前回、前々回と、ノロウイルスについての話を見ていましたが、そちらに興味深い、各種病原体の潜伏期に関するHEALTH LIBRARY記事があり、まぁHEALTH LIBRARY記事は長めなことが多いんですけど、画像がデカくて箇条書きの項目もあったことから、スクロールバーの見た目(=ページの上下の長さ)ほど中身は長くないだろう…と高を括って、今回はこちらを見てみることにしました(↓)。
「潜伏期」というのは、まぁ読んで字の如しで、感染してから症状が発生するまでの時間のことを言うわけですけど、英語では↑のリンクカードタイトルにもある通り、Incubation periodと言うんですね。
「インキュベーション」というのは僕の専門の生命科学では死ぬほどめちゃくちゃよく使う単語で、この分野では「培養」という意味の、細胞や菌を培地で育てて成長させるという場面で使う言葉なので、まぁ意味的には似たようなものではあるものの、「培養」の場合「積極的に育てる」という意味合いが強いですから、「へぇ~、『潜む』みたいな意味はないんだね」と少し意外でした(もっとも、原義というか第一義は「(卵などの)ふ化」という意味なので、自分の意思で微生物などを培養するというより、そもそももっと「小さな細胞が、ひっそりと増えていく」という意味を元々備えた言葉であるのかもしれませんが)。
いずれにせよ、まぁ潜伏期を知った所でどうという話でもないんですけど、知識として抑えておくのもタメになると言えましょう、各種病原菌の無症状期間をクリーブランド・クリニックによるまとめ記事で見ておこうと思います。
潜伏期間(Incubation Period)
潜伏期間とは、感染症にさらされてから症状が出るまでの期間のことです。医療従事者が通常、数日から数週間で測定します。COVID-19やインフルエンザのような一般的な呼吸器疾患は、潜伏期間中―つまり自分が病気であることに気付く前から感染力があるため、容易に感染が拡大しがちです。
潜伏期間とは何?
「潜伏期」とは医学用語で、感染症にさらされてから症状が出るまでの期間を指します。
特定の疾患やその拡がり方によって、誰しも様々な方法で感染する可能性があります。例えば、以下のような状況にさらされることで感染するかもしれません:
- 汚染された表面に触れた後、口に触れた。
- 誰かの咳やくしゃみの飛沫を吸い込んだ。
- 性感染症(STI)に感染している人と性的接触を持った。
- 加熱不十分な肉や生乳を摂取した。
- 感染症を媒介する動物や昆虫と接触した。
時には病原菌に触れた瞬間を特定できることもあります。長時間電車に乗っていて、隣の人が咳き込んでいた時かもしれません。あるいは、もしかしたら、翌日COVID-19の陽性反応が出ていた、いとことの夕食かもしれません。別の場合には、気分が悪くなって目覚めるまで、自分が病原菌にさらされていたことに全く気付かないこともあります。そして、全ての始まりがどこにあったかを思い返してみることになるわけです。
一般的な病気の潜伏期間を知っておけば、自分自身や大切な人の症状がいつまで続くのか―そしていつ治るのかを知る手助けとなります。
潜伏期間中には何が起こるの?
潜伏期間中、病原菌は体内に住み着き、菌自身のコピーを作り始めます(増殖)。すぐに免疫系がそれに気が付き、侵入者を一掃しようと行動を開始します。この免疫反応により炎症が起こり、喉の痛み、鼻水、発疹、あるいは下痢などの症状が現れます。
潜伏期間は罹った感染症によって大きく異なります。 (※各感染症は以下の段落で出てくるため、日本語はそちらをご参照ください。)
潜伏期間はどのくらいになり得るの?
