ここ最近は、乱視や弱視や複視といった視覚異常の話を見ていましたが、今回はまた、その辺で何度か出ていた気になる症例の方をチェックしてみようと思います。
正直そんなに気になるわけでも、そこまで短い記事でもなかったので、自分でも「なぜわざわざこんな記事を…?」とも思えたのですが、まぁ目のお話は身近ですし、分かりやすい特徴のありそうな症例のようなので、いざ自分がなった時にピンと来るよう、まとめておくのもいいかなと思った次第です。
(まぁ、いざ実際になったとしたら、普通にその時検索して調べるだけだと思いますけどね(笑)。)
今回は、日本語では円錐角膜、英語では1語の専門用語でkeratoconus、より日常的な表現では、cone shape cornea(コーンの形の角膜)って感じで表されるやつですね。
例によって語源に触れておくと、「kerato-」は、ケラチンと同源の語だと思いますが、ギリシャ語でhorn(ツノ)という本義から、そのまんまcornea(角膜)という意味も持つもののようで、後半の「conus」はラテン語で(これは英語でもほぼそのまんまといえる)cone(コーン、錐体)という意味ですから、今回も普通に「角膜・円錐」という、古典語に造詣のあるネイティブなら見たまんまどういう症状か分かりやすいネーミングとなっている感じだといえましょう。
(まぁ「コーン上の角」でもあるので、「どんな症状だよ」と思える可能性もありますけど(笑))
それでは今回もクリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事を参考にさせていただこうと思います。
円錐角膜(Keratoconus)
角膜の形が変わり、ドームというよりむしろ円錐形に近くなると、多くの場合視力が鋭く低下します。治療法は、眼鏡やコンタクトレンズから角膜移植まで様々です。ほとんどの場合、円錐角膜にははっきりとした原因はありません。
概要
円錐角膜とは何?
円錐角膜とは、通常は丸みを帯びた形の角膜が、外側に膨らんで円錐状になる目の症状です。角膜は、目の前面にある、透明な中心部分です。角膜は眼球を保護し、明瞭な視界を得るために焦点を合わせる一助を担っています。keratoconusは、care-ah-ta-KO-nus(※この説明とは少しズレますが、カタカナにすると「ケェラァトゥ・コゥナス」が近い気がしますね)と発音します。
通常、眼科医は10代または20~30代の方に円錐角膜を見出しますが、小児期から始まることもあり得ます。場合によっては、それ以降の年齢で軽度の円錐角膜と診断されることもあります。角膜の形状の変化は数年かけて起こりますが、若い人ほど急速に起こります。
円錐角膜は視覚にどんな影響を与えるの?
円錐角膜は2つの方法で視覚を変化させます:
- 角膜が円錐形に変化していくにつれ、滑らかな表面も歪んでいきます。これを不正乱視といいます。眼鏡では不正乱視を完全に矯正することはできません。
- 角膜の前面が急勾配になるにつれ、目はより近視になっていきます。結果として、より頻繁に新しい眼鏡が必要になるかもしれません。
円錐角膜はどのくらい一般的なの?
推定によれば、円錐角膜は10万人中50~200人に発症すると言われています。
症状と原因
円錐角膜の症状は何?
円錐角膜の主な症状には以下が含まれます:
- 片眼または両眼の視力が徐々に悪化する。(一般的に、円錐角膜は両眼に影響を及ぼします。)
- 片眼だけで物を見たときに複視を発症する。
- 明るい光の周りにハロー(光の周辺の輪)が見える。
- 光に敏感になる。(この過敏症のことを、羞明(光恐怖症)といいます。)
- 視野が徐々に歪んでくる。視野が歪むと、直線が曲がったり傾いたりして見えたり、物が正しい形に見えなくなったりします。
何が円錐角膜を引き起こすの?
円錐角膜の原因は大部分が不明です。いくつかの研究によると、円錐角膜は遺伝的に伝わるもので、特定の病状を持つ方々に多く発生することが分かっています。
ほとんどの場合、円錐角膜につながるような目の怪我や病気はありません。円錐角膜の方は目をよくこする傾向があり、そのために症状が急速に進行してしまうことはあるかもしれません。
どんな症状が円錐角膜と関連してるの?
