イマドキ英語スラングリストの最終セクション、ややデンジャーな意味の表現が続いていますが、まぁ人間の欲求に根ざしたものと考えれば、そういった言葉が色々生まれ使われていくのは自然のことともいえましょう。
多分今回か次回かぐらいでついにこのシリーズも終えられそうですが、ひとまずいつも通りネタ元であるVerywell familyの「親世代向け・知っておこう55語スラング」記事のリンクカードを改めて貼って(↓)、続きを見ていこうと思います。
前回はパーティードラッグであるエクスタシーを表す2語を見ていましたが、説明文にドラッグという語がある関連表現2項目について、挙げただけで触れずじまいだったため、今回はそちらからですね。
- Plug - 自分をドラッグにつなげ得る人
- The plug - アルコールやドラッグを提供する人
…こちらPlug、定冠詞「the」のあるなしで全く同じ語が挙がっていましたけれども、theのあるなしで別に説明に大きな違いもないですし、これはまぁ単なるミスではないかと思います。
まぁプラグってのはカタカナ語でも使うことがあるぐらいの馴染みある語で、本来の意味としては「栓」「詰め物」「差し込み」的な感じになりますけど、「栓をする」と考えればむしろ「止める人」にも思えるものの、電源コードのプラグを思い浮かべれば「つなぐ」という風にも思えて、このスラングはその後者みたいなニュアンスから発展した語といえましょう。
日本語で分かりやすくそれ系の言葉で言うなら「売人」って感じかと思いますが、これはむしろ、必ずしも商売にしているわけではなく、場合によっては無料で提供してくれる友人なんかも指すような雰囲気が見て取れますね。
非常に珍しいことに、いかにもスラング的な言葉なのに、信頼のSlang.net先生にこの「plug」はエントリーがありませんでした。
なので例文もなしになりますが……と思ったもののよく考えたら参考にできるものは別にSlang.netだけではないですし、語源も気になったので他のサイトを調べてみました。
パッと検索して出てきたのは、たまに参考にさせていただくDictionary.comで……
www.dictionary.com
ページ中ほどにある「plugの他の意味は?」というコーナーで、結構なスペースを使って、この語のスラング的な用法に触れてくれていました。
定義はほぼ同じものですね。
A plug (or the plug) is a person who has the ability to get or supply hard-to-find items, especially drugs.
(plugとは、入手困難なアイテム、特にドラッグを入手したり提供したりする能力のある人のことである。)
大変分かりやすかったので、由来について説明されていた二段落の方も、以下翻訳引用させていただきましょう。
plugという言葉が英語になったのは1620年代のことで、おそらくオランダ語に由来するものである。プラグは船上で液体が漏れることを防ぐ際に非常に役立つため、船乗りの間で使われていた言葉であった。
1880年代には、プラグが電気的な意味を持つようになり、単なるストッパーではなく、コンセントや電気接続部を指すようにもなった。1930年代には、違法薬物の供給者を意味するスラングとしてconnectionという言葉が認められるが、これは薬物そのものを売り手と使い手で結びつける (conneting) ものといえる。このコネクションの概念が、2000年代前半のドラッグ販売者を指すプラグというスラングの意味にも影響を与えているのであろう。
やはり、「つなげる」というニュアンスから派生して出てきた言葉だといえそうですね。
その後に、HipHopグループ・50 Centが2014年にリリースした「The Plug」という曲とその歌詞も紹介されていましたが、せっかくなので歌詞ではなく動画を貼っておきましょうか。
www.youtube.com
こういった曲も、若者言葉に影響を与えるのは容易に想像ができますね。
例文としては、実際のツイートがいくつか紹介されていました。
まぁそこまでチェックしておくほどでもないですが、分かりやすい文だったものを1つこちらでも紹介させていただくといたしましょう。
Pizza Zoo.....Saturday......get yo tickets fools! I am not the plug!
