補足:形を色んな視点から

前回イカしたクローバーことtRNAのナンバリングの謎に触れていましたが、これに関していただいていたコメントで、また補足として触れておくのも良さそうかなと思える内容があったので、たまっているご質問の前に、まずはそちらから適宜一部改変しつつ触れさせていただきましょう(毎度コメントをいただけるアンさんには改めてお礼申し上げます)。

アミノアシルなんちゃらの図は、めっちゃわかりやすかった!

このtRNAはぐちゃぐちゃっと描かれてるようで、人工的な方もほぼ同じ形で描かれてるし、きっと実物もこんな形ってことなんだろうかね。
(形の特定はド素人には難しいけど、同じような形ってことはままわかる…。これが二次構造になるとクローバー型って感じになる、ってこったわね!)

アミノアシルなんちゃらは、(通りすがりに?)tRNAに必要なアミノ酸を(アンチコドンを読んで)判断して、そのアミノ酸を自分が持っていたら、tRNAを覆うようにして先っぽにくっつけて、やることやったらサヨナラする…って感じの解釈でいいんけ…?

まぁ前回貼ったあの図のtRNAは、多分小林さんが割とそれっぽくグチャグチャっと手で描いただけだと思うので、必ずしも特に正確な形でもなんでもないかもしれませんが(笑)(人工の方も、ほぼ同じというよりただ色を変えただけですしね)、でも見る人が見たら「tRNAかな」と思えるぐらい上手に描かれていますし、概ねあんな感じですね。

一応、結晶構造を基に正確に描かれた分子モデルのアニメ図がWikipediaにあったので、また引用させてもらうとしましょう。

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https://en.wikipedia.org/wiki/Transfer_RNAより

アニメの意味がほぼ何にもない、ただちょっと揺れてるだけじゃん(笑)って感じですが、まぁもちろん実物には色もついていないしリボンでもないしステムを形成してる塩基が線で結ばれてるわけでもないですけど、イメージをもつ上で・説明する上ではこういうのを思い浮かべるのが最も理に適っているといえる感じですね。

『これが二次構造になるとクローバーになる』もその通りです。

ただ、より現実に近いのはL字型の方なので、クローバーはさらにもっと説明用に分かりやすく並べただけに過ぎない図ですね。


コメント最後の部分は、一部表現がちょっと変かな、と思える点はあるものの、解釈としてはバッチリOKだと思います。

アミノアシルtRNA合成酵素は、通りすがりに出会った(例によって、分子の出会い自体は熱運動での偶然の接触に依存しているといえるので、「通りすがり」というのはとても良い表現だと思います)tRNAのアンチコドンを含めまぁ全体的な配列を総合的に判断して…

「そのtRNAが自分の担当のやつだったら」(ここがちょっと変かなと感じるポイントで、くっつけるアミノ酸酵素ごとに決まっているので、その特定のアミノ酸は(tRNAに渡した直後以外は)常に酵素上でスタンバッてる感じなため、コメントにあった『そのアミノ酸を持っていたら』はちょっと変な感じの説明になってる気がしますね。
…って、改めて何度か読み直していたらまぁ間違ってはないかな、って気もしてきましたが、やはりこの酵素は基本常時自分の担当のアミノ酸を持っていますし、最悪アミノ酸がなくてもtRNAとくっつくことは可能なので、チェックポイントは『アミノ酸を持っていたら』というより、『通りすがりに出会ったtRNAが、自分の持つアミノ酸をくっつける対象だったら』という方がより正しい記述になっているといえましょう)

…と但し書きが長くなりましたが、その偶然出会ったtRNAが自分の担当だったら、tRNAを覆うようにして先っぽにアミノ酸をくっつけて、やることやったらサヨナラする(そしてまた新しいアミノ酸がスタンバッて、次のtRNAにアミノ酸を渡す、その繰り返し)…って感じで理解としてはバッチリかと思われます。

これも、よぉそんな都合よくことが進むよなぁ、出来すぎちゃいます?…と正直思えますが、上手いこと各酵素はミスなく自分の担当のアミノ酸を担当のtRNAに渡している形ですね。


図なんていくらでも違う人の描いたのを見て多面的に理解した方がいいもんですからね、また改めて、検索したらヒットした別の記事の概略図を引用させていただきましょう。

こちらは北大・曽我部さんによる、もう10年以上も前の研究記事からですが、アラニン用のtRNAにアラニンを渡す「アラニルtRNA合成酵素」(おさらいですが、「アミノアシルtRNA合成酵素」はまさにグループ名でしかなく、それぞれの担当するアミノ酸・tRNAに応じた、各種アミノ酸&tRNA専用の酵素が存在するのでした。これは、アラニン担当酵素、ということ)の研究記事ですが…

altair.sci.hokudai.ac.jp
例によって前回同様、研究の本筋というより単なるイントロの図でしかないですけど、分かりやすく模式図での説明がなされています。

