風船はどちらへ動く?

前回の記事では、遠心力から派生して、慣性の力について触れていましたが…

(あんまり慣性という程でもなく、単に相対速度の話だったかもしれませんけど…

(=時速200 kmで走る電車の屋根の上に立っている人は、そのままトンネルの壁に激突したら時速200 kmで叩きつけられるのは当然として、逆方向に時速20 kmで全力疾走しても、平地に立ってる静止した人から見たら、走っている分を差し引いても「時速180 kmで電車の進行方向に移動している」ことになるため、結局時速180 kmで叩きつけられる…ということ。水平方向の移動を垂直方向に変えれば、墜落するエレベーターと同じ話)

…まぁ激突の瞬間に「ジャンプする」ことを考えたら、「慣性の力が働くので衝突の威力をキャンセルすることはできない」となっているような気もしますね)

…今回は、より「慣性の力」に関する話を見ていこうかなと思います。

 

この辺の初等物理の力学の話、考え始めると意外と難しい上、何度も書いている通り僕は物理学ヨワヨワ勢であり、空間認識能力とかも凡も凡であるため、そんな奴が偉そうに解説するとかナメてるにも程がある気が我ながらするんですけど、まぁモノを考えるのは好きというかそれを仕事にしている節まであるので、「物理センスはないけれど、センスがないなりにどういうことなのか考えてみた」話として、完全に無意味ではありますまい…と開き直って触れてみるといたしましょう。

 

まずは、非常に分かりやすい動画があった、記事タイトルにもした風船の話から触れてみますと……

もう10年近くも前になりますが、何度か話に出したことのある元同僚のアサカさんと雑談メールしていた際、なぜかこの手の物理現象の話になりまして、そこで見ていた動画が、動画自体はもう14年以上前のものでしたけど幸いまだ普通に残っていたので、大変印象的だったこちらをお借りさせていただこうと思います。

 

…と、動画を見る前にどんな話か触れておきますと、車の中にヘリウムガスを充填した風船をプカプカ浮かべて(シートに紐でくくっているため、まさに「浮かんでいる」状態ですね)、「車を急発進させたとき(または急ブレーキしたとき、さらには右折・左折したとき)にどうなるか」という非常に単純明快な問題なんですけれども……


これはどうなるか、ご想像がつきますでしょうか?

 

「まぁそんなことわざわざ聞いてくるってことは、常識とは逆なんだろ?」と邪推される方もいらっしゃるかもしれませんけれども、そういう深読みは抜きに(笑)、直感でどう動くか、ぜひ想像してみていただきたい限りです。

 

なお、僕は、しつこいですが物理学のセンスがないので当然予想は外したとともに、むしろ説明を聞いてもすぐには理解できなかったレベルでした。

 

動画は順に、加速・減速・左折・右折の実演が行われている形です。

 

では、見事に車内風船を実演してくれたYouTube動画がこちら……

 

www.youtube.com

 

う~ん何度見ても意外!

 

これは不思議ですねぇ~、なぜ不思議かというと、実生活でこうなることを目にしたことがないからだ、などと思えますが……

 

…と、ネタバレ防止に苦し紛れに数行挟んで場所を稼いだ所で(笑)、ズバリ正解についてですが、まぁ分かりやすくまとめると…


「進行方向と同じ方向に動く」

(もちろん減速時はちょっと違って、「急ブレーキを踏んだら、後ろに動く」になりますけど、まぁ言わんとしていることはお分かりいただけるかと思います。)

 

…ということで、普段我々自身が体感する、「車がいきなり急発進したら座席の背もたれに押し付けられるし、急ブレーキを踏んだら前に飛び出す(シートベルトでガードされる)し、左に急激に大きく曲がったら右に身体が吹っ飛ぶし、右なら左」……とは、本当に真逆の現象になっているんですねぇ~。

 

これは本当に分かりやすい動画で、「そうなるんだからそう」という説得力があまりにもあるわけですが、これと同じ話として、より一般的な問いかけとしては、

「電車の中でラジコンヘリ(今ならドローン?)をその場に浮かせると(=ホバリング)、電車が動き出したとき、ヘリはどうなる?」

「電車の中を飛んでいるハエなら?」

という疑問に通じるものがあるので、そこから考えていくとしましょう。

 

