改めてQ&A:スイッチが入るとは?マシーン?工場?

前回までの記事で、いただいたご質問に答えてみていましたが、その中の説明で、新たな疑問点をいただきました。

気になる点のご指摘、本当にありがとうございます。

まぁ何度か似たようなこと書いてますけど、分子生物学や遺伝学の解説記事や参考書なんてそれこそ世の中に星の数ほどありますが、話を聞いたときにふと感じる疑問点に回答が提示されることは(というか、そういう疑問点が取り上げられることすら)ほとんどないように思うので、これこそまさにブログという形態でできる、格好の記事内容になっていると感じてやみません。

解説を進めるより、こういう「実際に説明をご覧になった方が感じた疑問」の解消につながるための協力ができるほうが嬉しいし楽しいので、むしろ永久にQ&Aをやってたいぐらいですね(笑)。

ただ、不特定多数の人が見る可能性のある場での質問って、何気に難しいものだとも思います。

分からないことすら分からないレベルだと質問のしようもないですし、仮に分からないことがあっても、「もししょうもなさすぎる質問で、『こいつバカなのか?』とか思われたら嫌だな…」みたいな感情は、やはり人間あるものですから。

その意味で、率直な疑問点を投げてくださるアンさんは実に素晴らしく、また実際毎回非常にいい質問を投げていただけていますので、まさにアンさんこそがこの一連の記事のMVPといっても過言ではないでしょう。

改めてアンさんにはお礼申し上げます。


というところで、今回いただいていた疑問点というかモヤモヤ点は、以下のポイントでした。

(前回の記事で書かれていた文章→)「DNAの設計図(遺伝子)自体は生きてるけれど、それを作るマシーンや工場が失われたとか、免疫ならそのウイルスに対する抗体を作るスイッチが入ったとか…」の、『マシーンや工場』『スイッチが入る』その辺りのイメージが全くできない。

以前にも、遺伝子のスイッチがおかしくなるとかONになるとかあって、いまひとつしっくり来なくてう~んっていう感じだったんだけど……何それ?

一字一句そのままではなく、改変引用という形ですが、「スイッチ」「マシーンや工場」…こいつら一体何じゃらホイというご質問ですね。

いやぁ~、後出しジャンケンにもほどがありますが、この辺、書いてて「こんな説明、あり?受け入れられんの?」とは、自分でも思ってました(笑)。

まぁ詳しく説明するためには、まだ出していない(いずれ登場予定の)新登場人物(分子)も必要になるので、漠然とそれっぽい雰囲気描写だけに終始していたわけですが、まぁ新用語や前提知識一切なしで、もうちょっとそれっぽい説明を加えてみるとしましょう。

まず、DNA(A, C, G, Tが大量につながってる分子)から、色々な、本当に様々な機能をもったタンパク質が作られる(DNA3文字で、1つのアミノ酸を指定。アミノ酸は20種類あり、タンパク質というのは、これまたその20種のアミノ酸というのが大量につながってできてる分子)という流れはまぁOKだと思うんですけど、結局ここのイメージなんですよね。

前も書いたとおり、当たり前ですけど毛根の細胞では髪の毛になるタンパク質が、爪では爪になるタンパク質が、お酒を分解する肝臓では、お酒分解酵素ALDH2と呼ばれるタンパク質などなどが、それぞれ適材適所で作られているということについては、まぁ異論の余地がないと思います。
(実際に指先からは爪が生えますし、舌から髪の毛が生えてくるなんてこともない。)

で、細胞の持つ遺伝子DNA(60億塩基対。基本的に、核の中で、23本の染色体にわかれて存在している)自体は、多少の変異が入っていることはあれど、自分のDNAはどの細胞でもほぼ完全に同じDNAになってるのに、どうやって「どの細胞でどのタンパク質を作るか作らないか」を決めているのか?……という疑問にぶち当たるわけですが、これはもう、ズバリ、それぞれの遺伝子をON/OFFするスイッチで制御しているというのが簡潔な答になるわけです。

具体的なイメージはできなくても、もしその事実を(一旦難しいことは抜きにして)受け入れられるのであれば、「確かに、スイッチがあるなら、毛根では髪の毛タンパク質を作る遺伝子がONになってるんだろうし、ALDH2遺伝子なんかは肝臓で強力にONになっていると考えれば、まぁ適材適所でのタンパク質合成はできそうだね」と納得いただけるのではないかと思います。

そのスイッチについてですが、より詳しくはちょうど次回以降の話でまた触れようと思ってるネタなんですけど、簡単な話としては、「DNAにはタンパク質のレシピを記した部分以外にも、その前後に色々な調節領域があって、そういった領域込みで、1つの遺伝子と呼んでいる」などということも以前書いていました。

要はその調節領域が、その遺伝子のスイッチの役割を果たしているという形になります。

具体的には、スイッチ自体はDNAのA, C, G, Tの配列で作られた領域にあり、そのスイッチを実際にONする役割をもっているのは誰かといいますと、そんなことができるのはアイツしかいません、「そうだね、プロテインだね」ということで、タンパク質ですね。


一方、「マシーンや工場?」という話ですが、細胞が分裂するときにDNAを合成したり、タンパク質をDNAのレシピから作ったりするのにも、当然、「実行部隊」が必要になるわけです。