医療従事者は通常、潜伏期間を数日から数週間で測定しています。しかし時には、特定のSTI(性感染症)のように、潜伏期間が1ヶ月以上に及ぶこともあり得ます。ある種の食中毒では、わずか数時間で症状が出ることもあります。
一般的な感染症の潜伏期間
以下は、ご自身やご家族が遭遇する可能性のある感染症の典型的な潜伏期間です。
- アデノウイルス(Adenovirus): 通常5~6日ですが、2~14日の場合もあります。
- 水疱瘡(Chickenpox): 10~21日(平均14~16日)。
- 風邪(Common cold): 12時間から3日。
- COVID-19: 2~14日(オミクロンとその亜種の平均は3~4日)。
- 手足口病(Hand, foot and mouth disease): 3~6日。
- インフルエンザ(Influenza (flu)): 1~4日。
- 麻疹(はしか)(Measles): 通常8~12日ですが、最長21日になることもあります。
- モノ(キス病)(感染性単核球症または腺熱)(Mono (mononucleosis or glandular fever)): 4~6週間。
- 結膜炎(細菌性)(Pink eye (bacterial)): 24~72時間。
- 結膜炎(ウイルス性)(Pink eye (viral)): 12時間~12日。
- 風疹(Rubella): 12~23日(平均14日)。
- RSV(呼吸器ウイルス感染症): 4~6日。
- 溶連菌感染症(Strep throat): 2~5日。
- 破傷風(Tetanus):3~21日。
- マイコプラズマ(非定型)肺炎(Walking (atypical) pneumonia): 2~4週間
性感染症の潜伏期間
パートナーがSTI(性感染症)に陽性反応を示した場合、自分も陽性反応を示すのではないかと心配になります。STIに感染した場合―たとえ症状がなくても―まず最初にすべきことは医療機関に連絡することです。医療機関は、ご自身が感染症に罹っているリスクを把握するために、いくつかの質問をします。また、次に何をすべきか―STI検査や治療のために来院するなど―のアドバイスもしてくれるでしょう。
STIの潜伏期間は様々です。以下はその一例です:
- クラミジア: 7~21日。
- 尖圭コンジローマ(性器イボ): 14日~8ヶ月。
- 淋病: 1~14日間。
- 単純ヘルペス2型(性器ヘルペス): 2~12日ですが、数ヶ月または数年になることもあり得ます。
- HIV(急性HIV感染症): 2~4週間。
- 梅毒: 10~90日(平均21日)。
STIに感染していても症状が出ないこともあります。潜伏期間を過ぎただけでは、全て問題ないと判断することはできません。だからこそ、検査を受けて確かなことを知ることができるよう、あらゆる曝露について医療機関に話しておくことが重要なのです。
胃腸炎の潜伏期間
胃腸炎(一般に胃腸風邪、消化器風邪、または食中毒と呼ばれます)(※英語ではa stomach bug=お腹の虫ですが)の潜伏期間は、体調を悪くしている特定の「虫」によって異なります。多くの異なるウイルス、細菌、および寄生虫が胃腸炎、つまり胃や腸の炎症を引き起こす可能性があります。この炎症は、吐き気、嘔吐、下痢といった胃腸炎特有の症状を引き起こします。
以下は、注意すべき潜伏期間のいくつかです:
- カンピロバクター感染: 通常2~4日ですが、1~10日の場合もあり得ます。
- 大腸菌感染(消化器系に影響を及ぼす): 株によって異なりますが、8時間~10日。
- ジアルジア症(急性): 1~14日(平均7日)。
- ノロウイルス: 12~48時間。
- ロタウイルス: 1~2日。
- サルモネラ感染: 通常12時間~4日ですが、7日以上かかることもあり得ます。
異なるお腹の虫の潜伏期間を知ることは、特定の原因―例えば、ちょっと変な味がしたサンドイッチや、せっかく作った残り物など―を確定させたり、除外したりするのに役立ちます。
通常、お腹の虫は汚染された食べ物や水を摂取することで感染します。しかし、病気に罹っている人との密な接触や、汚染された表面に触れて口や鼻を触ることでも感染することがあり得ます。
潜伏期間中は感染性があるの?