…と、例によってこの辺も物理学専攻ではないモグリの僕は、自分で説明するより専門に近い人の解説をお借りする方が確実にいいと思えますし、ちょうどまさにズバリのQ&Aが、我らが知恵袋にあったため、またまたちょっと時間がないこともあり、各問題の具体的な解説については知恵袋先生の力をお借りしようと思います。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

両記事とも、ベストアンサーが本当にベストな、素晴らしく分かりやすい解説となっているので、気になる方はぜひご覧いただきたい限りですが、結論としては、

「(条件にもよるが)ホバリングしたラジコンヘリは、後ろの壁に激突する

ハエは、電車が進むと置いてかれる力を感じるであろうが、ある程度経つと恐らく逆に追い風を感じ、元居た位置に戻るのも楽になるであろう

…というものでしたが、果たしてこの違いはどこから生まれるのでしょうか…?

 

そう、当たり前ですが、「その浮いてる物質の重さ」なんですね。

 

そしてここが最大のポイントで、慣性の力(=空間が動いても、その場に留まろうとする力)は、重いものの方がより大きくかかるものになっています。


…正直この辺も、「物理センスない民」からすると、

「そうなの?でも、重いものも軽いものも落ちるスピードが同じとか、ガリレオさんが実証してなかった?力って重さに関わらず、同じ大きさがかかるんじゃなかったっけ…?」

…とか思えて疑問符がつくわけですけど、これは全くそうではなく、力というのはやっぱり、重いものにはより大きな力がかかる形になっており(この場合「重力」を念頭に置いていますが)、しかし、重いものは「動かすのにより大きな力が必要」となっているため、その両者の兼ね合いから、どんな重さの物体でも、「かかる重力」と「動かしやすさ」とを合わせると、面白いことに「全て同じスピードで落下する」という形になってるんですねぇ~。

(もちろんそれは「空気抵抗がないなら」で、空気抵抗も考える場合、空気抵抗を受けにくい鉄球と、抵抗を受けまくる赤い羽根とかですと落下速度はまるで変わりますが、その辺の話も、空気抵抗をなくせば=真空状態であれば完全に同じように落ちると、以前の「圧力シリーズ」のネタで見ていました↓)

con-cats.hatenablog.com

 

まぁそれは本題ではないので詳しいことはともかく、ポイントは「慣性力というものも、重いものにより大きくかかる」という点であり、ラジコンヘリのように大きく重たい物質にはかなりの慣性がかかるため……言い換えると「元の場所に留まろうとする力」が強いため、電車が勝手にピューっと前の方に移動してしまうと、ヘリは電車の移動に追いつけず最後尾のドアに激突してしまうものの……


…ハエぐらい軽くなると、慣性の力は弱くなり、空気抵抗および空気の圧力差の違いの影響が無視できなくなって、それの影響で後ろの壁までぶつからずに済む……なんて話が、上記Yahoo知恵袋の回答でなされていましたが……

 

結局、ポイントのポイントとしては、「電車の中の空気も(目には見えないけど)そこに存在する分子であり、こいつらにも慣性が働いて、その場にい続けようとする」ってのが最大のキーだったわけですね。


つまり…

  • 空気とハエを比べると、ハエの方が重いから、ハエの方に働く慣性の力の方が大きい=電車が動くと、ハエは後方に取り残される
    (ただ、その後発生する空気の流れでまた前方に移動しやすくなるという話もあるわけですけど、それはまた別の話…
     ハエだとちょっと話が分かりにくかったかもしれないので、「人間」や「ヘリ」の方が良かったかもしれません)

…という原則を踏まえると、

  • 空気とヘリウムガスを比べると、空気の方が重いから、空気の方に働く慣性の力の方が大きい→車が急発進すると、空気が優先して後ろに取り残される=かかる慣性の力がより小さいヘリウム風船は、競争に負けてむしろ前方に追いやられる

…ということが言えると、そういう話になるのでした。

 

とはいえまぁ正直、僕ぐらい物理センスが終わってると、「『空気の方がかかる慣性の力が大きくて後ろへ移動する』なら、風船より前方に存在する空気分子が後ろへ行くときに、その力で風船を後ろに動かしてくれはしないの?」などという疑問も感じるわけですけど……

