ここ最近は生物の「学名」から唐突に始まった「分類学シリーズ」として、関連ネタを進めている感じです。
「『哺乳類』は、分類学の父・リンネさんの打ち立てた分け方だと、実は正しくない呼び方になっているのです」
…などと書いて、正解には触れずもったいぶっていましたが、とりあえず正解の前に、分類学の祖でいらっしゃる我らが大リンネさんについて、こないだから全く触れずにいきなり「リンネさんがさぁ…」とか書いていたのが気になっていたこともあり、まずはそこから参りましょう。
中学では習わなかった気もしますけど、分類学に触れる高校生物では間違いなく登場してきていたのがこちら、改めて、生物分類学の礎を築き上げ、自身、生涯で1万2000以上もの生物にきちんと体系立った形で名前を与えた、カール・リンネさんです!
肖像画は大抵、↑のリンクカードサムネにある、音楽室にいそうなヨーロッパ縦ロールおじさんで僕もその印象しかなかったですが(笑)、ウィ記事にはもうちょいイイ肖像画があったのでそちらをお借りしましょう。
自分の名前を与えた「リンネソウ」を持つ若かりしリンネさんだと思いますが、実は英語圏では、爵位を与えられた後の名前「Carl Linné」よりも、出生名である「Carl Linnaeus」で記述されることの方が圧倒的に多い印象があります(英語版ウィ記事もまさにそうなってますね↓)。
まぁそんなリンネさんもといリンナエウスさんですが、正直「名前つけるだけなんて誰でもできそう(笑)」って気も一瞬するものの、将来にわたり未来永劫使われ続ける、科学的に大きな綻びがなく運用可能な、体系的で分かりやすい命名をするのがいかに大変で偉業なのか、分類学を少しでもかじったことがある方であれば理解に容易い話だといえましょう。
…まぁ僕は高校生物以来分類学は少しもかじったことがないのであんまり凄さは理解できてませんけど(笑)、しかし1万2000もの生物種にきちんとした学名を与えたというのは冷静に考えたら凄いことで、まぁ、専門の仕事として実働40年弱でやってのけた仕事だとしますと、1年で300超、実におおよそ1日1種のペースで、雨の日も風の日も休まず名前を与え続けたことになりますから……いやまぁ1日1件なら、「うーん、君はホモ・サピエンス!」とか言えばいいだけですし、案外余裕な気もするものの(笑)、まぁ別にそんな毎日1命名みたいな感じではなく、新しい種を発見しつつ、分類しつつ…ということも考えると、言うまでもなくこれは大変な功績ですね。
…と、そんなわけで僕は分類学が専門でもないので、偉そうに能書き垂れているものの高校で学んだことぐらいしか知らないわけですけれども、まぁ生命科学研究では学名呼びされる生物も多く、そこそこ馴染みはある話なので、講釈垂れさせていただきましょう。
(具体的には、話の発端の「C. elegans(線虫)」から、同じく生命実験でモデル生物・実験生物として極めて有用な「E. coli(大腸菌)」(英語の場合、イー・コーライと読まれることが多いです)、「S. cerevisiae(酵母)」(サッカロマイセス・セレビジエ)なんかが二大巨頭で、あとは線虫と同じかそれ以上に遺伝学の研究でよく用いられる、「D. melanogaster(キイロショウジョウバエ)」(ドロソフィラ・メラノガスター)、「Xenopus(アフリカツメガエル)」(ゼノパス…これは不思議なことに、属名で呼ばれることが多いですね。正式には「X. laevis(ゼノパス・ラエビス)」ですが、名前のカッコよさ的には、近縁種の「X. tropicalis(ゼノパス・トロピカリス=ネッタイツメガエル)」の方がイケてますね!)、同じく属名呼びがメインといえる、植物研究のスター選手「Arabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)」(アラビドプシス・タリアーナ)などなどが、学名をよく聞く四天王でしょうか。)
そして分類学の各階層についてですが、改めて、大して意味のない日英ウィキ画像をお借りして…
…今回は上から順に並べ直してみました、こんな感じですね。
- 域(domain、ドメイン)
- 界(kingdom、キングダム)
- 門(phylum、ファイラム)
- 綱(class、クラス)
- 目(order、オーダー)
- 科(family、ファミリー)
- 属(genus、ジーナス)
- 種(species、スピーシーズ)
ドメインだけカタカナで違和感が大きかったですけど、前回もお借りした↓の個別記事によると…
…ドメインの漢字表記は、界を超える存在として「超界」や中国語由来の「域」なんかが使われるそうですが、まぁ「超界」は何かイキってる感じがしたので(笑)、そもそも他が1文字なのに2文字って変じゃんと思えることもあり、よりイキってない「域」に個人的一票を送りたい限りです(笑)。
覚え方は、下から「しゅぞく・かもく・こうもん・かいいき」と、よりリズムを取りやすくなったかもしれませんね(笑)。
それはともかく、ドメインは前回見ていた通り、「3大ドメイン」と考えるのが主流で、それが「(真正)細菌」「古細菌」「真核生物」の3つでしたが……
…と、続いては順に「界」についても見ていこうと思ったんですけど、そういえば前回出していた話の解答から見ていった方がいいですね。
「哺乳類」という呼び方は、分類学という学問的には正しくなかった、では正式にはどのクラスに属するの…?
