呼吸から発展して、いわゆる細胞呼吸と呼ばれる、グルコース分解を起点とする3経路の他に、より高効率のエネルギー生産につながる脂肪酸を分解することもあり、さらにはより即効性のあるエネルギー獲得につながるクレアチンリン酸が用いられることもあります…などと前回の記事で見ていました。
サプリ・栄養食品を取り扱うDNS ZONE社による、とても分かりやすい解説ページを前回参照させていただいた通り、特に大量のエネルギーが急激に必要になる筋肉において、速やかにATPを用意できるクレアチン系は大変重要な役割をもっており、この経路を鍛えることはそれ即ち「瞬発力の底上げ」につながるということになりますから、筋トレ界隈では恐らく、それなりにメジャーな分子なのではないかと想像します。
実際、DNS ZONE社も取り扱いをされているようでしたが、調べてみてもあまり日本ではそこまで「各社が必ず出す栄養素」ってわけではないように見受けられたものの、サプリ大国、並びにマッチョ大国でもあるアメリカでは当然のごとく、「creatine supplement」と検索することで(むしろ「supplment」すらなしでも)、ズラズラァ~っと、大量のサプリが並んでくる感じですね!(参考画像↓)
まぁ当然、最速ATP合成マシーンとして、瞬発力を産み出すもととなっている分子ですから、そういう意味のサプリであるのは間違いないものの、ちょうど都合よく、Google検索結果には、こないだ「世界を代表する、素晴らしい病院・医療研究機関です」などと紹介していたクリーブランド・クリニックによるクレアチン解説記事がヒットしてきていました(画像、Amazonの下のリンク)。
果たしてクレアチンをサプリとして摂ることでどのようなメリットがあるのか(ボディビルディング以外に)、またデメリットはないのか……今回は信頼と実績のクリ・クリさんの記事を翻訳紹介させていただくことといたしましょう。
クレアチン
クレアチンは筋肉にエネルギーを供給します。多くの人が、筋力をつけること、また脳の健康を促進するためにクレアチンのサプリメントを摂取しています。クレアチンのサプリメントはほとんどの人にとって安全ですが、まずはかかりつけの医療機関に相談し、自分に合っているかどうかを確認するようにしてください。
概要
クレアチンとは?
クレアチンは、骨格筋の屈曲(収縮)に用いられる、天然のエネルギー源です。クレアチンは、特に運動中に筋肉が働き続けられるように、筋肉に安定したエネルギーを供給するのに役立っています。
体内に供給されるクレアチンの約半分(1日あたり1~2グラム、ゼリービーンズで1~2個相当の大きさ)は、食事、特に以下のようなタンパク質が豊富に含まれる食品から摂取されます:
- 赤身の肉(豚肉、子牛肉、牛肉)
- シーフード(魚・貝類)
- 動物の乳(牛、ヤギ、羊の乳など)
残りの半分は、肝臓、腎臓、膵臓で、体内において自然合成されます。クレアチンの約95%は骨格筋に送られ、運動中に使われます。残りは心臓、脳、その他の組織に送られます。
クレアチンのサプリメントも各種企業によって製造されています。運動量が多かったり、食事で十分なクレアチンを摂取できなかったりするという理由で、クレアチンのサプリを飲む人もいます。クレアチンのサプリには、以下のような形態があります:
- 粉末
- 錠剤
- カプセル
- 液体
- エナジーバー
クレアチンを摂取するのは健康的ですか?研究によると、多くの人にとって、クレアチンサプリメントの摂取は安全です。しかし、以下のような場合に安全かどうかについては、十分な証拠がありません:
クレアチンを摂取する前に医療従事者に相談し、安全性を確認してください。
クレアチンは筋肉を増やしますか?
場合によりけりです。クレアチンを定期的に摂取し、ウェイトリフティングや運動をすることで、18~30歳の人の筋肉を増やすことができるという研究結果が存在します。しかし、クレアチンが65歳以上の高齢者や、筋肉に影響を及ぼす病気を持つ人の筋肉の成長に役立つと言えるほどの十分な研究結果はありません。
なぜ人々はクレアチンサプリメントを摂取するのでしょうか?
