エレベーターが墜落する瞬間にジャンプすれば助かるのか…?

フェノクロ・エタ沈といった生命科学系実験でよく使われる遠心機の話から脱線した「回転・遠心」の話を終え、また途中状態だった所へ戻っていこうと思っていたのですが……

例によって時間不足から来るネタ不足は慢性的なものであり、何か簡単に見れる脱線ネタはもうちょいないかな、と悪あがきで「遠心」について検索してみました所、以前気圧やら水圧やらといった圧力の話のときにお世話になりました、「わかりやすい高校物理の部屋」がまたまたトップにヒットしてきました(↓)。

 

ちょっとでもネタが増えてくれればありがたいことこの上ないので、今回はこちらからネタを捻り出させていただこうかな、と思います。

 

wakariyasui.sakura.ne.jp

 

これまた大変分かりやすい記事でしたけど、途中で触れられていたネタから1つ引っ張らせていただくと、あぁ、家庭にもある最も身近な遠心機って、よく考えたら洗濯機がありましたね!


特に洗濯機で高速回転がキモとなるステップは脱水なわけですけど、脱水の仕組みについては上記「わかりやすい~」の解説記事が本当に分かりやすくまとめてくれている通り、衣類に含まれる水滴にかかる遠心力が、衣類に留まろうとする吸着力を上回る結果として行えるものが脱水であり、これは直感的にも、凄い勢いで濡れたタオルをグルングルン素振りしたら水滴はピシャピシャ飛んでいくのは容易に想像できますし、明らかな話だといえましょう。


調べたら、洗濯機の回転数は大体1000 rpmぐらいだそうで、遠心力の公式は「RCF(遠心力)=11.2 × 半径 (cm) × (RPM/1000)2」でしたから、1000 rpmの場合、二乗の部分がちょうど1になり、半径の大きさの11.2倍がそのまま「G」になるということで…

…まぁ洗濯槽の半径って20 cmとか30 cmはあるぐらいでしょうか、つまりその11倍、実に数百Gものかなりの遠心力が衣類にかかるということで、グチョグチョだった洗浄後の衣類から、脱水ステップのおかげでそこそこの水滴が飛ばされてくれるのも当然といえる形かと思います。

 

家庭にも、案外遊園地のアトラクション以上の遠心力を生む凄まじい機械があったんですねぇ~。

どうやって脱水されてるかなんてほとんど意識しないと思いますが、遠心力で行われていた、って話だったわけです。

 

なお、「わかりやすい~」記事の「遠心力」の章は、力学の一番最後を飾るもので、大きく「慣性系」についての話でまとめられていた感じでした。


慣性系の解説も大変分かりやすかったですが、この辺に関して、ふとよく聞く面白い問題をいくつか思い出したので、今回はそちらをメインネタとして触れてみるといたしましょう。

 

まずはそうですね……めちゃくちゃよくある思考実験というか想定疑問として、

「エレベーターのワイヤーが切れて、高層ビルの高い所から落下するという大変な事故が起きてしまった!」


…みたいな場面を考えた場合、小学生が陥りがちな誤解(というか、今でもよく覚えてる話で、大学院時代に同じ研究室の学生みんなで旅行に行くことがあったのですが、その電車内で後輩他複数名とこの話になって、後輩がそう主張していたので、大学院生というか大人でも同じ勘違いをしている人は地味にめちゃくちゃ多いと思います)として、


「いや、エレベーターが地面に激突する瞬間にジャンプすれば余裕っしょ」


というものがあるわけですけど、まぁ僕も昔はそう思ってましたけど、これは全然そんなことないんですね。

 

「凄い重力加速度が下向きにかかってるから、ジャンプなんてできっこないよ」とか、「ジャンプしても逆に天井に激突するのでは…?」とかそういう点よりも、正直より大きなポイントは慣性の力だと思うのですが、結局「そのスピードで移動している」というのが最大のキモになるように思えてなりません。

(例えば、空気抵抗とか「ワイヤーが一部残っていた」とかそういう理由によって、既に加速を終えて一定のスピードを保って落ちている場合(=加速度0で、Gはかからない)でも、あるいはめちゃくちゃデカくて天井がクッソ高いエレベーターでも……つまり、仮に「ジャンプもできて、頭がぶつからなかった」としても、以下の考え方をすれば「助かるわけがない」と断定できる話になっていると思います。)

 

これは僕がこの話について考えたときに思い浮かんだ、誰でも絶対に納得してもらえると思う例なのですが、要はこの話って移動が上下だから錯覚を起こしやすいだけで、向きを変えればより分かりやすいように思います。


つまりどういうことかというと、まず高速で走っている電車の、屋根の上に立っていると仮定しましょう(電車の中でもいいんですけど、中だと衝突した際にかかる衝撃が思い浮かべづらいので)。

 

まぁあまりにも高速移動していると立ってられない気もしますけど、まぁ新幹線の車内ぐらい落ち着いた電車だとして、風とかもこの際無視するとしまして、高速で走行中の電車の屋根の上に立っているとします。

 

