本当に一緒に落ちるの…?

前回は、脱線ネタとして「真空中で羽根がストンと落ちる」みたいな話に触れていましたが、あまりに時間がなかったため説明もかなりおざなりなもので、適当極まりない感じになっていました。

 

「もうちょい説明を加えた方が良かったかな…」と思っていたところに、ちょうどまたアンさんからご質問をいただける形になっていたため、今回はそちらのおさらいをしていく回とさせていただきましょう。

 

毎度、大変かゆい所に手の届くご質問、誠にありがとうございます…!

 

ボールと羽根の実験、、


前置きの説明を読んで、当然真空状態なんて経験もないですし、思い付いたのは食材がラップのようなものでピッチリ密封された状態のアレなわけで、真空って空間すらもないようなイメージでしたけど、まぁおっしゃることはわかりました。


そして、動画を見て、なんか違和感…?!


面白いことが起こる空間みたいなお話しでしたので、違和感はあってもおかしくないんだと思いますが、、

ボールと羽根はぼぼ同時に着地してましたよね?

これ、鉄の塊と羽根でも同じスピードで落ちるんですか?

あ、空気抵抗が無いと、重さは関係ないってことか…宇宙のことも書いてあったし、真空って無重力なんか?…いやいや、無重力ならそもそも落ちんだろ…あぁ、ボールと羽根は同じ重さなん?真空で重さってどないなるんだ?

っていう妄想が頭の中で繰り広げられました笑

 

⇒順番に参りましょう。

 

まず「真空状態」についてですが、これも完全に触れそびれていた話でしたねぇ~。


そう、「真空」というのは「中に気体が一切存在しない状態」ですから、食品や布団の真空パックを思い浮かべたら分かる通り、もしも内部を真空状態にしたその「容器」がビニールとかペラペラのプラスチックとか、そういうヘニョいやつらの場合、完全にペシャンコになってしまう(中に何かがいるなら、そいつの形にピッタリと容器が張り付く感じになる)わけですけれども、丈夫な金属や硬いプラスチックやガラスやらそういう「剛質」な素材の場合、中に何もなくても容器の形を維持することは可能でして、その場合、そこには「真空の空間」が爆誕することになるんですね。

 

もちろん、改めて言うまでもなく空気は目に見えませんから、この「真空部屋」と「普通の部屋」は、見た目には全く違いは分かりません。

 

しかし、空気がいなくなっている結果、その内部では普通の空間では見られない特徴が多く見られるのです…という話でした。


普段、ヤワい素材のものがペシャらずに形を維持しているのは、実は内部にある気体分子が飛び回って「圧力」を形成しているからに他ならず、例えばペットボトルなんかは水が空になってもそのまんまの形を維持していますけど、それはペットボトル内部にも空気が存在し、それが大気圧と完全に同じ圧力を形成しているからでして…

もしもペットボトルの内部の空気を抜いて真空状態にしたら、「外側からは大気圧で押される」「でも内側から押し返すものは全く何もいない」という状況になりますから、ペットボトルはペシャンコにつぶれる感じなんですね。


もちろん改めて、「つぶれるかどうか」は容器の素材の強度に依存しており、ガラス瓶なら、内外の圧力差が1気圧程度では恐らく割れないため、普通にそのままの形で内部を真空状態にすることは可能といえましょう。

(でも、薄すぎるガラスとかなら、内部の空気を抜いて真空にしたら割れる可能性はあるかもしれません。)

 

さらにいえば、普通の場所=1気圧の状態で空のペットボトルのフタを完全に閉めた場合、内部の圧力は周りと同じ1気圧になりますが、これを山の上などかなりの高地にもっていくと、まぁこれはこないだのポテチの袋の例と全く同じ話ですけど、(高地=気圧が低くなるため)外からかかる圧力が小さくなって、しかし内部の圧力は「ペットボトルの中で1気圧を作るだけの数の気体分子」が入ったままですから、差し引き内側からの圧力の方が大きくなり、ペットボトルは逆に膨らむ形になるんですね!

