シリーズ生物分類学、前回は全生物を最も大きく分けた時のグループである「ドメイン」について、一番聞き慣れない古細菌というものをメインにごく簡単に触れていました。
改めて、最も一般的な分け方である三大ドメインとして挙げられるのは、「細菌・古細菌・真核生物」であり、まぁ個人的には正直、
「細菌も古細菌も、どっちも核に膜のない原始的なクソザコ生物だから、そんなのわざわざ分けずに『原核生物・真核生物』の二大ドメインでもよくない?
…っていうかそれ以上に核の膜とか知らんし、『ヒト・それ以外』の2グループでもいいじゃん」
…なんて思えますけど(笑)、まぁ分子レベルで生物を研究する場合、やっぱり「ヒト・それ以外」なんて言うまでもなくあまりにも乱暴すぎる分け方で、両者の中に何の合理的な共通点もないのでそれはいい分類ではなく、生体反応なんかを考えてみると、やはりまずは「核膜の有無」という違いが本当に大きく、更に細かく見ていくと、核膜がない原始的なザコどもの間でも、明らかに我々人間というか真核生物に近い生体反応をしている連中がいまして、それはやっぱり「他とは違う…」と特別視してやるに値するものといえ、それが「古細菌」というドメインとして、もう一方の我々とは似ても似つかない代謝システムを使ってるただの「細菌」とは別物と見てやる方が、あくまで生命科学的には便利な区分けだということなんですね。
なお、細菌を「ザコ」などと偉そうに呼んでしまいましたけど、目に見えない微粒子なのにわずか10匹ぐらいが体内に入ってしまっただけでお腹痛い痛い…を通り越して時に死ぬことすらあるのが病原性の細菌ですから(この辺の記事(↓)で、以前見ていました)…
…ザコなんてとんでもなく、自分の何百万倍もの重さの個体をコロッとやっつけられるぐらいですから、逆に細菌に言わせれば「ヒトカスザッコ(笑)」と思われているぐらいかもしれませんね(笑)。
バカにするのはやめましょう(「いやあんた以外誰もバカにしてませんが」って話かもしれませんけど(笑))……といったしょうもない話を書いていたところで、ふと、人間こそが地球の支配者で、我々が地球でもっとも存在感のある生物である……とまではまぁ思わないまでも、
「この地球上で、全員の重さを合わせたときに一番大きくなるのは、果たしてどのグループなのか…?」
…という点について、まぁドメインだと広すぎますし、その下の「界」で考える方が興味深いため、「界」の中身について触れてからの方が良かったかもしれませんが、ふと思いついてしまった&「界」の中身はまぁ、中学理科でも概ねおなじみでどなたもご存知だと思われますし、今回はちょっとそんなネタに触れてみようと思い立った次第です。
そんなわけでごく簡単に「界」という階層にどんなグループがいるのかだけ簡単に見ておきますと……
まず、「界」を考える必要があるのはどう考えても例の三大ドメインの1つ「真核生物」で、細菌・古細菌は、まぁ全員単細胞の似たようなザコカスなので、ドメイン全体を「界」の各グループと同等の扱いをする形で問題ないでしょう。
そして問題の「真核生物」、つまり核に膜のある生き物のグループですが、これはまぁ、言うまでもなく目に見える身の回りの生物全てに始まり、しかし核に膜が生まれてもまだまだ単細胞のみで1個体になる原始的なザコもいまして、めちゃくちゃザックリ分けると、「単細胞か多細胞か」というのが、一つの大きな区分といえますね。
で、単細胞の真核生物のことを「原生生物」などと呼びまして、これは中学理科…では出てこなかった気もしますが、まぁいわゆる「微生物」(だけど、核に膜すらなくDNAが剥き出しで存在している細菌とは違い、もっと進化したもの……アメーバみたいなやつら)になりますけど、「微生物」は科学的な用語ではなく、正式には「原生生物」と呼ばれる感じです。
