最強の素材はどれだ?!

熱と硬さの関係について、個人的に気になることをちまちま見ている最近の記事ですが、前回はふと思いついた「金属の焼き入れ」について、まぁ正直キーエンス先生の参考記事を貼っただけでしたけど(笑)、軽く情報に触れていました。

 

詳しい仕組みについてまでは分からなかったものの、高温に熱し、急冷することで金属原子(まぁ混ぜ物の炭素もあるというかそちらの方が重要かもしれないので、「金属」に限りはしないかもしれないものの)が上手いこと、まさに整う感じ(熱して冷やすという、サウナで言われてるものに近いかもですね(笑))でよりカッチリした硬度が得られると、そういう話であったように思われます。

 

しかしよく考えてみたら金属の焼き入れよりももっと身近に「熱すると硬くなる」ものは存在していまして、それがズバリ……プラスチック!!

 

「え?プラスチックなんて、火にかけたらクニャッと溶けそうじゃん、どこが硬くなるというの…?」と思われるかもしれませんが、チッチッチ……!

 

実は、この世の中には大きく分けて2種類のプラスチックが存在しまして、それがまさにそのまんま、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」であり、読んで字のごとく、後者こそが「熱すると硬くなる」タイプのプラスティックなんですね!

 

ja.wikipedia.org

 

前者の「可塑性」ってのはあまり聞き慣れない気もするものの、実は何気に、「plastic」という英単語は、まぁもちろんいわゆるプラスチックという意味でも使われるわけですけど、元々は「形成する、自由な形に変えることができる」という意の言葉であり、漢字で書くとそれを「可塑性がある」って言うわけですね。

(plasticには他にも「人工的な」とか、「創造的な」という意味にもなればほぼ真逆の「偽物の・フェイク・劣った」という意味など色々なるわけですけど、結局はどれも「可塑性(容易に変形可能である)」という意味に落ち着くというかそこが語源だといえましょう。)

 

この熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂は、何気に高校化学でなぜか名前と代表例だけ覚えさせられるもので、まぁ理系で化学を選択された方なら「あったねぇ」と思い起こされる話だと思うのですが…

(普通に、理論・無機・有機と大きく3つの単元のある高校化学の最後に学ぶことが多い有機の、しかも高分子化合物という一番最後の方にやるチョイネタなので、受験が終わったら記憶から抹消されがちな内容であることがほとんどなわけですけど(笑))

…まぁプラスチックといえば基本「熱を加えるととろける」イメージがあるように、基本的に熱可塑性樹脂の方が多いといえることもあって、「熱硬化性樹脂には何が含まれるか」を覚えて、「残りは普通に熱可塑性樹脂だ」と、そんな風に覚えて適当にやり過ごした程度の話といえるような気もします。

 

名前だけ憶えて、特に具体的な構造までは覚えさせられた記憶もないですが、ちょうど↑のウィ記事にもある通り、まぁ代表的な熱硬化性樹脂は4つぐらい、フェノール樹脂 (PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂、UF)…なんかが代表例といえましょう。

 

「ん~?火にかけても溶けないプラスチックなんて、ある?元々フニャフニャのレジ袋は言うに及ばず、ペットボトルとか、文房具とかおもちゃとか、どれも火で炙ったら簡単にとろけそうじゃん?」と思えるかもしれないものの、もちろんそれらはどれも熱可塑性樹脂なだけで、それとは結構違うタイプ……まぁ「熱硬化性」っていうぐらいだから当然ですが、基本的にもっとハードな素材感あふれるものが多い感じですね。

(もちろん、熱可塑性樹脂にも、素材として硬くて丈夫なものもいくらでもありますし、熱硬化性樹脂でフニャフニャなものもあるわけですが…)

 

例えば上に挙げた個別の熱硬化プラスチックの1つ、尿素樹脂のWikipedia記事を見てみたら、まぁ自宅に持ってはいなくても誰でもどんなものかは想像できるものとして、麻雀牌なんかが挙げられていましたね!

