それでは今回も医療的ダイエット記事シリーズを続けていく感じですが、これまでケトン・ダイエット、クリアリキッド・ダイエット、エレメンタル・ダイエット、低FODMAPダイエットの各食事療法を経て、前回はほぼ低FODMAPと類似のもの（より広い対象）といえる、エリミネーション・ダイエットというのを見てきました。
引き続き、クリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事で「diet」という単語検索で出てきたものから、今回はLow Purine Diet（低プリンダイエット）というのを見ていきましょう。
これはまぁ、リンクカードの記事タイトルではLow Purineがむしろ括弧書きで脇役になっていましたけど、Gout Dietとも表記され得るもののようで、こちらを日本語にすると、ズバリ痛風ダイエット！
そう、キャッチ―になるようにあえて「低プリンダイエット」などと表記しましたけど、これは何てこたぁない、巷でよく聞く「プリン体」を抑える食事療法なわけですね。
そのプリン体については、前ちょっと触れたことがなかったっけ…と思ったらありました、ちょうどDNAのエタ沈なんかの一連の話で、今年の頭ぐらいに見ていた感じでしたね(↓)。
具体的には、DNAの半分、A, C, G, Tの4種類の塩基の内、AとGが「プリン体」と呼ばれるものになるわけですけど、まぁ生化学的な構造や話は医療を語る上では全く関係ないですし、低プリン体ダイエットが具体的にどんなものなのか、今回もクリ・クリ記事を参考にさせていただくと致しましょう。
痛風向けの低プリン体ダイエット（Gout Low Purine Diet）
低プリン体ダイエットは、痛風や腎臓結石の原因となり得る高尿酸血症の方―血中の尿酸濃度が高い状態―に処方されることが多いものです。食品中のプリン体は体内で尿酸に分解されるため、食事中のプリン体を減らすことで尿酸値を下げることが可能となります。
概要
痛風ダイエット（食事療法）とは？
痛風は血液中の尿酸値が高くなることで起こります。余分な尿酸は関節に沈着する鋭い結晶を形成し、これが腫れや痛みを引き起こします。しかし、低プリン体ダイエットを続けることで、体内の尿酸量を減らすことが可能です。尿酸値を下げることで、新たな結晶の形成を防ぎ、痛風の発作を抑える一助となり得ます。
低プリン体ダイエット（食事療法）とは？
プリン体とは、特定の食べ物や飲み物に天然に含まれる化学物質です。体内でこれらの化学物質が分解されると、尿酸が副産物として生じます。低プリン体ダイエットでは、尿酸を減らすために、プリン体を最も多く含む食べ物や飲み物を減らしていくことになります。また、体内の尿酸レベルを低下させる可能性のある食品をいくつか選択することも推奨されています。
低プリン体ダイエットが有益となるのはどんな人？
血液中の尿酸値が高い方（高尿酸血症）であればどなたも、高プリン体の食品を減らすことで効果が期待できます。高尿酸血症でまだ痛風を発症していない方に対しては、痛風の予防に役立つ可能性があります。また、既に罹っている痛風の進行を防ぎ、腎臓結石のような高尿酸血症による他の合併症を予防するのにも役立つかもしれません。
尿酸を生成する食品もあれば、減少させる食品もあります。 （※あまりにも分かりやすいイラストで全く必要ない気もしますが(笑)、すぐ次の段落で各食品が挙げられているので、日本語はそちらをご参照ください（エビやアンチョビなど、一部挙げられていないものもありましたが）。）
手順の詳細
痛風を悪化させる食べ物は何？
痛風の引き金となる飲食物のトップ10は以下の通りです：
- 甘い飲み物やお菓子（Sugary drinks and sweets）。標準的なテーブルシュガーは半分が果糖であり、これは尿酸に分解されるものです。糖分の多い食べ物や飲み物は、いかなるものでも痛風の引き金になり得ます。
