ここ最近の脱線ネタである圧力について、前回からまとめ…というか、改めて「気圧みたいな目に見えない圧力って結局何だよ?」という点に触れる話に入っていました。
結論としては、目に見えない空間にも実は空気の分子(主に窒素8割・酸素2割という、たった2種類の分子で全体の99%を占める、案外単純な構成ですね)というものが無数に、本当に尋常じゃない数存在しており、空間を飛び回っている分子が自分にぶつかってきて産み出されるのが気体の作る圧力の正体なのです…なんて話でした。
まぁそれ以上でもそれ以下でもないんですけど、もうちょい具体的な話に触れることで何となくの実感を得る一助につながれば…という感じで、また少し適当に思いついた話をつらつら書いてみる形です。
そんなわけで前回は、「ある部屋の圧力ってのは空気の分子の数によって変わるものであり、空気の分子を増やせば圧力は大きくなるし、減らせば圧力は小さくなる」なんて話をしていました。
空気を減らす装置として、前回も挙げていましたが一番身近なその仕組みを用いたものは掃除機になるわけですけど、そもそも掃除機ってのはどういう仕組みかというと、以下の東芝の記事に図入りで解説がされていましたが…
…普通に、掃除機の内部に設置された高速回転するファンが…
(上記リンクカードにも表記されていた通り、1分間に3万~4万回転(あんま関係ないですが、回転数は「rounds per minute(=1分あたりのラウンド(回転))」で、「rpm」とよく表記されます)というかなりのスピードで……自動車のエンジンを回してるときが大体3000 rpmとかそんなもんですから、何気に車の10倍以上もスゲぇモーターが、あんなしょぼい掃除機にはついていたんですね!)
…脱線が長くなったので仕切り直すと、傾斜をつけた羽根が回ると一方向に風の流れが生まれるというのは扇風機なんかでどなたもご存知だと思いますが、結局掃除機というのは、ファンが4万rpmとかで回ることで結構な強さの風を起こし、空気の分子を強制的に掃除機の外に飛ばすことで、掃除機の内部が「真空に近い低圧」になり(改めて、それは取りも直さず、掃除機の内部の空気の分子が(飛ばされて)減るからに他ならないわけですね)、そうすると掃除機の吸い込みヘッドの方から空気が流れ込むことになり…
(これは、水が高い所から低い所に流れるのと全く同様、空気というのは高圧の所から低圧の所へと流れるためです。
そうなる理由は……突き詰めると結局これも例の「エントロピー的にそうなるようにこの世界はできているから」って話になる感じですね)
…をれは言い換えれば、ヘッド付近の空気が吸い込まれるということになりますから、掃除機は床の空気を吸い込んでお掃除が可能だと、そういう話になっています。
まぁ正直当たり前すぎてあえて書くほどの話でもなかったですけど、掃除機のバキュームってのも、結局は空気分子の強勢的な移動に他ならないものだ、ってことですね。
そんなわけで、掃除機の内部は一時的に真空に近い状態ができているわけですけど、掃除機みたいな吸引ポンプを密閉した部屋につないでやれば、ポンプの出力に応じて「低気圧部屋」や、凄まじい威力のポンプであれば「真空部屋」まで作ることも可能になるわけです(前者の「少し圧力を減らした部屋」が、前回画像もお借りして貼っていた、「陰圧ブース」みたいなものですね)。
その「真空部屋」というものは、そもそも空気が目に見えないので、もちろん見た目的には何も違いが分からないのですが、この部屋は(まぁ当たり前ですけど)普通の部屋とは違う、結構面白い性質が存在します。
現象として面白い点としては、「空気抵抗」も「音」も全て空気が作るものですから(前者は文字通りですし、後者の「音」も、これは空気分子の振動が伝わってできるものですね)、それらに関して、普段我々が生活する空間では見られない現象が見られる感じですね。
一番分かりやすい例でいうと……
10円玉と、普段は空気抵抗でフワフワとしか落ちない、例えば赤い羽根みたいもの、これを落下させたら、普通の世界では当然、10円玉はストンと落ちて、赤い羽根はフワフワゆっくり落下するわけですが、真空の部屋ではなんと、こいつらは全く同じように落ちていくんですね!
