コメ返信や補足その1-43:i'm lovin' it(バダッバッバッバ~♪)

is、want、have、love、know…といったいわゆる状態動詞と呼ばれるやつらは、現在形=原形そのものが既に今現在の状態を表す形になっているため、進行形にすることができないのです…ってなことを前回、クドクドと語っていました。


とはいえ、(これも既に前回触れていましたが)例えばhaveなんかが「所有する」という状態を描写しているのではなく、いわば熟語的に「~をする」(例:have a bath(入浴する)など)という何らかの行為・動作・アクションを描写しているような場合は「I'm having a bath.」と現在進行形で表すこともできる…というややこしい話もあったわけですけど、実は、それ以上に物議を醸すネタがあるんですね。

ズバリ、「状態動詞とやらでも、進行形で使われてるじゃん!」問題とでもいいますか、この話で必ず取り上げられるといえる有名ネタがありまして、せっかくなので今回はそちらに触れてみようと思った次第です。


それは何かといいますと、既に記事タイトルにも挙げました通り、本当に身近すぎてどなたでも間違いなく口ずさめるレベルだといえましょう、みんな大好き我らがマクドナルドの、「♪Ba Da Ba Ba Bah, I'm Lovin' It!ですね!


これ、「loveというのは『愛している』という状態を表す動詞なのに、普通にam + ingで現在進行形になってるじゃないか、どういう事だよッ!クソッ! クソッ!!」と、英文法を学んだ後ではついついブチ切れたくなってしまう、何ともニクいキャッチコピーになっているわけです。


(関係ないですが、マクドナルドは僕の中ではコカコーラと並んで、「世界中、どこの子供たちでも知っている、世界最強のブランド」というイメージだったのですが、どうやらそれはもう古臭い話のようで、この手のランキングの権威、Interbrandのベストブランド2022を見てみたら……

interbrand.com
…ブランドランキング世界1位は、どうやらもうずっと、Appleのものなんですね。個人的には、まぁiPhoneは世界を変えたわけだしそらそうかとは思えるものの、コーラやマックで笑顔になってる子供たちの方が微笑ましいというか、より平和な感じに思えちゃうかもしれません(まぁ別にブランドランキングは子供の笑顔ランキングではないですけど)。

 コカコーラは7位、マクドナルドは11位ですが、リンク先のブランド価値の推移グラフを見ると、コーラは近年下がり続けている一方、マクドは上がり続けているので、その内マクナルがコーラを抜くこともあるかもしれませんね。

…まぁ、こんな一企業の定めるブランドランキング、変わったからって「だからどうした」って話でしかないかもですが(笑))


ふと思いついたネタに逸れちゃいましたが本題に戻ると、「I'm loving it.」というのは一体どういうことなのか、状態動詞が進行形を取れないというのは嘘だったのか?!……という点について、これはもう、正直至る所で議論され尽くしているような今さらな話にも思えますけど、せっかくなので話に出したついでということで、記事水増しに使わせていただくといたしましょう(笑)。


日本語での記事もたくさんありましたが、ここはやはり、ネイティブの意見を聞いてみるに限るといえましょう。

検索してみたら、こないだチラッと触れたことのあった、僕が昔よく聴いていたポッドキャスト『Grammar Girl』(サイト名的には『Quick and Dirty Tips』)の関連記事が、トップでヒットしてきました。

こちらはウェブ上の記事のみならず、ポッドキャストの方でもGG(グラマーガール)さんがそのままこの話を語っているものが配信されていたもので、僕は以前ポッドキャストを聴いていた頃に繰り返し幾度となく聴いていた内容なんですけど、とても懐かしかったので、今回はGGのこちらの記事を翻訳引用させていただこうと思います。

www.quickanddirtytips.com

「I'm Loving It」は正しい文法なの?

状態動詞を使った表現が、こんなに楽しいだなんて!