多くのアマチュアやプロのアスリートは、ワークアウトのルーチンを助け、回復を改善するためにクレアチンのサプリメントを摂取しています。クレアチンは、長時間運動する能力(有酸素持久力)には影響を与えることなく、「クイックバースト(瞬発力)」エネルギーと筋力の増加を生み出します。
クレアチンサプリメントを摂取するアスリートのほとんどは、以下のようなパワースポーツに参加しています:
- ボディビル
- サッカー
- ホッケー
- レスリング
さらに、クレアチンサプリメントが60歳以上の人々の脳機能を改善するかもしれないということを示唆する研究もあります。これには以下のようなものが含まれます:
- 短期記憶
- 合理的思考・推論
- 神経保護(神経細胞群を傷害や損傷から守ることで)
クレアチンのサプリメントが認知症などの認知(精神)疾患を持つ人々の役に立つかどうかについては、まだ研究している所です。
体力、年齢、健康状態にかかわらず、クレアチンサプリを摂取する前には医療従事者に相談してください。
クレアチンのサプリメントは、アスリートに勧められますか?
多くのアスリートがクレアチンサプリを使用しています。プロのスポーツ団体、国際オリンピック委員会(IOC)、全米大学体育協会(NCAA)は全て、アスリートがクレアチンサプリを使用することを認めています。
男性、女性、および出生時に男性または女性に割り当てられた人(AMABまたはAFAB)は、クレアチンを使用することの利点が報告されています。しかし、いくつかの研究では、クレアチンサプリを摂取する女性やAFABの人々は、男性やAMABの人々ほど多くの強さや筋肉量を得ることができないかもしれないことが示されています。
最も一般的なクレアチンサプリメントは何ですか?
最も一般的なクレアチンサプリは、クレアチンモノハイドレート(一水和物)です。これは、ウェイトリフティング、スプリント、自転車などの短時間・高強度の抵抗運動で筋肉のパフォーマンスを向上させる栄養補助食品です。他の形態のクレアチンには、このような効果はないようです。
プロセスの詳細
クレアチンを摂り始めるとどうなりますか?
ほとんどのクレアチンは骨格筋に行き、骨格筋ではクレアチンがクレアチンとリン酸の化合物(=ホスホクレアチンまたはクレアチンリン酸と呼ぶ)に変換されます。そして、クレアチンリン酸はアデノシン三リン酸(ATP)の生成を助けます。ATPは運動時に細胞が使用するエネルギー源です。そのため、クレアチンは激しいリフティングや運動の間、筋肉への継続的なエネルギー供給を維持するのに役立ちます。
より多くのエネルギーを供給し、筋肉の成長を助けるのみならず、クレアチンには以下のような効果もあります:
- 筋肉の回復を早める。運動をすると、筋繊維に微細な断裂が生じます。回復すると、筋繊維の微小な裂傷が回復し、筋肉が強くなります。クレアチンは筋肉の衛星細胞を活性化させ、微小断裂の回復を助けます。
- 同化ホルモンを増やす。同化ホルモンは成長と組織の修復に貢献します。同化ホルモンには、インスリン、ヒト成長ホルモン(hGH)、エストロゲン、テストステロンなどがあります。
- 筋肉細胞の水分量を増やす。細胞の水分補給が改善されると、筋肉の成長が促進され、脱水症状や筋肉のけいれんが軽減され得ます。
また、クレアチンは脳内のクレアチンリン酸の量を増加させ、記憶力を助ける可能性があることも示されています。
クレアチンは毎日摂取すべきですか?身体は人それぞれであり、クレアチンの摂取量や摂取頻度をどうすべきかは、多くの要因によって異なります。クレアチンを摂取する前に、医療従事者に相談してください。クレアチンを摂取することが安全かどうか、また適切な摂取量についても判断してくれることでしょう。
クレアチンの摂取をやめるとどうなりますか?