…ちなみに、この話を僕が初めて見たのは、幼稚園の頃、姉が買ってもらっていた「小学○年生」の付録の、ドラえもんの面白い子供用科学読み本みたいなやつに載ってたものでしたが、そこでは
「真空中では、10円玉と赤い羽根が同じように落下するんだよ!」
…と書いてあったので、僕はずーっと、
「へぇ~凄い、10円玉がフワフワ落ちるってことかな?そんな光景見てみたいぜ!」
…などと思っていたのですが、言うまでもなく、空気抵抗がなくなるので、「10円玉がフワフワ」ではなく「赤い羽根がストン」と落ちる感じになります。
まぁそんなしょうもない勘違いする人はいるわけないかもしれませんが(笑)、とにかく、圧力とは少し話がズレるものの、「空気抵抗」というのも極めて大きなもので、これは「空気の分子が、めちゃくちゃ軽いものの落下運動を邪魔するからに他ならない」のがその仕組みですから、この例からも改めて、普段の空間にはどれだけ多くの空気分子が存在して「力」を産み出しているかが分かるのではないかと思います。
ちなみにこの実験、そういえば僕はドラえもんの本の勘違いに気付いたのは物理学を習ってからでしたけど、「そうなる」という話だけで、実際の様子は見たことないんですよね~。
(研究で真空チャンバー(真空状態に出来る小さな小鉢みたいなもの)を使うことはありますが、そんな小鉢程度では上手いこと落下実験なんてできませんしね)
…よし、インターネットの力で、子供の頃から見てみたかった「羽根がストン」を見てみよう!と思って調べたら、当然すぐに見つかりました、BBCのこの動画(↓)が、世界最大のバキュームポンプとやらを使って真空部屋を作り、ボールと羽根の落下実験をしてくれています!
素晴らしいですね。
(正直、「いやスローモーじゃなくて、リアルタイムの落ちる様子を見せてくれや!」とも思えましたが(笑))
コメントトップにあった…
(何が起こるかは完全に分かっているのに、実際にそれが起こったとき、本当に心から驚嘆・感動しているのが素晴らしいね。)
…というのは本当にまさにで、いくつになってもこういう感動する心を忘れずにいたいとともに、一応科学者の端くれをやってる者としては、こういう「現象の面白さ」を後世の子供たちなんかに沢山伝えていきたいものです。
(まぁ、ゆーて僕はこういうのより、ゲームとか漫画とかそういう「人間が考えて作った面白さ」の方がより面白いと思うクチですけどね(笑))
あと他の面白い点については、改めて、真空の空間には本当に「空気」が存在しませんから、例えばこの部屋に扇風機を置いて回しても、風は一切発生しないんですね!
「風」というのは空気分子の移動であり、「本当に何もない」空間でファンが回っても、動かすものが存在しませんから当然、無風なわけです。
真空部屋で人間は活動することが出来ないので、「扇風機が回っているのに、風が全く来ない!」という経験は絶対にできないわけですが、ちょうど↑の羽根ボール実験で、下から上に向かって大型の扇風機を回してくれていたら、かなり面白い画(え)が撮れていたかもしれませんね…!
(扇風機が回ってるのに、羽根がビクともしない。)
あとは、音を伝える空気もないということで、真空部屋は音も一切伝わらないわけですけど、これまた真空部屋に生身の人間がいるわけにはいかないので、実際に生で経験することはできず中々感動もないものの、真空部屋にカメラを置いておいても、ボールがバウンドする音が聞こえることは決してない、ってのは面白いポイントですね。
ほぼ真空である宇宙空間では音が伝わらないのも有名ですが、しかし、「俺の宇宙では鳴るんだよ」というルーカス節も、フィクション・物語好きの立場としてはとても好きなスタンスです…ってのは、以前何度か触れたことがあった話だった気もします。
…ってな所で、本当はもっと全然違う圧力のネタに行く予定だったのですが、またしても信じられないぐらい時間がなかった&掃除機からの真空ネタが案外広がってくれたということで、今回はまたこの辺にして、圧力まとめネタは次回もまた少し続けていく形とさせていただきましょう。
当初アイキャッチ画像も別のネタがあるかな、と思っていたのですが、別のネタに入る余裕も全然なかったので、(当初、リンクだけで画像は要らないかな、と思っていた)東芝の掃除機画像を無理やりペタリと貼り付けさせていただきました(笑)。