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/尿素樹脂より

 

ズバリ、ジャンパイはかなり丈夫でハードな物体で、「あぁ確かに、麻雀牌をフライパンで熱しても、あんまり溶けちゃうイメージは湧かないわね」と思えるのではないでしょうか…?って気がします(もしかしたら「そうかぁ?流石に溶けね?」って話かもしれないですけど(笑))。

 

というか、何気に「熱硬化性」といっても、これらは「加熱するとどんどん硬くなる」という性質を有しているわけではなく、あくまでも「加熱することで分子が重合し、堅固な構造が形成される」というものであり、多くのプラスチック製品は既に製造の段階でしっかり重合されているものがほとんどでしょうから、改めて「加熱すればするほど硬くなる」というわけでは決してないことには注意が必要かもしれません。


…とはいえ、卵を加熱したらゆで卵に固定される(加熱し続けたら、まぁ卵は炭化しちゃいますけど、「液状に溶ける」ことはないですし、冷やしても生卵には戻らない)ように、一度形成された分子構造は容易にはほどかれませんから、「加熱して溶けてしまう」ことがないのは熱可塑性樹脂との大きな違いですね。


つまり逆にいえば、「燃やしても分解できない」といえるので、リサイクルには不向きであり、環境問題的に見直されつつある(というか、分解可能な新技術の研究が盛んになされている)…というのは、最初に貼ったWikipedia記事に掲載されている通りだといえましょう。

 

同記事によると、熱硬化性樹脂としては、上記4つ以外にもそういえばポリウレタンなんかもこれに含まれるようですが、そういえば樹脂の話って、ずーっと前の「楽しい有機化学講座」で触れたことがあって、ポリウレタンのウィ記事(↓)に存在する画像も絶対以前お借りした記憶があったため…

 

ja.wikipedia.org

 

…一瞬、「ここまでペチャクチャ書いてみたけど、実は熱可塑性とか熱硬化性とか、もう以前書いたことあったっけ?」と不安になったものの、幸い、その辺の記事(↓)では高分子の重合の話をしていただけで、熱については特に触れていなかった感じでした。

 

con-cats.hatenablog.com

 

…まぁ別に触れててもどうでもいいというか、逆に言えば触れるほどでもない、大しておもんない話だと当時考えて触れなかったともいえるわけですけど(笑)、いずれにせよ、一言でプラスチックといっても、どれも「小さな分子が複数つながりまくって生まれる高分子である」という共通点はあるものの、それぞれの熱安定性なんかには物質ごとに極めて大きな違いがあるのです、という話でした。

 

ちょうど、↑で貼った昔の記事のリンクカードの冒頭文でも触れていましたけど、誰でも知ってるプラスチックといえばやはり、PE:ポリエチレン、PP:ポリプロピレン、PS:ポリスチレン、PET:ペットボトルなんかになりますが、これらは全部熱に弱い、熱可塑性樹脂になります。


とはいえ、熱可塑性樹脂の中にも、日常生活で生じる熱程度なら十分耐えられるものも存在しますし(というか、ほぼ全て、常温で溶けるなんてものは存在しないですけどね)、成形の容易さ・価格・その他熱以外の要因への安定性などなどで、必ずしも熱に強いやつが優秀かというとそうでもなく、むしろ世の中には普通に熱に弱い可塑タイプのプラの方が圧倒的に沢山使われている形とさえいえるぐらいですね。

 

以前の記事でも軽く触れていた「プラまとめ」ですが、より網羅的にかつ簡潔にまとめてくれている記事が、検索したらトップにヒットしてきた二幸技研社の素晴らしいまとめで見つかったので、参考までにリンクを紹介させていただこうと思います。

 

nikougiken.jp

 

もちろんこちらの記事でも「可塑」と「硬化」の2種類に大別されてそれぞれまとめてくれている形ですが(可塑タイプが「チョコレートと同じ原理」、硬化タイプが「クッキーと同じ原理」というのは、凄まじく分かりやすい例え話ですねぇ!)、まぁ個別に全ては触れないものの、例えば代表的な硬化タイプであるフェノール樹脂なんかは…

 

  • フェノール樹脂(PF)
    (世界ではじめて天然由来以外の原料から人工的に作り出されたプラスチック)

【常用耐熱温度】150℃
【特 徴】電気絶縁性・耐酸性・耐熱性・耐水性が良い。燃えにくい。
【主な用途】金属代替部品として機械部品や自動車部品。鍋などの取っ手、つまみ。結合剤や補強材。など

 

…などのように、「鍋の取っ手」と具体的な用途込みで書かれていて、大変イメージがしやすいですね!


