地図状舌、口腔カンジダ、そして前回の白板症と、舌に白いものが付着することにつながる疾患について見ていましたが、改めて、基本的には危険な症状ではないというのが白い舌でした。
続いて別の色の舌の個別記事もせっかくだから見ていこうと思っているわけですが、ここ最近の記事で他にも興味深い舌の症状の話が目に付いたので、まずはそっちに脱線してみようかなと思います。
今回は、地図状舌の記事で挙げられていました、舌に一本…のみならず、時には何本もの亀裂が生じる、溝状舌!
まぁ「亀裂舌」と呼ばれることもあるようですけど、医学用語としては「溝状舌(こうじょうぜつ)」というのが一番一般的に用いられているような印象ですね。
↑のリンクカードのサムネイルでは小さくてあまり分かりませんが、大きな写真で見ると「うわぁこれはズタズタじゃん、痛そう!」と思えるものですけれども、パッと概要を流し見した限り、こちらも特に危険なサインではないということで、見た目ほどの問題はなさそうなもののようです。
何か原因や対処法はあるのか、今回もHEALTH LIBRARY記事を参考にさせていただきましょう。
溝状(亀裂)舌(Fissured Tongue)
溝状舌は、舌の表面に溝ができる良性の状態です。地図状舌やメルカーソン・ローゼンタール症候群、あるいはダウン症のような疾患がある場合、この症状がより出やすくなります。しかし、この亀裂自体は無害です。口腔衛生をしっかりすることで、溝状舌が口臭などの問題を引き起こすのを防ぐことが可能となります。
概要
溝状舌とは何?
溝状舌とは、舌の表面に畝のような溝が生じる、無害な状態のことです。乳頭と呼ばれる舌表面のごく小さな隆起を除いて、ほとんどの舌は平らで滑らかです。通常、溝や亀裂はありません。
舌の見た目が普通と違う(または舌の見た目に変化がある)場合、それは何か問題を示している可能性があります。しかし、溝状舌の場合はそうではありません。舌の見た目が変わっても、それは普通とみなせる範囲の、あくまで健康的なバリエーションに過ぎません。治療が必要な病気というわけではないのです。
溝状舌の他の名称には、lingua plicata(※lingua=医学用語で「舌(ぜつ)」、plicata=ラテン語で「ひだ・折り目のある」という意味の、植物や貝の学名でも使われている語)、furrowed tongue(※furrowed=「畝立てされた」という、畑でよく使われる語)、scrotal tongue(※scrotal=「陰嚢」で、要は男性のあの部分と同じ名称という、これはちょっと嫌な別名ですね(笑))というものもあります。
溝状舌はどれくらい一般的なの?
はっきりと言い切るのは難しいです。調査にもよりますが、世界中で2%から20%の方が溝状舌を抱えていると言われています。アメリカでは、2%から5%に近い数字です。診断のための普遍的なガイドラインがないため、溝状舌がどの程度一般的であるかを把握するのは難しくなっています。また、特定の地域の住民を対象とした調査では、他の地域より溝状舌の発生率が高いことも示されています。
溝状舌は、男性および出生時に男性に割り当てられた方、並びに50歳以上の方にわずかにより多く見られます。その理由は研究者にも分かっていません。しかし、診断された年齢が、加齢のプロセスと関係している可能性はあります; 年齢とともに、溝がより深まっていく可能性はあるわけです。
症状と原因
溝状舌の徴候と症状は何?
溝状舌にはあらゆる種類があります。溝は2ミリ程度の浅いものから、6ミリ程度の深いものまであり得ます。この亀裂により、舌がひび割れていたり、しわが寄ったように見えたりするわけです。
鏡で舌を見ると、以下のように見えるかもしれません:
- 舌の中央を縦に走る1本の目立つ溝があり、そこから放射状に(広がっていくように)小さな溝が存在する(最も一般的)。
- 溝が交差したり、つながったりして、舌を区分に分けている、つまり、小さな 「島」があるように見える。
- 舌の上部に、つながりのない複数のランダムな溝がある。
亀裂があっても、そこに食べ物や細菌が入り込まない限り、通常は症状が出ることはありません。それが起こってしまった場合、以下のような症状は現れ得ます:
- 口臭
- 舌の腫れや炎症(舌炎)
- 口の中の不快感や灼熱感
しかし、亀裂がなかったとしても、こういった症状が出ることはあり得ます。口腔衛生をよくすることで、溝から細菌を排除し、症状のない状態を保つことが可能です。
何が溝状舌を引き起こすの?
