DNA、ゲットだぜ!

前回の記事では改めて「染色体・DNAの数」について簡単な数字いじりをしながらまとめていたましたが、結論だけ再掲しますと、染色体1本は平均1.4億塩基がつながってできたDNAからできており、細胞1つには46本の染色体が含まれており、人間ひとりには約37兆個(かつては60兆個と言われることもありましたし、これは正確な数字は分からない(というか定まってない)レベルですけど、まぁ数十兆個ですね)の細胞から出来ている…

…ということで、ちょうどこの3つの数字を順番に掛け合わせていくことで、「何あたりの」という次元がひとつずつ大きくなり、最終的に「人間1人あたりに含まれるDNAの塩基の数」が求まるわけですが、これはざっくりした計算で大体3000垓(がい=京 (けい) の次の単位)塩基ぐらいになるという話でした。

 

そういえば、化学でよく出てくる、(また、一連の記事でも何度か出てきている)「モル」という単位は、約6000垓個の分子を意味するものでしたから、人間ひとりに含まれる遺伝子DNAは、トータルで大体0.5 molぐらいの数の構成要素(=A, C, G, Tの4種類のヌクレオチド)から成る……ってことで、これは奇妙な一致と言いますか、やっぱり分子レベルのものを考える場合、「モル」ぐらいの単位を用いると、概ね扱いやすい数字に落ち着くもんなのかもしれませんね。

 

まぁその辺の数字遊びは、そない面白い話でもないのでその辺にしておきまして、じゃあ、こないだ画像を貼っていたあの白いモヤモヤのDNA、あれは果たしてどうやって得られるのでしょうか?!

……ってまぁそんなこと気になる人は特にいないかもしれませんが(笑)、実はご家庭にあるものを使うだけで案外簡単にDNAはゲットできるので、今回はそのネタに脱線してみようと思った次第です。

 

実際これは、純度や収量(どれだけキレイな=DNA以外の分子を含まない形で、どれだけ沢山のDNAが得られるか)にこだわらなければ、本当に簡単に行えるものであり、ごくごく簡易化したものなら、キッズ科学体験教室みたいな出し物なんかでもよくやられるぐらいの作業になっています。

 

検索したら早速、日本化学会主催の「化学だいすきクラブ」がまとめてくれている、小中学生向けのDNA抽出実験のやり方が紹介されていました。

 

こちらのリンクにあるように(↓)……

kdc.csj.jp

 

…この実験では、DNAを採集する材料として、ブロッコリーを使って目に見えるDNAをゲットする感じになっているようです。

 

まぁあらゆる生物は細胞からできており、細胞には染色体が格納された「核」が存在するわけですけど、細胞…というか生物によって、その核からDNAを取り出しやすい/づらいの違いがありますから、簡単に入手出来て、そこそこDNAも抽出しやすい素材がこの手の実験では選ばれやすい感じですね。

 

道具・材料の写真をお借りすると…

https://kdc.csj.jp/learning/item_812.htmlより

主な材料としてはブロッコリーに、塩、洗剤、そしてエタノールなんかも用意する必要があり、道具としては「すり鉢」なんかもあった方がいいので、「今どきの家庭にそんなもんあるか…?」とも思えるわけですけど、まぁすり鉢はあくまで「あった方がより効率よくDNAを抽出できる」だけで、最悪、包丁でみじん切りとかしてもいいと思います。

 

実験操作は6ステップありましたが、結局ほとんどの工程は「ブロッコリーを、速やかに、しかしなるべく静かにすり潰します」ってだけで、それさえ上手くやっちゃえれば、後は塩と洗剤を混ぜた「DNA抽出液と混ぜる」だけだといえましょう。

 

で、すり潰したブロッコリーの葉っぱをDNA抽出液に加えると、DNAが水に溶けるわけですけど、ここにエタノールを加えることで、まさにこないだから見ていたあの白もや画像で行われていると言っていた「エタノール沈殿」、通称「エタ沈」を起こすことで、DNAが水に溶けていられなくなり、白いモヤ状の物質として目に見えて現れてくる……と、そういう話なのでした。

 

結果の画像の方もまたお借りすると……

https://kdc.csj.jp/learning/item_812.htmlより

…まさにこの画像右、コップの壁に付いている白いモヤが、ブロッコリーさんの遺伝子DNAだと、そういうことなんですね!!

 

ただ、ブロッコリーって別に美味しくないですし(それは全然関係ないっていうか個人の好みですけど(笑))、やはり「スリ鉢とかそんなもん持ってないよ」という話な気もしますから、もうちょい簡便なものはないか他のリンクもチェックしてみました所、研究機器などの製造でおなじみ、アズワン社の主催するLab BRAINSという研究者のコミュニケーションサイトで、バナナを使った実験が紹介されていました。

 

lab-brains.as-1.co.jp

 

全体の工程はほぼ完全に同じですが、身が柔らかくて美味しく、しかも安くて栄養も豊富なバナナは(まぁ「柔らかい」以外は関係ないですけど(笑))、DNAを抽出するために「ジップロックに入れて手でつぶせばOK」という簡便さなので、クソまずブロッコリーなんかより、みんな大好きバナナのこちらの方が圧倒的にいい気がしますね!

