大きいのと小さいの、どっちが勝つ?

前回は気体の圧力と体積の関係について、正直幼稚園児でも直感的に分かるレベルの話ではありましたが(→空気の詰まった密閉袋を押すと、袋が小さく縮んでいくとともにその内凄まじい圧力を感じてそれ以上押せなくなる=体積が小さくなると圧力は大きくなる)、注射器などを絡めてそんなネタに触れていました。

 

今回はその注射器を用いた圧力のやり取りについての面白い話として、こないだ水圧の記事(↓)で触れていた「パスカルの原理」、こちらも完全に説明不足だったため、そちらも絡めつつ再訪してみようかと思います。

 

con-cats.hatenablog.com

そもそも「パスカルの原理」については、時間不足だったこともあり、「わかりやすい高校物理の部屋」の解説記事リンク(↓)を貼っただけでほぼ一言も触れないレベルだったわけですが……

 

wakariyasui.sakura.ne.jp

こちらはしばしば液体を使って説明されますけど、実は液体でも気体でも成り立つ話になっていまして、そもそもの話として液体と気体という物質は「それを入れている容器によって形が自由自在に変わる」という性質があるものであり、これをあわせて「流体」と呼んでいます。

 

難しそうな物理の範囲の代名詞、「流体力学」ってのは、その名前だけ聞くと「流れてる液体とか、ゲル状の粘性物質の動きとかについて考えるものなのかな?」とか思える気もするんですけど、実は「流れているもの」というよりも、単純に、液体と気体を扱う話だったんですね。

(もちろん、流体力学の中には静止流体を扱うもののみならず、非静止流体を扱う流体動力学も扱われますが、かなり発展的な話になると思います。

 また、流体の定義は「気体と液体」に限ったものではなく、まさに↓のウィッキー先生が述べてくれているように…

ja.wikipedia.org

「静止状態においてせん断応力が発生しない連続体の総称」といえるものなので、気液混合物質や、さらには微量の固体が混じったものなんかも上記の性質さえ備えていれば「流体」として扱われる形のようですね。)

 

まぁそんな名前の定義とか取り扱う対象なんかは、別にそんな誤解を抱いている人もいない大したことない話だったかもしれないのでともかく…

(ただ、僕は流体力学を実際に学び始める前、当初そう思っていました。

…っていうか、上記「わかりやすい高校物理の部屋」の記事を見直してみたら、全く同じ説明が載ってましたね(笑)。

 流石は痒い所に手の届く素晴らしい解説記事です!決してパクッたわけではありませんが(笑)、こないだ読んだときに印象に残っていたのかもしれません(笑))

 

…普通に液体に限らず気体でも同じことがいえる「パスカルの原理」とはどういうものなのか、改めてごく簡単に説明してみますと…

  • 密閉容器中に入っている流体に外部から力を加えると、その容器の形に関係なく、加えられた圧力がそのままの強さで、流体のあらゆる部分に等しく伝わる

…というもので、僕は高校物理は脱落組で生物選択だったため全課程は知らないのですが、上記「わかりやすい部屋」によると、高校物理では習わない話だったんですね。

 

しかし流体力学の根幹を成す極めて重要な話なので上記ページで取り上げられていたようですけど、より分かりやすく書けば…

「水風船の片側を潰したら、もう半分の方では圧縮された水が圧力を形成することになるが、一箇所だけ膨らむことは決してなく、全体が膨らむ=力は風船内部のあらゆる場所に伝わる」

…みたいなもんで(もちろん水じゃない普通に空気が詰まった風船でも同じですが、何となく変形しやすい水風船の方がイメージしやすい気がします)……

…ってうーん、正直それもあんまりピンと来る例ではないかもしれないものの、いずれにせよこれは実際に現実世界で成り立つことが確かめられている重要な話で、それを応用して「水圧が深さに応じて生まれる」ことに関しての見事な説明が、同サイトの、↓の水圧記事でされていました。