 

改めて、圧力を作っているのは気体であり、何もないように見えても、その中には気体の分子が大量に含まれている、という話でした。

 

なお、かなり軟らかい素材のペットボトルですと、ボトルの口に自分の口を完全につけて水を思いっきり吸い込んだら、水が減った分、ボトルがそのまんまひしゃげることがあると思うんですけど(まぁそんな下品な飲み方はされたことがない方も多いかもしれませんが(笑)、例えばお笑い芸人の方が超速で飲み干すシーンなど、何となくイメージは湧くと思います)、これはまさに、液体がいなくなった分の気体がボトル内部に供給されず、内部で圧力を作る物質がなくなったから…って話になるわけですね。

いわば内部は真空状態になっており、結果として変形してしまっているわけで、逆に、ボトルの形を保ったままにするためには、ちゃんと空気が「ごぽっ、ごぽっ」と入ってくるように水を出してやらないといけない、ということになるわけです。

 

ということで、とりあえず丈夫な「ガワ」があれば真空の空間(=気体は存在しないけど、空間だけがそこにある状態……なお、固体は普通に真空中でも存在可能(実際、その真空部屋を作る「ガワ」は固体なわけですしね)です。一方、液体は、どんなものにも「蒸気圧」というものが存在するので、外部気圧が完全0の真空状態だと、基本的に蒸発してしまうことになりますから(=押さえつける圧力が存在しないので、液体分子はより自由に飛び回るべく、気体になってしまう)、存在は難しいという感じですね。…もっとも、液体が蒸発して気体になったらその時点で真空状態じゃなくなりますから、その結果、また液体に戻ることもあるかもしれませんが…)

…と、また補足が長くなったので仕切り直すと、「真空の空間」というのは普通に存在するものでして、そこで落下実験をしたのが前回の動画でした。

 

あの動画も、本編は英語なのにあまりにも時間がなくてただ貼り付けただけだったので、再度貼って流れだけチェックしておこうと思います。

 

BBCのこちらの動画(↓)でしたが…

 

www.youtube.com

空気のある普通の状態で行った落下実験が1:27ぐらいからで、その後、部屋から空気を完全に取り除き、真空状態で行ったのが2:52ぐらいからになりますけど…

前回も書いたのですが、「スロー再生にしたらインパクトなくなるやんけ!」と思ったというか、下手したら幼少期の僕みたいに、「真空だと、ボールも羽根みたいにゆっくり落ちるってこと?」と勘違いしてしまう人が出るかもしれないので、最初は分かりやすくスロー再生でも、せめて一度ぐらいリアルタイムの様子を流して欲しかった……と思えますがそれはともかく、ポイントとしては、ボウリングの玉とフワフワした羽根が全く同時に落下するという、面白い結果なわけですね。

 

まぁBBCほど大掛かりではないものの、ちゃんと等倍速の様子も流してくれている別の動画も普通に見つかりました。

 

www.youtube.com

こちらも、容器が小さすぎて一瞬なこともあり、最初は微妙にスロー再生されてますけど、最後にちゃんとリアルタイムの様子が映されてますね!

 

動画ラストで、鉄のブロックとフワフワした羽根が、まさに全く同じようにストンと落下しています!!

 

まぁその理由は改めて、真空状態には空気抵抗を生み出す空気の分子が存在しないから、って話になりますけど、そもそも「空気抵抗ってなんだ?」というのは、これは地味にかなり難しい流体力学が絡む話になるので、普通に「進行方向と90°別向きに面する部分の表面積が大きくて、進行方向に対してぶつかってくる空気分子が多いほど強くかかる抵抗の力」と考えるだけでいいように思えます(そのイメージで、直感的に余裕で納得いきますしね。より詳しく数式とか使って考えるのは、高校物理の範囲を超えていると思います)。

 

そして、空気抵抗がなければ、物体の質量も体積も落下速度には全く影響を及ぼさない、というのは、かの有名なガリレオさんがピサの斜塔を使って実証したとされる、物理学の重要法則ですね。

