翻訳版制作での裏話的な…

まぁ裏話というほどでも全くない、大したネタでもないんですけど、翻訳版の作成にあたり気付いた点や課題などを、せっかくなのでもう少しだけまとめておきましょう。


まず一点目は、禁則処理…!

説明不要かと思いますが、文章を本のような形式にする際、一定の位置で行が変わるわけですけど、行の頭やお尻に特定の文字が来ないように(禁止)する処理というかそのルールみたいなものが、禁則処理ですね。

(例:句読点で行が始まるのは美しくないので、このはてなブログなんかでも、「、」や「。」が文頭に来ることは絶対にないようになっている、など)


これは、Frankさんが英語ネイティブのソフトを使われており、日本語の組版は恐らく完全にサポート対象外であると思われ、かなり機能が貧弱だったというのが原因だと思うんですけど、一番最初に拝見したPDFファイルでは禁則処理が句読点以外に一切存在しませんでいた。

結果、パッと見でも、例えば伸ばし棒「ー」が文の頭に来ている部分なんかは、尋常じゃない違和感を感じるものになっていたのです。


なので、それ(当初は伸ばし棒だけでしたが…)を指摘したんですが、Frankさんは色々調べられたみたいなんですけど、どうもやはり組版ソフトの方は日本語の禁則処理に対応していないようで、ちょっとした策を弄さざるを得なかったようです。

…というかそもそも英語版の原稿でも一部の特殊文字にそうされているとのことだったので、Frankさん的にはそれが一番自然な流れだったのかもしれませんが、ここで取った方法は、原稿中の全ての「ー」の頭に、「Word joiner(ワードジョイナー)」と呼ばれる、「U+2060」という特殊文字というか特殊記号を挿入する、という形でした。


こうすることで、伸ばし棒は「前の文字とくっついて存在する」ことが義務付けられ、伸ばし棒の直前に改行が挟まれて、行の先頭が「ー」で始まるということがなくなるという具合ですね。

(なので、ソースファイルを見ると、例えば「ストーリー」という文字列は、「スト⁠ーリ⁠」のように書かれていることになります。
 完成版のPDFをご覧になる場合も、もしかしたらPDF閲覧ソフトによっては、「ストーリー」という文字をドラッグしてコピペした場合、「ー」の前に特殊記号あるいはスペースが入ってくることもあるかもしれませんね(大抵は表示文字列では無視されるようになってると思いますが…)。)


禁則処理については、正直伸ばし棒以外は特に気にならなかったんですけど、その後、一通り全ての作業を終えた最終段階で、欧米人の人名の間に挟む「・」が文の頭に来ている部分を発見したため、

「あ、今さらだけど、『・』も禁則処理をした方がいいかも…。まぁ、『ー』よりは、先頭に来ても違和感がなかったから、面倒だったらそのままでもいいと思うけどね」

…とメッセージを送ったところ、全文の「・」にジョイナーを付け足す作業も、速やかに行っていただけました。

全347ページに及ぶ原稿に対しての作業なので、それなりに大変ではないかと思ったんですが、まぁFrankさんも職業エンジニアですし、コードを書いて一括で処理されたようで(とはいえ、他の編集作業に追われている状況だったので、『かなり大変だった』的なことはおっしゃられていましたが…)、無事に「・」も行頭禁則処理の仲間入りを果たしました。


…と、それで終わりなら幸せだったんですが、実は禁則処理の適用し忘れの文字に、まさについ先ほど、既に本の印刷やAmazonへのアップも終えた後で、今さらながら気付いてしまったのです。

ちょうど前回の記事で改めて紹介していたFrankさんご自身のページの翻訳文書を送った際、返事として、

「ちなみに、『ー』という記号が行の頭に来ないように、『U+2060』という記号を足しておいたよ。もし他にも同様の文字があったら、付けたすから伝えてくれ」

…という追伸メッセージをもらっていたのですが、「ま、ないと思うけどね…」と思いながら翻訳文を見直してみたら、いきなり『そっち系のひと』というタイトルの、小さい「っ」が目についたのです…!

