前回はバルサルバ手技とかいう、耳ツン状態を治すための手法…かと思いきや心臓のリズムを整えるのが主目的だった意外なものを見ていましたが、鼓膜関連ネタには他にもいくつか気になるものがあたので、今回もそちらを見てみようと思います。
こちらも、前々回・前々々回と見ていた耳管記事で出て来ていたもので、「耳管は英語だとそのまんま直訳のear tubeではないんですね(発見者由来の、eustachian tube)」とか言いつつ、何気に記事内に「ear tube」が出て来て驚いていたんですけど、それはもちろん人体の耳管ではなく、人工的に耳に通すチューブのことを指しているようで、これはどんなものなのか気になりますねぇ~。
…まぁ本当は言うほど気にならないですけど(笑)、例によって記事水増しのために参考にさせていただきましょう、どうやらこれは特に鼓膜切開の際に登場するもののようですね。
ear tubeと並んで「tympanostomy」という語も記事タイトルにありますが、「ティンパニ」は楽器でもおなじみ、太鼓を意味する言葉で医療用語だと「鼓膜」、そして「stomy」は「stoma」が由来で、普通に医療用語としてカタカナでもストーマ(ストマ)は使われますけど、原義としてはギリシャ語で「口」を意味する言葉のようで、「小孔・出口・穴」といった意味合いになり、合わせ技で「鼓膜切開術」という手術を意味しています。
イラストですが、チューブもどんなものなのか表示されていました、早速参りましょう。
鼓膜切開術(耳用のチューブ)(Tympanostomy (Ear Tubes))
鼓膜切開術とは、耳用のチューブ(※「耳用チューブ」というのも変な気がするので、以下「イヤーチューブ」と表記しようと思います)を入れる手術です。イヤーチューブとは、鼓膜に挿入する小さな中空の筒のことです。慢性的な中耳炎や、治療抵抗性のある感染症を持つ子供や大人によく用いられます。
概要
鼓膜切開とは何?
鼓膜切開(Tympanostomy=tuhm-puh-NAA-stuh-mee(タァム・プ・ナ・スタァ・ミー)と発音します)とは、耳鼻咽喉科の専門医(ENT)がイヤーチューブを設置するために行う手術です。鼓膜切開は、時に、イヤーチューブ手術と呼ばれることもあります。
イヤーチューブとは何?
イヤーチューブとは、鼓膜に挿入するための、プラスチックや金属でできた小さな中空の円筒です。
(※Middle ear=中耳、Ear canal=外耳道、Eardrum=鼓膜、Fluid draining=液体の排出、Infection / inflammation=感染/炎症)
鼓膜切開はどのくらい一般的なの?
鼓膜切開は、小児で最も一般的な手術のひとつです。それほど一般的ではありませんが、大人でも耳にチューブを入れることはあり得ます。
なぜ耳にチューブを入れるの?
イヤーチューブは、中耳の感染症(急性中耳炎)に複数回かかったことのある子供に最もよく挿入されるものです。また、3ヶ月以上続く中耳の液体滞留(滲出液)の治療にも用いられます。
成人では、イヤーチューブは気圧外傷―気圧の変化によって痛みを伴う症状―の治療に最も一般的に用いられています。イヤーチューブは耳から液体を排出するだけでなく、中耳に液体が溜まるのを防ぐために空気を取り入れてもくれるものです。
こういった症状が治療されないと、発語障害や永続的な難聴のような、より大きな問題につながる可能性があります。
鼓膜切開術(tympanostomy)と鼓膜穿孔術(myringotomy)の違いは何?
(※日本語ではどちらも「鼓膜切開術」と表記されることも多いようですが、分かりやすくするために後者を穴開けがメインっぽい「穿孔術」と表記しようと思います。)
鼓膜穿孔術は、鼓膜を切開(カット)して中耳から余分な液体を排出させるものです。時に、鼓膜穿孔術は単独で行われることもあります。しかし、しばしば鼓膜切開術と組み合わせて行われることが多いもので、鼓膜切開術は、鼓膜チューブを鼓膜に挿入する術式のことです。
手順の詳細
鼓膜切開術の準備はどうすればよい?
担当の外科医が、イヤーチューブ手術の当日に予期されることについてお話しします。ご自身の病歴の詳細を調べ上げ、受診の前に服薬を中止する必要があるかどうかを伝えてくれることでしょう。ほとんどの場合、手術の数時間前から絶食する必要があります。
イヤーチューブ手術はどう行われるの?
