前回触れずに「また次回…」としていた内容に行く前に、その前回の記事の中で、片手落ちというかむしろ完全にミスといえる部分があったため、そちらの補足修正的な話から始めようと思います。
実は記事アップ後しばらくしてから気付いていたものなので、既に前記事該当部分には追記注としてつらつらと併記済みなのですが、アップ後すぐの初稿だけを読まれた方の場合そちらをご覧になっておられない可能性もあるため、改めて触れさせていただく感じですね。
自分の記事ですが、該当部分をコピペ引用(今またちょっと後半修正しておきましたが…)しておきましょう。
- other XXs:「他のXX」という意味であり、かつ、「the」がないので、まだ他にもモノがある中の、一部のモノを指している。
(なお、もしもXXが1つしかないものであれば、その場合は「another」が使われる、または合計2つしかないものについて述べているなら「the other」と「the」がつくので、裸のotherが使われる場合、「XX」には絶対に複数形が来ることが確定している(=XXs。改めて、一つのXXなら「another」になる、あるいは他にはもうない最後の一つのXXであれば、「the」がついて裸のotherではなくなるため)。
※追記:…と当初書いてしまっていましたが、不可算名詞の例を完全に失念していました…!
可算名詞の場合は複数形が確定しますけど、不可算名詞の場合は、そもそも数えられない名詞なので複数形が存在しませんから、見かけ上「裸のother+sのない名詞」になるパターンは普通にあり得ましたね…!
例としては、「Do you have other luggage to check?(他に預け入れる荷物はありますか?)」なんかで、luggageは数えられない名詞ですけど、既にいくつか荷物を預けた後、他にもまだ荷物がある中で、その中の一部、預け入れるものはありますか?と尋ねている感じですね。
数えられない名詞なので、当然「一つの」を意味するanother(「an+other」ですしね)はここでは使えませんし、別に全ての荷物について尋ねているわけではないのでtheもつかない、「裸のother+複数形ではない名詞(少なくとも三単現でいう所の、動詞にsがつくタイプの名詞)」は普通に存在する、って話でした。
お詫びして補足追記しておこうと思います。)
そう、得意気に「otherがtheなしの裸で使われた場合、続きの部分は複数形が来ること確定なんすね」とか書いていたのですが、(もちろん可算名詞の場合はそれで正しいんですけど)不可算名詞が来る場合のことが、完っ全に頭から抜けてしまっていました!!
不可算名詞はまぁ数の概念がないからこそ不可算なんですけど、形としては単数形のまんまというか複数の「s」はつかないので、「裸のotherなら複数形が来る」というのは、不十分な説明で誤解を招きかねない…を通り越して、客観的に見て間違っていると断じて然るべきな話ですね。
特に初稿の時点でご覧になっていた方には、微妙に誤りを含む情報(改めて、部分的には正しいものの、重要な点がスッポリ欠落したいたので、完全な誤り・ミスと書いた方が正確ですね)を紹介してしまい、大変ご迷惑をおかけしました。
改めて心よりお詫び申し上げます。
いやぁ~、これ、そんな説明今まで見た記憶は全くなかったものの、ふと思いついたんで書いてみた話だったんですけれども、見たことなかったのにはワケがあるといいますか、やっぱり思いつきで適当に書くもんじゃないですね…!
まぁ見たことない気がしたからこそ引っ掛かりがあって割とすぐミスに気付けたわけですが、今この「見たことないものはうんぬん…」という話を書いていたら、英語に関するずーっと前に見た金言を一つ思い出したため、せっかくなのでこの機会にご紹介させていただきましょう。
これは僕が学生時代に、科学論文の書き方の講義かネット上の特集記事だったか詳細は忘れたものの、どこだかで見て今でも「それはまさにそうだね」と思える至言なのですが、確か、偉い先生が研究室の学生だかに向けて放った一言で、
「あなたねぇ、見たことない英文を書くもんじゃありませんよ」
というアドバイスというかお説教、これはもう本当に英作文の本質を突きまくっている、初めて英語で論文を書いた学生の頃から今まで、折に触れて気をつけているといえるまさに名文句に思えてなりませんね!