円錐角膜は、慢性的に目をこすることと関連している可能性のある、特定の疾患と結び付いています。こういった疾患には以下が含まれます:
円錐角膜の合併症は何?
円錐角膜の合併症として考えられるものには以下が含まれます:
- 角膜瘢痕: 角膜に傷ができます。
- 角膜水腫: 角膜が突然液体で腫れます。
- フライシャー輪: 鉄の沈着により角膜に輪ができます。
- 視力低下: 視力低下は軽度から重度なものまであり得ます。
診断と検査
円錐角膜はどう診断されるの?
担当の眼科医がまず、ご自身の病歴や家族歴、それから症状について尋ねてくることでしょう。その後、総合的な眼科検査が行われます。また、以下の検査が1つ以上行われることもあるかもしれません:
- 視力検査: この検査には、スネレン視力表と、明瞭な視界を得るための正しい処方を見つけるのに役立つ器具(視鏡)を通して見るものとが含まれます。
- 細隙灯検査: 明るい光と顕微鏡を組み合わせた検査です。
- 角膜測定: 角膜の形状と乱視を測定します。
- 角膜マッピング(トモグラフィー(断層撮影)とトポグラフィー): この検査は目の表面のカーブを測定し、角膜の「マップ」を作成します。円錐角膜はこの検査でわかります。
管理と治療
円錐角膜はどう治療されるの?
円錐角膜の治療には、症状の程度によっていくつかの方法があります。担当の眼科医が、こういった治療法の内、必要があるとすればどれが役に立ち得るかを判断する手助けをしてくれましょう。治療法には、眼鏡、コンタクトレンズ、埋め込み型リングセグメント、角膜クロスリンキング、および角膜移植があります。
眼鏡とコンタクトレンズによる円錐角膜の治療
この疾患の初期段階では、通常の眼鏡やソフトコンタクトレンズで視力を矯正することが可能です。円錐角膜が悪化すると、不正乱視の度合いが大きくなるため、眼鏡では視力が矯正できなくなることがあります。特殊なハードコンタクトレンズが必要になることもあるかもしれません。
角膜クロスリンキングによる円錐角膜の治療
角膜クロスリンキングとは、円錐角膜の悪化を遅らせたり止めたりすることを可能とする、紫外線(UV)を用いた治療法です。この施術では、局所麻酔を受けることになります。リボフラビン(ビタミンB2)を含む薬剤が30分間ほど点眼されます。その後、目に紫外線が30分間ほど照射されます。角膜クロスリンキングの目的は、角膜のコラーゲン線維と周囲のタンパク質の間の結合を強化することです。これにより、角膜の形状が鋭くなるのを防ぐ一助となり得ます。
埋め込み型リングセグメント(INTACS)による円錐角膜治療
INTACS®は、視力を改善したり、コンタクトレンズを装着しやすくするために、眼科医が角膜に挿入する小さな器具です。この施術は局所麻酔(眼を麻痺させる点眼薬)をしながら行われます。その後、角膜に溝を作り、そこにリングが挿入されます。このリングは角膜を平らにし、円錐角膜が引き起こす円錐形を部分的に矯正するのに役立ちます。
角膜移植による円錐角膜の治療
円錐角膜が進行している場合、担当医が角膜移植を勧めてくることがあるかもしれません。角膜移植は、病気の角膜をドナーの方から供与された角膜組織と置き換えるものです。通常、円錐角膜の人は移植後に視力が改善しますが、視力が安定するまで1年以上かかることもあり得ます。最良の視界を得るために、移植後も特殊なコンタクトレンズが必要になる方も中にはいらっしゃいます。
円錐角膜の治療にはどんな合併症や副作用がある?
角膜クロスリンキングで起こり得る合併症には以下が含まれます:
- 目の痛みや炎症
- ドライアイ
- 円錐角膜の悪化
- 感染
INTACSで起こり得る合併症には以下が含まれます:
- 感染
- グレア(暗い所で光が滲んだり眩しく感じたりする現象)やハローの問題
- 角膜薄化
角膜移植に関連する可能性のある合併症には以下が含まれます:
- 角膜移植片の拒絶反応
- 感染
- 緑内障
眼鏡やコンタクトレンズによる合併症や副作用の可能性は、稀ではありますが起こり得るものです。目に充血や不快感がある場合は、かかりつけの医療機関にお知らせください。
円錐角膜の治療から回復するまでどのくらいの時間がかかる?
