一連のキモネタ(胆ネタ)シリーズ、胆嚢、胆道系、胆管、さらに前回は胆汁まで見たところで、「胆なんちゃら」というものはネタ切れになった感じです。
正直気になる医療用語なんて無限にあるので、このまんまだと一生クリ・クリ記事を翻訳し続けるだけマンになりそうですが(笑)、ネタ不足ではありますし、何だかんだ役に立つ豆知識は得られている気もしますから、もっと時間ができて新しいネタを思いつくまでは、クリーブランド・クリニックに甘え続けようかなと思います。
そんな訳で今回も、最近の記事で登場していた気になる用語に脱線してみるわけですが、今回は何度か登場していた、ERCP、略さずに書くと大変長い、内視鏡的逆行性胆管膵管造影という、簡単にいえば胆管向けの内視鏡検査というものを見ていくといたしましょう。
まぁ内視鏡はこないだも膀胱鏡検査を見ていましたし(↓)…
…部位が違うだけで似たようなもんな気もすると言いますか、正味そないどんなものか気になるもんでもないですけど(笑)、いつ石ができて必要になるかも分かりませんし、せっかくなので参考にさせていただこうと思います。
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)(Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)
ERCPを行う間、医療従事者は、膵管や胆管内を移動する注射用色素を観察するために、内視鏡とX線を使用します。ERCPは、胆石、腫瘍、狭窄といった、胆管に関連する疾患の特定と診断に役立ちます。内視鏡を通して、処置中にそれらを治療することも可能です。
概要
ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)とは何?
胆道系に問題があるかもしれないと医療従事者に疑われた場合、それを調べるためにERCP検査を指示されることがあるかもしれません。ERCPとは、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査の略です。医療従事者が胆管や膵管の中を観察することができる、画像検査の一種です。
この長い名称は、このプロセスに関わる様々な異なる種類の技術を表しています。「Endoscopic」とは内視鏡検査のことで、チューブについた小さなカメラを(鎮静剤を使用しながら)喉から小腸に通すことを意味しています。胆管に到達するために、内視鏡を介してより細いチューブが通されます。
この細いチューブを通して、造影剤を胆管と膵管に逆向きに注入します。これが「retrograde(逆行性)」の意味になるわけです。「Cholangiopancreatography(胆管膵管造影)」とは、撮影する写真を指しています。「Cholangio」は「胆管に関するもの」、「Pancreato」は「膵臓に関するもの」という意味です。
造影剤を使うと、小さな胆管や膵管の内部がX線でより良く写るようになります。これにより、医療従事者は、胆管の閉塞の可能性―胆石、腫瘍、あるいは瘢痕組織が管を狭くしているような状態―を確認することが可能となるのです。内視鏡を通して、医療従事者はこれらの問題を目で見て治療することも可能となっています。
なぜERCPが必要となるの?
以下のような胆道系の問題を示唆する症状がある場合、担当医がERCPを勧めてくるかもしれません:
- 原因不明の上腹部痛や胆道疝痛
- 黄疸のように、胆汁の流れが止まっていたり、あるいは胆汁が漏れていたりする徴候がある場合
ERCP検査は、胆道に影響を及ぼす以下のような一般的な問題の診断と治療に役立ち得ます:
- 炎症(胆管炎)や、感染かもしれない状態
- 瘢痕組織による狭窄(胆道狭窄)
- 総胆管内の胆石
- 胆石性膵炎
- 胆管内の腫瘍やガン
- 胆管の漏れやその他の損傷
検査の詳細
ERCPはどう働くの?
ERCPは内視鏡検査とX線照射の一種である透視検査とを組み合わせたものです。X線透視検査は、体液が胆道の中でどの程度滞りなく流れているかを示すのに役立ち得ます。体液が漏れていたり、胆道系で滞って逆流している場合、担当医がこれを確認し、問題の原因を探り当てることが可能です。
内視鏡によって、担当の技師(内視鏡専門医)は物理的にその部位にアクセスすることができます。これが、透視検査を可能にする造影剤を注入する方法です。また、問題を発見したときに治療することも可能にしています。内視鏡技師は、内視鏡を通してちょっとした処置を行うために、細長い道具を使うことが可能です。
ERCPは誰が行うの?
典型的には、消化器専門医がERCPを行います。消化器専門医は、胆道系を含む消化器系に関する疾患の専門家です。また、内視鏡検査実施の専門家でもあります。小規模手術の代わりとなり得る内視鏡処置を行うための訓練を受けている方々です。
ERCP検査の準備はどうすべき?
