青い花・英語版で気になった所を挙げていこう:4巻その1

では続いて日本語版4巻・英語版2巻後半で、気になった英語表現を見ていきましょう。

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(4) p. 18 :"CLASS 1"(一組)

これは英語の間違いではなく、日本語版でも同じ問題になってるのに気付いたんだけど、クラス発表の掲示板に「Class 1」「Class 2」と書かれてるけれども、松岡女子は「1-A」(アルファベット形式)だよね?(例えば(1) p. 20とか)

これはミスかな?

A. そうだね、これは作者のミスだと思う。

作中では普段、松岡女子のクラスは1-A、2-Bなどと表記されているからね。

 

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(4) p. 40 :"What should I do?"(「どうすべきなんだ」)

これは単なる言語的な微妙な違いなだけかもしれないけど、日本語では、ここでのあきらの内心独白は、"What do I want to do?"(原文:「あたしはどうしたいってんだ」)なので、個人的には、SBFの英文は意味が若干(ニュアンスレベルだけど)異なる気がする。


A. 意味が微妙に違うのはその通り。

しかし、"What do I want to do"は英語としては不自然な表現である。

"What should I do"の方がより自然だね。


⇒(追加の独り言:)
やっぱりこれは言語構造的に、「普通はそういう言い回しはしない」という感じになってしまっているものですかね。

とはいえやはり大差はないので気にする点でもないといえましょう。

 

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(4) p. 42:"MY PREVIOUS SCHOOL JUST USED A AND B!"(「中学ではA組B組だったんです!」)

これは、恐らくアメリカではA/B表記が一般的すぎるからあえて変更されてるんだろうけど、ここでの日本語原文オリジナルだと、春花は"I admired the 'class A and B'!"(原文:「AとかBにも憧れたんですけどぉ」)と言っている。

(日本ではほとんどの学校が「1組」「2組」という形式を使っており、アルファベットをあまり使われないためやや珍しい、だから春花は憧れている…ということだね。)


A. おっしゃりたいことは分かる。でも、ここで春花が語っていることの背景には、「A」や「B」を使うのは好きだけど、花の名前を使ったクラス名の方がもっと好きだ、という意味があるように思う。

そうであるならば、"I mean, I thought using 'A' and 'B' was nice, but this..."(「AとかBとかも良かったけど、やっぱりこっちの方が…」)みたいな感じで訳すのが最も理に適っているのではないかなと思う。


⇒(追加メッセージ:)
あぁ、確かにその提案はもっともなんだけど、実は、日本語の台詞では、春花は「花の名前の方がより好きだ」とは全く言っておらず、単に「『A』とか『B』とかも好きなんだけどなぁ!」と言っているんだ。

(もちろん、花のクラスに文句を言っているわけでも一切なく、平凡な「1組」「2組」に比べれば、どちらも春花にとって理想的なクラス名だ、ってことだね。)


とにかく結論としては、春花は「前の学校ではAやBを使っていた」とは、日本語では全く言っていないんだ。

彼女は今でも、1-Aに入ることも望んでいる(憧れている)ってこったね。


⇒(追加の回答:)OK、理解した。

 

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(同じページ:)"FROM CLASS 1, WISTERIA"(「一年(?)藤組です」)

単純な英語の疑問:この「CLASS 1」は学年、つまり一年生という意味になるの?

日本語では、「クラスX」は学年ではなく、あくまで単なるクラスの意味しかない(つまり、年次を指すことはなく、同じ学年の中の分類を指すだけ)。

でも、誤植の章には記載されてなかったので、これは「一年藤組」と同じ意味になるってことなんかな?

面白いね。

A. あぁ、以前読んだときは気が付かなかったよ。

実は、英語のネイティブスピーカーも、"class 1"は「ある学年の中で一番目のクラス」という意味に取るように思う。

なので、ここでのより良い訳としては、"From first-year, Wisteria class"という感じの方がいいかもしれないね。

ただし、これだとスペースに収まるかは分からない。

 

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(4) p. 52:"I'VE BEEN PRACTICING TALKING DRAMATICALLY."(「仰々しいしゃべり方を練習してるの」)

それほど大きな違いではないんだけど、日本語版だとここであきらは、「練習してる」ではなく、"Now I'm addicted to such dramatic talking!"(「今仰々しいしゃべり方にはまってるんだ!」(原文は「仰々しいしゃべり方が 今あたしの中でブームなの」)と言っている。

A. ここは、"Now I'm addicted to talking dramatically!"と訳すこともできたと思うし、これでもほとんど同じような意味で機能するね。


⇒(追加メッセージ:)
ん?SBFのフレーズが、"addicted"とほぼ同じということ?