円錐角膜治療の回復時間は、治療の種類によって異なります。治療によっては数日かかることもありますし、もっと長い場合もあり得ます。
予防
円錐角膜は予防できるの?
いいえ、円錐角膜を予防することはできません。円錐角膜に関連する疾患をお持ちの方は、出来る限り目をこすらないようにすることでリスクを減らすことはできるかもしれません。
見通し/予後
円錐角膜になった場合、何が考えられる?
治療をすることにより、円錐角膜の方の見通しは良好です。
それぞれの目で視力や処方が異なる場合、バランスの問題に直面するかもしれません。これについては、眼科医にご相談ください。解決策を見つける手助けをしてくれることでしょう。
人は皆それぞれ違います。進行しない軽度の円錐角膜の方もいらっしゃいます。中には進行する方もいらっしゃいます。それぞれのケースで何が起こるかは、誰にも予測できません。
円錐角膜は視力を損ない得るの?
未治療の円錐角膜は永久的な視力低下につながる可能性があります。角膜の変化によって、眼鏡や標準的なソフトコンタクトレンズの有無にかかわらず、目の焦点が合いにくくなってしまうのです。
さらに、レーシックのようなレーザー視力矯正手術を受ける場合、この手術は円錐角膜を悪化させる可能性があるため、危険となり得ます。この類の手術を考えている場合、担当の眼科医は、ご自身が円錐角膜の予備軍であるかどうかを検査することでしょう。少しでも円錐角膜がある場合は、眼科医に特に勧められない限り、レーシックを受けるべきではありません。
受け入れる
いつ医療機関を受診すべき?
視覚に変化があったときは、必ずかかりつけの眼科医に連絡してください。円錐角膜の場合は、定期的に医療機関を受診する必要があります。予約受診を続けるようにしましょう。
救急救命室にはいつ行くべき?
以下のような場合、救急治療室(ER)に行ってください:
- 突然視力が低下した。
- 激しい目の痛みがある。
- 最近眼科手術を受けて、今現在、発熱や目からの分泌物といった、感染の徴候がある。
円錐角膜について、医師にどんな質問をすべき?
担当医に、以下のような質問をするとよいでしょう:
- 私の家系に遺伝的な円錐角膜の基盤があると思いますか?
- 何らかの遺伝子検査を受けるべきでしょうか?
- 私は臨床試験を受ける資格がありますか?
- どのくらいの頻度で眼科を受診すべきですか?
- 緊急事態と考えられるような出来事はありますか?
- 円錐角膜のサポートグループをご存知ですか?
その他のよくある質問
円錐角膜があっても普通の生活はできる?
円錐角膜は視力に影響を与えますが、充実した生活を送ることを妨げるものではありません。
円錐角膜になると、法的に盲目になる?
一般的に、円錐角膜になったからといって、法的に盲目になるわけではありません。しかし、より進行した円錐角膜の場合、視力低下が法的な失明にあたるほど深刻になることはあり得るかもしれません。
クリーブランド・クリニックからのメモ
円錐角膜のような目の病気は心配になるものですが、担当の眼科医がついてくれています。円錐角膜には治療法があります。担当医が、最善の治療法を一緒に探してくれることでしょう。知識は味方ですから、必ず質問をして、ご自身の状態や、ベストな人生を送るために必要なことあるいは望んでいることについて、自由にご相談ください。
分かりやすい症例ですね。
イラストでも伝わってくるものでしたが、せっかくなので実際の症例写真をお借りしてみましょう。
こちら慶應病院のサイトに、患者さんの写真が掲載されていました。
これは……出っ張っているのが結構明らかですね!
放っておくとより飛び出てしまうこともあるようなので、気が付いたら眼科にかかるようにしたい限りです(幸い、若い人の方がなりやすく、年を取った人にはあまり見られないもののようですが、絶対にないわけではないみたいですしね)。