Bonnie Mills著、2010年1月29日、6分で読めます)

 

今日はBonnie Trengaが、ファストフードチェーンが最先端の文法を駆使しているのか、それとも単に動詞の時制を工夫しているだけなのかを解説してくれます。さぁ、マクドナルドの広告スローガン「I'm loving it」を分析する時間の始まりです。


Devakiというお名前の英語教師が、彼女は「I'm loving it」というスローガンを「間違った文法の例として」自分の授業で使っていると投書してくれました。

ここで問題になるのは、「to love(愛する)」のような動詞が、その瞬間に何かが起こっていて、発言しているその時間の前後に連続していることを示すために用いられる進行形に活用させることは可能なのかどうか、ということですね。実際、進行形は連続時制と呼ばれることもあります。最も一般的な進行形としては…

  • 現在進行形:「I am running some errands.(私は用事を済ませているところです)」(まさに今起きていることなので、現在進行形になります。)
  • 過去進行形:「They were jumping for joy.(彼らは喜びのためにジャンプし続けていた」(過去に起こったことなので、過去進行形です。)
  • 未来進行形:「I will be writing my essay all day tomorrow.(私は明日一日中エッセイを書いているだろう」(未来に起こることなので未来進行形です。)

これらの行動は全て、継続的であるため、進行形となっていることに注意してください;一瞬の出来事ではないのです。

Dynamic Verbs(動的動詞)対 Stative Verb(静的動詞・状態動詞)

英語は、進行的な意味合いの時制に関して、2つのグループに分けられることが分かりました:動的と静的になります(※注:前回からの流れを踏襲して、以下、「ダイナミック=動的」は動作動詞、「ステイティブ=静的」は状態動詞と表しましょう)。

動作動詞は、動作や過程を表します。よく使われる動詞は、「to walk(歩く)」「to yell(叫ぶ)」「to read(読む)」などです。これらの動詞は進行形に活用できるので、「I will be walking all day.(一日中歩き続けよう)」や「He was yelling at me.(彼は私に叫び続けていた)」と言っても問題ありません。

一方、状態動詞というのは、ある状態を表すもので、進行形に活用することは想定されていません。

About.comの英語教育サイトでは、状態動詞を4つのグループに分けて解説しています*1

  • 「know」や「recognize(認識する)」など、考えや意見を表す動詞(I know her motives.(私は彼女の動機を知っている。))
  • 「own(所有する)」や「belong(属する)」などの所有を表す動詞(The dog belongs to me.(この犬は私のものです。))
  • 「love」や「need(必要とする)」などの感情を表す動詞(I love Squiggly(私はスクイグリィを愛している。))
  • 「feel(感情を持つ)」や「see(知覚する)」などの感覚を表す動詞(I see what you mean.(あなたのおっしゃることは理解できます。))

特に最後のグループは、使い方次第で状態動詞にも動作動詞にもなるものが多く、厄介な存在です。

この動詞の分類では、「They are owning three cars.(彼らは車を3台持ち続けている)」や「I am seeing the portrait.(肖像画が見え続けています)」のような文を言うことは認められません。この2つの文は、ネイティブスピーカーなら誰でも変だと感じるはずです。

動作動詞と状態動詞を併せ持つ動詞

先に述べたように、いくつかの動詞には動作動詞と状態動詞の両方が存在するという事実が、問題を複雑にしています*2。例えば、「to be」という動詞を考えてみましょう。「to be 」を進行形にすると、「You are being naughty(君はいたずらっぽいふりをしているね)」のように、「振る舞う」という意味で使えます。この場合、"to be "は動作動詞として使われていることになります。一方、「She is a blonde(彼女はブロンドだ)」と言う場合、「to be」は状態動詞として使われています。「She is being a blonde.(彼女は金髪っぽく振る舞っている)」とは言えませんよね。

もう一つ、「think」という動詞を使った例を挙げてみましょう。「I think you're cute(君はかわいいなぁと思う)」は状態で、「I'm thinking about going on vacation(休暇で出かけることについて考えているんです)」は動作と言うことができます。

状態動詞のイディオム的用法

このルールによると、「I'm loving it」は文法的に正しくないことになります。なぜなら、これは状態動詞―この場合、感情、愛を伝える動詞―を進行形で使っているからです。

ですがここで、状態動詞のイディオム的な使い方をいくつか見てみましょう。適切な文脈において、ある種の状態動詞は進行形に活用することができるのです。ある女性が他の女性に「Hey, Jean. I’m loving that new haircut!(ジーン、その新しい髪型、素敵ね!)」と語っている場面は、容易に想像できます。一方、「I'm loving my mother.」というのは、正しく聞こえないでしょう。これは「I love my mother.」と言う所ですね。他の例としては、「to hear(聞く)」という動詞があるでしょうか。これは状態動詞とされていますが、ネイティブスピーカーであれば「I'm hearin' ya」という文が、「I understand your point of view.(君の見解は分かった)」という意味で使われることに慣れ親しんでいるものです。しかし、ネイティブスピーカーが「I'm hearing the concert.(コンサートを耳にし続けている)」と言うことは決してないでしょう。

