モノとポリ…いっぱいつながった、超お役立ちアイテム!

アミノ酸飲料に端を発し、タンパク質→DNA・RNAの話からおもむろに始まった有機化学入門ネタ、高校化学で教わる流れにのっとり、脂肪族→芳香族という流れで代表的かつ身近な物質について見てきましたが、最後を飾るは高分子化合物

高分子というのはその名の通り、それだけで完結しているある1つの分子が、ブワァーっとつながって生まれた新しい性質を持つ巨大分子のことであり、実は既に関連分子は何度も話に出ていました。

20種類のアミノ酸がズラァーっとひとつながりになってできるタンパク質、4種類のヌクレオチドがビヨォーンとつながり続けてできるDNAとかが、極めて分かりやすい高分子の例ですね。

といっても、これらは複数の異なるもの(タンパク質なら20種類、DNAなら4種類)がつながってできているため、ちょっと複雑すぎるので、有機化学の入門である高校化学ではほぼ触れません。
(「生体高分子として、タンパク質やDNA・RNAがある」と軽く触れる程度だと思います。いやまぁ多少構造についても学んだ気はしますが、各アミノ酸やA, C, G, Tの構造とかまでは覚えさせられなかったはずですね)

やはり簡単なのは、1つか、せめて2つのものが組み合わさる程度で、大量につながってできた巨大分子のどこを見ても「この高分子は、この物質(または、「これとこれ」)で出来ているものだ」ということが分かる、規則性のある物質だといえましょう。

この、高分子を形成している、1つの構成単位となる分子を「単量体」、英語では、以前アルコールについて触れた記事で、数のギリシャ語での数え方の接頭辞でも出てきましたが、モノクロとかモノレールのmonoで、モノマーと呼ばれます。

ちなみに、2つの分子がつながったもの(二量体)を、2は「ジ」でしたが、これはジマーではなく、多分音の響きが悪いのでこれだけいきなりアメリカ英語っぽい発音の「ダイマ」と呼ばれます……が、まぁその辺はどうでもいいでしょう。

モノマーもダイマーも別にどうでもよく、次の単語を出すための単なる取っ掛かりのネタだった感じです。

ということで、この流れで、分子がたくさんつながったものは「多量体」と呼ばれるわけですけど、これを英語ではなんというか?

つまり、「多~」を意味する接頭辞は何なのかということですが、これがズバリ、タイトルにも挙げていましたが、よく考えたら色々な場面で耳にしたこともあった気がする、「poly」なんですね!

ポリマーという単語を聞いたことがあると思いますが、これはズバリ、単量体モノマー、二量体ダイマー、三量体トリマー、四量体テトラマー……という流れで、ポリマーというのは単に多量体、何か簡単な構成物質が大量につながった物質を意味する言葉だったというわけなのです。

ちなみに、1つ(mono)が、たくさん(poly)を所有…という感じで、モノポリーは「独占」という意味になるんですね。

まぁなぜわざわざそんな話をしたかというと、結局、ある物質名に「ポリ」をつけると、それだけで「その物質が大量につながったもの」を意味することになるのです、ってことを伝えたかったから、ということに過ぎません。

例えば、既にこないだの記事で話に出していたポリスチレンは、スチレンがグワァーンとひたすらつながった物質だ、ってことなわけです。

もちろん、つながるためには余計な腕が余っていなければならないので、基本的に高分子を形成する物質(単量体)は、二重結合をもつ(2本の腕の内、1本は弱いつながりで、簡単に別の腕とつながる浮気モノという話でした)とか、両端に手を繋ぎやすい官能基がいる(ベンゼン環の両端に反応しやすいやつがいるのとかが多いですね)とか、そういうモノが中心になります。

だから、例えばエタノールは、もうそれだけで安定した手つなぎが完結している分子なので、誰か他の分子やエタノール自身同士などと手をつなぎようもなく、ポリエタノールなんて物質は存在しないわけです。

既にポリスチレンと、ついこないだポリエチレンテレフタラート=PETについて触れていましたが、最も簡単な高分子になれる物質といえば、二重結合が一つ存在するエチレンでしょう。

二重結合のうちの1本がほどけて、左右に手を伸ばしあってそれが延々つながっていく…という形ですね。

こいつの名前はもうそのものズバリそのまんま、ポリエチレンと呼ばれる物質で、この名前自体も確実にどこかで聞いたことがあるでしょうし、現実世界でも必ずお世話になりまくってる物質ですね。

構造は極めて簡単な、これ…

f:id:hit-us_con-cats:20210706060104p:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポリエチレンより

簡単ですが、「( )n」という表記が絡んでくる、何かややこしさもあるっちゃある感じかもしれません。

もちろん、「大量につながる」といっても、何個つながるかは作るときの反応によってマチマチなので、一口にポリエチレンといっても、「何分子のエチレンがつながっているか」とか、途中、一直線ではなく、枝分かれする感じでくっつくこともあるので、「どの程度の分枝が見られるか」といった要因により、色々な形態のポリエチレンがこの世の中には存在します。

いうまでもなく、これはあらゆる高分子化合物で同じことがいえる話ですね。

そういう曖昧さ、どうやってつながるかまで抑える必要があるややこしさ複雑さ、構造式にnとかがからんでくる仰々しさ、そして高校化学最後の最後の章で、何となく駆け足で習う分野ということもあり、「高分子は捨てるわ」という受験生が結構多いわけですが(実際、まぁ、捨てたくなるのも分からないでもないです)、結構試験問題で出されることも多い、受験生泣かせのテーマではあるかもしれませんね。

