どれも大事なエネルギー三種

前回の記事では、代表的なエネルギー獲得手段である糖代謝(解糖系・クエン酸回路・電子伝達系)、更にはそれとちょっと違う(具体的には、前半の非酸素消費系の反応が異なる)脂質代謝(β酸化)に加え、もう一つの重要なエネルギー産生物質といえる「クレアチンリン酸」を、ほぼ名前だけ紹介していました。

 

まぁ名前に関するどうでもいい背景知識までしか見れていなかったわけですけど、反応の中身については、実は語るまでもない話になっています。

 

これまで散々、「『エネルギーを獲得する』とは、『ATPを合成する』ということなのです」などと書いていましたけど、クレアチンリン酸の場合、なんてこたぁない、端っこについているリン酸を、単純にADP(リン酸が2つ結合している、要はリン酸が1つ足りないバージョンのATP)に渡してやって、無事にリン酸が3個結合したATPが作り出される……という、単なる「P」のやり取りに過ぎないもので、極めて単純かつ簡単なエネルギー生成といえる反応にすぎません。

 

前回の語源ネタで、クレアチンは「肉」という意味のギリシャ語由来だったようです、などと書いていましたが、実際こいつが沢山存在してエネルギー合成に働いているのは、特に筋肉になっています。

 

それだけ単純で簡単なエネルギー生成の存在意義…およびそれがなぜ筋肉に存在しているのか……というのは、ズバリ、「最強の瞬発性と瞬間出力を備えたエネルギー生成機構である」というのがそのものの回答になっている形ですね。

 

そもそもATPというのは、あらゆる生体反応に必要なもので、貯蔵ができない…というのか、むしろ常時合成しては何かに使われ続けるという、全身あらゆる細胞で引っ張りだこな分子であるため、そんなに余裕がなく「必要に応じて合成しなければいけない」というのが正しいのか、まぁその両方ともいえるかもしれませんけど、いずれにせよ「欲しいなら作れ」という分子になっています。

 

(具体的にどのぐらいの量が作られているのか、高校生物とかでよく計算問題で問われるものですが、面倒くさがって知恵袋に投げている子がいたので(笑)、こちらの数字を参考にさせていただくと(↓)……

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

…ズバリ、計算の答のみお借りしますと、1日に1人の人間の体内では、約50 kgものATPが合成される…

(しかも、体内には約5 gしかATPが存在していない=5グラムが全部使われて入れ替わるという反応が(実際は、常時使われては作られて…ですけどね)単純計算で1万回は起こっている!)

…ということで、実際の体内にはごくわずかなスプーン1杯レベルの量(=その瞬間に使われる分)しかないATPは、まさかの毎日「自分の体重」に匹敵するぐらいの量が作られている、ってことなんですねぇ~!)

 

まぁ「ATPは常に合成され続けている」というのは、「呼吸を止めたらすぐに死んでしまう」ということからも、自らの身をもって実感できる話だとは思うんですけど、それは裏を返せば、何もしなくても、ただ横になって寝そべり続けているだけでも我々は酸素を吸って呼吸をしてATPを合成し続けている(し続けなくてはいけない)ということになるわけですが……

…それはなぜかというと、当然、心臓を動かしたり、食べたものを消化するために胃を動かしたり消化酵素を合成したり、もちろん毛や皮膚や爪や血液その他、全身の細胞は新しく生まれ変わり続けている、なんてこともありますから、そういった基礎代謝でATPは消費し続けられているわけですね。


で、話の進め方が行ったり来たりの下手くそで恐縮ですが、何にでも使われるATPというのは基本的にそういった「生きるために必要なエネルギー」を作るので精一杯といえますから、「貯蔵している暇などない、必要なら作れ」(まぁ「あったら使われてしまう」って方が正確かもしれませんね、もしかしたら)という話につながるわけですけれども、「エネルギーが必要な時」というのはどういう時かと考えてみますと、実は、自らエネルギーを消費するのって、「筋肉を動かす」ってのが基本になるんですよね。

 

ちなみにより正確に言えば、心臓や内臓は自分の意志で動かすことができない(というか、「勝手に動いてくれる」という方が正確ですね)「不随意筋」であり、「自分で動かす」ことのできる筋肉を「骨格筋」と呼ぶわけですが…

(まぁ「随意筋」の方が正確ですけど、骨格筋の方が分かりやすい名称ですし、細かい点は気にせず行きましょう。

 なお、骨格筋にも耳の筋肉など「不随意筋」はありますけどね、細けぇこたぁ(…以下略…)ですね)