…これは恐らくそういう話ではないといいますか、その空気と風船との物理的な接触よりも空間を満たしている全分子の移動の力の方が圧倒的に強いといいますか「風船みたいな雑魚に空けてやるスペースはない」とでもいいますか、まぁ僕には上手く説明できないですけど(笑)、実際そうなってる(=風船は前方に移動する)んだから、そう(=後ろ移動する空気が風船を押す)はならないんでしょう、って話ですね(笑)。

 

ちなみに、空気分子が電車後方に一気に移動する結果、電車内の空気は一時的に後ろが高圧・前方が低圧になるため、すぐにその気圧差で空気分子にはまた前方に戻ってくる力が働くわけですけど(空気は気圧の高い所から低い所へ移動するため)、「ハエにとっての追い風」はまさにその力だった、ってことですね。

また、先ほどの動画をよく見ると、加速後、風船が前に移動した後、一瞬ちょっと後ろへ行っているのは(まぁ運転が下手で、加速が切れただけかもしれないものの)そういう気圧差が生じたためなのかな、と思いました。

 

まぁその車内前後の「気圧差」についても、「それが発生して是正されるまでにどのぐらいの時間がかかるの?というか、慣性による空気分子の移動するスピードはどのぐらいなの?」などなど疑問はつきないものの(まぁスピードは、当然電車のスピードによるんだとは思いますが)、結局この問題を考える上で本当に大事なのは「物質の密度」だったということで、これに関して、非常に分かりやすい「密度の差による移動力の差」の説明が、同じような質問のQuoraトピック(↓)にて、Zukunashi Taroさんという方が回答でしてくれていました。

 

jp.quora.com

 

自分で考えたことにして紹介しようとも思いましたが(笑)、まぁ書く時間もなかったため、引用紹介させていただきましょう。

 

まず、電車の中が砂で一杯だったとします。ちょっと想像してみてください。山手線の一両が全て砂で埋まっているとします。扉や窓を開ければ砂が溢れてくるような状態です。その砂にドローンが埋まっていたとしたらどうでしょう?ドローンは電車と一緒に動くことでしょう。砂の中ですからその位置は殆ど変わらないでしょうね。ただもしかしたら少し動くかもしれません。

さて、次に電車の中が水でいっぱいだったとしたらどうでしょう。電車は完璧な防水処理がされてるとします。だから水漏れとか一切ありません。見た感じ電車の形をした水槽が動くような感じです。ただ密閉されているので波が起きたりはしません。空気がまったくなく全部水です。その中にドローンがあったとすればどうでしょう?これは予想ですが砂のように固定されていませんから、走り出すと砂のときより大きく後ろに動くでしょうね。止まるときも大きく前に動くでしょう。


では最後は空気で満たされた電車の中のドローンを考えてみましょう。動き始め、停止中などで慣性の力を受けて後ろや前に動きます。水の時より空気のほうが粘度が格段に低いので大きく動くことでしょう。


では固体、液体、気体で何が違うかといえば電車を満たす物体の密度が違います。

 

「物体の密度が違うことで、浮かんでいる物体の移動の様子が全然違ってくる」のが、これは非常にありありと想像できる、大変素晴らしい説明だと思います。

 

翻って、ヘリウム入りの風船でも同じで、「空間を満たしている物質(=空気)」と「浮かんでいる物質(=風船)」の密度がこの場合、とうとう逆転してしまいましたから、これは自然に考えても、我々が普段体験している「慣性による移動」と真逆の現象が起こっても心から納得できるな…と、改めてこの不思議な現象を理解できたような気がします。

 

(まぁ、疑問に感じる点は人それぞれだと思うので、実際めちゃくちゃ奥が深い話ですし、イマイチ納得できない方もいらっしゃるかもしれませんが…)

 

もちろん、密度が重要なので、今さらですが↓のような水風船の場合は我々人間同様、指から吊り下げた水風船は、車が加速したら後ろに、左折したら右側に吹っ飛ぶ感じですけど、それは改めて、内部に含まれる物質=水が、空気より密度が大きいからそうなるという話ですね。

https://www.irasutoya.com/2013/08/blog-post_7485.htmlより

空気より密度が軽ければ、想像・経験とは逆の動きをする、なぜなら、空気にかかる慣性力の方が大きくなって、立場が逆転しているから…という、僕なりにまとめるとそんなお話でした。

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