溝状舌の原因は専門家にも分かっていません。溝状舌は家族内で発生することがあるため、遺伝が関係している可能性はあります。これが、ある地域の人々が他の地域の人々よりも溝状舌になりやすい理由を説明しているのかもしれません。
それでもなお、確かなことを知るためには更なる研究が必要です。
溝状舌に関連する疾患
専門家は、特定の疾患を持つ方が溝状舌になりやすいことについては把握しています。溝状舌は、一般的に以下の疾患と関連しています:
- 地図状舌
- メルカーソン・ローゼンタール症候群
- ダウン症候群
- シェーグレン症候群
- 慢性肉芽腫症
- 乾癬
しかし、舌に亀裂があるからといって、何かの病気や健康問題の警告サインというわけではありません。重要な栄養素が不足しているとか、ビタミンが不足しているというサインではないのです。舌の亀裂は、ある特定の疾患と一緒に発生する頻度が高いだけの、無害な特徴だとお考えください。
診断と検査
溝状舌はどう診断されるの?
医療従事者は、単に見ただけで亀裂があることを判別可能です。かかりつけの歯科医師が、定期的な歯のクリーニングの際に舌の亀裂に気付いてくれるかもしれません。
管理と治療
溝状舌はどう治療されるの?
食べ物や細菌が溝の中に詰まらない限り、治療の必要はありません。その詰まりは炎症や感染症につながる可能性があり、医療従事者が治療可能です。
しかし、亀裂そのものは問題ではありません。歯、歯茎、および舌のケアをしっかり行っていれば、医療機関を受診する必要はないでしょう。
見通し/予後
舌の亀裂は治る?
舌の亀裂が消えることはありません。しかし、良いニュースとしては、それを取り除く理由はないということが挙げられます。舌に亀裂があると、他の人の舌とは少し違って見えるかもしれません。しかし、舌の形が違うからといって、舌に病気があるというわけではないのです。口腔衛生をしっかりすることで、健康な舌を保つことが可能ですよ。
受け入れる
どのようにケアすればよい?
溝状舌がある場合、溝が食べカスや細菌フリーの状態を保てるように、細心の注意が必要です。1日2回の歯磨き(舌も)とフロッシングに加え、以下のようなケアも必要となるかもしれません:
- マウスウォッシュで毎日すすぐ
- 舌磨き用具(スクレイパー)を使う
- 特別な舌専用の洗浄液や器具を使う
かかりつけの歯科医師が、舌を清潔に保つために毎日必要となる手順をアドバイス可能です。
その他のよくある質問
溝状舌はガンになる?
いいえ。溝状舌は良性です。ガンを含め、いかなる病気の兆候でもありません。正常な舌の、単にあまり一般的ではない型なだけなのです。舌に亀裂があるのは、おへそが(内側にあるのではなく)外側にあるのと同じくらい無害です。
クリーブランド・クリニックからのメモ
普通とは違うと思う体の部分について医療従事者に質問することは、決して悪いことではありません。時には、奇妙に見えたり、非典型的に見えたりするものが、治療が必要な状態の警告サインであることもあります。しかし、舌の亀裂に関しては、その違いは無害です。口腔衛生状態が良好であれば、舌の溝がトラブルを引き起こすことはないでしょう。もしそこに細菌が引っかかる心配がある場合は、舌に食べかすが残らないようにする方法をかかりつけの歯科医が教えてくれますよ。
原因は不明であるものの、「決して治療が必要な異常ではありません、個性です」といったことを何度も強調してくれていた、優しい記事でした。
加齢に伴いひび割れていく可能性はある、とのことでしたが、仮に自分の舌に亀裂が生じても「心配する必要はない」と気楽にいきたい限りですね。
では次回も、もうちょい舌の出来物系の話を見ていこうかなと思います。