 

wakariyasui.sakura.ne.jp

…とまぁそれはこないだの記事で触れていた部分なので水圧の話はともかく、パスカルの原理の記事の方で、この仕組みを応用した面白い例が紹介されていました。

 

径の異なる2つの注射器・ピストンをつないだ以下のような場合…

 

https://wakariyasui.sakura.ne.jp/p/mech/pas/pascal.htmlより

 

これは、「両側で押し合いをした場合、どちらが有利なのか」というのが面白い問題になるわけですが、どちらかお分かりになるでしょうか…?

 

ちょうど似たような話で、僕は幼稚園児の頃に子供向けのクイズの本で読んで強く印象に残ってる話がありまして…

「バットの両端を握って回しあう競争をした場合、太い方と細い方、どちらを持ってる人の方が勝つかな?」

…というクイズで、幼い紺助少年は、「う~ん、細い方が握りやすそうだから、細い方が有利そうだね」と思えたものの、実は…!

 

これは、大人にとってはもう常識でしょうか、ズバリ、圧倒的な大差で、太い方を回した人が(よっぽど赤ちゃんとスポーツ選手の対決とかならともかく、同じレベルの力の2人なら)必ず勝つようになってるんですねぇ~。


その仕組みはズバリ、高校物理の「力のモーメント」で学ぶ話になってるわけですけど、まぁ大人なら直感的にも明らかといえましょう…

…実際僕は家にあったプラスチックのバットを使って確か一人で試してみましたけど、マジで太い方を回した方の手が余裕で勝利する(強い力で回しやすい)んですよね。

 

正直これはパッと頭に浮かんだ直感(ゆーても、「持ちやすそう」とかいう幼稚園児並のしょぼい発想ですけど(笑))から外れていて、「はぇ~、面白いけど、自分の直感が否定されたようで、何だか納得いかねぇっつうか腹立たしいぜぇ~」と思えた最初の記憶だった気もしますが、そんな脱線ネタを挟んで元の問に戻りますと、注射器を使った押し合いバトル……

 

これは、バットの例と同じで、そりゃ大きい方が大きい力を生み出せそうだから勝つでしょう…という気も一瞬するのですが、なんと!

 

実はこちらは真逆で、小さい側の方が必ず勝つんですね!!

 

その仕組みについて触れる前に、ちょうどまさにこれと関連したお話で、最初に貼った「水圧」について触れていた記事に、アンさんよりご質問をいただいていたのですが、ピッタリこれと同じ話になっていたためそちらを交えて仕組みを見ていくといたしましょう。 

 

圧力のお話しで、

人の上に空気が乗っているという気圧のイメージ(ポテチはわかります)…からの、水が乗っている水圧について、、

水の量ではなく高さ…?

それだけ聞いたらなんとなくわかりますが、説明を読むと逆にわからなくなりました笑


例えば、

直径1cm長さ1mのストローを指の上に立てて、そこに水を入れた場合と、

直径1mの筒の中に自分が入って、頭のてっぺんから1m上のところまで水を入れた場合、

同じ力がかかっているとは思えません。

 

というイメージで迷走しましたが、、図を見てみると、底の部分は同じ面積になってる感じなんですかね??

圧力って面積が関係あった気がするので(気がするレベル笑)、やっぱりその辺りは重要なポイントに思えました。

 

⇒まさにアンさんがご推察されていた通り、ポイントは「面積」で、圧力ってのはあくまで「一定の面積にかかる力」でしかないんですね。

 

なので、「直径1 cm・長さ1 mのストローを指の上に立てた場合」と、「直径1 m・長さ1 mの筒に入って水を満たした場合」とで、人間にかかる力は当然変わってくるものの、「直径1 cmの円という一定の大きさに加わる力」を見た場合、これは、

