チビタン!

色々な話題に触れられて非常に助かっております「フェノクロ・エタ沈」ネタ、前回はクッソ偉そうに、「大学生は無能、研究を進める上ではお荷物で役立たずの、ゴミカスのような存在」などという暴言(そこまでは言ってなかったし、実際全く思ってはいませんが(笑))とともに、生命科学実験の基礎知識と具体的な実践法について、他ではあまり触れられていない実験の原理についてもまとめられており非常に体系的に学ぶことができる硬派な本『モレキュラー・クローニング』という書籍は大変オススメです…

(なお、THE CELL(正式には「Molecular Biology of the Cell(細胞の分子生物学)」という、分子生物学のバイブルヅラしているゴミみたいな本は、強くオススメしません、本当に記述が冗長で説明も下手で面白くなく、金ドブです……という暴言も吐いていましたが(笑)、幸い僕は別に大学入ってあの分厚いクソ高い本を買ってしまった…ということはなく、純粋に図書館とかで読んで、

ザ・セル、有名な教科書の割に、本当に酷いなぁ」

…と思っただけだったんですけれども(まぁ学生の頃なので日本語版であり、訳があまり良くなかった可能性もありますけど、その後英語版を手に取ってみても、日本語版の印象が最悪だったこともあり、全然いい本には思えませんでした)、とはいえ「これで一通り生命科学について学んだ」という極めて優秀な同級生(優秀なだけあって物理選択で、生物の勉強は大学から)もいましたし、読む気にならなかったのは自分の能力が足らなかっただけの可能性もありますから(笑)、まぁあんまり悪く言うのはやめておきましょう)


…なんてことにも触れていたものの、まぁでもやっぱり、モレクロも例外ではなく、もう学術的な最先端の教科書・百科事典的なものというのは紙でできた成書の存在意義が本当に薄れてきており、ウェブ上の情報の方が情報の更新が可能であるという点のみならず、説明もより噛み砕かれたもので分かりやすいことが多い…と、ほぼいい所なしでネットの完全勝利になってしまっているかなぁ、って気がしますね。

 

例えば、医科学生命科学系試薬・実験機器販売の世界最大手であるThermo Fisherなんかが用意してくれている教材サイト(↓)は…

 

www.thermofisher.com

 

…もうこれをちゃんと読みこむだけでそこらの大学院生より詳しく理解して、分子生物学実験のイロハにも親しめるといっても過言ではないぐらいの、素晴らしい内容に思えます。

 

(とはいえやっぱり、実際にやったことがないと、そんな説明だけを見てもあんまり身をもって理解まではできない気もしますけどね。

 なお、リンクは英語版を貼って、「英語の勉強にもなるのではないでしょうか」などと書こうと思ったのですが、ThermoはIPから言語を自動判定して返すので、はてなブログのリンクカード作成機能を使ったら、自動で日本語版に切り替わっていました。

…ちなみにThermoのサイトの国籍を変えるのは結構面倒で、今ちょっと設定変更をしている暇がないので日本語版の教材がどんな感じなのか僕は見れないんですけど、まぁ自動翻訳ではなく、ちゃんとプロの方が翻訳されたものだと思うので、英語版と遜色ない出来になっているのではないかと思います。

「DNAのクローニング」(=制限酵素とか、以前このブログでも何度か見ていた話(途中で脱線して、極めて中途半端な状態(笑))でした)・「PCR」・「逆転写」・「大腸菌の形質転換とコンピテントセル」・「PCR装置」・「核酸電気泳動」…の6章がある感じですね。)

 

…と、今回のネタはあまりにも大したことがないので、また前置きとして前回の補足をちょろっと書いてみました。

 

ではフェノクロステップの補足、次の段階に参りましょう。

 

4. 遠心分離する

Centrifuge at 13000 rpm for 10 minutes

=1万3000 (回転/分) で、10分間遠心する

 

まぁこれはこないだも書いていた通り、高速で回転する機械にチューブを入れて回して、遠心力で密度に応じた相分離を行う……って話ですけど、とりあえずフェノクロの遠心は、ただ二層に分ければ十分なものであり、水とフェノール(フェノクロ)両者の密度の違いは結構あって、大した遠心力をかけずとも普通にあっさり分かれますから(遠心しなくても、放置したら時間とともに勝手に分かれるレベル)、絶対10分も回す必要はなしですね。

 

もちろんタンパク質が大量にあって、「よりしっかりタンパク質を中間層に移動させたい」という意図があったらまぁ5分とか回した方が安心かもしれませんが、大してタンパク質もない酵素反応後のフェノクロとかですと、マジで1分も回せば完璧です。

 

実際、3分とか5分とか、あまりにも中途半端な時間すぎてそんな短時間では特に他に何もすることができず、回している間は無為に待つしかないため、ここで律義に10分とか回して待っていると、本当に人生の時間の空費でしかありませんから(ってまぁ、10分空くなら、トイレとかメールチェックとかそれこそネットサーフィンとか(それは10分だと足りない気もしますけど(笑))で使えるものの、3分とか5分だと本当に、実験台からデスクに戻ったところで何をする時間にもならない感じですしね)、できるかぎり短くしたい所だといえましょう。

 