検査の前に、担当医から個別に指示があることでしょう。一般的には以下のことをお願いされます:
- 検査の8時間前から、喫煙、食事、ガムを噛むこと、および水以外の飲み物を飲むことの一切をしないこと。
- 現在の病状や服用している薬について、事前に担当医と話し合っておくこと。抗凝結剤といったものは、検査前に服用を中止するよう指示される場合もあるかもしれません。
- 検査で使用する造影剤や麻酔に対する反応やアレルギーの既往歴について話し合っておくこと。
- 検査終了後、家までの送迎を手配すること。麻酔が切れるまで24時間かかります。
ERCP検査の間は何が起こる?
ERCPは外来処置で、これはつまりその日の内に帰宅できるということです。処置には1~2時間かかり得ます。麻酔するために、点滴で鎮静剤が投与されることでしょう。覚醒している場合も覚醒していない場合もあり得ますが、いずれにせよ、ほぼ間違いなく何も覚えていないことになります。終了後は、誰かに家まで送ってもらうことが必要です。
ERCP処置の診断部分では、担当医が以下のことを行っていきます:
- 希望があれば、不快感を軽減するために液体麻酔薬で喉を麻痺させる。
- 口から内視鏡を挿入し、慎重に食道(esophagus)と胃(stomach)を経て、小腸(intestine)の上部(十二指腸)まで誘導していく。内視鏡はスクリーンに映像として映し出されます。
- 映像を見ながら、十二指腸内の胆管と膵管の開口部を探す。
- 内視鏡カテーテルに細いチューブを通し、この開口部まで到達させ、その後、内側にスライドさせる。この細いカテーテルから胆管に造影剤が注入されます。
- 造影剤が管内を通過する際に、X線透視装置を使用してリアルタイムのビデオX線を撮影する。X線透視検査は、短時間のX線パルスによって行われます。これは安全な放射線量と考えられています。
- これらの映像から、閉塞、腫脹、漏出のような、管に影響を及ぼす問題がないかを確認する。
内視鏡検査中に問題が見つかった場合、担当医は微小器具を使い、内視鏡を通してその問題を解決することが可能です。担当の内視鏡医が以下のことを行うかもしれません:
- 胆石を砕いて取り除く
- 生検のために、腫瘍や組織サンプルを取り除く
- 狭くなった管を拡張したり伸ばしたりして広げる
- 胆管を開いた状態に保つため、胆管内にステントを留置する
- 管の漏れや損傷を修復する
- 管の開口部を取り囲む筋肉に小さな切り込みを入れ、管を開く。これは括約筋切開術と呼ばれています。
ERCP処置後は何を考えるべき?
処置後、麻酔が切れるまで1~2時間医療センターに留まることになるでしょう。その後、運転してくれる方に、ご自宅まで連れて行ってもらうことが可能です。その後は1日中、少し意識が朦朧としたり、ぼんやりしたりすることでしょう。術後1~2日は軽い不快感があるかもしれません。症状には以下のようなものがあり得ます:
- 喉の痛みや飲み込みにくさ。内視鏡が喉を刺激していた可能性があります。喉が正常になるまで、柔らかい食べ物や水分を摂ることが助けになりましょう。
- 胃の膨満感やガスの痛み。内視鏡は消化管(胃腸)を見やすくするために、消化管にガスを吹き込んで膨らませます。この痛みを短時間(ガスが通りすぎるまで)感じることがあるかもしれません。
- 吐き気。これは麻酔の副作用の可能性があり、翌日には消えます。
ERCPの潜在的なリスクや合併症は何?
合併症はERCPのおよそ5~10%で起こります。そのリスクは、ご自身の既往症やERCP中にどのような治療を行うかによって異なります。担当の消化器専門医が潜在的なリスクについて事前に説明してくれることでしょう。可能性のある合併症は以下が含まれます:
- 鎮静剤に対する副反応。肺や心臓に持病をお持ちの場合、心肺合併症を引き起こす可能性があります。
- 造影剤に対するアレルギー反応。これが起きた場合、担当医が迅速に薬を投与して反応を止めます。
- 内視鏡による消化管の損傷。内出血を起こしたり、ひどい場合は穴が開いたりする可能性もなくはありません。
- 内視鏡器具からの胆管の損傷で、胆汁漏れを起こすこと。
- 胆道系の感染。これを防ぐために、担当医が事前に抗生物質を処方することがあるかもしれません。
- 処置による膵臓の痛みや炎症。
処置中に妊娠されていても、X線透視中の放射線が胎児に害を及ぼすリスクは低いです。担当医が事前に妊娠している可能性があるかどうかを尋ねてくることでしょう。その場合、必要であれば、手術の日程を変更するか、放射線被曝を最小限に抑える試みをしてくれます。
結果とフォローアップ
検査結果はいつ分かるはず?