多くの場合、答えはイエスです。潜伏期と感染期は通常重なっています。言い換えると、多くの場合、症状が出る前に感染を拡げてしまう可能性があるのです。
感染期間とは、あなた自身が他の人に細菌を撒き散らし、その人が病気になる可能性のある期間のことです。これは通常、症状が出ている日を指しますが、最初の症状が出るまでの期間の少なくとも一部も含みます。
例えば、インフルエンザを他人にうつす可能性が最も高いのは、症状が出てから最初の3日間です。しかし、症状が出る1日前に感染させる可能性もあるのです。つまり、インフルエンザの潜伏期間と感染期間は1日程度重なる可能性があるということです。
感染症にさらされたと分かっていても、体調が良い―そして他の人にうつしてしまうのではないかと心配な―場合は、医療機関に連絡してください。医療機関では、その病気の詳細、潜伏期間、他の人に病気をうつす可能性について教えてくれます。
なぜ潜伏期間が重要なの?
特定の病気の潜伏期間を知ることで、以下のことが可能になります:
- ご自身やお子様が、いつ、どこで病原菌に感染したかを知る手助けとなる。
- 病原菌を拡げないために、どれくらいの期間他の人から離れたり(隔離)、予防措置―マスクを着用するなどの―を取ったりすべきかを知ることができる。インフルエンザやCOVID-19のような一般的な感染症の多くは、症状が出る前に自分から他の人に拡がる可能性があります。
- STIのような特定の感染症にさらされた後、感染を防ぐため、かつ/または感染を拡大しないために、治療を受けるべきかどうかを医療従事者に相談する機会が得られる。
しかし、問題があります―潜伏期間はあくまで研究から得られた推定値なのです。潜伏期間は信頼できる正確なものですが、常に外れ値が存在します。つまり、感染後、予想よりも早く、あるいは遅く発病する人もいるということです。症状が出るのが遅いか早いかは、年齢や浴びた菌の量などの要因が関係してくるものかもしれません。
そのため、医療従事者に相談することが、感染症に罹るリスクを知る上で最善の方法なのです。医療従事者は、心配の必要があるかどうか、どのような予防措置をとるべきか、また感染源にさらされたことによって何か(薬やワクチンの接種など)をする必要があるかどうかを教えてくれるでしょう。
クリーブランド・クリニックからのメモ
感染源にさらされた後、潜伏期間を待つことは、ストレスになったり、嫌気がさしたりすることさえあるものです。最善を望みつつも、数日間は惨めな気分になることを覚悟している―あるいは、長期的な治療が必要な、より深刻な診断を予想しているかもしれません。どのような状況であれ、医療従事者は詳細を整理し、次に何が起こるかを考える手助けをしてくれますよ。
やはり結構長めの内容ではありましたが、主な感染症がまとめられている良記事でした。
しかし、潜伏期がべらぼうに長いものといえば、今回は挙がっていませんでしたけど、やはりエキノコックスが浮かびますね。
潜伏期について具体的な数字までは触れてなかったみたいですが、以前チラッと触れたことがあり(↓)…
具体的な数字としては以下のウィッキー先生の記事にもある通り…
大人の場合、10年から20年もの潜伏期を経ることもあるってんですから、とんでもなく長い、本当に忘れた頃にいきなり発症する時限爆弾の極みみたいなものですね。
(子供の頃に川遊びで水を飲んでしまい、成人したらいきなり発病とか、「いやそんな子供時代のことなんて、知らんがな!」と思えてしまえますね…もっとも、小児の潜伏期間は5年ほどらしいので、それでも長いですが、成人までセーフなら概ね大丈夫だったと判断してもいいのかもしれません。)
感染症は怖いですから、感染しないように気を付けましょう(なかなか気を付けてどうにかなるものでもないわけですが…)。
