ひたすら長いこと続いてしまっているイマドキ英語スラングシリーズも、今回から4つある内の3つ目のセクションに入る形で、大分終わりも見えてきました(…って別にまだまだ全然見えちゃいませんが(笑))。
早速Verywell familyによる55語記事(↓)の続きに参りましょう。
www.verywellfamily.com
前回の終わりにもチラッと書いていた通り、続いての章は「Compound Slang」、複合語スラングというものですね。
これは説明するまでもなく、2語を合成させて1つの単語のように使う形なわけですけど、そういった言葉は日本語でも枚挙に暇がないほどありふれているものですから、おなじみの存在だといえましょう。
……って、ちょっと考えても特にパッと浮かばなかったので枚挙には結構暇があった感じかもしれませんが(笑)、検索したらちょうどいい感じの論説文が見つかりましたよ。
九州国際大学の伊東美津さんによる『混成語について』という日本語国文研究論文、以下の学術成果リポジトリにPDFファイルで公開されていますが……
…非常に面白い内容でしたけど、まず、一言で混成語といっても、「ひとつながりの単語の短縮形」の場合もあり(「リモート/コントロールでリモコン」などですね)、この論文ではそういったものを区別しながら、それらの形成に関する制約について音韻的な側面などから多面的に論じられているわけですが、まぁ僕は言語学にはモグリなので、詳しいことについては、「興味ある方はぜひPDFの方をご覧ください」という形にさせていただくとして、今回見ていくような「2つの異なる単語から、意味を合成したような新しい1単語を作る」パターンの日本語として、論文最初にも挙げられていた「あたぼう」とかは大変良い例といえますね。
まぁ「あたぼう」は若干古臭い表現な気もするものの、こいつは「当たり前だ」と江戸言葉である「べらぼうめ」が融合した言葉で、「あたぼうよ」という感じでカジュアルな場面ではまま使われる、それなりにおなじみの言葉だといえましょう。
せっかくなので「枚挙に暇がない」っぷりを示すべく、いくつか「あぁ、そんな合成語、あるね!」と思えた物を引用させていただくと…
「脂ギッシュ(脂ぎった/エネルギッシュ)」、「ずたぼろ(ずたずた/ぼろぼろ)」、「パーペキ(パーフェクト/完璧)」、「バイナラ(バイバイ/サヨナラ)」
…などなど、まぁ正直どことなく昭和を感じるちょっちダサい印象もある言葉が多いですけど(笑)、英語の方のこういったダジャレ的複合語は、少なくとも「イマドキ若者スラング」として挙げられている以上、一応メリケンの令和っ子たちにもそれなりに使われていそうではある、って話のようですね。
そんな感じで、今回はそういった「英語の複合若者語」を見ていく形になります。
といっても、やっぱりそういうのはそこまでメジャーなものでもないのか、たったの5語しか挙げられていませんでした。
話が広がりそうにもないので、全部一気に紹介してしまいましょう。
- Crashy - Crazy(ヤベェ)と trashy(くず同然の・くだらない)の融合、trainwreck(※直訳的には「列車事故」で、そこから比喩的に「酷い大惨事・めちゃくちゃなこと/人」という意味にもなるやつですね)のような語
- Crunk - Getting high(ハイになる)と drunk(酔っ払う)が同時に起こること、つまり crazy(ヤベェ)と drunkの融合語
- Hangry - Hungry(空腹な)と angry(怒っている)の融合
- Requestion - Request(リクエスト・依頼)と question(質問)の融合、または再度質問すること
- Tope - Tight(めっちゃイケてる!)と dope(めっちゃイケてる!)の融合
融合前の各語が示されている上記リストでもう十分にも思えますが、一応、順に見ていこうと思います。
まず最初は「Crashy」、これは「クラッシー」と発音もしやすそうな融合語ですが、「狂ってる・ヤバい」でおなじみ「クレイジー」と、「ゴミ」を意味する「トラッシュ」の形容詞版の合体で、そのまんま「ヤベェゴミカス」的な表現ですね。
複合スラングではあるものの、Slang.netにもきちんと紹介されていました。
説明にある通り、基本的には当然ネガティブな意味合いで使われることが多い語なわけですけど、たまに、友達が奇抜な外見や行動をした際に、親しみ・愛情を込めて「クラッシー(笑)」と表現するようなこともあるそうで、まぁその辺はやっぱり「ヤベェ」に似ているともいえそうですね。
(とはいえやっぱり、基本的には「どうしようもないクズ」に使われることが多いようで、解説文では、TVのリアリティ・ショーなんかで、出演者の有名人がタバコの代金を払うために財布からお金をくすねている様子が放映されたときなんかに(どんな場面だよ、と思えますが(笑))、SNSで「クラッシーだ!」と叩く感じで使われることが多いとのことです。)
せっかくなのでチャット型例文の方もチェックしておきましょう。
I can't believe Dominique drove a car into a Walmart to get some Black Friday swag.