一方、「多細胞生物」は、これこそが目に見えるいわゆる「生き物」で、我らが分類学の父・リンネさんは生物を「動物と植物」に分けた、いわゆる「二界説」から分類の歴史はスタートしたわけですけど(当然、当時はまだ微生物の存在がほぼ知られていなかった形です)、個人的には「動物と植物だけでいいじゃん、一番分かりやすい!」と思えるものの、これは中学理科でもズバリ習いました、多細胞生物には「動物と植物」の他に、「菌」というグループもあるんですね。
まぁこの「菌」って名前もマジでいくら何でも誤解しやすすぎて他になかったのかよ…と思える筆頭で、「菌」という同じ文字を使いながら、例の核に膜もなく目にも見えない「細菌」や「古細菌」とは一切関係ないグループで、代表的な菌はやっぱり「キノコ」や、まぁ「カビ」なんかもあり、カビの1個体は目に見えないのでそういう意味では「細菌」と似たようなもんじゃん、と思えるかもしれないものの、まぁカビはそれでも多細胞生物ですし、例によって「細菌・古細菌」と分けて考えた方が科学的には便利な場面が多かった(ので受け入れられた)のと同じように、「菌」というグループも、動物・植物とはもうあまりにも全然生命としての仕組みが別すぎて、「分けましょう」と考える学説が主流になった…という歴史がある感じです。
個人的には、「キノコとか植物でいいだろあんなもんよぉ(笑)」って思えますけど、まぁ個人のお気持ちよりも学術的な系統分類の方が重きをなすのは仕方ないので、「菌」という謎のグループも受け入れるとしましょう……
そんなわけで、実はそれだけで主だった「界」は挙げ尽くされており、改めて小さい方(まぁ多細胞生物の大きさは微妙ですが)から並べると…
・細菌
・古細菌
・原生生物
・菌
・植物
・動物
…の各グループになるわけですけれども……
これを読んでいるあなたも私も全員「動物グループ」の一員ですが、果たして「体重勝負」をした場合、この地球上で最大の勢力になるのはどの連中か、すぐに分かる方はいらっしゃるでしょうか…??
身内びいきをしたい人は、
「人間が何人いると思ってるんだ!しかも、ヒト以外の全動物、めちゃくちゃデカいゾウとかキリンとかも味方なんだろ?…ってか、全員を集めた場合、地球上で最も重いのはアリとか聞いたことあるんだが?勝ったな、流石に動物だろ…」
と思われるかもしれませんし、自然が好きな方は、
「あのさぁ……人間・動物のいない土地にも、植物はいくらでも生えてるんですけど?というか動物は植物の作るエネルギーを食べてるんだから、植物の方が少ないわけがねぇだろ……これだから動物派は、頭アニマルにも程があるでしょ…」
と思われるかもしれませんし、さらにマニアな方ですと、
「菌や微生物に目がいかない盲目バカさんのお墓はこちら(笑)。人間どころか全生物の体内に、めちゃくちゃな量の微生物がいることも知らんとか、もうお前生きてる価値ないよ、むしろお前の腸内にいる微生物がお前の健康を司ってると言えるぐらい、微生物の方が有能だしもはや本体だから(笑)」
と思われるかもしれません。
まぁ実際人間一人の腸内細菌は100兆を超えると言われますし、数で言えば小さい方が圧倒的に有利ですけど、格闘技において「体重は正義」ですから(別に格闘するわけじゃないですけど(笑))、今回は重さ勝負ということで、小さいとやはり重さの上では相当不利な気もします。
…と、パッと答にはいかず、考えていただく余白のためにしょうもない一人芝居をダラダラ続けましたが(笑)、もう十分でしょう……
検索したらまさにそのものズバリの話がまとめられた論文が目に付きました、それがこちら、2018年のPNAS掲載の、「The biomass distribution on Earth(地球上のバイオマス分布)」という記事…!
まぁ「バイオマス」という語は、ここ最近は再生可能なエネルギー関連でよく聞く言葉になっていますけど、言葉本来の意味は、「生物の重量」という意味で、あるグループの生物全体の重さを示す言葉ですね。
余計な御託はそこそこに、早速結果発表と参りましょう、ズバリ、論文著者の概算した、地球上の生物重量の分布は、以下の通りでした!