判決

"I'm loving it" は少しずれた響きがあり、それが注意を引きつけることになっています。恐らくそれが、2003年9月に発表された、マクドナルドのスローガンに選ばれた理由なのでしょう*3。私が調べたどの辞書も、「loving」を動詞「love」の形として認めていませんでしたが、この文が大衆文化で使われ始めている例は、マクドナルドのスローガンだけではありません。Justin Timberlakeは2003年に "I'm Loving It"という曲を出しているし、それ以前にもScorpionsが出した『Still Loving You』*4 という曲には「I'm loving you」という歌詞が含まれています。つい最近も、glamour.comがマタニティドレスについてこんなことを書いていました:「I’m loving the hot hue, the sweet, off-the-shoulder neckline…(ホットな色合い、スイートなオフショルダーのネックラインがお気に入りです)」。 記事の見出しは、「Loving Her Look: Amy Adams Redefines The Maternity Dress」*5でした。


広告、歌の歌詞、それからファッション関連の見出しなどが良い文法の例を求めるのに適していないということは、誰もが知っていることです。しかし、英語のネイティブスピーカーが伝統的な文法に工夫を凝らしており、時には文法的に不適切な表現が流行することもまた周知のことといえるでしょう。言葉は常に変化しています。現在、多くの人が状態動詞を進行形で使っているようですが、これは大衆文化として受け入れられつつあるといえましょう。とはいえ、英語の先生たちは、生徒たちに「I'm loving it」と言わないように、また他のおかしくなる可能性のある状態動詞を進行形で使わないようにアドバイスし続けるのがベストです。でも、先生は、生徒に向けて、適切なタイミングであればネイティブスピーカーが進行形の状態動詞を使うことを耳にすることは間違いなくある、ということも指摘してあげると良いかもしれませんね。

Grammar GirlのiPhoneアプリ

iPhoneまたはiPod touchをお持ちの方は、こちらのiPhoneアプリでさらに素晴らしいGrammar Girlのオーディオコンテンツをお楽しみいただけます。1.99ドルで広告なしのポッドキャストをご利用可能です。ただ今お聴きいただければ、ボーナストラックとして、大文字と小文字の違いといったキャピタリぜーションの歴史や、18世紀の作家と現代のメッセージアプリとの共通点などといった、興味深い情報も入っています。

Curious Case of the Misplaced Modifier & The Grammar Devotional(間違った修飾語の不思議なケース&文法への傾倒)

このポッドキャストは、『The Curious Case of the Misplaced Modifier』の著者で、sentencesleuth.blogspot.comでブログを書いているBonnie Trengaによって書かれたものです。私はThe Grammar Devotionalの著者であるMignon Fogartyです。

教師のための、ウェブボーナス

以下の文の中で、進行形を使っているものはどれでしょう?現在進行形、過去進行形、未来進行形のどれかを言えますか?

A. Squiggly is helping Aardvark.

B. Squiggly helps Aardvark.

[答え:A. 現在進行形].

(※注:問題はまだ沢山ありましたが、まさかの、「どちらが正しい表現か?」を教えてくれるものではなく、「どちらが進行形か?」という、be+ingの方を選ぶだけな、正直幼稚園児でも解けるクソ問題でしかなかったので、省略させていただきます…。)

 

まぁ、結論としては、「厳密には文法的に正しくはないけど、広告や歌の歌詞なんかでは、そういう崩したものも使われるし、近年、日常会話で使う人も増えてきている」という、「まぁ、そらそういう話でしょうな」と、正直聞かなくても予想できるような話ではありましたけど(引用しておいて失礼な話かもですが(笑))、しっかりと論じてくれているネイティブの意見が聞けるというのはありがたい限りです。


(ちなみに、途中や最後に出てきたスクイグリィとアードバークとか、めっちゃくちゃ懐かしい名前すぎて感動を覚えたので、これに関する話も入れようかと思いましたが、グラマーガールを聞いたことがない方には別になんという話でもないのでやめておきましょう。

…ってそれも思わせぶりなので軽く触れておくと、単にこれはグラマーガールさんの作ったオリキャラで(参考→Squiggly who? - Jan Freeman - The Word Blog - Boston.com)、僕も持っているGG本には、イラストも載っています(スクイグリィがカタツムリ、アードバークがブタだかアリクイだかをモチーフにしたキャラ)…というかなりどうでもいい話だっただけですけどね(笑))