それとも、(単純に、微妙に修正された英文が、最初に送った自分の英文と同じように機能する、というだけで)SBFの英文と元の日本語台詞は多少は違うのかな?

まぁ言うまでもなく、大きな違いはないから、どちらでもいいんだけどね。


⇒(追加回答:)"Practicing"という言葉は、あきらが何をしているかは説明しているが、なぜそれをするのかは説明していない。ドラマチックに話すのが楽しいから練習しているのかもしれないし、授業や演劇部のためにやらなければならないから練習しているのかもしれない。

しかし、"addicted"なら、彼女がドラマチックに話すことを楽しんでいて、それを止めることができないことを意味している。

だから、ここでは"addicted"の方が良い英訳の選択だったといえるかもしれないね。

 

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(4) p. 62:"I BET YOU COULD PLAY AN OTHERWORLDLY PRINCESS, KYOKO"(「京子なら妖艶なお姫さまとかやれそうなのにねえ」)

考察本で、「これは、京子の父親の発言かもしれない」と書かれていたが、訳注で指摘していた通り、これは恭己の言葉なんだ。

…あぁ、英語版を読んでいる人がそう勘違いした理由が分かったよ。

(1) p. 84で、恭己は京子に全く同じフレーズを言っていたんだけど、英語版ではこの2つのシーンで、全く別の単語が使われているんだね!
(まぁ、実はこの台詞が以前も登場していたのは、今通して再読するまで気が付かなかったんだけどね(笑)。でもそれがなくても、恭己の台詞なのは日本語だとほぼ明らかだよ)。

いずれにせよ、ここでいきなり父親が出てきてそんなことを言う意味もないし、ネクタイも同じだから、これは確実に恭己だね。

A. あぁ、ご指摘ありがとう!おっしゃる通りだね。

男性のスーツはこのような形ではないので、p. 62を見た時点で、発言者が京子の父親でないことを認識すべきであった。描かれているのは松岡の制服なので、発言者はそこの生徒であろう。

そうそう、日本語で同一のフレーズならば、英語でも同一のフレーズに訳して欲しかったと思えてしまうね。"hot heroine"(「ホットなヒロイン」)と"otherwordly princess"(「異世界のようなお姫様」)とでは、英語では非常に大きな違いがある。

恭己が実際に日本語で言っていることを英語にする場合、どう訳すと良いと思う?


ともかくこれは私の大きな誤読であり、京子の父親について述べている章で、このシーンを父親が関係していると言及してしまっているため、戻って訂正しておこうと思う。


⇒(追加メッセージ:)
ここで使われている「妖艶な」というワードは、結構ゴージャスな言葉で、そこまで英単語に精通しているわけではないのでベストなものを挙げるのは難しいけど…英語版の二つを比べるならばotherwordlyの方が近いと思えるものの、もっと適切な言葉はあるかもしれない……"attractively fascinating princess"(魅惑的で魅力に溢れる姫)とかはどうかな…?

まぁここでも翻訳スペースの問題があるし、適切ではないかもだけど、とにかく元の日本語は、結構特別な、ドラマチックな表現だよ。


⇒(追加回答:)「妖艶な」を機械翻訳にかけたら"bewitching"が出てきたが、これは悪くない訳だと思う。

The Merriam-Websterの辞書だと、この"bewitching"は、"powerfully or seductively attractive or charming"(「力強い、魅惑的な魅力のある、チャーミングな」)と定義されている。

"Enchanting"もOKだね。("powerfully pleasing, appealing, or delightful"「強力に喜ばせる、アピール性のある、楽しい」。)こちらの方が、 "bewitching "よりもよく使われている。

"But you'd make an enchanting princess!"(「でもあなたなら魅惑的なお姫さまになれるわ」)とか、"I bet you could play an enchanting princess, Kyoko"(京子ならきっと魅惑的なお姫さまを演じられるよ」)といった具合だ。


SBFで使われている、"Otherworldly"(異世界チックな)という訳も悪くはない。

しかし、「ホットなヒロイン」というのは、間違いなく絶対にあまりにも酷い訳だと思う。漫画やアニメのステレオタイプなキャラクターに慣れているアメリカの読者にとって、「ホットなヒロイン」というと、大きな胸を持ち、スケスケのコスチュームを着たような女の子をイメージしてしまうのだ。それは京子とは全然違う。