「極細ストローだろうと、人が入れるレベルの筒だろうと、高さが同じなら完全に同じになっている」

…ってのが水圧の不思議だという話でした。


とはいえ補足説明を加えると、人間が入れる筒の場合、自分の体には直径1 cmの円に加わる力が全身あらゆる所から何千何万個分も(そんな謎の筒に身体を折りたたんで縮こまった際、人間の表面積が合計でいくらになるかはよぉ分からないので具体的な数は分かりませんが、まぁ大量ですね)、その「水深1メートル分の圧力」が加わることになるため、トータルの「全身にかかる力」は後者が圧倒的にデカくなるんですね。

 

また、これはあくまでかかる「水圧」であり、支えねばいけない全体の「水の重さ」とも関係がないことに注意かもしれません。

 

例えば深さ1メートル・直径1メートルの筒に潜ったときにかかる水圧と、深さ1メートル・直径10メートルのバカでか筒に潜ったときにかかる水圧は完全に同じになるわけですが、しかし、この筒を「自分の手で支える」場合、筒の底を持つ=自分の上にある水の高さは同じですけれども、当たり前ですが前者より後者の方が100倍(半径が10倍の差なので、体積は100倍)の力が必要になるわけですね。

(小さい方でも、半径0.5メートルの円筒なので、約785リットルとなるため(=0.5×0.5×3.14×1 立方メートルで、1立方メートルは1000リットルです)、自分の力でこの筒を支えるのは全く現実的ではないものの…)

 

あくまでこれは、「水に触れることでかかってくる水圧」についての話ですから、ストローの例のように、水全体を自分自身が支える場合を考えても、重さではなく「水に触れている部分が受ける水圧」のみを考えねばいけない話になっている…というのも要注意でした。

(そもそも、その意味では「筒の中に入って水に潜る」例と「ストローを支える」例は全然違う状況になってるわけですけど……まぁかなりややこしいので、あんま深追いする意味はない気がしますね…)

 

で、例の二連注射器の話に戻りますと、まずパスカルの原理により、例えば「1」の圧力で水を押したとすると、その水のあらゆる部分に「1」の圧力が伝わります。

 

そしてポイントとして、「圧力」というのは単位面積あたりにかかる力だという話でしたから、例えば面積がそれぞれ小ピストン「5」に対し大ピストン「20」だったとすると、「1」の力で外部から押された水が作る圧力は、小側は5の圧力がかかってくるのに対し、大側は20の圧力がかかって押し返されることになるわけです。

 

そんなわけで、「外部から加えられた圧力は、流体全体に完全に一様に伝わる」というパスカルの原理にのっとり、その力は「押し返される力」に化けますから、大きいものほど大きな力で押し返されることになり、小さい方を押した人が必ず勝てるようにできてるわけなんですねぇ~。

 

(正直この部分はちょっとややこしい気もしますけど、「『1の力で押して、5の面積』なら『5の力で押した』、一方20の面積なら『20の力で押した』ことになって、小さい方が負けるんじゃないの?」って気も直感ではしてしまうんですけど、あくまで「加えた圧力が、水が形成する圧力として全体に伝わる」なので、跳ね返ってくる(押し返される)力を考える必要があるわけですね。

 僕は正直、自分の直感的には、バットの場合細い方が勝ちそうな気がするし、この注射器の場合は大きい方が勝ちそうな気がするので、まさに物理のセンスが壊滅的になさすぎる人間だといえましょう(笑)。)

 

実際に、例えば面積比1対1000ぐらいの二連ピストンを作ったとすると、本当に、幼稚園児の指一本で押す力が、大人10人とかが全体重をかけて押した力に余裕で勝てるみたいな状況が発生しまして、これを使った応用例が油圧ポンプなんかになるんですね。

 

…と、まぁその一言で終わりでもいいのですが、せっかくなので油圧ポンプについてを、記事水増しのため以外の何物でもありませんが(笑)、次回ちょっと取り上げてみようかと思います。

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