あ、小さい「っ」の禁則指定って、そういえばしていなかったな…と思い出し、「でもま、『そっち系のひと』は冒頭でしか出てこないからここで改行されることはあり得ないし、この翻訳ページを見ても『っ』で始まっちゃってる行はなかったから、どうでもいいかな」と楽観視しつつその旨を返信したのですが、よく考えたら、この紹介ページの翻訳にはなくても、実際の考察本の中にはいくらでもあるよな……と気付きました。


実際に本を見てみた所、まぁこんなのは確率で発生することで、347ページという膨大な量の文が存在するため当たり前ですが、いくつか「っ」が行の先頭に来てしまっている場面が存在しちゃっていました…。

 

普通に、

 

・・・・・・・き
っかけ

 

のような構造の文が、割と、稀によくあった感じですね。


いやぁ、「・」の禁則に気付いた時点で、他の禁則処理文字の可能性にも考えを巡らせておくべきでしたねぇ~。

とはいえ、何度か日本語PDFを通し見チェックしていても気付かなかったぐらいで、これは正直、「ー」が先頭に来るよりは遥かに違和感は小さいようにも思えます。

 

(伸ばし棒の方は、↓みたいな感じで、パッと見でもマジで違和感バリバリでした。)

・・・・・・・・・・・・セ
ーラームーン

 

既にAmazonにもアップロードした後、つまり製本版も印刷済みの状況でしたし、言い訳というわけではないんですが、Frankさんにも「これはまぁ、伸ばし棒と比較すると、実際読んでいてもそこまで違和感は覚えなかったから、そのままでもいいと思う」と伝えておいたんですけど…

「せめてオンラインの方は修正しておこうと思う。一括処理すればいいだけなので、そこまで大変ではないしね。製本版も、改訂版をいつか出すことがあれば、その時に修正しよう」

…という連絡をつい今しがた(といってもブログ記事のアップは時間が空いたので、もう先日になりますが)いただいていました。


ということで、Frankさんはちょうど週明けからラスベガスへの出張(!)ということで、それを終えたら、また一点修正がなされるようです。

(もちろん、小さい文字は「っ」(促音)だけではないので、拗音「ゃ」「ゅ」「ょ」についてもきちんと指摘しておきました。当然、カタカナも含めてですね。
 ただ、禁則処理によって、もしかしたら改行がずれることでページ数までずれてしまうこともあるかもしれないため、そうなってくるとまた結構大きな作業になりそうですが(実際、ページの頭に数文字だけはみ出たような部分があった場合、前ページに収まるよう、数文字単位の修正をした箇所もありました)、まぁ多分、複数行に影響が出ることはよっぽどないかな?って気もしますね。


ということで、まぁ日本人の方が自己出版する場合、日本語ネイティブの組版ソフトなりを使われるので、恐らく意識せずともデフォルトで設定されている部分であるとは思えますけど、禁則処理についてはご注意下さい、という話でした。

 

ワードジョイナーという特殊文字について触れてみたついでにもう一点、似たようなポイントに触れておきましょう。

僕自身が公開していた翻訳記事では、ダッシュ(―)は流石に伸ばし棒と区別して変換していたんですけど、例えば引用のページ範囲を示す「『青い花』pp. 12-20」みたいな記述、これ、僕はただの半角のマイナス記号(ハイフン)を使っていたんですけど、これはFrankさんのオリジナル原稿の中では実はハイフンではなく特殊な記号だったようで、翻訳記事の中でも、原典英語版PDFからコピペしたものはその記号が維持されているけど、自分で直接打ったものは単なるハイフンになっているという、ぐちゃぐちゃな形になっていると思います。


ただまぁ僕の翻訳ブログ記事は出版するわけでもなく、その辺ぐちゃぐちゃでもまぁ別に関係ないかな、ということで放置してしまっていますが、当然、実際のPDFファイルや製本版では、Frankさんがしっかり変換し直してくれた形になっています。

その辺をきっちり使い分けられている部分なんかも、Frankさんの細やかなこだわりが感じられる所ですね。

(ちなみに、伸ばし棒=長音記号は、ユニコード文字コードでいうとU+30FCで、ダッシュはU+4E00になりますが、ページ範囲を示す記号は、こちらは組版ソフトが対応しているようで、ソースファイルで半角のマイナス記号を2つ並べると、自動で、(見た目はほぼ同じですが)単純な「-」ではない、特別な意味を持った記号が挿入・表示される、という仕組みのようです。)

 

続いては課題といいますか、修正しきれなかった部分をいくつか挙げておくと、最終的なPDFや製本版印刷用原稿において、特に日本語と英文が同じ行に混在する場合にしばしば発生していたのですが、一部の段落で、文字間がちょっとおかしい部分が発生してしまっていました。

ある程度いじってそこまで酷いものはなくなったのですが、ちょうど、一番最後の最後に、数行だけはみ出ていた「孤児段落」的なものの調整をしていた章で目についたものがあったので、具体的に画像を貼って見てましょう。


この、注釈1番の日本語文、(多少修正できた結果、そこまで酷くはなくなったものの)これやっぱり、各文字の間に無駄なスペースが入って、文字間が空き空きの、何とも間延びした感じになってしまっていますよね…?

