ここ最近の耳(特に鼓膜付近、中耳~内耳の部分)記事で見ていた中に面白そうなものがまだいくつかあったので、今回もそちらから1つ抜粋させていただこうと思います。
それがズバリ、前回・前々回の耳管記事で、「耳管の調子がおかしいときにやってみると良いでしょう」という形で出て来ていました、バルサルバ手技!
バーサーカーみたいで強そうな名前ですが(まぁ2文字しか合ってませんし、英語だとバーサーカーはBerserkerなので、まさかの8文字中「s」1つしか合ってないという体たらくですけど(笑))、これは当然人名ですね(この手法を開発した、17世紀イタリアの解剖学者のようです↓)。
一方、用語後半のmaneuverは、マニューバー・マヌーバーとカタカナ表記されることもある気もしますけど、何となく堅い響きがあることから推察が付くかもしれない通り、これは元々軍事用語で、「操縦・作戦・機動演習・方向転換」といった意味であり、さらに語源を辿るとラテン語のmanuoperare由来で、manusが「hand」、operariが「to work」という意味とのことで、要は「ハンド・オペレーション」ということですから、手を用いて行う様々な行動全般を指す広い意味を持った言葉ですね。
バルサルバ・マニューバーは、一般的には「バルサルバ手技」と訳されるようですけど、この用語が出てきた記事のリンクを取得するために「バルサルバ」で記事検索をかけてみた所、何と、ちょうどほぼ1年前に見ていた「圧力」関連の記事で触れたこともあったみたいで…
…引用していた厚労省検疫所のまとめていた記事(↓)に則り、ここでは「バルサルバ法」と表記していましたが、まぁ手法の名前として、やっぱり「~手技」より「~法」の方が収まりがいいですし、「バルサルバ法」という呼び方でもいい気がしますね。
まぁ本質的な差はないので名前はともかく(今回の記事は、より一般的な名称でかつ原語にも近い「手技」と表記しようと思います)、このバルサルバ手技、一体どういうものなのか、今回もクリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事を参考にさせていただきましょう。
(って、↑の厚労省記事を見れば非常に分かりやすく書かれているので、「そちらをご覧ください」の一言で終わりかもしれないんですけど(笑)、まぁ厚労省を信頼していないわけではないものの、クリーブランド・クリニックはやはり世界最先端ですから、念のためこちらもチェックしておきたい所です…まぁ、記事の水増しでしかないですけどね(笑)。)
バルサルバ手技(Valsalva maneuver)
バルサルバ手技は、異常な心臓のリズムを素早く正常に戻す、ドラッグ・フリー(=薬を使わない)な方法です。特定の種類の速い心拍リズムに有効な場合があるもので、いかなる時でも効果があるわけではありません。バルサルバ手技が失敗した場合は、心臓を正常なリズムに戻すために除細動が必要になります。
概要
バルサルバ手技とは何?
バルサルバ手技は、上室性頻拍(SVT)と呼ばれる速い心拍リズムに対処するための、迅速で非侵襲的な方法です。心拍を正常に戻すための薬やその他の手技を試す前に、時には治療の第一選択となることもあります。バルサルバ手技を行うには、鼻と口を閉じた状態で空気を押し出します(便を出すためにいきる時のように)。
バルサルバ手技は、医師からの指示を受けて行うべきです。この手技が有効なタイプの心拍異常があるかどうかも、お知らせしてもらえることでしょう。
なぜバルサルバ手技が使われるの?
担当の医療従事者は、バルサルバ手技を、診断や治療のために使用することが可能です。バルサルバ手技により、以下のことが行えます:
- 心拍数を遅くし、異常な心拍リズムである上室性頻拍(SVT)を止める。
- 心雑音の種類を担当医が判断しやすくする。
- 心不全があるかどうかを担当医に伝える。
- 静脈疾患や精索静脈瘤(陰嚢の静脈の腫れ)といった、その他の問題の診断に役立つ。
- (心臓の鼓動、呼吸、およびその他の機能を意識せずに制御している)自律神経系の問題の診断に役立つ。
- 中耳から、本来そこにあるはずのないものを取り出す。
バルサルバ手技を避けるべき人は?
バルサルバ手技では眼圧と腹圧が上昇するため、網膜症(眼の網膜の血管に問題がある症状)や、白内障手術後などで目の中に眼内レンズを挿入している方は、この手技を行うべきではありません。
以下のような方も、バルサルバ手技への注意が必要です:
- 心臓弁膜症
- 冠動脈疾患
- 先天性(生まれつき)の心臓病
手順の詳細
(※各ステップは、(なぜか番号は違いますが)↓の段落で順に説明されているのでそちらをご参照ください。「BP」はどこにも説明がありませんでしたが、血圧(Blood Pressure)ですね。)
バルサルバ手技を行う前に何が行われる?
