旧口・新口動物という違いに触れていくつもりが、生殖様式として「出芽」可能なヒドラや、オスとメスの違いというか定義なんかについて触れていた前回でしたが、早速本題である旧口・新口の違いについての話に戻って参りましょう。
無駄にデカイ表ですし、もう不要な気もしますけど、動物界の門リストは改めて以下の通りで…
…3胚葉が存在する「左右相称動物」という分類の中には、旧口・新口動物などと呼ばれる「門」の上位分類が存在するという話でした。
この違いは何なのかという話ですが、あらゆる動物はたった1つの受精卵という細胞が分裂して増えていくわけですけど(そこで前回は脱線しましたが、まぁ基本はそれで問題ないと思います)、どんな動物でも、受精卵が分割して増えていく様子は概ね共通していまして……
そんなに分かりやすい図でもなかったものの、「胚発生」のウィ記事(↓)からイラストをお借りしてみますと…
もちろん最初は1つの受精卵という細胞なので、1→2、2→4…と倍々で増えていくのは言うまでもなく、その辺が全く同じなのはむしろ違う形を考える方が難しいので当然として、さらに細胞が増えて桑の実のような、そのまんま「桑実胚」と呼ばれるステージに入ってからの増え方は、面白いことにどの生物も少しずつ内部が空洞の、ちょうど球体表面に細胞が集まっていくような形で発生が進みまして、こうなった状態の細胞群を「胞胚」と呼び、これはどの動物でも経過する、発生過程の非常に重要な形態の1つなんですね(↑の図・上半分)!
(ちなみに教科書ではこのように穴が見える形で描かれますが、これはあくまで断面図であり、実際の胞胚は外から穴が見えるわけではない、中空のボール状なのは言うまでもありません。)
まぁこの辺の話は、こないだX染色体の不活性化の話をしたときにチラッと見たことがあった気もそういえばしますけど(↓、アイキャッチ画像にも使っていました)、X染色体の不活化は意外と早い時期に起こるとのことで、胞胚までは見ていなかったのでちょうどいいですね。
もちろん「なぜ中空か?」については、これはもう言わずともお察しいただけることでしょう、「動物というのはチクワ」という例の話からも明らかなように、動物ってのは結局「食事を摂取して、身体の中で消化してエネルギーを得る」というのが全員に共通して存在するスタイルになっており、中が空洞になることで、基本的には食事したものを体内に収める(改めて、厳密に言えば我々はチクワですから笑、「体内」とか言いつつ、そこは普通に外界とつながってる空間なんですけどね。でも、上手い形に内臓が収まることで、一度口にしたものはちょっとやそっとのことでは外界に戻したりしない形なのはどなたも身をもって理解している(むしろ、体の中は外と断絶されてる印象しかない)ことではないかと思います)必要がありますから、極端に言えばそのスペースを作っている、ってことだといえましょう。
で、この細胞がびっしりとくっつきあってボール状になっている胞胚から、更に細胞分裂が進み発生ステージが進行しますと、今度はとうとうボールの一部が内側にくぼんで、最終的にはそこに「穴」が開く形になっています。
結局、旧口・新口動物の区別はこの「穴」がポイントであり、例によって理屈などなく、「そういうスタイルの生物を人間がそう呼んで区別している」だけにすぎないのですが、旧口動物というのはズバリ、この最初にくぼんでできた穴が最終的に成体になった後に「口」として働く器官というか部位になり、一方逆に新口動物というのは、この穴=くぼみが伸びて出来た原腸の始まりということで原口とよばれますが、くぼみの入り口が最終的な出口すなわち肛門になり、当然「口」の方は反対側、くぼみが進んで貫通して、新しく出来た方の穴(=原腸側)が対応するということで、その意味で「新口動物」という名前は大変分かりやすい気がするわけですけど、まぁまぁ、時間軸で「前後」ともいえますから、前口・後口という呼び名でも分かりにくいわけではないですけどね。
これは生物種によって絶対に決まっているもので、個人差があるものではなく、「僕は最初にくぼんだ穴がお口になっちゃった!」とかいうことは、人間なら絶対にあり得ません。
…あぁ書き忘れていましたが、人間=上のリストで言えば脊索動物門の動物は、みな等しく新口動物となっています。
なので、人間どころか、犬猫・鳥・ヘビカエル・魚などのおなじみのアニマルズは全員新口=「お口が後出来、まず肛門から出来る」という、いわば我々はケツから生まれてきた存在だと、そういうわけですね(言い方(笑))。
したがって、みんな大好き脊椎動物が新口ですから、新口動物の方が進化的に優れているというイメージになりそうな気もするものの、実は新口動物の仲間には、リストをご覧いただければ分かる通り、左右相称動物にあってほぼ唯一「左右対称というより、放射対称」といえる謎の存在、棘皮動物=ウニ・ヒトデ・ナマコなんかも所属しているのです。
そんなゲテモノ要らねぇ~、仲間でありたくねぇ~と思えるかもしれませんが、他にも「チンウズムシ」とかいう名前から何から謎すぎるものも我らが「お尻先グループ」ということで、何でよりによってそんなよぉ分からんやつらだけが同類なのか、これは正直謎ですね…!
一方、種類数を見ても分かる通り、やたら数だけは豊富な昆虫なんかは旧口動物ですし、その他進化的に下等な生物は全部旧口動物ということで、新口動物はむしろ進化の末に「その方が収まりがいいぞ」として獲得した性質をもつ「選ばれし精鋭」という気もするものの、なぜかウニ・ヒトデ……
…そういえばウニやヒトデは何かあまりにも宇宙生物っぽい見た目だし、あいつらは地球生物に擬態したエイリアンだった…??とかいう考えを巡らせてみるのも、ロマンがあって面白いかもしれません。
(まぁそこだけをもってして「特殊進化」とか「地球外から来訪」とか言うのも暴論ですが、実際本当に不思議なポイントではあると思います。)
…と、今回もまたすこぶる時間がなかったので、今回は旧口・新口の違いを見ただけで終わってしまいました。
とはいえこれ以上はもう、各門に触れていくだけになるので、あまり触れておくべき総論ネタもないのですが、まぁあまり考えてる時間もなかなか取れないので、何か適当に見繕って話を続けてみようかなと思います。