…という問題、まぁ特に理屈もなく分類の大きさ的にたまたまそうなっただけでしかないと思いますけど、正しくは「哺乳綱」と、「コウ」に分類されるクラスに属する(綱は英語でclassだったので、前回もあえて「クラス」と書くことでヒントにしていた感じです(笑))ということで、他にも「爬虫綱」とか「鳥綱」とかになるわけですけど、魚だけは、「魚綱」とまとめるにはあまりにも雑多なものを含んでいるため、21世紀以降この分類は廃止され、「顎口上綱」という、綱より一つ高い位の「上綱」で分類されるグループになったと、一般呼称である「魚類」のウィ記事に書かれていました(↓)。
まぁ「魚が所属する綱はなくなった」というのも意外なポイントでしたが、いずれにせよ、正式には「哺乳綱」であろうと実用的には「哺乳類」の方がより普通だし通じやすいという意味でも全く間違いではない話なんですけどね……
一応、科学的により使われている分類法に照らし合わせて言えば、我々は「哺乳類」ではなく「哺乳綱」なのです…と、そういう話も教養として知っておくのは悪くないといえましょう。
ちなみに我々人間、科学の世界ではカタカナで「ヒト」と書かれることの方が多いですが、ヒトの分類を上から順に並べると…
…という感じになっています。
あぁ、「霊長類」も、しばしば「れいちょうるい」と呼ばれますけど、これまた現代分類学にのっとれば、こちらは「綱」の一つ下、「目」に属するグループなので、「れいちょうもく」の方がより正しい名前なんですね。
ちなみに、英語の分類をWikiP「Human」記事からお借りすると…
Domain: Eukaryota
Kingdom: Animalia
Phylum: Chordata
Class: Mammalia
Order: Primates
Suborder: Haplorhini
Infraorder: Simiiformes
Family: Hominidae
Subfamily: Homininae
Tribe: Hominini
Genus: Homo
Species: H. sapiens
…こちらは、メインのグループの他に、「サブオーダー」とか「インフラオーダー」とかいった下位グループまで丁寧に載せられていますが、まぁ正直あんまり馴染みのない名前が多いかもしれませんけど、「哺乳類」が「マンマリアン」というのは生命科学をやっていると非常によく目にするので(最後に「n」がつくことで、「哺乳類の動物」を意味します。まぁいずれにせよ、日本語でも英語でも「マ(ン)マル」という風に略して呼ばれることが多いですけどね)、これはお母さんみを感じる名前というか、分かりやすい名前ですね。
おっとしかし、日本語ではヒトが所属する「門」は「脊椎動物門」とされることが多いものの、ここで書かれているChordataは「脊索動物門」で、微妙~に異なる表現ですね(意味は、より広いか狭いか程度の違いですが)。
ただこれはウィキPがカッコつけてるだけで、少なくとも僕は脊椎動物を意味する「vertebrate」という単語の方が、遥かによく目にする気がします。
…と、今回はもっと細かい分類に入っていく予定でしたが、またしても時間不足でそこまで至らずこの辺で〆となるものの、まぁ今回のテーマは「哺乳類ではなく哺乳綱」という話だったということで、ヨシとしましょう(言うまでもなく、僕自身、途中から哺乳類と書いていた通り、綱なんて変換してもすぐ出てきませんし、普段使いの呼び名は哺乳類で全然いいと思いますけどね(笑))。
次回はまた、分類についてチョイネタを見ていこうと思います。