- 異性化糖（High fructose corn syrup）。これは果糖を濃縮したものです。ラベルを見てみれば、異性化糖が、思いもよらないものも含めあらゆる加工食品に含まれていることに気が付くことでしょう。
- アルコール（Alcohol）。全てのアルコール飲料にプリン体が多く含まれているわけではありませんが、アルコールは腎臓からの尿酸の排出を妨げ、尿酸を体内に戻し、尿酸はそこで蓄積し続けます。
- 内臓肉（Organ meats）。レバー、ハチノス・シビレ、ブレイン、腎臓が含まれます。
- ジビエ（狩猟肉）(Game meats)。ガチョウ、子牛、鹿肉といった特産品は、中世に痛風が「金持ちの病気」と呼ばれた理由のひとつです。
- ニシン、ホタテ貝、ムール貝、タラコ、マグロ、マス、ハドック（コダラ）が含まれる特定の魚介類（Certain seafood）。
- 牛肉、子羊（ラム）肉、豚肉、ベーコンが含まれる赤身肉（Red meats）。
- ターキー（七面鳥）(Turkey)。この脂身の少ない肉は、それにもかかわらずプリン体が多いです。特に加工された惣菜の七面鳥は避けましょう。
- グレイビー（肉汁）ソースやミートソース（Gravy and meat sauces）。
- 酵母やイーストエキス（Yeast and yeast extract）。
痛風の時に食べると良い食べ物は何？
特定の食品を食べるだけで痛風が治るわけではありませんが、ある種の食べ物や飲み物は体内の尿酸を減らすのに役立つ可能性があることが研究で示唆されています。例えば、以下が挙げられます：
- スキムミルク（脱脂粉乳）(Skim milk)。初期の研究において、スキムミルクを飲むと尿酸が減少し、痛風のフレアアップ（再燃）が抑えられる可能性が示唆されています。スキムミルクは尿中の尿酸の排泄を促進し、関節の尿酸結晶に対する体の炎症反応を抑えてくれます。
- チェリー（Cherries）。研究者は現在、チェリーやチェリージュースの痛風症状に対する効果を研究していますが、初期の結果は有望です。チェリーには抗炎症作用があることが知られており、体内の尿酸を減少させる一助にもなるかもしれません。
- コーヒー（Coffee）。コーヒーは酸性であると聞いたことがあるかもしれませんが、コーヒーに含まれる酸の種類は尿酸とは全く異なります。実際、コーヒーを毎日飲むと、いくつかの方法で尿酸値を下げることが可能です。プリン体の尿酸への分解を遅らせ、排泄を早めてくれます。
- 水（Water）。1日にコップ5～8杯の水を飲む方は、痛風の症状が出にくいです。これは、腎臓が尿中の尿酸を排泄するためには水を使うという点から、理に適っている話だといえましょう。水は腎臓の健康にも良いです。腎機能の低下は痛風に寄与し得る要因のひとつとなっています。
しかし、多くの医療機関は、特定の食品よりも一般的な食事のガイドラインに焦点を当てることを好んでいます。以下のようなことが勧められています：
- タンパク源を変える。特定の肉類や魚介類は尿酸を多く含みますが、幅広い種類のものを食べるようにし、上記に挙げた最悪の犯人を避けるようにすれば、ばっちり大丈夫でしょう。
- 果物や野菜を楽しむ。ほとんどのものはプリン体が少ないですが、多いものであっても、痛風の症状に影響はないとされています。そして、そのメリットは大いに価値があるものです。
- 穀物（オーツ麦を除く）を楽しむ。米、パスタ、およびシリアルは全て、痛風に優しいです（オーツ麦を除く）。加工包装製品に含まれる異性化糖には注意し、血糖値のコントロールに役立つ全粒穀物を（少なくとも半分の機会で）選ぶようにしましょう。
リスク／メリット
低プリン体ダイエットのメリットは何？
