人間はどれぐらいの圧力まで耐えられるのか?

前回はシベリア擁するロシアが、アベレージこの世で一番高気圧な国(地域)で、世界最高記録は、モンゴルの極寒村トソンツェンゲルが記録した1085 hPaのようです…なんてことを見ていました。

 

これに関してまた、触れようと思ってたけど忘れてたぜ…的な話からちょろっと補足していこうと思いますが、まず「1085 hPaってどんなもんよ?」って話に触れときたかったんですけど、まぁこれは単純な算数ですね。

 

1気圧=1013 hPaというのが、例によってその例えもイマイチ分かりにくいかもしれないものの、手の平の大きさ(150 cm2)に150 kgのおもりがのしかかるぐらいの力だということを既に何度も見ていました。


なので、「手の平にのしかかる重さ」で考えると、1 hPaで大体その1/1000=約150グラムに相当するため、1085 hPaだと、標準大気圧より72 hPa大きな圧力がかかってくるということですから、150 × 72 =10800グラム、つまり約10-11 kgぐらい、手の平の上に余計な重さがかかるのが地球の史上最高気圧の記録である……ということで、史上最高気圧というのは、ちょうど2リットルのペットボトル5本を手の平の上に乗っける(まぁ角型のペットを横にして重ねれば乗るでしょうか)ぐらいの重さがかかる圧力だ、ってことになる感じだといえましょう。


…いやまぁ重いけどさ、何つうか普通にとんでもない重さではなく、観測史上最高レベルでそれぐらいとは、そんなに夢がないな…って気がするかもしれませんね(こんな話に何の夢だ(笑))。

 

しかしまぁそれはあくまで手の平にのみかかる重さということで、全身の表面積である15000 cm2(これはやや小柄な女性のサイズでしたが)で考えてみると、ちょうどその100倍、つまり1085 hPaだと全身に1トンもの力が普段より余計に、押しつぶされるようにかかってくるわけですけど、まぁこれも、そもそも大気圧の時点で15トンもの力がかかっている、ってことでしたし、イマイチ実感できる数字になっていないのは残念な所でしょうか。

 

数字を見ただけではあまり分からないものの、関連してちょっと、「果たして人間はどの程度の圧力まで耐えられるのだろうか…?」ということが気になってきました。

 

そんなわけで今回はまたちょっと脱線して、その話を調べてみようと思います。


最も簡単に加圧する方法といえばやはり、水に潜ることといえましょう。

 

また水圧については追って見ていく予定で(こないだ「次回は水圧…」とか書いていたのに、延ばし延ばしになっていますが)、詳しくはそのときに色々見てみるとして、水圧の方は……

気圧が「大体10 mで1 hPa変化する」という話でしたけど、当たり前ですが水は気体より遥かに高密度に存在する物質なのでその比ではなく、水圧の場合、「大体10 mで1気圧の変化に相当=1000 hPa変化する」という感じになっています。

 

つまり、モンゴルの史上最高気圧=標準より72 hPa大きい気圧ってのは、何てこたぁない、10メートルの72/1000倍で、わずか水深72 cmのプールの底に沈んだぐらいの圧力でしかなかった、っていうことなんですね。

 

1メートル未満ってまさに児童遊泳用の浅いプールの底程度ですから、こんなもんしゃらくせぇわ、ってレベルの圧力しかかからないもんだった…といえそうです。


で、人間はどこまで耐えられるのかについて、まぁそんな拷問実験は有史以来されたことがないと思いますし、はっきりしたデータはないと思いますが、逆に「どこまでの圧力なら人間は生きていられるか」の記録を見ていくと致しましょう。

 

そんなわけで、ギネスで「素潜り(freediving)」の記録をチェックしてみたら…

 

www.guinnessworldrecords.com

上記リンクは、時間が経てば変わるかもしれないものの、今現在の所、2023年5月17日時点の記録で、フィリピンのPetar Klovarさんが、なんと128メートルの素潜りのギネスレコードを打ち立てていたということで、これはズバリ、12.8気圧分もの「水圧」が、普段の大気圧より余計な力が加わってくるということで……


1気圧で、全身に15トンの力ということでしたから、まさかのまさか、12.8気圧分であれば、192トン、もちろん水中でも大気圧はかかるので、合計して200トン以上の力で周りから押されても、人体は全く問題なく、むしろ泳ぐという高度な運動すら可能なんですねぇ~。

 

…とはいえ、人体の本当の適応能力はそんなもんではなかった…?!