また、こないだも書いていた通り、「1万3000 rpm(回/分)」というのは、研究室に通常ある高速遠心機の最高回転数で、まぁどうせ回すなら最高速度で回しますけど、「フェノクロなんて相分離できればいいんだから、そんなにしっかり長く回す必要ないですよ」と教えてくれたのは実は僕が学生の頃の助教の先生でして……

その先生は、これまた実験室によくある、超小型の簡易遠心機、通称「チビタン」と呼ばれるおもちゃのような遠心機で1分どころか数十秒ぐらい回して「はい十分」と何食わぬ顔で実験を進められていたんですけど、まぁ実際のモノを見たことがない方には「何のこっちゃ」って話かもしれませんが、流石に「そんなんでいいの?!(笑)」と驚きを隠しきれない感じで、ものぐさで時間効率にうるさい僕でも、未だにフェノクロはチビタンじゃなくてまともな遠心機でやるかな、って感じです。

 

まぁ文字だけではあれなので、せっかくなので写真も交えて見てみますと、「チビタン」で検索したら、業務用の機械・装置通販といえばこちら、我らがモノタロウのページがヒットしてきましたね(↓)。

(まぁ、モノタロウも何度かリンクを借りてますけど、僕が学生の頃はまだそこまで著名でもなかったですし、僕自身は一回も使ったことはないのですが…)

 

https://www.monotaro.com/k/store/チビタン 遠心 機/より

チビタンってのは、これを見る限りメルクかミリポアの登録商標だったんですかね…?

 

断トツ・桁違いで高いのが1位ってあり得なくない…?と思えましたが、まぁ「チビタン」検索だからそうなのかもしれませんけど、どれもデザイン・機能はほぼ一緒だと思います。

 

半透明のカプセルのフタに、本体部分には例の1.5 mLのエッペンチューブを6本入れられる「ローター」がついていることが多いですけど(8本とかのこともありますが)、チューブをセットしてフタを閉じたら、一定の回転数で回り続けてくれる…というただそれだけの機械ですけど、以前フェノクロ・エタ沈記事で、

生命科学実験ってのは、ほぼ『混ぜて、遠心で回して落とす』の繰り返しだけです」

…と書いていた通り、「遠心する」ということ(よく考えたらその日本語はおかしい気もしますが、あまりにもよく使いすぎるので「遠心機を使ってチューブを高速回転する」ことを「遠心する」と動詞的に使っているぐらいですね)は本当にやりまくる工程になっていまして、その際、フタの開け閉めとか回転のON/OFFとかが非常に簡便に行えるこのチビタンは、いろんな場面で大変便利なんですね。

 

(試薬類をチューブに加え、軽くタップして混ぜた後、壁に飛び散った液滴を底に落とす……的な用途が多いです。)

 

とはいえ、回転数はしっかりした遠心機よりも遥かに小さく、また遠心力ってのは「回転速度と半径」によって決まりますから、小型のこれはかかる遠心力も大変小さく、あくまで「簡易遠心機」でしかないんですけれども、僕の教わった助教の先生なんかは、経験からもう「フェノクロの相分離なんぞ、チビタンで十分」ということを理解していて、しばしばチビタンで簡単に終わらせていた、って話ですね。

 

回転数を調べてみたら、もちろん機種によって多少の前後はあるものの、メジャー所は「6,200 rpm」という記述が目立ちました。

 

1万3000 rpmには到底及ばないし、上述の通りまともな遠心機より半径もずっと小さいので、かけられる「G」(重力加速度、要は遠心力ですね)はかなり小さくなりますけど、でもそれでも車のエンジンの回転よりも遥かに速いですから、案外バカにならないですね、チビタン。

 

ちなみに学生実験でも、安価で数を揃えられる・場所を取らない・適当に扱っても壊れにくいという点から大活躍のチビタンで、僕が生命科学実験の講義というか実習で初めて習った(覚えた)のは、「ボルテックスとチビタン」であり、ボルテックスがこないだの記事でも出していた、押し付けることでブルブル震えるミキサー、そしてチビタンがこの遠心機ってことで、改めて、生命科学実験というのは「ボルテックスで混ぜて、チビタンで落とす」ってことをバカの一つ覚えみたいにただ繰り返すだけの苦行であると、そうも言えてしまう感じかもしれません(笑)。

 

なお、どう考えてもチビタンは日本語で、英語では何て言うんだろうと最初は悩みましたが、「カプセル状の遠心機(英語でcentrifuge)」ということで、capsulefuge(カプセル・フュージ)なんて呼ばれることが多いと思います。

(まぁ、多分チビタン同様、カプセル・フュージも商標かもしれないので、製品によっては普通に「micro centrifuge(マイクロ・セントリフュージ)」みたいに呼ばれることも多いですが…)

 

あと最後に、チビタンの上部半透明カプセルの部分には目とか口みたいなシールが貼られて顔のようになっていることが非常に多く、「もしや製品に、貼る用のシールがついてくるのか?」とか思えましたけど、何気に日米どちらでも見た気がするので、もしかしたら研究者のシャレ心は世界共通といえるのかもしれませんね。

 

…と、今回はチビタンなんぞではなく、別の遠心ネタに触れていく予定だったのですが、チビタンごときで意外といい分量を稼げてしまったので、欲を出して遠心ネタは2回にわけて、次回もしょうもない小ネタに触れていこうかな、と思います。

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