で、この電車が、トンネルに入るシーンを浮かべて欲しいのですが、この時、電車とトンネルには1センチぐらいの隙間しかなく、上にあるものはトンネルの壁と激突してしまうとしましょう。

 

ちょうど、全米最長のトンネル・カスケードトンネルの画像に、イメージぴったりの写真がありました(別にこんなイメージ写真は不要にも思えますが(笑))。

https://www.britannica.com/topic/Cascade-Tunnelより

ほとんど電車とトンネルの天井に隙間がないというイメージですね。

まぁこれだとスゲェ遅そうな電車ですが(笑)、この列車が時速200キロぐらいで走っているとして、また、これが今トンネルに入っていく瞬間、かつ後ろの方にもまだずーっと車両が続いており、更には電車の両脇にはぴったりの位置に壁が立っているとして(そんなのおかしいですけど笑、まぁとりあえず「トンネルの壁とぶつかることからは逃げられない状況」としましょう、って話です)、まさに目の前にトンネルが差し迫っている状況です!

 

この時、電車の屋根の上にいるあなたは、全力で電車の屋根の上を逆方向に走って、いざぶつかりそうな瞬間には(横や線路の下にはいけないので)、まぁそのまま思いっきり進行方向と反対方向にジャンプすることでしょう。

 

でも、この状況で壁と衝突する瞬間、「逆方向にジャンプしたんだから、トンネルの入り口の壁にスタッと張り付くことができるでしょ」なんて考える人は、恐らく誰もいないのではないかと思います。

 

そう、火事場の馬鹿力で、時速30 kmぐらいで反対方向にむかって走っても、時速200 kmで走る電車の上では、相対的に時速170 kmで電車の進行方向に進んでいる状況でしかないんですね。

 

で、トンネルに衝突する瞬間、苦し紛れに思いっきり逆方向の空中に飛んだとしても、仮に信じられないパワーを発揮して、ウサイン・ボルト級の時速40 km近くでジャンプできたとしても、時速200 kmで走る電車の上にいるあなたは、止まってる人から見たら差し引き時速160 kmとかそこらでトンネルの上部に叩きつけられる運命には変わらないわけです。


(=何もしなければそのまま激突、しかし多少頑張って逆方向に走っても、結局電車のスピードに太刀打ちできるわけもなく、ほぼ電車のスピードで激突することになる、ということ。)

 

結局、「落下するエレベーター」もこれと全く同じ話で、エレベーター全体が、まぁ時速何キロまで出てるか分かりませんけど、高層ビルから自由落下するとなると当然もの凄いスピードで落ちている状況のはずですから、仮に墜落の瞬間に苦し紛れにジャンプをしようと、あくまで、

「凄いスピードで落下している状態から、ジャンプ分のスピードを差し引きできるだけで、ジャンプし終えて床に着地するときのスピードは、ほぼ凄いスピードのままなのである」

…といえますから(走っている電車の屋根の上で、トンネルに激突するのと同じ)、要は、ジャンプする数秒間命が延びるだけで、ジャンプし終えて着地する際は、結局ジャンプせずに床に叩きつけられるのとほとんど同じ衝撃を食らう、ってことなんですね!

 

(もちろんジャンプで相殺できるスピードでしか落ちていないなら、ジャンプすることで衝撃ゼロで着地できることもあるかもしれませんけど、そんなレベルなら別にジャンプしなくても無傷ですしね(笑)。

 電車の例も、時速20 kmとかでトロトロ走ってる電車なら、逆方向にジョギングしながらタイミングよく壁に飛びつけばほぼ衝撃ゼロで壁に捕まれるのと同じで、それは「ジャンプのおかげで助かった」のではなくその程度の衝撃でしかなかった……言い換えれば、ジャンプをしなければ凄い衝撃で叩きつけられて必ず死ぬぐらいのスピードだったら、ジャンプでの「スピードの相殺」なんて焼け石に水で太刀打ちなんかできるわけがない、って話ですね。

 改めて、時速120 kmで走る電車の上で、トンネルの壁が迫ってくるのと同じ状況なわけです。)

 

…と、個人的には落下エレベーターはこの状況と同じだということを思いついたとき、「う~んこれはめっちゃ分かりやすい、向きが違うだけで、やってることは全く同じだから説得力があるし、向きが違うだけなのに(ジャンプよりスピードは出せそうな逆方向へのダッシュでも)絶対助かるわけないのがイメージしやすい!」と自画自賛だったのですが、何か説明が回りくどいこともあり、あんまりいい説明でもなかったかもしれません(笑)。


というか、これは「慣性力」ってより「相対速度」の問題なだけの気もしてきましたが、まぁ、電車の上からダッシュしてジャンプしても、静止しているトンネルの壁には「自分がダッシュしたスピード」で着地できるわけではない…ってのは、ある意味慣性が働くから、ってのがその理由だと思います。

(物理苦手勢なので、かなり間違った捉え方かもしれませんけど(笑)。)

 

おっと、実は慣性の力に関して、もう1つ面白いネタを紹介しようと思っていたのですが、しょうもない「電車とトンネル」の冗長な説明でいい分量&時間になってしまいました。

 

…というわけで次回も、慣性ネタ続きで面白物理現象を見てみようかと思います。

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