イヤーチューブ手術は通常、全身麻酔下で行われます。成人の場合、状況によっては局所麻酔下で行われることもあるかもしれません。
手術中は:
- 担当医が鼓膜を小さく切開します。
- 中耳に溜まっている液体を排出または吸引除去します。
- その後、鼓膜を切開した部分にイヤーチューブを挿入します。これにより、耳から液体が排出されるようになります。
いくつかの症例では、特に過去に鼓膜切開術を受けたことがある方の場合、担当医がアデノイド切除術(アデノイドの除去)も一緒に行うことがあるかもしれません。アデノイドは口蓋の上、鼻の奥にある組織です。免疫系の一部であり、ウイルスや細菌から体を守る手助けをしています。アデノイドを除去することで、将来的にイヤーチューブ手術が必要になるのを防ぐことができる可能性があります。
イヤーチューブ手術は、手術室またはかかりつけの医療機関の診察室で行われます。手術時間は通常15分以内です―また、外来手術なので、その日の内に帰宅できます。
イヤーチューブ手術の後は何が予期される?
イヤーチューブ手術後は、休憩室でしばらく過ごすことになります。手術や麻酔により、意識が朦朧として吐き気を催すことを含む、何らかの副作用が出る可能性もなくはありません。
手術後、担当医が、問題はないか様子を確認してくれることでしょう。感染症の治療のために、抗生物質入りの点耳薬が処方されるかもしれません。さらに、水泳やシャワーといった特定の活動時には、耳栓の着用が推奨されることもありましょう。
手術後、担当医が数ヶ月に一度、チューブを確認し、機能していることを確かめるための検診を行うことになります。聴力検査も勧められるかもしれません。
チューブはどのくらいの期間、耳の中に入れることになるの?
通常、鼓膜がイヤーチューブの周りを囲うように閉じることになるので、チューブは所定の位置に保たれ、早期に抜け落ちることはありません。ほとんどの場合、イヤーチューブは9~18ヶ月で自然に抜け落ちます。イヤーチューブが2年以内に抜けない場合は、担当医が耳管除去術を行うことになるかもしれません。
リスク/メリット
鼓膜切開の利点は何?
鼓膜切開には、以下を含む顕著なメリットがあります:
耳にチューブを入れることによる副作用は何?
どのような手術にも言えることですが、イヤーチューブ手術にも合併症があり得ます。これには以下が含まれます:
- チューブが抜けた後、鼓膜の穴が塞がらない。この場合、別の手術で穴を修復しなければなりません。
- 多発性の耳炎またはイヤーチューブ手術そのものが原因で起こる、鼓膜の瘢痕化。
- イヤーチューブ手術の後でも、耳の感染が繰り返し再発する。
- イヤーチューブが早期に抜けるか、あるいは全く抜けない。
- 耳漏と呼ばれる状態(耳から絶えず液体が排出される状態)。
- 何度かのイヤーチューブ手術の後、鼓膜が縮んだり硬くなったりするかもしれない。
- 耳垢が溜まることで、イヤーチューブが詰まるかもしれない。
回復と見通し
イヤーチューブ手術の回復にはどのくらい時間がかかる?
ほとんどの患者さんは、1~2日で良くなります。この間、軽い痛みを感じることがあるかもしれません。不快感への対処には、市販の鎮痛剤を服用してください。
いつ仕事や学校に復帰できる?
ほとんどの患者さんは、イヤーチューブ手術の24時間後には仕事、学校、およびその他の日常生活を再開することが可能です。
医師に連絡する時
いつ医療機関に連絡すべき?
イヤーチューブ手術後、以下のような症状が現れたら、医療機関に連絡すべきです:
- 薬を飲んでも治らない耳の痛み
- 発熱や悪寒
- 耳からの出血
- 最初の数日後でも続く、耳からの排液の増加
クリーブランド・クリニックからのメモ
ご自身またはお子様が慢性的な耳の問題―感染症、耳の痛み、または聴力の問題など―をお抱えの場合、鼓膜切開術が役に立つかもしれません。この一般的な手術は、外耳と中耳の間を開けて気圧を均等にし、余分な液体が排出されるようにしてくれるものです。イヤーチューブがご自身またはお子様に適しているかどうか、かかりつけの医療従事者に相談してみてください。
まさに鼓膜を貫通する普通のチューブというか筒で笑えましたが、設置後は、早く抜けすぎてもいけないし、いつまで経っても抜けないのもまた困りもの…という難儀なものにも思えましたけど、上手く中耳の液体を排出できない際は、極めて効果的な優れものともいえる感じですね。
圧倒的に子供で多く使われるものとのことで、僕も幼い頃耳鼻科はよく行きましたけど、そういえば治療後なのでしょうか、片耳にガーゼや耳当てをしている子は沢山いた気がしますね。
(まぁ、必ずしもチューブ設置の耳当てではないと思いますが(というか、耳の内部で完結しているので、むしろ外から見えるようなものではないとも言えるものの)、でも「最も一般的な手術のひとつ」とのことですし、手術直後は子供が指を突っ込まないように、保護されるものではないかと思います。)
大人では滅多に必要なさそうなものではあるものの、これは素晴らしい人類の叡智といえそうです、AIの力で「もう不要になったら自動で外れる」みたいな、より便利なものの登場を願いたい限りです。