⇒(追加の追加メッセージ:)そうそう、"bewitching"という単語も見かけたんだけど、逆翻訳にかけたら、一番最初(か二番目)の定義が、日本語だと割とネガティブな意味(「媚び媚びな」みたいな)だったので、それは避けてみた感じだったよ。

「ホットヒロイン」については非常に面白いね。2回目にこの単語が登場したとき、翻訳者は考えを改めたようで、それだけは良かったといえる所かな。

(以下、翻訳版の変更などでこの辺に関してまたやり取りがありましたが、省略。)

 

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また、ちょうどこの辺り、半分で切るぐらいでいい分量になりそうなので、4巻後半は次回としましょう。

青い花で学ぶ英語」コーナーで使えそうな気になる英語表現、今回は正直初読時では1つもなかったのですが、ちょうどこれで使うのに良さ気なものが、Frankさんに質問を送っていた項目にあったので、そちらを使い回すことにしましょうか。

何度も出てくるワードなので、当初別のページで見かけたものを取り上げて質問していたのですが、改めて使えそうな表現を求めて読み直していたら、4巻冒頭でもいきなり見かけました。

そちらも込みで触れておきます。

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青い花で学ぶ英語】

(4) p. 16:(お嬢様のような「ふふ」という笑い)→ "HEH HEH"

大野の春ちゃん初登場シーンで、井汲さんが「ふふ」と笑った後、「(ふふ だって―)」と春ちゃんが藤が谷のお嬢様学校っぷりに感動する場面ですが、ここ、英語だとどうなってるのかな、と思ったら、まさかの、「ヘェ ヘェ」とかいう、キモいおっさんかよ!という笑い方!!

こんなんが英語だと上品なお嬢様笑い扱いされてるとかワロタという感じですが、これ以外にも、むしろこれ以上に頻繁に出てくる「そんな笑い方、あり?!」と思える英語表現(まさにこの次のページで、京子はこの笑い方もしています。上述の通り、Frankさんに質問したのはそれより後、p. 50で、上田さんが「ふふふ」と笑ってるシーンにこの語があてがわれた場面でしたが)についても触れておきましょう。

 

(4) p. 17, 50他:"TEE HEE HEE"(「うふふ」というニュアンスの笑いで多用)

ここに限らず、この笑い方は作中大量に出てくるんだけど、いつも思ってたんだけどさ、これって日本人にはあまりにも変な響きなんだけれども、英語では全然自然な笑い方の表現なんかな?

個人的には、どこか下品というか、すごく小さな子供が幼く笑っているような違和感というか面白さがあるんだけど(「ティー・ヒー・ヒー」みたいな)、別に大人が使っても問題ない笑い方、ってことなんだよね?

A. ふむ、"tee hee hee"は、英語では全く自然とまでは言わないけれど、許容範囲だと思う。女の子らしい表現だけどね。

この場合、上田は本当に女の子らしい少女といわけではないので、ぎりぎりセーフといった所だろうか;話し手が男の子の場合は、通用しない(と、個人的には思う)。


⇒(追加の独り言:)
あぁ、改めて考えてみたら、「てへへ」と思えば、確かに女の子っぽい笑い方とはいえますね。

確か、あーちゃんかふみちゃんかの母親もどこかの場面で一度この笑い方をしていたように記憶しているので、割と年配であっても女性ならまぁ通用する笑い方なのかもしれませんね。


やっぱり日本人的には「Ho-ho-ho」とか「Uhuhu」なんかの方が自然に聞こえますけど、英語だと逆に(我々にとっての)「ヘェヘェ」みたいに、「何やそれ(笑)」的に響く可能性が高いという感じでしょうから、中々文化の違いというのは大きく、難しいものですね(逆に、「HAHAHA」が日英両方で通用するというのは、実に興味深い点といえるのかもしれません)。

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最後、アイキャッチ画像として使わせていただいている放浪息子の表紙ですが、前回・前々回の記事では、設定の変更をし忘れたため、3巻の画像のままになってしまっていましたね。

既にブログ記事の方は変更しておきましたが、投稿と同時に設定しているツイートの方は、後で変えても投稿時のままの設定で変わらないようで、そのために使わせてもらってる画像なのに、同じものが続いてしまって残念でした。

以後気を付けたい限りです。

英語版『放浪息子』6巻表紙、https://www.amazon.com/dp/1606997076より

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