— J. (@Jessi_Dean) 2018年7月24日
Jessiさんの上記ツイート、「ピッツァ・ズーで……土曜日に……おバカちゃんたち、チケット取ってね!私はプラグじゃないよ!」というもので、返信に友人と思われるScrotum Phillipsくん(日本語だと、玉袋フィリップスくんで、しょうもねぇ名前ですが(笑))が、「You are... you ARE the plug(いや、オメェは…オメェはプラグだぞ!)」とレスをつけ、Jessiさんは「NOPE!(違うもん!)」と、まぁクラブとかが好きそうな若い子らのあるあるやり取りって感じですかね。
特にそんなに広がる話でもないので、次に行きましょう。
アルファベット順ではPlugの前、前回のMollyの次がこちらでした。
- Netflix and chill - 誰かを誘ってイチャイチャしよう(あるいはそれ以上かも)というお誘いの、隠れ蓑として使われる語
こちらはかなり有名なスラングですね。
直訳的には「ネットフリックスでも見てまったりしよう」ですが、これはズバリ、(説明文では「イチャイチャ」と書かれているものの、補足の「あるいはそれ以上かも」とあるように)53X的な意味での「ヤらない?」という、最早メジャーになりすぎて隠語・隠れ蓑にもなっていない、ド直球の誘い文句になります。
なので、「Netflix and chill?」と誘われて、「おっ、映画でも見るのか、暇だし一緒に見たろ」と思ってのこのこついていってしまうと、これは「合意のもと」とみなされて53Xへの流れが確定で待っていると思われるため、特に女性の方はご注意ください、という感じですね。
ちなみにこのフレーズ、僕はこちらへ来て2, 3年目に、研究室にたまに実験を学びに来ていた大学4年生だか5年生だか最後までよく分かりませんでしたが、一応「研究室で実際に実験を学ぶ」という実習コースを履修していたにもかかわらずほっとんど来なかったフィリップスくんという学生がいたんですけど(先ほどの玉袋フィリップスくんとは別人だと思いますが(笑))、久々に研究室に来たと思いきやハロウィンの仮装パーティーに参加するだかで、「紙とマジック借りていい?」と尋ねてきまして、貸したらデカデカと「NetPhilips and chill」と自分の名前をもじって描き出し(デザインのセンスは抜群の子だったようで、上手いことマジでネトフリのロゴそっくりなものを描いており、初見普通に「Netflix」と描いてあるように見えました)、当時僕は意味が分からなかったので「なぜNetflix?」と聞いたら、「これはスラングで、ヤるって意味なんだ。それを俺の名前とかけてるよ」と臆面もせず答えてくれたのが初めて知ったタイミングだったんですけれども、フィリップスくんは器用に画用紙2枚に肩紐をつけ、首を通して前後ろゼッケンのようにしょうもない「NetPhilips and chill」のロゴを身につける形で、キャンパスハロウィンナイトの闇夜へと消えていったのでした…。
…と、実際に生の学生から教わったものであるので個人的にかなりメジャーな表現である印象が強いですけど、幸いNetflixは成長を続けて当時以上に誰もが知る/使っているサービスになっていますから、このスラングも衰え知らずで使われ続けているのではないかと思います。
当然、Slang.netの方にもエントリーがありました。
こちら、定義としては簡潔に「Hook up」となっていますね。
この「フック」という単語はカタカナ語でもおなじみで、「フック船長」や、ボクシングで「ジャブ・フック・アッパー!」みたいなのとかがパッと浮かぶ気がしますけど、これはもちろんフック船長の左手の「鉤」、ヒジをカギのような形にして殴るのが「フックパンチ」…っていうことで、これは物を引っ掛ける鉤…というか、そもそも「カギ」よりむしろ日本語でも「フック」って言った方が通りが良いすらあるかもしれませんが(笑)、モノを引っ掛けるためのアレですね。
(なお、カタカナ語で「ホック」と表現されるのも同じこれで、まぁ結局どちらも引っ掛けるものといえましょう。)
これが動詞として使われて、「hook up」となると、Slang.netの解説文にリンクが貼られていたことからも分かる通り、これもある意味スラング的な使われ方もされるフレーズでして……
(補足アイテムですし、説明がちょっと長かったので最初の段落と最後の例文のみの抜粋スクショにしました。)
こちらは「To be physically intimate with another person(他の人と肉体的に親密になること)」という大変分かりやすい意味で、まさにネチル(Netflix and chill…まぁ勝手に略してるだけで、そんな略し方は当然、英語では絶対にしませんが(笑))の意味にピタリという感じですね。
なお、このhook upは、実は今回最初に見ていたPlugの説明文にも使われていたのですが、そちらは「Someone who can hook you up with drugs」で、スラング的な使われ方ではなく、普通の句動詞的に「つなげる」という意味だった感じですね。
とはいえ、時を同じくして別の表現の説明でも顔を出してきていたことからも明らかな通り、スラングであってもなくてもこのhook upというのは非常によく用いられるフレーズなので、今回記事タイトルにも採用してみた形でした(どうでもいい点ですが)。
先ほどのスクショからは省いたものの、スラング的な意味のhook upは若者の間では大変メジャーなようで、「HU」と略語で表現されることもよくある……と書かれていましたね。
日本語でいえば、ちょうど意味的にも和訳に近い「ひっかける」ってのが男女関係的に使われることもあるのでそれに近い気もしますけど、このHUはそれ以上によりダイレクトに「肉体的につながる」というニュアンスの強い、まぁ改めて若者に人気の表現といえましょう。
最後に上記2項目のチャット型例文だけ振り返っておきましょう。
My rents are gone, netflix and chill 2nite?(親いねぇから、今夜ネチる?)Fo sho.(もち!)
I can't believe he hooked up with that rando at the bar last nite.
(あいつ、ゆうべのバーで、行きずりの女と関係もっただなんて信じられない。)
流石は若者っぽい表現だけあって、崩しフレーズ・スラングもかなり目立つ感じでした。
まず、rentsはparentsのことだそうで、これは「両親」ですね。
2niteはもう何度も出ているtonightの簡略表現ですけど、返事で使われていたFo shoも「For sure(間違いなく・もちろん)」の簡略表記のようで、いやそんぐらいマジでちゃんと書けや、たった2文字短くなってるだけやんけ!と思えてなりません(笑)。
一方HUの方の例文は、これはまぁ目ぼしいのはrandoだけですけど、こちらはrandomの短縮形で(また1文字だけの簡略(笑))、この文脈の「ランダム」は、適当な、顔見知りではない、行きずりの人という意味だといえましょう。
まあまあ、若者っぽい軽い感じ全開の例文という感じですね。
…といった所で、全部終わらせるつもりがまたしても結構いい分量&時間切れとなってしまったので、続きは次回へまわさせていただこうと思います。
もうしょぼいのしか残っていなさそうなので、次回でまとめられそうですね(もちろん予定が狂うことの方がこれまで多かったですが(笑))。