担当の内視鏡医は、患者さんがまだ麻酔でグッタリしていない限り、ERCPの処置について、処置直後に話し合うことが可能なはずです。検査で何が見つかり、そのために何ができたかを教えてくれることでしょう。生検のために組織を採取した場合は、結果が出るまで数週間かかることがあるかもしれません。
ERCPで何も見つからなかった場合、次は別の種類の検査が必要になるかもしれません。もしERCPが問題解決につながらなかったり、生検の結果新たな問題が見つかったりした場合は、別の処置でのフォローアップが必要になるかもしれません。担当医が、次のステップについて話し合ってくれることでしょう。
いつ医療機関に連絡すべき?
ERCP後に、以下のような重篤な症状や異常な症状が現れた場合は、かかりつけの医療機関に連絡してください:
- 激しい腹痛や腫れ
- 胸の痛みや呼吸困難
- 発熱、嘔吐、またはその他感染の徴候
- 直腸出血や黒いタール状の便
その他のよくある質問
ERCPと内視鏡検査の違いは何?
ERCPは内視鏡検査の発展的な高度技術です。標準的な上部内視鏡検査(食道胃十二指腸内視鏡検査)では、上部消化管までしか到達できません。ERCPでは、標準的な内視鏡の延長部分―1本目の内視鏡の内側にスライドする2本目のカテーテル―を用いて、胆管まで到達するのです。
このミニ内視鏡での延長により、内視鏡医が胆管を直接手術することが可能となっています。ERCPはこれが可能な唯一の内視鏡検査です。MRCPやEUSのような他の内視鏡検査では、胆管や膵管を可視化することはできますが、同じように胆管や膵管を治療することはできません。
ERCPは大規模手術なの?
ERCPは、皮膚を切開して臓器にアクセスするという従来の意味では、手術ではありません。ERCPは内視鏡による処置であり、これは、既存の開口部―この場合は喉―から体内に入っていくものなのです。しかし、ERCPでは、内視鏡医が内視鏡を通して手術を行うこともあり得ます。
医療従事者は時々、内視鏡を使った処置を内視鏡手術と呼ぶことがあります。こういった処置は、体内を切ったり縫ったりするという意味では外科的なものです。しかし、一般的には軽微な処置であり、古典的な手術よりもリスクが少なく、回復も短くて済みます。
膵炎のためにERCPを受けることはある?
胆管や膵管の何かが膵炎を引き起こしていると担当医が考える場合、膵炎のためにERCPを受けることはあるかもしれません。胆管に詰まった胆石は、急性膵炎の最も一般的な原因の一つです。これが起こってしまった場合、閉塞を取り除くためにERCPが必要なこともあるかもしれません。
慢性膵炎の場合、炎症が膵管の瘢痕化と狭窄を引き起こしている可能性があります。この場合、ERCPで膵管を再び伸ばすか、ステントを留置して膵管を開く必要があるかもしれません。これは、膵液が管を通って流れ続けることを確実なものにするのに役立ちます。
クリーブランド・クリニックからのメモ
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査は、治療的処置へと移行することが可能な診断的検査です。標準的な画像検査よりは少し侵襲的ですが、外科的処置よりは低侵襲的で、一度に両方の目的を達成することが可能となります。ほとんどの方は、許容可能なものであり、また行う価値のあるものだと感じています。
「造影」というだけあって、単純な内視鏡検査ではなく、X線も用いる高級な技術だったんですね。
しかし、まぁ胃カメラなので当たり前ですが、イラストにもあった通り、口から内視鏡を突っ込んで、食道から胃を経て、あんな体の中にまで行ってさらにミニスコープがウィーンと出てくるの、凄いっちゃ凄いですけど、見てるだけで嘔吐き(えずき)そうな大変さがありますねぇ~。
もちろん今の技術なら痛みはほぼないに等しいようですし、古典的な外科手術よりは遥かに体を傷つけないのも間違いないですけど、やはり内視鏡丸飲み未経験者としては、なるべく胃カメラを飲まなくても済む健康体でありたい限りです。