 

例えば人間が一気に一瞬でエベレストの頂上とかにワープすると、どんな人でも絶対に高山病になって即倒れてしまうわけですけど、ゆっくり少しずつ登っていけば、酸素ボンベなしでも山頂に辿り着ける鉄人も世の中にはいるぐらいに、人体というのは本当に環境に対する適応力、いわゆる恒常性が備わっているんですね。


…と、そう聞くと「え?じゃあ飛行機とかで大空に一瞬で到達しても誰も倒れないのはなぜ?」と疑問に思えるかもしれませんが、これは当たり前ですけど、飛行機の中は密閉された空間なので、ポテチの袋の中の空気が逃げられなかったのと同様、空気の量を適切に管理することで、一定の気圧を保っているからに他ならない形になります。


実際何気圧ぐらいなのかな、と思ったら、我らがQuoraにそのものズバリの回答、かつ、その理由まで明記されているものがありましたね!(↓)

 

qr.ae

もちろん人間にとって最もおなじみの1気圧が最も心地よいとはいえるわけですけど、飛行機の機内は、どうやら0.8気圧に保たれているそうです。


その理由は、飛行機の飛んでいる高度1万メートルもの上空になると、周りは当然かなり低い気圧(0.3気圧程度)になっていて、飛行機の内外で凄まじい気圧差が発生していることになるわけですね。


1気圧というのは、1 m2あたり10トンの力がかかる(1  cm2で1 kgなので、1 m2=100 cm × 100 cmでそうなりますね)という話でした。

丈夫な金属ボディとはいえ、ボーイング777の翼面積は400 m2超とのことで、飛行機全体では高々0.1気圧の差で400トン以上もの凄まじい力が加わる(この場合、外界の方が低圧なので、凄い力で引っ張られる(内側から外側に押される)ってことですね)ということで、航空機へのダメージと、人間の快適さとの折衷案で、ちょうど機内を0.8気圧程度に保つのが最善の形になっている、って話のようです。


それ以上内部を高圧にしちゃうと、維持が大変になる…というより恐らくボディ破損等の事故が多発してしまう感じでしょうから、色々よく考えられてるんですねぇ~。

 

また関連して、「じゃあ、大空を舞う鳥は、なぜ平気なんだい?」というのも気になる所かもしれませんけど、これはズバリ、の仕組みが全然違っており、奴らは気嚢という部位で酸素を保持することが可能で、高所でも難なく呼吸することができるというズルいシステムを持ってるんですねぇ~。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

↑の知恵袋記事にもある通り、高山病というのは基本的に低酸素血症により引き起こされるもので、酸素問題をクリアすれば、(もちろん全体的に体調維持のために大変な労力が必要になるものの)低圧でも何とかなるんですね。

 

…と脱線してしまいましたが、潜水も登山同様、ゆっくり慣らすことで人間の体はかなりの高水圧にも耐えることができるようで、これは、飽和潜水と呼ばれるテクニックのようです。

 

ja.wikipedia.org

僕は全く知らない話でしたが、内部を高圧にできるカプセルに入って徐々に体を慣らして行き、潜る地点と同じ圧力にまでして準備が整ったところで深海へと向かう…という技術のようで、これは面白いですねぇ~。


上記ウィ記事にもありますが、現在の記録はどうやら1992年にフランス人のThéo Mavrostomosさんが行った、水深701メートルで2時間の潜水だそうで、そこでかかる圧力はズバリ、70気圧

 

実に1000トン以上もの圧力が全身に襲い掛かる衝撃の圧で、それでも人間は動くことができるってんですから、人間の可能性は本当に素晴らしいものがあるといえましょう。

 

なお、もちろん加圧下への順応も大変なんですけど、それ以上に、圧力に慣れてしまった体を減圧していく方がより大変とのことで(この潜水では、加圧に15日間、そこからの減圧には24日間を費やしたとのことです)、やっぱり、人間はどちらかというと低気圧への変化に弱いというのは間違いなく、1000トンに耐える鉄人でも同じということですから、低気圧で頭痛を感じる方も、こればっかりはしょうがないといえることなのかもしれませんね。

 

ちなみに当然ですが、これは「全方向・あらゆる向きに均等に力がかかる」という状況だからこそ可能なもので、一点に力がかかるプレス機で挟まれたような場合は、全く別の話になっているというのも面白い点といえますね。

 

…実際、「当然」と言いつつ、なぜそうなるのかの説明は上手くできないものの、1000トンなんて言うまでもなく、むしろ普通の大気圧から全身が受けている力と全く同じ15トンのプレス機とかでも、検索したら挟まれての死亡事故がいくらでも見つかりました。

(そんな事故の記事を貼るのも気が引けるので省略しますが、むしろ15トンどころか、幼児用プールの底と同じぐらいの圧力でしかない「1トンの○○の下敷きになり死亡」すら普通に枚挙に暇がないぐらいあふれていることだったので、局所的な力と全体的な圧力がいかに違うかは、本当に明白だといえますね)

 

という所で、今回の脱線ネタはその辺にさせていただきましょう。

何気にもう1つ、前回のネタに関して補足しておくべきネタがあったので、次回もそちらの方に脱線しようかなと思います。


アイキャッチ画像は、深海のイラストでもお借りしようと思いましたがそれも何だかなと思えたので、先ほど飽和潜水記事のリンクカードにも小さくありましたけれども、何となく顔のように見えて可愛らしかったこともあったので、飽和潜水で使われるカプセルの画像をWikipediaからお借りさせていただきました。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/飽和潜水より

めちゃくちゃ過酷な状況になるのは確定していますし、「乗ってみたい!」とは全く思えないものの(笑)、人類の叡智の結晶ですね。

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