前回見ていた乱視記事にも面白そうなネタがたっぷりあったものの、どれもなかなかボリューミーな記事だったので(そこまで長すぎはせず、今まで見た中でもっと長いものはいくつもありましたが)、今回は乱視とともにこないだの眼瞼下垂記事で登場していた、弱視について見て行こうと思います(↓)。
「弱視」も、日本語なら読んで字のごとく……と思いきや、視力が弱いのとはまた少し違うものなのでどういうものなのかは追って記事で見て行きたい所ですが、英語だと専門用語と言える、乱視=Astigmatismと似ていなくもない(って、「最初がA」以外そこまで似てはいませんが(笑))、Amblyopiaというこれまた謎めいた単語となっているようです。
こちらの語源は、ギリシャ語でAmblysが「dull」(この語は、まぁ「鈍い」がドンピシャではあるものの、意味的には「ダルい」という同じ音で表せる感じでもあり、日英偶然の一致という感じがしますね)、一方、opsが「vision」(「op-」という接頭辞は医学英語ではおなじみで、「目」や「光学の」という意味ですね。以前まとめた一覧(↓)にも出てきていましたが…
…個人的には、高校時代に使っていたコンタクトレンズの洗浄液「オプティ・フリー」なんかでおなじみだったので、「op(t/ht/s)」が「目」系の語だという印象は強いです)ということで、まさに「ダル・ビジョン」という意味になり、語源さえ掴めば「弱視」であるのも納得ですね。
なお、より日常的な表現としては、最初に貼ったリンクカードにもあります通り、「Lazy eye」とも呼ばれるようで、こないだの記事では別名であることを分かりやすくするために「怠眼」と書いていた気がしますが、まぁそんな表現をする一般症状は存在せず僕が勝手に書いていただけなので、どちらも日本語では「弱視」と呼ばれる感じですね。
それでは弱視がどんなものか、今回もHEALTH LIBRARY記事を翻訳引用させていただこうと思います。
弱視(Amblyopia (Lazy Eye))
弱視は、子供の目の発達に何らかの影響が加わった際に引き起こされる、片方の目がぼやけて見えてしまう状態です。脳が弱い方の目を無視するようになるため、弱視の方の目の位置がずれてしまいます。弱視は、子供に見られる視覚の問題の内で、最も一般的なものです。稀ですが、弱視が両目に同時に影響することもあります。
概要
弱視とは何?
弱視は、両目を使ってはっきり物を見る能力に影響を及ぼす目の症状です。通常、乳幼児期に発症するもので、治療を受けないと、時間の経過とともに悪化する可能性ががあります。
子供が弱視になると、片方の目がぼやけ、もう片方の目ははっきり見える状態になります。脳はぼやけた方の目を無視し始め、はっきり見える方の目だけで物を見るようになってしまいます。脳が強い方の目をより頼りにするようになることで、弱い方の目の視力は時間とともに更に低下していきます。弱視は深刻な医学的問題であり、眼科専門医による治療が必要です。
弱視は時折、「lazy eye」または「lazy vision」と呼ばれることがあります。これらの呼び名は一般的ですが、正しい用語ではありません。弱視の子供は、怠け癖があるわけではありませんし、目が怠け者であるわけでも全くありません。目がぼやけることを選んだわけではありませんし、その子が何かしてしまったことが原因でもないのです。
弱視はどのくらい一般的?
弱視は、子供が視力を落とす理由で最も一般的なものです。15歳未満の子供の約5%がこの病気に罹っています。
症状と原因
弱視の症状は何?
お子様が弱視かどうかを見分けるのは、必ずしも簡単なことではありません。ほとんどの子供は、医療機関や眼科専門医が目の検査をするまで、弱視と診断されません。
もしお子様に弱視の症状があると気付くことがあれば、恐らくお子様の、周りの物や空間との接し方に変化が見られることでしょう。弱視の子どもは、以下の可能性があります:
- 物にぶつかる(特に体の片側)
- 体の片側を好む
- 片目をつぶったり、よく目を細めたりする
- 頭を頻繁に片側に傾ける
- 寄り目である
- 眼瞼下垂がある
弱視はどのように見えるの?
弱視の場合、お子様の目に物理的な見た目の違いは見られないかもしれません。弱視を患っている側の目は、強い方の目と一直線に並んでいないことがあるかもしれません―中心がずれて見えたり、見ている方向と違う方向に流れているように見えるかもしれないということです。
何が弱視を引き起こすの?