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http://altair.sci.hokudai.ac.jp/g6/Topics/2009/AlaRS.htmlより

今回のtRNAも、手でそれっぽくグチャッと描かれただけで正確なモデルでもなんでもない感じですが、まぁtRNAっぽさは十分伝わるので、模式図としては十分でしょう。

酵素(AlaRSと略記)の方は、前回の小林さんのよりもより細かい図になっており、実はアミノアシルtRNA合成酵素は2つの領域(タンパク質やDNAの特定の領域のことを、専門用語で「ドメイン」と呼ぶことが多いです)に分かれており、こいつらは実際のアミノ酸の受け渡し反応を行うアミノアシル化ドメインと、くっついたtRNAが正しいものかどうかを判別する校正ドメインの2つからできあがっているのです。

前回の小林さんの図は、その点は小林さんの研究にはそれほど重要ではなかったから特に2つのドメインに分けて描かれていなかっただけで、実際はアミノアシルtRNA合成酵素は明白に2つのドメインに分かれて存在することが知られている、ってことですね。

その辺の原子レベルの仕組みを詳しく解析されたのが上記曽我部さんの研究で、細かすぎるのでここでは細部にまでは触れませんが、興味ある方はリンク記事をご覧いただけると学びがあるかもしれません。

いずれにせよ、今回見ておきたかったのは、アミノ酸ごとに特定の酵素が存在する感じになっているので、酵素は「接触したtRNAが、自分の担当かどうかをチェックしている」ってことですね。

 

では、もう大分前の記事でいただいてた質問コメントの続きに参りましょう。

ただ実は最後の部分はちょうど前回の記事を受けてもらっていたコメントなのですが、関連した話なのでまとめさせていただきました。

(アンチコドン表のtRNAの数は遺伝子DNAの数である、という記事を受けて…)

なるほど。tRNAっていう、あのクローバー型のやつも、RNAポリメラーゼがDNAを転写してポコポコ産まれているっていう感じ、ってことだったんだね。

ちなみに、リボソームを構成するrRNAっていうやつも、同じように、それを作るためのレシピが遺伝子内に存在して、RNAポリメラーゼが転写することによって産まれるっていうことで、合っとるんけ?

それはきっと当たり前のことなんじゃろけど、DNAっていろんなもののレシピなんだ?っていうことが、改めてちょっとイメージできた気がせんでもない感じかもしれんね!(ちょっとだけ笑)


ところで、その他のタイプのやつらに関していえば、他のRNA(mRNAやrRNA)は修飾されたりしないんかい?

RNAは同じ4種類の塩基でできとる分子でしかないと思うんだけど、酵素はちゃんとtRNAだけを狙って修飾できる感じなんかえ??


そう、tRNAやrRNAや、もちろんタンパク質をコードするmRNAも、出来上がった結果の役割が違うだけで、出来るまでの過程については同じなんですね。

こいつらは(当然ご質問のrRNAも全く同じように)、どれも遺伝子DNAの中にそれを作るためのレシピが存在しているので、RNAポリメラーゼが転写することによって産まれてきます。

ちなみに、70数塩基程度のtRNAとは違って、rRNAというのは、以前二次構造を見ていた通り、クソデカ分子です。

この辺の記事で見てたやつですね→巨大なものも、折り畳まるよ

この記事では大腸菌のrRNAの画像を拝借していたので、改めて別のものを例として貼っておきましょうか。

同じマサチューセッツ大学アマースト校におわしますFournier研究室が公開して下さっているマップから、今回は酵母のクソデカrRNAの画像を引用させていただきましょう。

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https://people.biochem.umass.edu/fournierlab/3dmodmap/yslsu2dframes43d.phpより

デケぇ~っっ!

でかすぎて、(多分ブログでは縮小表示されて)塩基が読めねぇ~!!

3396塩基もあるってことで、かなりの大きさの分子ですね。
(ちなみにこのマップは、3396塩基の25S rRNAというのと、それと一部の塩基を使って分子間でステムを形成することで知られる小さめの5.8S rRNA(それでも158塩基で、tRNAより2倍ぐらい大きい)という2つが描かれています。)


ちょうど関連して、前回の記事でいただいていたご質問(先ほどの引用コメント最後に追加した部分)、「tRNA以外の修飾は?」という点の答にもなっていた感じですが、ズバリ、その点については……ちゃんと触れようと思ったら割とまた時間がなくなってしまったので、次回へ続く!…とさせていただこうと思います。

まぁ言うほど触れる話もないかもしれませんけど、いい分量になったので、他の修飾についてはまた次回へまわすといたしましょう。

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