…要は骨格筋でめちゃくちゃ活躍するのが、このクレアチンだったわけです。

 

こないだ見ていた厚労省e-ヘルスネットの記事Wikipedia有酸素運動の記事にも書かれていましたが、改めて、ATPというのは貯蔵ができずに必要に応じてその都度作る必要があるわけですけれども、特に筋肉を動かすのなんてめちゃくちゃ大量のエネルギーが必要であるというのはどなたも想像に容易いと思いますが、これまたこないだの記事で何度も書いていた通り、酸素を使う好気呼吸というのは極めてエネルギー効率がいい代わりに、複雑な反応が絡んでくるものになるため、即効性には欠けるんですね。

 

そこで、効率は悪いけれど、より単純な機構でエネルギーを産み出せる解糖系、およびクレアチンリン酸系で、突然大きなエネルギーが必要になった場合は速やかにATPが賄われる形になっているわけです。

 

その辺の話は、上記こないだ参照させていただいた記事よりも、こちらこそが筋肉の専門家といえましょう、サプリメントや栄養製品の販売企業・DNS ZONEの筋肉解説記事に、「これは分かりやすい!」という画像があったので、お借りさせていただきましょう。

 

(↓:タイトルが「エネルギー源→減」の誤字となってるのは、まぁご愛敬ですね(笑))

www.dnszone.jp

 

 

https://www.dnszone.jp/nutrition_guide/1-3/より

そう、まさにここでまとめられている通り、最も単純な「リン酸基の受け渡し」という1反応で済むクレアチンリン酸系(画像だと、「ATP-CP系」となってますが、これはクレアチン・フォスフェート(リン酸)でCPという感じですね)が、最も瞬発的に作れるエネルギーになってるわけですね!

ただし、クレアチンは1分子から1分子のATPしか作れませんし、言うまでもなくクレアチン自体も使われたら減っていき、速やかに枯渇してしまいますから、概ね8秒程度しか持たないエネルギー合成経路ということで、まさに、「100メートルを全力で走る」程度の短距離エネルギーしか産み出せないという形といえましょう。

(ただし、本当に一気にすぐ産み出せるので、瞬発力がある。)

 

そしてそれよりはもう少し持続するけれどもうちょっと作るのが大変な解糖系は「ミドルパワー」ということで、持久的な筋肉運動で使われるものであり、そして最後の我らが有酸素系(クエン酸回路~電子伝達系という、超効率・高手間経路)は当然、「持久的なエネルギー」ということですけれども、有酸素運動というのはズバリ、長く運動して、2つの短期的なエネルギー供給装置から切り替わらないと走りにくい機構だと、そんな風にいえるわけですね。

(だから、「有酸素運動は、それなりの時間行わないといけません」などと言われるわけです。)

 

とはいえ、じゃあなんで我々は運動しなくても常に酸素を使って呼吸しているのかと言いますと、それは当然、先ほども書いた通り、心筋やその他、常に動かし続けなければいけない生体反応も多量のエネルギーを使っているわけですけど、そういうやつらには瞬発力など不要で、むしろずーっと動かすために、より効率的なエネルギー生成が重要といえますから、そちらはやはり好気呼吸経路が優先して使われる形になっている……と、そういう感じだといえましょう。

 

…がもちろん、積極的に有酸素系の経路、特に、脂肪を使った最高効率の経路は普段の代謝では走りにくいようにできているため(これはこないだも書いていた通り、「いざという時の貯蔵のため」という意味も大きいと思います)、脂肪を燃やすためには、生きるための代謝以上に自主的な有酸素運動を行って、身体に「もうエネルギーが賄えない!こっちの最高効率の経路を活性化しよう」ということを覚えさせる必要があるわけですね。

何事も、「使わないと活性化されない」「逆に、使い始めればどんどん活性化されて、使われ慣れていく」ってのは、生物の鉄則になっている話だといえましょう。

 

…と、呼吸シリーズの最後ということで、もうちょい深入りというか丁寧に見ていこうと思っていたのですが、またしてもちょっとあまりにも時間がなかったため、何とも浅い記述となってしまいました。

 

DNS ZONE社の記事が何気に実用的なエネルギー生成・筋トレの知識をまとめてくれていたため、そちらをご覧いただくのが一番かもしれません、という丸投げスタイルでいかせていただこうかと思います。

(…とはいえ何かもうちょい書こうと思ってたことがあった気もするので(なかったかもしれませんが)、次回もまた呼吸ネタまとめを続けようかな、と考えています。)

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