- 尿酸を減らす。高尿酸血症になりやすい方は、痛風や腎臓結石といった合併症の発症を防ぐために、食事療法で状態を管理できる可能性があります。既に痛風や腎臓結石と診断されている方は、関節や腎臓に新たな尿酸結晶が形成されるのを防ぐか、または少なくともそのプロセスを遅らせることが可能となるかもしれません。
- 体重を減らす。赤身の肉や甘いものといった高プリン体食品を避けることで、二次的な効果として体重を減らす助けとなるかもしれません。痛風は、過剰な体重増加や、肥満、糖尿病、および心血管疾患といった代謝症候群と関連性が高いものです。減量は統計的に痛風の発症リスクを低下させることが知られており、関節への負担を軽減することで痛風の症状を和らげてくれます。
- 薬を減らす。食事療法は痛風を管理する上で薬ほど効果的ではありませんし、また、薬に取って代わるものでもありません。しかし、食事に気を配ることで、薬の必要性を最小限に抑える一助にはなるかもしれません。
低プリン体ダイエットのデメリットは何？
- 制限がある。高尿酸血症の方にとって、低プリン体ダイエットは長期的なライフスタイルの変更となります。また、砂糖、甘いもの、アルコールを含む、多くの嗜好品を対象とします。人によっては、これらを永久的に断つことは非現実的に思えるかもしれません。他の多くのダイエット方法と同様、効果を得るためにはとにかく継続する必要があるのです。
- オメガ3の摂取が制限される。魚介類はオメガ3系脂肪酸の最も重要な供給源ですが、低プリン体ダイエットではその多くが制限されます。オメガ3系脂肪酸には、沢山の健康メリットで知られています―特に関節炎の炎症や関節痛を和らげることです。多くのアメリカ人はオメガ3系を十分に摂取していませんし、魚介類を制限するとさらに摂取が難しくなります。しかし、この食事療法ではフィッシュオイル（魚油）サプリメントの摂取はOKです。
- 治療法ではない。食事療法は血中の尿酸値を少しは下げる方に針を動かしてくれるかもしれませんが、薬ほどではありません。最良の方法は、両者を組み合わせることです。薬物療法と比較した場合、食事療法は、苦労する価値があるとは証明されていない、と主張する方もいます。しかし、痛風を効果的に管理するには、薬物療法だけでは不十分なことが多いのです。こういった場合、多くの方は症状を軽減するために積極的にできることがあることに感謝しています。
クリーブランド・クリニックからのメモ
低プリン体ダイエットは、高尿酸血症および痛風といったその合併症を管理するために考案されたものです。しかし、この食事療法は、健康全般のために取り入れるべき合理的なライフスタイルでもあります。この食事では、砂糖、アルコール、肉類を減らし、植物と代替タンパク源が重視されています。これには尿酸を減らす以外にも多くの利点があり、また、重要な栄養を奪うこともありません。痛風を発症するリスクのある方、また痛風発作を経験している方は、低プリン体ダイエットを試してみる価値があるかもしれません。ご自身にとって良い選択肢かどうか、かかりつけの医療従事者にお尋ねください。
特に難しいこともなく、非常に分かりやすい記事でした。
まぁ、「美味しそうなものはみんなプリン体たっぷりん」という、グルメな方には腹の立つ疾病である痛風ですけど、正直、「なる人はなるし、ならない人はならない」という運の要素も大きい気がする……とはいえ、むしろだからこそリスクを下げることが重要なのは間違いなことなので、常日頃から心がけるのが大切といえるのかもしれませんね。
（とはいえ×2、個人的には、健康においてストレスの影響が一番大きいと思うので、「食べたいものを我慢するのが本当に苦痛」という方は、あんまり無理するのも良くないんじゃないかな…などと思えますが……その辺含め、医師の指導がない限りは、「自分の思うようにやる」のが一番といえるような気もしちゃいますね、やっぱり。）