まぁアイキャッチ画像にしたのでネタバレしてたかもしれませんけど(と思ったら、アイキャッチは全然関係ない所しか表示されてなかったのでセーフでしたが(笑))、英語なので若干分かり辛いためヨシとしましょう……
こちら、単位は「Gt C」という若干分かりにくいものでしたが、これは「ギガトン(炭素重量)」という意味で、ギガトンはそのまま、重さの「トン」にメガ・ギガのギガがついたもので、ギガ=10億なので、10億トン=1兆キログラムのことで、「炭素重量」というのはまぁ、今比べてるのは生物の重さであり、生命というのは有機物=炭素元素から成るもので、生物本体は炭素の部分にあるともいえますから、水とかでカサ増しされてるのを無視した、純粋な有機物重量で勝負をしている形ですね。
早速結果に触れてみると……まさに一目瞭然でした、他の全てのグループを足してもまったく足元にも及ばないぐらい、この地球上に根を下ろし圧倒的な存在感(重量)をもっているのは、ズバリ植物(plants)で、地球上の生体炭素重量の合計約550ギガトンのほとんど、約450ギガトンが植物だったということで、桁違いでしたね!
…流石は生産者、この地球上のエネルギーを支えてくれていると言っても過言ではない植物が王者だったということで、やっぱり地球は緑の星なんですねぇ~。
一方、参考程度に入れられている、生物ではないウイルス(viruses)というおまけグループを除き、我らが動物(animals)はなんと単細胞カスたちよりも全然小さい、事実上最下位のわずか2ギガトン!
我が物顔で地上を走り回ってる動物カスすぎワロタ、全キングダム(界)が戦争をした場合、どれだけ「動ける」というアドバンテージがあっても、我々アニマルズは絶対に勝てないレベルのマイノリティだったんですね…。
でも人間には知恵があるから……戦争になったら、ボタンポチーで全員引き連れて大爆発しちゃるけぇのぅ、絶対に我々に負けはない、死ねばもろとも引き分けじゃガハハ!
…と、しょうもなさすぎる虚しい強がりは程々に、本当に、アメーバどもの原生生物(protists)の半分の重さしかないとか、もうこれダイエットは悪とすらいえる気さえするかもしれません。
そして、植物の仲間にも思えるキノコども菌(fungi)は、我々の6倍、アメーバのさらに3倍もの重量、12ギガトンもあり、分解者もかなりの数存在して仕事をしてくれているといえましょう…
更にはそれ以上に、やはり太古からいる膜なし単細胞のカスどもも強かった、古細菌(archaea)だけでも7ギガトンも存在し、細菌(bacteria)に至ってはなんと70ギガトン、王者植物に次いで、この星には大量のバクテリアが蠢いている、ってことなんですね!
ちなみに、我らがアニマルズはさらに内訳も紹介されており、人間(humans)は動物グループの中でもかなり小数の、わずか0.06ギガトンでしかなく、やはりヒトは武器がないとヒョロガリザコなのかもしれません。
そして動物界の王者はやはりあいつら、虫・節足動物(arthropods)が半分の1ギガトンを占めているという形になっていますね(個人的には、中でも凄まじい社会組織を形成するアリが強い印象があります)。
他には、大きい方から順に、魚(fish)、カタツムリなどの軟体動物(molluscs)、ヒルやゴカイといった別にこの世にいなくてもいい気しかしない環形動物(annelids)、クラゲ・サンゴといった魚以外の海の生き物である刺胞動物(cnidarians)、なんと野生の哺乳類より圧倒的に多い家畜(livestock)、シー・エレガンスの線虫(nematodes)、そして何気に人間の1/10程度しかいないらしい野生の哺乳類(wild mammals)、あと野鳥(wild birds)などなどが、主だった動物キングダムの住民だった感じですね。
まぁ、例によって例のごとく「だから何だよ」って話でしかないんですけど(笑)、そこそこ面白いデータでした。
なお、ヒトが0.06ギガトン=600億kgというのは、地球の人口70億人以上を考えたら、大分少なくない?と思ったら、やはりこれは「炭素重量」というのがポイントで、人間の体重は70%が水分であり、残りの半分が炭素にあたるということで、1人の重さは体重50 kg=炭素重量7.5 kgで計算されているとのことですね、補足資料によると。
なので、水分を体内に貯めなくても生きていける「水の動物」が全体的により大きく出ていた気もしますが(まぁ昆虫は全然水と関係ないですけど)、とはいえ水分込みの体重勝負でもたかが6倍程度にしかなりませんから、数百倍の差の植物には逆立ちしても勝てない、って感じですね。
植物に感謝して生きていきたい限りです。
そんなわけで、既にちょろっと見ていた感じですけど、次回はまた「界」の話をもうちょい詳しく見ていこうかなと思います。