弱視は、お子様の目と、見ているものへの焦点の合わせ方との間に、何か違いが生じたときに起こります。弱視の最も一般的な原因は、以下を含む、他の視覚の異常や目の構造的な問題です:
屈折異常
屈折異常とは、視界をぼやけさせてしまう、目の自然な形または焦点を合わせる能力に何らかの異常があることです。お子様の屈折異常がすぐに治療されないと、弱視になってしまう可能性があります。弱視につながる子供の屈折異常には、以下が含まれます:
- 遠くが見えにくい目(近視)―遠くのものを見ることに問題を抱えます
- 近くが見えにくい目(遠視)―近くのものを見ることに問題を抱えます
- 乱視(楕円形の角膜)
斜視
斜視(寄り目)は、目と目が一直線に並んでいない場合に起こるものです。通常、両目は同時に動きます。お子様の片方の目がもう片方の目と一致せずに動くと、脳が片方の目を頼りにし始めてしまうことがあるかもしれません。
構造的な目の症状
お子様の目の機能に影響を与える以下のような症状は、ぼやけた視界の原因となり、弱視につながる可能性があります:
- 眼瞼下垂症―片方のまぶたが眼球の一部を遮るほど垂れ下がっている場合は特にです
- 白内障―目の水晶体(レンズ)が濁っています
- 角膜(目の前側の透明な部分)の問題
弱視の危険因子
どんな子供でも弱視になる可能性があります。弱視になりやすい要因には、以下が含まれます:
- 生物学的な家族に、目や視覚に問題のある人がいる
- 発達の遅れ
- 早産(妊娠37週未満で生まれること)
- 低出生体重児(5ポンド8オンスまたは2500グラム未満で生まれること)
弱視の合併症は何?
弱視を治療しなければ、お子様の視覚に永久的な影響を与える可能性があります。良いニュースとしては、弱視は早期に治療すれば元に戻るということが挙げられます。
診断と検査
弱視はどう診断されるの?
医療従事者または眼科専門医が弱視を診断します。眼科医は、定期検診の際に、全ての子供に対し弱視のスクリーニング(選別)を行います。眼科医が、お子様の目(目の中を含む)を検査してくれるわけです。担当の眼科医が、お子様がどの程度物を良く見えているかについて検査してくれることでしょう。また、お子様の正しい目の機能に影響を及ぼしているものがないかも調べてくれます。
ご家庭で症状に気付かれる前に、医療従事者に弱視と診断されることがよくあります。弱視と診断された子供のほとんどは、幼すぎて、医療従事者が気付く前に、視力が低下していることや視力が変化していることを周りに伝えることができないのです。お子様の顔の位置取りや、周りの物との接し方に何か変化をお気付きになられたら、かかりつけの医療機関あるいは眼科専門医にお伝えください。
管理と治療
弱視の治療法は何?
担当の眼科専門医が、お子様の脳が、弱い方の目を使って物を見ることができるようにすることで、弱視を治療してくれます。これにより、お子様の脳と両目の結びつきとが修復および強化され、弱視が矯正されるわけです。
最も一般的な弱視の治療法には、以下が含まれます:
- 眼帯をする: 「弱視を治すために、弱い方の目を覆う形の眼帯をする」というのは、よくある誤解になります。実際はその逆です。お子様は、少なくとも1日に数時間は、強い方の目を覆う眼帯を装着することになります。強い方の目からの視覚を遮断することで、お子様の脳が、弱い方の目から入ったイメージを使ってものを見るようになるわけです。これはまた、弱い方の目を強化することにもなっています。
- 眼鏡: 眼鏡をかけることで、弱視の原因となる屈折異常を矯正することが可能です。ひとたびお子様の視力が改善すれば、脳は両目を使って見るように戻るかもしれません。眼鏡と他の治療が同時に必要になる場合もあり得ます。
- 薬用点眼薬: 担当の眼科専門医が、お子様の強い目に薬用点眼薬(通常はアトロピン)を差すことがあるかもしれません。この薬は一時的にその目をぼやけさせ、脳が弱い方の目を使って物を見るように仕向けます。この目薬は安全で、お子様の強い方の目の視力に永久的な影響を与えることは決してありません。
- 弱視手術: 弱視の矯正に手術が必要になることは稀です。もしも白内障や、手術以外の治療法では治せないその他の構造上の問題がある場合は、手術が必要になることがあるかもしれません。担当の眼科専門医が、お子様に必要な手術の種類と何が予期されるかについて教えてくれることでしょう。
ほとんどの子供は、少なくとも数ヶ月間は弱視の治療が必要です。どの治療が必要であっても、担当の眼科専門医が指示する限り、その治療を続けるよう、お子様を励ましてやってください。
子供にとって、目や視覚の変化に慣れるのは大変なことであり、特に弱視の治療が必要な場合は余計にそうでしょう。眼帯や眼鏡をかけたり、目薬を使ったりすることがなぜ大切なのかを、お子様に教えてあげてください。治療に専念していることにご褒美をあげ、弱い方の目を本来必要なだけ頻繁に使えるよう励ましてあげましょう。お子様(またはご両親)が時々落胆してしまうことは問題ありません。大切なのは、視力向上のために一緒に努力してあげることなのです。
目の体操で弱視を治すことはできるの?