なお、文中では、「ジャスティン・ティンバーレイクさんの曲でも『I'm lovin' it』が使われている」…と書かれていましたが、ぶっちゃけこの曲はマクドナルドのために書かれた曲なので、「他には、この曲でも使われているし…」というのはちょっと変な話で、この曲(↓)がこのスローガンそのものだともいえましょう。

www.youtube.com

♪バダッバッバッバ~も、イントロから即聴けますね。

ただ、このメロディーラインはあまりにも偉大で誰でも知ってるレベルですけど、曲自体は正直、そない大したもんでもない気もするかもしれません(笑)。

 

本題の「I'm loving it.」に戻ると、改めて結論としては、実際、日本語でも曲のタイトルや歌詞で文法的におかしい例なんていくらでもありますし、これもやっぱりその一環だと言えるように思います。

…って、「日本語でおかしい例、そんなにあるか?」と思えましたけど、パッと浮かんだのでは、マキシマム ザ ホルモンの『ぶっ生き返す!!』とか、まぁこれは極端すぎてネタに走ってるのは明らかかもですが(笑)、タイトルとか歌詞とかで文法的におかしくなっているものは散見されますけど、実際そういうユニークなものから、若者言葉って程でもないですが新しい言い回しとかは生まれてくるものですし、「状態動詞は進行形になりません!」と前回偉そうに高々と宣言しておいてアレですけれども、僕は、カジュアルに「今、まさに気に入ってるんだ!」みたいなニュアンスでなら、普通に使ってもいいんじゃないかな、って気がします。

(ただ、lovingのように、進行形で使っても大丈夫なものと、絶対違和感があるものとがあると思うので(下手したらlovingでも、↑の説明にあった通り、場面によってはおかしいようですし)、我々非英語ネイティブには、上手に正しく使うのは難しいかもしれないですけどね…!)

 

曲のタイトルに限らず「厳密には崩れた文法」の例なら、日本語でも、肯定文で「全然」を使うとか(→「全然」は「全然~ない」という用法が正しい!)、「~たり」を単独で使うとか(→「~たり」は、「○○したり、××したり」と並列で使わないと誤り!)は、国文法警察に連行されがちなポイントですけど、こういうの、個人的にはもう全然普通な表現だと思えたりしますもんね。

言葉は変わるものなので、ちょっとおかしくても意味は伝わりますから、改めて、あんまりこういう細かい点には気を使いすぎなくてもいいんじゃないかな、ってのが結論といえましょう。

(もちろん、文法的におかしいことを意識しておくのは大事に思いますが…。)

 

…って、他にもいくつか触れようと思ったネタがあったのですが、意外なほど長くなっていた(結果、ちょっともう時間もなかった)ので、そちらはまた別の機会があればその時に触れてみようと思います。


今回は当然、我らがマクドナルドのロゴをそのままアイキャッチ画像に使わせていただきましょう。

しかし、本国アメリカのマクドナルド公式サイトには、キャッチコピーつきの画像が見つかりませんでした。

なので、検索したら出てきた、今もっとも使われている情報交換サイト・redditの「このフォントは何?」という質問スレでアップされていた物をお借りさせていただきました。

https://www.reddit.com/r/identifythisfont/comments/25yiqo/im_lovin_it_rounded_font/より

肝心のハンバーガーはなかったですが(笑)、美味しそうで良い写真ですね!(ちなみに、フォントはヘルベティカとのこと。)

ネタに使わせてもらったお礼に、最後、せめてもの宣伝をさせていただきました(笑)。

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*1:Beare, Kenneth. About.com Guide. Differences between Action and Stative Verbs. https://esl.about.com/od/grammarstructures/a/g_stative.htm

*2:Perfect English Grammar. Stative Verbs: How to Use Stative (State) Verbs. https://www.perfect-english-grammar.com/stative-verbs.html

*3:Wikipedia. McDonald’s Advertising. https://en.wikipedia.org/wiki/I%27m_lovin%27_it

*4:Lyrics Time. The Scorpions Lyrics. https://www.lyricstime.com/the-scorpions-lyrics.html

*5:Slaves to Fashion Daily Style Blog. https://www.glamour.com/fashion/blogs/slaves-to-fashion/2010/01/loving-her-look-amy-adams-rede.html