 

なので、ご質問の「鉄の塊と羽根」でも、真空状態であれば全く同時に落下します。

(というか、前回は書いてませんでしたが、あのボールはボウリングの玉だったので、いわばクソ重の鉄球みたいなもんですしね。)

 

ちなみに、「真空」と「物質の重さ」には全く関係ありません。

真空状態だろうと、物には普通にそれぞれ固有の質量があります。

(ですが、真空状態であれば、重さに関わらず同じスピードで落下する、ってことですね。)


そして「真空」と「重力」も全く関係ありません。

地球上で真空の部屋を作っても、その部屋の中には部屋の外と全く同じ重力がかかりますし、逆に、真空状態&無重力の宇宙空間でも、ちゃんと空気を供給している宇宙船の中は、気圧の存在する、普通の空間(いわば非・真空空間)になっている(でも、宇宙の中なら船内も無重力ですね)、という形になります。

 

ちなみに、「落下速度に物体の質量は全く関係ない」というのは、あくまで「空気抵抗がなければ」という条件が加わるので、実際地球上の普通の環境で実験すると、めっちゃ重い砲丸投げの玉と、クッソ軽いピンポン玉は、かかる空気抵抗の影響が違いすぎて、砲丸の方が早くドスンと落ちる感じですね。

 

そんなわけで、あの有名なガリレオさんの実験、本当に成功したんかいな……と思って改めて調べてみたら、どうやらこれはガセというか都市伝説というか、「ガリレオは実際にあの実験をやっていない」ってのが現在では主流の考え方みたいですね!

 

ja.wikipedia.org

もちろん彼は普通に天体の動きとかの論文を大量に書いているマジモンの天才で、実際「重さに関わらず落下速度は同じ」という考えはもっていたようですが、別に聴衆を集めてドヤ顔でピサの斜塔から二個のボールを落とした、みたいな事実はなかったみたいですね…!


(まぁドヤ顔かはともかく(笑)、そもそも「ピサの斜塔は傾いているため、落下実験に都合が良かった」とかよく見ますけど、僕は子供の頃から「いやいや、別に真っ直ぐ立ってるものでも、出窓とかから手を伸ばして落とせば、障害物にぶつかるこたぁねえだろ。逆にナナメってたら、本当に同じ位置から始まってるかのクレームが付きやすくない…?」って思ってましたし、他にも「手を離す瞬間が完全に同じである保証は?風の影響はどうなる…?!」などと無駄に勘繰っていましたから、やっぱり「あれはなかった」と知って、正直「そらそうでしょうね」と思えたといえるかもしれません……いやまぁ今適当に作って書いただけの、適当な意見ですけどね(笑))

 

…と、そんなわけで改めて、「真空中であれば、鉄球でも、髪の毛1本でも、紙切れ1枚でも、全く同じようにストンと落下します」という話になります。

(なお、無重力だとそもそも落下しないのでそれは成り立ちませんが、上のウィ記事にも参考として動画がありましたが(Youtubeではなく動画ファイル直リンクなので、貼ることはできませんでしたが…)、月面であれば、「ほぼ空気抵抗ナシ&重力はあり」という条件になりますから落下実験が可能で、記事一番下の方に「羽根とハンマーを用いた、月面での落下実験」の様子が紹介されていました。

…結果は、重力の軽い月面でも見事に同時落下、素晴らしいですね!)

 

アイキャッチ画像は、特に何もなかったので、イタリアの誇る最大の観光スポット・世界遺産ピサの斜塔の画像を同記事からお借りしましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/ガリレオによるピサの斜塔実験より

あの実験は実際にはやられていなかったようですが、ガリレオさんの考えは普通に正しかった、という感じですね(っていうか、「羽根や布キレとかが、石とか金属のカタマリとかよりも遥かに落下が遅い」という現象の方が当時は普段たくさん目にしていたでしょうし、よく本質に辿り着けたものだと驚きですね)!

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