もちろん英語で小説を書きたいとか脚本作りを目指すとかなら話は変わってくると思いますけど、論文とか、もちろんそれに限らずどんなビジネスシーンでも、さらにいえば日常的なカジュアルなやり取りなんかでさえ(っていうかむしろそれが一番顕著かもしれませんが)、第二言語として英語を使う我々が自分の力でゼロから英作文をした場合、ほぼ確実に失敗します。
これ何でなんでしょうね、まぁ日本語と英語の構造があまりにも違うからというのがその理由だと思いますが、今世紀を代表する言語の天才/シェイクスピアの生まれ変わりとかでもない限り、頑張ってしっかり辞書を引いて文法ルールにもきっちり則る形でかっちり変換した英語っていうのは、マジで基本的に超絶不自然なものにしかならないんですよね。
「自分で考える」というと大変立派な行為に思えますが、こと英作文に関してはそれは最善手ではなく、我々が日常的に(プライベートでもビジネスでも)使う英語というのは、絶対にどこかで見たことがある英文であるべきといいますか、全てパクってこないといけない……というのも言い過ぎかもといいますか(笑)、もちろん「完全コピペだとオウムにしかなれないやんけ!俺らは血の通った人間だぞ!!」というのももっともですから、一言一句同じじゃないといけないというわけでは当然ないですけど、完全一致ではなくとも、構文的なものや、単語や句のコンビネーションみたいなのは、絶対に「これはどこかで聞いたことのある英語だ」と思えるものじゃないと、ほぼ間違いなく不自然な響きのものになってしまうと考えて概ね間違いないと(自分の経験からも)断言できる感じですね。
この名台詞、どこで見たんだったかなぁ、ネット上のものだったら検索して出てこないかな……と思って検索してみたら、あぁーっと!
www.rs.tus.ac.jp
こちら、東京理科大の木田雅成さんの読み物記事(↑)に、出典が掲載されていましたね!
(記事の更新日的にも、僕が学生の頃に見たページはこちらではなかった気がしますが、やはり有名な文句なのか、取り上げてくれる方が他にもいらしたという感じだと思われます。)
大元は、斎藤兆史さんという英文学研究者の大御所の台詞だったということで、これはやはり納得ですね…!
この名台詞から、上記ページでは木田さんも研究室の学生に向けて参考になるお話を書かれているとともにその斎藤さんの言の続く部分の引用も含まれていましたが、蓋し含蓄に富むご意見ばかりで、ページ全体を通してまさしく同意の一言です。
ちなみに、僕はこっちへ来てから結構時間が経っているのに、英語はマジで1ミリも成長していません……などともう何度も豪語していますが、まぁ英会話に関しては本当に心からそう思うものの、英文の読み書きというか作文に関しては、流石に「普通はこうは言わない」「この場面ならこう言う」というストックもある程度溜まっており、少なくとも日本にいた頃よりは確実に「見たことある英文を書く能力」は上昇している気がしますね(笑)。
とはいえそれは、「これは日本人の考えた英文…!」というのが分かるだけ、かつ、パクリ元は論文とかの無味乾燥な英語がほとんどですから、例えば漫画の英訳みたいなものをやろうとしても、自然な言い回しとかの文を作ることは全くできない感じといえます。
やはり、日常会話の方がむしろより難しい、ってのは真理な気がしますね。
(とはいえこれはもちろん環境による感じで、例えば現地でドラマ制作に携わっている方なんかですと、軽妙な会話的言い回しが得意で、むしろビジネスチックな少々堅い文章は苦手…ってことも往々にしてあるかもしれませんけどね…!)
なお、脱線ついででもうちょい逸れると、高校の頃のクラスメイトに、大学4年の時点で既に複数の論文を発表していた(普通は大学卒業後、大学院で5年とか研究を続けてようやく1本とかいうことも多いです)、研究者が天職といえるめっちゃ面白い友人がいるんですけど(もちろん、今に至るまで論文を出し続けているスゲェヤツです)、彼も、まさしく似たようなことを言っていたのを強く覚えています。
まだ誰も英語論文なんて書いたことのなかった学生の頃に「論文なんてどうやって書くの?」と聞いてみたことがあったんですが、「英語はね、普通にパクってるよ(笑)」とあっけらかんと語っていたのが印象的でした。
もちろん「パクってる」といっても剽窃というわけではなく、まさに、英文の継ぎはぎをして文章を作成していた、ということですね。
せっかくなので、その時彼に聞いた、英文作成のための超強力ツール(今はもうほとんどというか全く使うことはなくなりましたが、学生時代は僕も当然、結構というかかなりお世話になっていました)をご紹介しておきましょう。
それがズバリ、ライフサイエンス辞書プロジェクトによる、共起検索(コーパス)!(↓)
lsd-project.jp
昔は「共起検索」という名前だったはずですが、今では「コーパス」になっているんですね。
そもそもこのライフサイエンス辞書プロジェクトというのは、元々京大が立ち上げたものだったように記憶してますけど(検索したら、京大薬学部の金子周司さんによるものと出て来ましたね、やっぱり)、その後、利用者も増加して、全国各地の拠点に複数のサーバーが建てられるようになった、生命科学系の研究者なら知らぬ者はいない巨大・便利辞書サイトで、Life Science DictionaryでLSDプロジェクトと呼ばれているものの、LSDは有名なドラッグの略称でもありますし、生命科学系のサイトなのにもっと他にいい名前はなかったんかい、とも思える気がしますが(笑)それはともかく……
このコーパスというのは、医学生命科学系論文の世界最大データベースサイト・PubMedに収録されている、論文の要約部(無料公開・お試し立ち読み的な部分ですね)を参照して、
「検索した単語が、どういう文脈で使われているか」
を表示してくれるという大変な優れものなのです。
言葉では分かり辛いので、実際に見てみましょう。
お試し例としてそうですね、前回例文で出していた、「other four」なんて語句が、実際の英文ではどういう感じで出現してくるのかを見てみるとしますと、先ほどのリンクのコーパス検索ボックスに「other four」と入力して……
…検索ボタンを押すと、ズラーッと、論文の要約の中で「other four」というフレーズの使われているものが、その前後の部分含めて表示されてきました!