(まぁ、実験に使う=食べる以外の目的で用いるなら、不味いものを使う方がいい気もしますが(笑))

 

先ほどと同じように、バナナを懸濁したDNA抽出液にエタノールを注ぐことで白モヤが得られるわけですが、何かボリュームに欠けるブロッコリーの葉の部分より、バナナの方が圧倒的に身が詰まっている=DNAが豊富なのか、こちらはこの画像(↓)にあるように……

https://lab-brains.as-1.co.jp/enjoy-learn/2021/10/36672/より

…割りばし(どう見ても爪楊枝に見えますけど(笑))でスルスルと絡めとって引き上げることができるぐらいの量がゲット可能ってことで、見た目・実験する楽しさ的にもやっぱりブロカスなんかより断然バナナ様を使ったこっちの方がいい気がしますねぇ~。

 

ですがしかし、「いやバナナのDNAて(笑)。そんなの抽出して、だから何なんだよ(笑)」というのはぶっちゃけ、まぁそれはそうとしか言えないかもしれません(笑)。

 

そんなわけでここはやっぱり、植物みたいなどうでもいいヤツらじゃなく、人間、まさに自分のDNAを抽出する実験も紹介してみるといたしましょう。

 

こちらは教科書で名前を見た覚えがあります啓林館による、高校生~大学生を対象とした多少本格的な実験であり、遠心機なんかも使ったものになりますけど(↓)…

 

www.shinko-keirin.co.jp

 

…しかしよく見たら遠心機はオプションであり、なくても問題ない上、用意するものなんかも何せ自分の細胞を使うだけですから、むしろブロッコリーやバナナを買う(そして無駄使いする)必要がないという、逆にこれが一番簡単な方法だったかもしれません。

 

全体の工程は若干の違いはあれど結局本質は同じで、違いは前半の「サンプルからDNAを取り出す方法」なわけですけど、この実験では、「食塩水を口に含んでブクブクうがい、その際なるべくほっぺたの内側を軽く噛んで、細胞をこそぎ出すのが望ましい」という形になっているようです。

 

ブロッコリーをすり潰すとか、バナナをジップロックで頑張ってモミモミとかに比べて、作業自体も遥かに楽でしたね(笑)。

 

ただ、高校生以降の多感なお年頃だと、友達…ならまだしも異性の前でブクブクして、しかもほっぺたの細胞を落として濁った液をペッと吐き出すのは極めて抵抗がありそうな気もしますけど、まぁそこは実験という大義名分のために我慢してもらうといいますか、気の利く先生なら、透明ではなく中の見えない紙コップなりを用意してあげるべきな気もしますね(まぁこの実験でわざわざ透明のコップを用意する人なんて逆にいないかもしれませんが(笑))。

 

で、結局、この「ブクブクとうがいして混ざったほっぺたの細胞」というほんのちょっとの量からDNA(まさに自分自身の遺伝子そのもの!)が白いモヤモヤした物質として得られるということで、これは中々面白くて興味深い実験といえるのではないでしょうか。

 

とはいえ正直、何というか「仕組み」や「何をやってるか」など全部分かってやるならまぁそこそこ楽しめるかもしれないものの、先ほどの「バナナのDNAをゲットして……で?」って話じゃないですけど、ハッキリ言って「DNAが白いモヤとして見られて、だから何やねん」と言いますか、それ以上に、こういう体験型の実験って、「結局何してたの?」「今これは何のために行ってる作業なの?」って思えて、「楽しめた」というよりむしろ「???」で終わってしまいがちな気もしてしまいます。

 

実際僕自身、大学入って受けた学生実習で、ちょうど植物(ブロッコリーではなく、研究でもよく使われる植物の葉っぱでしたが、すり鉢でゴリゴリなどは完全に同じでした)を使ったやつも、自分の細胞を使ったやつもどっちも体験しましたけど、同じことを感じたというか、むしろ「何も感じなかった」という方が正確かもしれません。

 

まぁ僕は受験も化学・生物を選択した上でパスして、しかも専門課程としてこの辺の生命科学実験と完全ドンピシャの分子生物学を選び、のみならずそのまんまこの学問を研究していくことを生業にして生きているという、はたから見たらオタクレベルにこの辺の話が好きそうな男なわけですけど、そんな僕ですら、こういった体験実習・学生実験の類は、マジでただ言われたことをそのまんまやって、いわば脳死で作業をこなしただけで(下手したら同じ班の人がやってるのを見てただけ(笑))、結局何やって何見たかったのかとかはほぼ1ミリも理解せず、ホント「あぁ早く帰ってゲームしてぇなぁ~、そういやあのCDと漫画、明日発売だけどもう生協に置いてあるかな?終わったら見てくかぁ」とか、実験とまるで関係ないこと考えて、ただ時間を空費して過ごしてただけという、クソみたいな感じでしたもんね(笑)。

 

そんなわけで、せっかくなのでその後自分の研究でエタ沈を何万回として、ついにやってることを理解できた僕が、あの頃ワケも分からずやっていた上記の実験の意味なんかをちょろっと補足的に書いていこうと思いましたが、またしても時間切れとなってしまいました。

 

正直この場合、本質はほぼ「エタノール沈殿」だけなので、そんな解説するまでもないんですけど、例によって慢性的な時間不足・ネタ不足のため、記事水増し用に、次回は上で紹介していたDNA抽出実験の各ステップをもうちょい細かく詳しく見てみようかな、と思っています。

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