それでは予告通り、前回見ていた耳管が正常じゃない状態、Eustachian Tube DysfunctionでETDとも略されるようですが、耳管機能障害について見て行こうと思います。
「dys-(dis-)」というのは否定の接頭辞で、いつの頃からか使われ出した日本語「ディスる」は、「disrespect」(ディスリスペクト=リスペクトしない=敬意に欠ける、無礼を働く」という意味から来た言葉になるわけですけど、今回のdysfunctionは言うまでもなく「ファンクションしない」という意味から「機能障害」や「機能不全」と訳されるものですね。
こないだから何度か書いている通り、僕はたま~に喋っているときに声が脳内で響くというか変な感じにくぐもる・こもる感じになることがありまして(家からイヤホンで音楽を聴きながら出勤し、その日初めて喋るタイミングとかが多い気がします。一瞬で治るとはいえ、一連の会話をしている数分の間は、どうやっても中々治らない感じです)、まぁそんな症状をお抱えの方はあまりいないかもしれませんけど、どうやら原因は耳管にありそうで、個人的に大変気になります。
早速参りましょう。
耳管機能障害(Eustachian Tube Dysfunction)
耳管機能障害とは、中耳と喉の上部とをつなぐ耳管がブロックされてしまっている状態です。これにより、不快感、聴力障害、および耳詰まり感が生じ得ます。耳管機能障害は通常、数日で自然に治ります。しかし、そうならない場合は、治療を受けることが肝心です。
概要
耳管機能障害とは何?
耳管(eustachian=「you-stay-shee-un(ユウ・ステイ・シー・アン)」と発音します)とは、中耳を喉の奥へとつなげているものです(中耳とは、鼓膜のすぐ後ろにある、空気で満たされた小部屋のことです)。耳管は気圧を均等にし、耳から体液を排出する一助を担っています。耳管が詰まった状態は、耳管機能障害(ETD)と呼ばれます。
耳管機能障害はどんな人が影響を受けるの?
耳管機能障害はあらゆる年齢の人に起こり得ますが、より一般的に見られるのは子供です。大局的な視点で見ると、成人人口の約1%が耳管機能障害と診断されています。一方、子供の約70%は、7歳までに耳管機能障害を発症します。
耳管機能障害にはどんなタイプがあるの?
耳管機能障害にはいくつか異なるタイプがあります。最も一般的なものとしては、耳管開放症、閉塞性耳管機能障害、バロ・チャレンジ誘発性耳管機能障害が挙げられます。
- 耳管開放症(開放性ETD): 耳管が常に開いている状態です。これにより、音が鼻腔から耳へと伝わり、声が歪むことがあり得ます。
- 閉塞性耳管機能障害(閉塞性ETD):耳管が本来なるべき形で開きません。その結果、液体が溜まり、耳の痛みや圧迫感が引き起こされます。
- バロ・チャレンジ誘発性耳管機能障害(バロ誘発性ETD): 閉塞性耳管機能障害と同様、バロ・チャレンジ誘発性耳管機能障害も耳管が正しく開かない場合に起こるものです。違いは、バロ誘発性ETDの症状は、高度の変化を経験したときにのみ起こるというものになります。
症状と原因
耳管機能障害の兆候や症状は何?
耳管機能障害の患者さんは、いくつかの警告サインを経験されることがあるかもしれません。一般的な耳管機能障害の症状は以下の通りです:
- 聴力障害
- 耳鳴り
- クリック音や破裂音
- 耳詰まり感
- 耳炎に似た痛み
- ふらつき、(回転性)めまい、または平衡感覚障害
- 耳の中の「くすぐったい」感覚
耳管機能障害の症状は、高地で悪化することがあり得ます。これは気圧外傷と呼ばれ、スキューバダイビング、飛行機での移動中、あるいは山での運転中に起こる可能性があるものです。
何が耳管機能障害を引き起こすの?
アレルギーや感染症(風邪やインフルエンザなど)は、耳管機能障害の最も一般的な原因です。こういった症状は炎症や粘液の蓄積を引き起こし、閉塞につながります。GERDあるいは慢性的な酸の逆流も、耳管機能障害の原因となり得ます。胃酸が喉に逆流し、炎症を引き起こす可能性があるというのがその理由です。上述のように、高度の変化もETDの原因となり得ます。
診断と検査
耳管機能不全はどう診断されるの?
担当の医療従事者がご自身の症状を尋ね、耳を診察することになります。耳管、鼻腔、および喉の奥を調べられることでしょう。
管理と治療
一般的な耳管機能障害の治療法には何がある?