…が、この入門編では、別に覚える必要なんて一切ないですし、あまりにも生活に身近な物質が目白押しですから、見る分には逆に面白いジャンルといえるかもしれません。


まぁそんな御託はともかく、ポリエチレンに話を戻しましょう。

エチレンは、例のリンゴが出すエチレンガスなので気体でしたが、これが手を結び合ってつながると、一気に固体になります。

用途としては、一部界隈によって悪の権化とみなされて絶滅させられようとしているスーパーのビニール袋とか、そんなに丈夫じゃない(後述のポリプロピレンより強度は弱い)けど、安価で、簡単な容器としては十分といえる、安っちぃプラスチック素材のものなんかで使われていますね。

安価で大量生産が可能なので、現在、最もよく使われているプラスチックの1つといえましょう。

上述の通り、つながり方の違いで高密度・低密度のものが存在し、高密度は、コレステロールのときと同じく、high densityの頭文字を取って、HDPE、低密度はLDPEとも略されますが(PEは当然、ポリエチレンのこと)、プラスチック製品の表示では単に「PE」と書かれていることがほとんどかもしれませんね。

LDPEの例は、マヨネーズの容器スーパーの透明ポリ袋なんかで、HDPEの方は、シャンプーの容器レジ袋なんかが利用例として挙げられるようです。


一方、エチレンの次に単純な、炭素3つに二重結合が1つあるプロピレン、こいつも当然二重結合の腕を1本ほどいて分け合うことでジャンジャンつながっていき、ポリプロピレンと呼ばれる、これまたプラスチック製品として汎用される物質ができあがります。

f:id:hit-us_con-cats:20210706061324p:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポリプロピレンより

こちらは略号PP、ポリエチレンに比べて、頑丈熱に強い薬品に強い・透明度も高いといいとこ取りですが、表面に印刷可能なPEと違い、PPは特殊加工なしでの印字が難しいのでデザイン面には劣るという欠点もあるかもしれませんね。

丈夫さが要求されるプラスチック製品(自動車の部品とか)や、薬品に強いから実験器具(プラスチック試験管とか)で僕もよくお世話になっていますし、日常に近いものでいえばペットボトルのキャップ(ゆるいと漏れますから、丈夫さが必要なものですね)なんかでも使われているので、これまた誰にでもおなじみのプラ製品といえましょう。
(何だかんだ、しょぼいプラコップとかを見てみても、PEよりPPであることが多い気もしますね。)


せっかくなのでもう一つの汎用プラ、ポリスチレンも、最後改めて軽く触れておきますか。

f:id:hit-us_con-cats:20210706061442p:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポリスチレンより

こちらは略号PS、程よい強度で成形・接着・染色も容易であることから、プラモデルの材質として用いられているとWikipediaの記述にありましたが、やはり、他にはない最大の特徴として、泡で膨らませることで独特な発泡スチロールと呼ばれる物体ができあがるという点が挙げられますね。

発泡スチロールがどんなものなのかは、こんなもん絶対に誰でも知っているので、一切説明不要でしょう。


あぁ、このぐらいで汎用プラは網羅したかなと思いましたが、現代社会におけるプラ界の圧倒的王者、断トツ一番使われている、ポリエチレンテレフタラートさんを忘れてましたね。

f:id:hit-us_con-cats:20210706061719p:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/ポリエチレンテレフタラートより

樹脂識別コードは貫禄の01番、略号PETで日本ではペットボトルと呼ばれますが、アメリカでは基本的に「プラスチックボトル」としか呼ばれず、今手近にあるアメリカの商品の容器を見てみたら、「PETE」と刻字されてましたね。

そんな感じで、英語では、ペットボトルといっても確実に通じないので注意しましょう。

まぁこちらは先ほどまでの単一物質のみがつながったポリマー(ホモポリマーと呼ばれています)とは違い、2種類の物質がお互い手をつなぎあい、1:1の割合の構成単位で延々伸びていく形になります。

名前的に、エチレンとテレフタル酸がつながったものかと思いきや、実は、エチレングリコールテレフタル酸がつながったものであることに注意が必要でしょう(まぁどうでもいいので別に注意しなくてもいいですが)。

これも、鋭い方なら構造を見るだけでピンと来る話かもしれませんが、エチレングリコールOHエチレングリコールは、エタンの両端にOHがついたやつでした)と、テレフタル酸COOHテレフタル酸は、ベンゼンの両端にCOOHがついたやつでしたね)が反応し、水分子が取れてCOOCというつながりになるという例のアレ、そう、エステル結合でつながっているものなのです。

だから、PETは、ポリエステルの一種なんですね。

ポリエステルも、めちゃくちゃよく聞く単語ですが、これは今までのポリエチレンやポリスチレンと違い、「エステル」というのはいわばグループ名でありそういう単一の物質は存在しませんから、地味に全然違うタイプのワードであるという点も、知っておくと通ぶれるかもしれません。

(要は、「ポリエチレン」なら、「エチレンがいくつつながってるか」という多少の差異はあれど、どのポリエチレンのどこを拡大して見てもエチレンがつながっているだけの単一の物質ですが、「ポリエステル」という名前の物質には、PETもあればPTTと呼ばれる繊維もあるという、グループの名前だということ。
 その意味で、ポリエステルは「タンパク質」に近い名前ですね。一口にタンパク質といっても、全然違う中身のものが存在している…というのと一緒ってことです。)


他にもまだまだ「ポリ○○」シリーズはありますが、もうメジャー所は出し終えたので改めて見るほどのものでもない気もするものの、簡単に次回以降また見ていくとしましょう。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村