目の体操が弱視を治療したり矯正したりできるという証拠はありません。担当の眼科専門医が、お子様に、眼帯をしたり薬入りの点眼薬を差しながら、特定の作業(ゲームをしたり、パズルを解くなど)をするように勧めてくることがあるかもしれません。こういった活動は、脳と弱い方の目の間のつながりを強化するのに役立つものです。弱視を矯正する特定の運動や眼球運動はありません。
予防
子供が弱視になるのを予防することはできる?
弱視や、その原因となるその他の視力の問題を予防することはできません。お子様の目と視力のためにご両親ができる最善のことは、定期的に検査を受けさせてやることです。
見通し/予後
子供が弱視の場合、何が予期され得る?
弱視は、早期に診断されれば、非常に治療しやすい病気です。早期に治療を開始した弱視の子供は、視力が改善し、長期的な影響が少なくなる可能性が非常に高くなります。
担当の眼科専門医が、お子様の視力をできるだけ改善する治療法を提案してくれることでしょう。眼鏡やコンタクトレンズのような視力矯正レンズが、生涯必要になることはあるかもしれません。
子供が成長して弱視じゃなくなることはある?
いいえ、弱視が自然に根治し、子供が成長に伴って脱却できるようになることはありません。弱視を治療しなければ、影響を受けた側の目が失明するなど、永久的な視力障害を引き起こす可能性があります。
受け入れる
子供の目の検査はどのくらいの頻度で受けさせるべき?
お子様の目と視力を定期的にチェックすることで、眼科専門医が問題をすぐに見つけることが可能となります。小児科医に、就学前までは子供の健診の度に、その後は1~2年ごとに目の検査をしてもらいましょう。
いつ医療機関を受診すべき?
お子様の様子に異変を感じたら、特にお子様の目がよく見えない、あるいは全く見えてないかもしれないとお気付きになられた場合、直ちに医療機関または眼科専門医を受診してください。お子様が体のどちらか一方をより好むようになっている、あるいは動き回っているときに自信がなさそうにしているように見える場合は、担当医にお伝えください。
担当医にどんな質問をすべき?
その他のよくある質問
弱視は年齢とともに悪化するの?
弱視は治療可能ですが、子供が幼い内に治療しないと、永久的な視力障害を引き起こす可能性があります。
10代や成人でも弱視を治療することは可能ですが、治療には時間がかかり、効果も低くなってしまうのが普通です。
お子様の目に何か身体的な変化があることに気付いたり、あるいはお子様が目を細めたり、首を傾げたり、片目を頻繁に閉じたりするようであれば、医療機関や眼科専門医を受診してください。
クリーブランド・クリニックからのメモ
弱視は、子供の視力に影響を与える一般的な問題です。弱視のことをlazy eyeと呼ぶ人もいますが、決してlazy(怠けている)ではありません。どうかお忘れなく:弱視は予防できない病気であり、お子様やお子様の目に怠け癖は一切ないのです。
弱視を早期に発見する最善の方法は、定期的な視力検査です。かかりつけの医療機関に、全体健康診断でお子様の目をチェックすることを尋ねてみてください。担当の医療従事者や眼科専門医が、弱視を矯正し、お子様の視力をできるだけ回復させる治療法を提案してくれますよ。
そう、弱視というのは、特に子どもに見られる、主に片方の目だけが強くぼやけてしまうという症状だったんですね。
添付のイラストでも示唆されていましたが、斜視とも強いつながりのある症状のようです。
斜視も興味深いお話なので、次回はそちらを見てみようかなと思います。