(ドミニクがブラックフライデーのセールグッズをもらうために、ウォルマートに車で突っ込んだんだって、信じられない。)
I kno! She so crashy.(知ってる!あの子マジでメチャクチャよね。)
まぁ特に驚くような使い方でもない、そのまんまな例文ですかね。
では続いての語を見ていくと、こちらは「Crunk」で、これまた「クレイジー」との合成語でした。
こちらの相棒は「drunk」であり、drinkの過去分詞であるこちらは当然「酔っ払った」という意味で多用される単語ですけど、まぁアメリカの……に限らず日本もですが、大学生以降はとにかくお酒を飲んでバリバリにハチャメチャ盛り上がるのが若者の特権ともいえる、成人済みキッズたちの最高の楽しみともいえますし、「クレイジーに酔っ払う」という意味のこちらが若い子らに人気のスラングであることは完全に納得いくものですね。
ただまぁ、Slang.netの右上にある「イイネ」の数的には案外反応も薄く……
…そんなにそこまで使われてる言葉でもないのかな、って気もするものの(まぁ何気に先ほどのCrushyよりはマシなようですが(笑))、解説文には、
他にも、chronic and drunk(chronicが「慢性的な」という意味なので、いわば「延々と酔い続ける」という感じでしょうか)、またはcoke and drunk(こちらは、残念ながらコカコーラのコークではなく、コカインのコークだと思われます。「ドラッグで酔う」という、よりヤベェ意味といえましょう)のコンビネーションでもあり得る。
…とあるとともに、更には「米国南部で人気のある、ヒップホップ音楽のスタイルでもある」ともありますね。
とはいえ基本的には「バリバリに酔うぜぇ~」という感じで気軽に使われる複合スラングではないかと思います。
チャット型例文も見ておくと……
TGIF, Imma get crunked tonite!
(花金だー、コンヤは酔いつぶれるぜぇ~!)
以前、イマドキ略語の確か最初の記事でも触れていたTGIF(花の金曜日だぜヒャッフー!)が使われていましたが、I'm going to を Imma、tonightをtoniteと略式表現するなど、若者っぽいカジュアルな語り口ではあるものの、これも分かりやすい例文ですね。
…という所で、あっさり終わらせられそうな気がしていましたが、ちょうどWBC野球の決勝戦をチラ見しながら書いていたこともあり、クレイジー系の2語に触れただけで時間がなくなってしまいました(笑)。
まさに今これを書いている瞬間、9回2アウト・大谷投手 vs トラウト選手という、兄弟的チームメイト関係にある日米キャプテン同士の対決という熱すぎる対決が行われていますが……
おっと、最後は空振り三振で試合終了!!
日本の優勝で幕を閉じたWBC、素晴らしい大会でしたね!
本当に、勝敗に関わらず、出場した全チームの全選手を心から祝福したいぐらいの、大変に熱い戦いでした。
時間もないので浅い感想にすらなっていない言葉のみとなってしまいますが、多くの人に感動と勇気を与えてくれたことに最大限の拍手・お礼を送りたい限りです。
という所で、野球が万感の幕引きを迎えた所で、今回の記事も幕を降ろし、残る3語はまた次回サクっと触れていこうかなと思います。