(高校化学では、特に用途までは覚えず単に「こいつらが硬化タイプ」と棒暗記していただけなので、具体的なモノのイメージができるのはやっぱり良いですね)

 

ちょうどこの手の素材一覧を見ていたら、(これもどこかで触れたことがあった気がしますが)研究ではよく消耗品としてプラスチックチューブを使うんですけど、購入の際、特に試験管っぽい細長いものなんかは材質の選択が可能で、それぞれどういう特徴があるんだろう…と調べたときのことを思い出しました。

 

研究用チューブの場合、特に試薬類への耐性が重要になってくるため、まぁその辺は日常生活ではほぼ関係ないわけですがちょっと脱線してみますと、試薬とプラスチックの反応性についてはほぼ全く直感でイメージできる話にはなっておらず……

例えばプラスチック製のメスシリンダーなんかはどのラボでもよく使われますけど、多くの場合ポリプロピレンかポリエチレン製になりますが、生命科学実験で非常によく使われるクロロホルムなんかを学生が測ってしまい、流石に一瞬でぶっ壊れたりクニャ~っととろけたりはしないものの、透明なプラスチックに真っ白いヤケド跡みたいな酷い模様が残ってしまった可哀想なメスシリンダーが、大抵どこの研究室にも1本ぐらいあるものです(笑)。

(めちゃくちゃダメージボディになってしまっても、何気にそこまで体積が狂うことはないので、気にせず使っている研究室が多い感じですね。)

 

そういった各プラスチックの薬品耐性表、検索したら、我らがアズワンの研究用品系サイト・AXEL(アクセル)のページに、(プラスチックに限らずより広範な素材含め)非常に網羅的なものが見つかりました。

 

ちょうど有機溶媒の「か行」にクロロホルムがありましたけど、クロホって意外と多くの素材にダメージを与えるヤベェやつなんですよねぇ~。

 

https://axel.as-1.co.jp/contents/ks/cr_listより

軒並み実用に適さない「×」ばかりで、全く問題なく使えるのは、ほぼフェノール樹脂製の容器だけ!

(とはいえ、じゃあクロロホルム自体はどうやって保管されているかというと、普通はまぁプラスチックは使わず、ガラス瓶なんですけどね。)

 

あとは何気に我らがチタンもクロホに完全耐性があるってことで、やっぱり僕の中でチタンの印象は「強い、カッコいい!」って感じですけどそれはともかく(笑)、表を見ていたら、クロホだけは「〇」だったものの、その他、ほぼ全ての薬品で完全バリアを誇る「◎」評価がされている、最強の素材が見つかりました。

 

例えば酸のデータを見ても明らかだと思いますけど…

 

https://axel.as-1.co.jp/contents/ks/cr_listより

まさかのオール◎、「金(ゴールド)」すら溶かす最強酸でおなじみ「王水」すら無傷で触れるのが、そう、フッ素樹脂

 

とはいえ「フッ素樹脂」なんて聞いても何のこっちゃと思うかもしれませんが、これは商品名を聞けばどなたもご存じといえましょう、そう、代表的なフッ素樹脂というのは、高分子の雄・ナイロンを発明したのでおなじみ、これまた我らがデュポン社が開発した、テフロンのことなんですね!

 

(正式名称はポリテトラフルオロエチレン、↓参照)

 

ja.wikipedia.org

 

僕は小学生の頃、母親が買ってきたテフロン加工のフライパンを初めて見たとき、「全く何もくっつかない魔法のようなフライパンだ!」といたく感動したものですが、焦げ付かないのみならず、この世のあらゆる薬品に一切浸食されない(クロロホルムだけは若干のダメージが認められる「〇」(しかし、実用上使用不可ではない)で、唯一オクチルアルコールとかいう謎のマイナー物質だけ「△」がつけられていたものの、他は本当にこの世の薬品ほぼ全て「◎」ばかり!)、最強の素材だといえる感じですね。

 

とはいえ、テフロン加工のフライパンは何度も使うと剥げてきてしまいますし、「引っ掻き」に強いわけではないので、その辺はやっぱり、タングステンとかクロムとか、それこそあずきバーの方が強いのかもしれませんけど(笑)、丁寧に使えばテフロンほど最強の盾(物理より、化学に強いシールドですね)になるものはないのです…ということが知れて、個人的には面白い発見でした。

 

そんな感じで、熱に強いプラスチックから、「最強の素材」についてまで上手いこと話が広がってくれましたが、次回はまた適当に以前のネタに戻っていこうかなと思います。

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