ほとんどの場合、耳管機能障害は自然に治ることが多いため、治療は必要ありません。しかし、症状が2週間以上に長引く場合は、治療が必要なことがあるかもしれません。
耳管機能障害の治療は、原因や症状の深刻さによって異なります。治療には、家庭療法、薬物療法、または重度の場合は手術が含まれるかもしれません。
家庭療法
耳管機能障害の軽症例では、時に、簡単な家庭療法が役に立つことがあり得ます。詰まりを解消するには、以下をお試しください:
- ガムを噛む
- あくびをする
- 飲み込む
- バルサルバ手技(口を閉じて鼻の穴をつまみながら力強く息を吐く)を試す
- 生理食塩水スプレーで鼻腔を洗浄する
赤ちゃんがETDだと思ったら、おしゃぶりや哺乳瓶を与えてください。吸う動作が詰まりを取り除くのに役立つかもしれません。
薬物療法
アレルギーが耳管機能障害を引き起こしている場合は、市販薬が役立ちます。症状を和らげるために、抗ヒスタミン薬(セチリジンやジフェンヒドラミンなど)をお試しください。不快感がある場合は、鎮痛剤―アセトアミノフェンやイブプロフェンなど―が効果的な可能性があります。
感染症がETDの原因である場合、担当医が抗生物質を処方することがあるかもしれません。また、炎症を抑えるためにコルチコステロイド(副腎皮質ステロイド)が処方されることもあり得ます。
手術
慢性的な耳管機能障害には、手術が必要なことがあるかもしれません。この治療の目的は、耳管をバイパスして、中耳の換気の問題に対処することです。これにより、聴力障害やその他の症状が回復します。手術には以下を含むいくつかの選択肢があります:
- 鼓膜切開術。この手術では、担当の外科医が、中耳の液体を排出するために鼓膜を小さく切開します。成人の場合、切開は通常、耳管の腫れがひくのに十分な期間行われ、開いたままになります。
- 圧平衡チューブ。時々、切開した際に外科医が鼓膜にチューブを挿入することもあります。このチューブによって、1年間程度は適切な中耳の換気が行われます。チューブを留置している間は、水泳や入浴時に耳栓をすることを推奨する外科医もいます。典型的には、時間の経過とともにチューブが押し出され、鼓膜は回復します。しかし、チューブは必ずしもあるべき場所に必要なだけ長く留まるとは限らず、再度の留置が必要になることもあるかもしれません。
- 耳管形成術(耳管バルーン拡張術)。このより新しい方法では、耳管をバルーンで拡張します。担当の外科医が、内視鏡器具を使用して、バルーンを鼻腔から耳管に通します。バルーンは2分間膨らませた後、しぼませて取り出されます。
耳管機能障害の治療から回復するまでにかかる時間はどのくらい?
耳管機能障害の手術を受けた場合、回復にかかる時間は、どのタイプの治療を受けたかによって異なり得ます。鼓膜切開を受けた方は、通常3~4週間で回復します。チューブを留置した場合は、およそ12~18ヵ月間そのままにしておく必要があります。耳管形成術を受けた方は、通常約24時間で回復します。
予防
耳管機能障害は予防できるの?
ETDを完全に予防することはできませんが、リスクを減らすためにできることはあります。例えば:
- 飛行機耳のリスクを減らすために、飛行機に乗る前に特殊な耳栓を着用する。
- 耳に関する問題を悪化させる可能性のある、極端な気温は避ける。
- 粘液を薄く保つため、水をたくさん飲む。
見通し/予後
耳管機能障害になった場合、何が予期される?
良いニュースとしては、通常、耳管機能障害は深刻ではないということが挙げられます。しかし、関連する症状は煩わしく、不便なものである可能性があります。症状を管理し、生活の質(QOL)を向上させる方法を学ぶために、かかりつけの医療従事者に相談してみてください。
耳管機能障害はどのくらい続くの?
通常、耳管機能障害は1~2週間で治まります。慢性の耳管機能障害の場合は、数週間、数ヶ月、あるいは数年間症状が長引くこともあるかもしれません。
耳管機能障害を治療せず放置するとどうなる?
慢性の耳管機能障害は、耳の怪我や外傷とつながっています。耳管機能障害を治療せずにいると、稀に、難聴や、鼓膜もしくは中耳の永久的な損傷を引き起こすことがあり得ます。そのため、迅速な治療が必要なのです。
受け入れる
いつ医療機関を受診すべき?
耳管機能不全が激しい痛みを引き起こす場合、または症状が2週間以上続く場合は、医療機関に予約を入れてください。
クリーブランド・クリニックからのメモ
耳管機能障害(ETD)は通常、深刻ではありません。しかし、症状が数週間長引いて、治療せずに放置すると、難聴、耳鳴り、または鼓膜や中耳へのダメージといった、深刻な健康問題につながる可能性があります。1~2週間経っても症状が治まらない場合は、かかりつけの医療機関を受診することが肝心です。医療従事者が、症状の原因を突き止め、適切な治療提案のお手伝いをしてくれますよ。
時間不足につき、予定アップ時刻を少し過ぎてしまいました。
そんな急いでいる時に限って画像もなかったのですが、どうも僕の悩まされている「声が響く、というかこもる」(表現するのも難しいんですけど、「片方の耳だけ、あくびをしながら話す感じ(まぁそれも何かイメージしづらいというか、ちょっと違いますけど(笑))」ですかね)状態は、記事内でも挙げられていた「耳管開放症」が原因かな、と思えるので(逆に、閉じっぱなしになってしまうのも、それはそれでむしろより深刻な症状ではあるわけですが)、耳管開放症の症例画像を検索してみた所、耳管がそれぞれ開いた状態・閉じた状態の内視鏡画像がアイオワ大学病院の記事でヒットしてきたため、こちらをお借りさせていただこうと思います。
左が閉じた状態の耳管で、右が開いた状態の耳管だそうで、これが本来閉じるべき状況でも右のように開きっぱなしになってしまうのが、声が頭の中でくぐもる原因のようですけど…まぁこんな写真見ても何も分かんないっすね(笑)(正直、開いてんのか閉じてんのかすら、よぉ分かりません(笑))。
前回見ていた対処法などを、今度症状に見舞われた時には試してみようと思います。