担当医から、圧力を測定する装置に接続するマウスピースを渡されることがあるかもしれません。装置のプランジャー(吸引器)を浮かせるためにマウスピースに息を吹き込み、一定のレベルに達するようにします。診断の際は、バルサルバ手技中の圧力が40 mmHgに達することが望まれます。
バルサルバ手技のやり方
- 座るか仰向けになります。
- 息を吸います。
- 口と鼻を閉じた状態で息を吹き出しながら、うんちをするように力を入れます。そのまま15秒から20秒キープしてください。
- 鼻か口を開けて、息を吐き出します。
上室性頻拍(SVT)には、2種類のバルサルバ手技が有効です:
- 修正バルサルバ手技では、担当医が、被験者が力むのを止めた直後に両足を持ち上げます。この方法は、標準的なバルサルバ手技よりも効果が大きい可能性があるものです。ある研究では、標準的なバルサルバ手技が16%の方々に有効であったのに対し、この修正バルサルバ手技は46%の方々に有効でした。脚を上げることで血液が心臓に戻りやすくなるため、この方法のほうがより上手くいく可能性があるのでしょう。
- 逆バルサルバ手技では、座って鼻と口を閉じたまま10秒間息を吸い込みます。
バルサルバ手技の段階:
- 力を入れている間、血圧が一時的に上昇します。
- 血圧と、心臓が送り出す血液の量が下がります。心臓に戻ってくる血液が少なくなり、心拍数の上昇を引き起こします。心臓がより多くの血液を送り出し始め、血圧が正常に戻ります。
- 緊張を止めた後は、血圧が下がります。
- 血圧がこの手技を始める前より高くなっています。心拍が遅くなり、血圧が正常に戻ります。
バルサルバ手技後は何が起こるの?
バルサルバ手技が成功した場合(5~20%の確率です)、速い心拍数は約1分で遅くなることでしょう。バルサルバ手技を3回試みても上室性頻拍が止まらない場合、担当医は次のステップに進むことになります。このステップには、ご自身の症状、バイタルサイン(※心拍数・呼吸(数)・血圧・体温の4項目のこと)、および上室性頻拍のタイプに応じて、頸動脈マッサージ、薬物療法、または電気的除細動が含まれ得ます。
リスク/メリット
バルサルバ手技の利点は何?
バルサルバ手技は、上室性頻拍(SVT)を止めるための迅速でドラッグ・フリーな方法です。上手く作用すれば、薬物療法や除細動を避けることが可能となります。
バルサルバ手技のリスクや合併症は何?
ほとんどの方は、バルサルバ手技を安全に、合併症もなしに行うことが可能です。
通常、バルサルバ手技では副作用は起こりませんが、中には以下のようなことを経験する方もいらっしゃいます:
- 胸の痛み
- 失神
- 心臓のリズム異常
- 脳卒中
回復と見通し
回復時間はどのくらい?
バルサルバ手技自体の回復時間は非常に素早いです。しかし、バルサルバ手技がうまくいかず、上室性頻拍(SVT)が続いている場合は、担当医が他の手法を行うか、電気的または薬物ベースの除細動を行う必要が出てくるでしょう。
医師に連絡する時
いつ医療機関を受診すべき?
バルサルバ手技を教わり、SVTのためにやってみるように言われたのに上手く作用しなかった場合は、かかりつけの医療機関にご連絡ください。薬や電気的除細動を用いて、心臓を正常なリズムに戻すために力を貸してくれます。
クリーブランド・クリニックからのメモ
バルサルバ手技は、SVTを正常な心臓のリズムに戻すのに有効な手段です。しかし、毎回うまくいくとは限らないので、次のステップの計画を立てておくのが最善でしょう。どのような方法がおすすめか、かかりつけの医療従事者に相談してみてください。
なんと、「耳抜き」うんぬんは一言も出てこず、このバルサルバ手技は本来、心拍数・血圧を落ち着けるための方法だったんですねぇ~!
念のためクリ・クリ記事を見てみた甲斐がありました(笑)。
「鼻と口を塞いで息を吹き出すというやり方の副作用(副次効果)として、詰まった耳管の正常化にも役立つ」と、実はそういう話だったとは驚きです。
やり方としては、普通に鼻と口を塞いで思いっきり「プーッ」と息を込めるという正直なんだか怖いもので、これは圧力計とともに、目安の40 mmHgを維持するのがどれくらいの強さに当たるのかを、医師の協力のもと一度は見ておきたいものかもしれませんね。
(厚労省の記事でも、「あまり強くやりすぎると鼓膜を傷つける可能性があるので注意が必要」と書いてありましたし、極端に力を入れ過ぎると危ないのは間違いなく、気を付けるべき行為だと言えそうです。)
とはいえまぁ、常識的に考えて「鼓膜が何か破れそう」となったらそこでやめますし、気圧耳になった際は程度の差こそあれ我流で似たようなことをやってる人が多いものな気もします。
本来の目的であるSVT治療には、成功率が(改良型でも)半分に満たないということで、「これは正直、気圧耳治療用の手法なのでは…?」とも思えましたけれども(笑)、全く緊張も疲れてもいないのに「心臓のペースがおかしい、何とかして落ち着けたい…」という場面がもしあったら、おもむろに鼻口を閉じて「ぷくーっ」とやってみるのもありかもしれませんね(まぁ、成功率の低さ&事態の深刻さから、そんなことしてる暇があったら病院に駆けつけるべきだとも思えますが…)。