デフォルトは「1語後でソート」なので、次に来る単語のアルファベット順に並んでいますが、これを見ることで、「other four」と相性がいい/よく組み合わさって登場してくるフレーズが、手に取るように分かるわけです。
今回のこの「other four」検索結果を見て分かることは、一語後ろには色んな言葉が来てますけど、一語前は、ほぼ確実に「the」が来ているということですね。
これはやはり、何か調べたものを語る場である論文においては、語る対象は調べたもの「全て」になることが多いですから、「全て」を意味する「the」付きの、「the other four」という並びが強いという感じといえましょう。
(例えば上から46番目に並んでいる「the other four enzymes」(他の4つの酵素)とか、この画面には収まっていませんが少し下にいる「the other four genes」(他の4つの遺伝子)なんかは4件もヒットしていましたが、どれも恐らく、酵素や遺伝子を2グループに分けて、最初に語った方ではない、残りのグループについて語ると……って文脈ですかね。)
結果をより統計的に見るためには、一番上にある「集計値を見る」をクリックすることで……
1-2語前後と、同じ文章内に出てくる単語ランキングが表示されます。
これを見ると、1語後ろは「patients」で、「他の4名の患者たち」という形で使われるのがこの語句のトップ利用例ということが分かりますね。
まぁこの例だとそんなに何が分かるわけでもない、あんまりいい例ではなかったかもですけど(笑)、よく使うやり方でいうと、自分の使いたい動詞は、どの前置詞とよく使われるのかな、ってことを調べたいときとか…
(例えば、「~に注目する・集中する・専念する」という意味で「focus」という動詞を使いたい場合、前置詞は何が合うんだろう、focus inなのかな、それともfocus onとかかな…と思って集計値を調べてみると…
300件中200件が、focusの直後にonが来ているということで、これはもう間違いなく「あぁ、focusという動詞は、onと一緒に使うんだな」ってことがハッキリと分かる、って具合ですね)
…なんてのが極めて便利な使い方ですし、他にも、そもそも検索したフレーズが何件ヒットしてくるかで、その単語・語句の組み合わせ自体が英文として自然なものなのかの判断が出来ますし、使われる際は、どういう流れで、どういう語と一緒に使われているかが実際の例文とともに手に取るように分かるため、英作文のお供にもってこいという感じになっています。
あとは、最初の結果例文一覧の番号をクリックすると、実際の論文要約のPubMedページに飛んでその論文を読むことができるという至れり尽くせりな機能もあり…
(例えば、「the other four enzymes」という語が使われていた46番の例文をクリックすると、以下の2006年の論文がヒットしてきて…
pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
…当然、要約の中にthe other four enzymesという語句が登場している形ですね。)
まぁ、参照しているデータベースが医学・生命科学系論文(の要約)なので、基本的にはそういう文脈での検索結果になってしまいますけど、ちょっとお堅めの英文であれば、生命科学関係無しにめちゃくちゃ有用といえるので、英作文をする必要がある際は、「この表現でいいのかなぁ」と迷ったものをバンバン検索し、実際の用例をじゃんじゃんパクって、ガンガン「見たことある英文」を溜めていくのは、とてもいいトレーニングになるのではないかと思います。
…と、当初、お詫び訂正文を掲載してサクッと続きにいこうと思っていたのですが、無駄に長くなってしまいました(途中から正直、もうこれは続きに行くのは無理だなと思い、半ば無理くりネタを捻り出してた感もありますが(笑))。
そんなわけで、今回は謝罪からの脱線ネタのみで続きに入れなかったため、anotherの続きはまた次回とさせていただきましょう。