立つあるいは着陸し始める際、耳が綿で詰められたように感じ始めるときに展開されるものです。
耳が詰まったように感じるのは、気圧の急激な変化が、中耳と鼻の奥をつなぐ耳管に影響を与えるのがその理由になります。耳管は鼓膜にかかる圧力を調整し、鼓膜の両側に均等な圧力がかかるようにしてくれています。気圧が急激に変化すると、中耳にかかる圧力のバランスが崩れてしまうわけです。
気圧外傷の症状は何?
気圧や水圧の急激な変化が体の各部位にどのような影響を及ぼすかによって、症状は異なります。
耳性気圧外傷の症状
- 激しい耳の痛み
- めまい
- 吐き気および嘔吐
- 錯乱・混乱を感じる
肺性気圧外傷の症状
症状は根底にある原因によって異なります。例えば、スキューバダイビングをする方々は、水面まで泳ぎ上がる際に息を止めると肺圧抵抗を発症する可能性があります。そういった状況での症状としては、以下を含みます:
- 胸痛
- 息切れ(呼吸困難)
- 鼻血
- 口に血を含んだ泡が生じる
副鼻腔性気圧外傷の症状
- 顔面痛
- 頭痛
- 鼻血
- 鼻詰まり
診断と検査
気圧外傷はどう診断されるの?
診断は気圧外傷の種類によります。例えば、医療従事者は、耳性気圧外傷と肺性気圧外傷を診断するために異なる検査を行うことになるでしょう。
耳性気圧外傷の診断
医療従事者が身体検査を行うことになります。鼓膜の損傷や感染症、またはその他の問題の有無を調べるのに役立つ特殊な照明付き器具である、耳鏡で耳の中を見ることもあるかもしれません。また、以下を含むその他の検査を行うこともあり得ます:
- 磁気共鳴画像法(MRI)による内耳の観察
- 聴力検査
肺性気圧外傷の診断
身体検査に加えて、肺の損傷を評価するために胸部X線検査が指示されることがあるかもしれません。
副鼻腔性気圧外傷の診断
耳、鼻、のどを中心に身体検査が行われることになるでしょう。以下が含まれるかもしれません:
- 小さな照明付きの器具である内視鏡を使って、鼻の中を調べる。
- 副鼻腔の画像を得るために、コンピューター断層撮影(CT)スキャンを行う。
管理と治療
気圧外傷の治療法は何?
治療は気圧外傷のタイプによって異なります。例えば、耳性気圧外傷では、治療の必要は一切ないかもしれません。しかし、肺性気圧外傷ではほとんどの場合、治療が必要になります。
- 耳性気圧外傷: かかりつけの医療従事者が、うっ血除去剤を処方することがあるかもしれません。鼓膜が破れた場合は、破れた鼓膜を塞ぐために、鼓膜形成術と呼ばれる手術が必要になることもあり得ます。
- 肺性気圧外傷: 治療は状況によって異なります。ほとんどの場合、酸素療法と安静が必要です。肺性気圧外傷が肺に深刻なダメージを与えている場合は、手術を含む他の治療が必要になることもあるかもしれません。
- 副鼻腔性気圧外傷: 医療従事者がうっ血除去剤を処方することがあり得ます。
予防
気圧外傷は予防できるの?
はい、ほとんどの場合、気圧外傷を防ぐことが可能です:
- 飛行機に乗る場合は、専用の耳栓をお買い求めください。ガムを噛む、鼻をかむ、およびあくびをすることは、気圧の変化によるダメージから耳を守るのに役立つその他の方法です。
- スキューバダイビングをする場合は、耳、肺、副鼻腔性の気圧外傷を避けるため、安全なダイビング習慣に従ってください。ダイバーズ・アラート・ネットワーク (DAN)のような団体が、健康と安全のガイドラインに関する一連のコースや情報を提供することで、ダイビングの安全性を促進するお手伝いをしてくれています。
見通し/予後
気圧外傷になった場合、何が予期される?
予後や予期される結果に関しては、ご自身の置かれた状況次第です。例えば、飛行機耳であれば、治療の必要は何もないかもしれません。しかし、鼓膜が損傷してしまった場合は、手術が必要になるかもしれません。この病態は種々様々であるため、医療従事者が最善の情報源となります。何が予期できるかについて、教えてくれることでしょう。
受け入れる
セルフケアはどうすればよい?
気圧外傷は、幅広い病状をカバーしています。中にはより深刻なものもあります。健康に影響を及ぼす可能性があるかもしれないレベルで気圧や水圧の著しい変化を経験された場合は、かかりつけの医療機関にご連絡ください。
クリーブランド・クリニックからのメモ
気圧外傷は、気圧かつ/または水圧の変化に体が十分な速さで適応できない場合に起こります。飛行機での飛行中やスキューバダイビング中に気圧外傷を発症することがあり得ます。気圧外傷は、特に肺に影響が現れた場合、深刻な医学的問題になる可能性があります。良いニュースとしては、飛行機での飛行やダイビング探検の計画を立てることで、気圧外傷から身を守ることが可能になるということが挙げられましょう。
僕はそんなに飛行機にも乗らないし、スキューバは全くやったこともないのであまり縁がないものの、しかしそういえば、移動中はほぼ常にイヤホンで音楽を聴いているからか、通勤してすぐぐらいのタイミングで極稀に、話すと何というか自分の声がくぐもると言いますか、変な感じで響くことがあることを思い出しました。
別に喋れなくなるわけでもなく、気が付いたら治ってることが多いんですけど、なった場合は数分間、いわゆる「耳を抜く」的な、内耳に力を入れたりあくびっぽいことをしたりしても一向に治らず、ちょっと喋りにくい感じが続いてしまうので、やや不便ではありますねぇ(本当にたまにしかならないのが幸いですが)。
とはいえこれは気圧外傷という程でもなく…というかむしろ、耳管の障害の一種なのかもしれません。
ちょうど検索したら耳管の機能障害に関する程よい長さの記事がヒットしてきたため、正直絶対「ガムを噛もう、あくびをしよう」という今回と全く同じな、そこまで抜本的ではない対策法しか挙げられてない無意味記事の予感しかしないものの(笑)、せっかくなので次回は実際自分がたまに困っているそちらの症状のHEALTH LIBRARY記事を見てみようかなと思います。