クレアチンの摂取を中止すると、クレアチンレベルは数週間かけて徐々に低下していきます。体内でクレアチンは自然に作られますが、クレアチンレベルの低下に適応する過程で副作用が起こる可能性があります。これらの副作用には次のようなものが含まれます:
定期的な運動によって追加された強度を維持することができるはずですが、継続的な改善は見られない可能性が高いです。
リスクと利点
クレアチンを摂取する利点は何ですか?
定期的に運動している人にとって、クレアチンサプリメントの摂取は以下のような効果があることが研究で示されています:
- 運動パフォーマンスを向上させる
- 激しい運動後の回復を助ける
- 筋肉量の増加
- 重度の筋肉損傷を予防する、または筋肉損傷の重症度を軽減する
- アスリートがより激しい運動に耐えられるようにする
- 脱水症状やけいれんを軽減する
- 筋肉の緊張や引きつりなど、筋肉の硬直を最小限に抑える
あなたがベジタリアンまたはビーガンの場合、動物由来の食品からクレアチンが摂取されないため、クレアチンサプリメントを摂ることによって、より顕著な筋肉の増加が示される場合があります。しかし、筋肉中のクレアチンレベルを高めるにはより時間がかかるかもしれません。
クレアチンサプリメントは、アスリート的な効果に加えて、以下のような状態を抱える人々にも役立つ可能性があります:
- 筋ジストロフィー、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患
- 糖尿病
- 変形性関節症
- 線維筋痛症
- クレアチン代謝に影響を及ぼす疾患
- クレアチンの体内輸送に影響を及ぼす疾患
- 心筋への血流不足(心筋虚血)
クレアチンはどのくらい体を大きくしますか?
ご自身の運動習慣によります。しかし、いくつかの研究では、クレアチンサプリメントを摂取している人は、クレアチンを摂取していない人よりも、4〜12週間の定期的な運動の間に、筋肉量が追加で2-4ポンド(約1-2 kg)得られる可能性があることを示しています。
クレアチンの効果は永久的ですか?
クレアチンを摂取し、運動を続け、ワークアウトの燃料となる最高の食品を食べ続ければ、クレアチンを摂取して得た筋力を維持できるはずです。
クレアチンの悪影響は何ですか?
クレアチンは比較的安全なサプリメントです。しかし、副作用には以下のようなものが含まれる可能性があります:
- 水分保持による体重増加
- めまい
- 吐き気と嘔吐
- 下痢
- 過度の発汗(多汗症)
クレアチンの服用後にこれらの副作用が現れた場合は、1日の服用量を少量に分割してください。一度に服用するのではなく、1日を通して少量ずつ服用するようにしましょう。
医師に連絡するタイミング
いつ医療機関に連絡すればよいですか?
クレアチンを摂取する前に医療機関に相談してください。医師はおそらく身体検査を行い、以下のような質問をするでしょう:
- 現在、糖尿病、腎臓病、肝臓病などの疾患がありますか?
- 薬、ビタミン、その他のサプリメントを服用していますか?
- なぜクレアチンを摂取したいのですか?
- 目標は何ですか?
- 妊娠中、または妊娠を計画していますか?
- 現在授乳中ですか?
あなたに最適なクレアチンサプリメントと摂取量を提案してくれることでしょう。
また、クレアチンを摂取して副作用が出た場合は、医療機関に相談することをお勧めします。
クリーブランドクリニックからの覚え書き
クレアチンは体内で自然に作られる化合物で、タンパク質を多く含む食品からも摂取できます。筋肉にエネルギーを供給し、脳の健康も促進します。クレアチンサプリメントを摂取することで、筋力を高め、パフォーマンスを向上させ、頭を冴えさせる人は多いです。クレアチンに関する研究は多く、クレアチンサプリはほとんどの人にとって安全です。しかし、クレアチンの使用は副作用を引き起こす可能性があります。クレアチンの摂取を考えているなら、医療従事者に相談してください。クレアチンがあなたにとって正しいものかどうかを理解する手助けをしてくれることでしょう。
まとめていたら時間切れとなりました。
「脳にも良さそう」とは、中々魅力的でしょうか。
次回、せっかくなのでもうちょい関連ネタの脱線で記事を見繕おうかと思っています。