そういうことを実際にやってのけているのを、マシーンと呼んだり、マシーンが秩序だって働いている場を工場と呼んだりしていたわけですが、これも当然、体の中にロボットとか歯車とかがあるわけではありません。

あくまで例え話ですね。

じゃあ具体的には何なのよ、といわれると、これももちろん、「そうだね、プロテインだね」ということで、そういう機能をもった特別なタンパク質が、DNAやタンパク質といった長~い分子を作るために働いているわけです。
(ただ、これは生物の根幹を成す本当に複雑なメカニズムなので、これに関しては、タンパク質以外にも関与するものが存在しています。その内登場予定ですね。)


「いやちょっと待てよ、タンパク質を作るのにタンパク質が必要って、じゃあその『タンパク質を作るのに必要なタンパク質』は、まずどうやって作られたというか手に入れたのよ?」…と疑問に思うかもしれませんが、これは、母親の卵細胞の中に、あらかじめ人間を作るのに必要なタンパク質一式(DNA合成マシーンとか、タンパク質合成マシーンとか)が用意されている、という感じになっています。
そいつらが協力して、1つの細胞からこつこつ、必要なものをDNAに書かれているレシピの通りに作り出し続けて、長い年月をかけて人間ができあがる、って感じですね。

ただそうすると、「いやでもそのマシーン自体もタンパク質なんだから、DNAのレシピから作られる必要があるんだろ?一番最初、マシーンがまだない状態で、そのタンパク質を作ったのは何なのよ?」…とも思えてしまうものの、これはまさに、究極的には、「卵が先かニワトリが先か」の話=生命の起源に行き着いてしまう感じですね。

でもまぁこのニワトリと卵論争、正直、「そんなん明らかちゃいます?」って個人的には思えてしまいます。

どう考えても、でしょう。

卵ってのはたったの1細胞ですから、それぐらい単純なものなら、何かの偶然で、たまたまできることだってあるでしょう。

まぁどう考えてもあまりにもスゴすぎる(よく出来すぎてる)ので、「じゃあお前ゼロから卵作れよ」といわれても作れないですけど、何十億年という地球の歴史の中で、たまたまDNA(ヌクレオチド)とかアミノ酸とかが一箇所に集まっているときに、たまたま膜に包まれて、たまたま自分をコピーして増やすことができるようになって……というのは、まぁめちゃくちゃ可能性は低いけれど、なくはないように思えます。

でも、ニワトリぐらい複雑なものがいきなり無から生じることは絶対にあり得ないので、物事は単純なものから始まっているというのは道理ですし、「まず核酸アミノ酸といったただの物質があった。その後、なんやかんやあって、そいつらが集まって手を取り合って働くようになり、1つの細胞のようなものが生まれた」というのが流れであり、そういう意味では、「親ではなく、卵が先だ」といえる気がします。

 

話が逸れましたが、まぁ生命の起源については誰も確定的なことは分からないというのが実際のところですね。

一方、起源はともかくとして、マシーンのイメージに話を戻すと、細胞内でDNAとかタンパク質とかを合成するマシーンとして働いているのはそういう機能をもった特別なタンパク質であり、これはもう、「そういうのがいるんです、そうなってるんです」としかいいようがない話なのかもしれません。

…いやそうなんですっていわれても、たかが分子?高分子タンパク質?か知らんけど、ミジンコよりも小さい、肉眼では見えないようなものがマシーンとして働くとか、そんなの無理じゃない?え、だって、そのマシーンには目がついてるの?どうやって動くの?どうやって状況を判断してるの?

…というのが、恐らくイメージが湧かない(イメージを描きづらい)最たる原因なのではないかと思えるわけですが…。

まぁこれについては、例によって簡単な説明で厳密に描写することはとても難しいですけど……とりあえず、当然、タンパク質には目がついているわけでも、意思をもって働いているわけでもなく、ぶっちゃけていえば、どんな分子も細胞の中を適当に動いているだけです。

しかし、適当に動いているだけなのに、適当に動いても全てが滞りなく進むように、信じられないぐらい上手く色々なものが配置されている、という説明が、一番実際の所を言い当てている感じかもしれません。

結局、「にわかには信じられないけど、実際そうなってるんだから、出来すぎに思えても信じるしかない」的な話に帰着してしまいますが、何度か書いたとおり、「いやそんなのあり得るわけないじゃん。なんで目に見えない小さいやつらが、そんなスゴいマシーンなんかになれるわけ?誰に命令されてるわけでもないのに、工場でモノ作るとか、そんなの無理でしょ」と思ったことを実際にやってのけているのが細胞なので、ここはもう、生命のスゴさにひれ伏し、甘んじて受け入れましょう、というのが、モヤモヤ解消の第一歩かもしれないですね。

…何かもうちょい丁寧に書こうと思ってたんですけど、スペースの都合&やっぱりもう1つ新しい登場人物(人じゃなくて物質ですが)を出さないと説明が難しい点があるということもあり、まずそっちからかな、って気もしてきたので、やや中途半端で多分根本の解決になってはいないと思われますが、ここは逆にちょっと謎な感じでも先に進めた方がいいかなって部分かも…という気がしてきました。

まぁでも、その前に、もう少し書いておきたかったことを次回、追加で書いてみるかもしれません。

いずれにせよ、誰しもが謎&不思議に感じるポイントなので、この辺はまたいずれ改めて触れてみる予定です。

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