(実際、該当部分をドラッグしてコピペすると、各文字の間にスペースが挿入される形になっていました。)


PDF化や製本化に関しては僕はノータッチで、Frankさんが全てやってくれたのですが、案としては「数文字調整したら改善しないか?」ということを何度かチャレンジしていたんですけど、どうしても、抜本的な解決には至りませんでした。

なので、本の中にはここ以外にもいくつか間延び文字列の段落が残ってしまったように記憶していますが、Frankさんの力をもってしても解決できなかったので、これは仕方がない点ですね。

(多分日本語ネイティブのソフトであればこの問題は起こらないか、起こっても容易に解決できるんじゃないかなと思うんですけど、いかんせんFrankさんが使われているのは英語ソフトですし、中々難しかった所です。)



最後に、上記2点と関係するポイントになりますが、この翻訳版PDFで若干残念というかちょっと不便な点として、「一部、検索が利かない場面がある」という点も挙げられます。

具体的には、「行をまたいだ単語を、ひとつながりの文字として認識してくれない」こと、それからまさに今見ていた、「謎のスペースが入ってしまった部分は(表示上、実際にスペース文字が入っているから当然ですが)スペース無しのそのままの文字列が認識できない」という問題がある形です。


後者の方は、例えば上の画像の注釈1番の部分、「津田うめと」という文字列でこのPDFファイルを検索しても全くヒットせず、これをヒットさせるには「津 田 う め と」のように半角スペースを加えないといけない形になっており、これはちょっと不便(というか事実上、こうなっている部分には使えないも同然)ですね。


前者の不具合(というか仕様かもしれませんが)も、説明するまでもないですが例えば具体的な例を挙げておきますと、翻訳文章中の「まんが」という単語は「漫画」と漢字表記で統一していたつもりだったんですけど、最後の校正作業中、一部「マンガ」となっている箇所を発見していました。

なので、一番最後の総チェックとして、本全体を「マンガ」という文字列で検索して直し漏らしがないか確認したのですが(もちろん、『マンガ・エロティクス・エフ』のような固有名詞は無視しましたが)、もし「マンガ」という語が右端に来て、単語の中で改行があったら検索してもヒットしてこないため、ひょっとしたら修正漏れがあるかもしれない…という感じですね。

(改行があってもヒットする、自分のブログ記事の方を検索するのも手とはいえるものの、記事数自体も結構途方もなく、上述の通り固有名詞の「マンガ」表記というダミーヒットも結構ある上、はてなブログの検索機能はしょぼくて検索結果が記事単位でしかピックアップされないので、それも中々難しいという所ですね。

 まぁ、多分、「マンガ」の修正漏れはないとは思いますが……っていうかこの場合ならたったの3文字しかないので、よく考えたら余裕で確認可能でしたね(笑)。
 「マン」と「ンガ」で検索すれば意図せぬ改行が入ったパターンも炙り出せますし(もっとも、「エリカ・フリードマン」など関係ない文字列も結構な数ヒットしてくるので、やはり手間ではありますが…)、この2つで改めて検索してみた結果、幸いにして「漫画」としたい所が「マンガ」のままになっている修正漏れは、なかったようです。

 なお、これは使ってるPDF閲覧ソフトにも依るのかもしれませんが、面白いことに、「ンガ」で検索した結果、平仮名も濁音なしも普通に検索対象となっていたので、例えば「んか」という文字列なんかも一緒にヒットしてきていました。この曖昧さは、不便なこともあれど、便利な場面の方が多いかもしれませんね。)

 

…と、そんな所で、これにて『青い花』考察本の翻訳に関しては全て終わりといえそうです。


Frankさんからはちょうど、

Thank you again, so, so much for everything you did to make this possible.
(この翻訳・製本を可能にしてくれて、改めて、本当に、本当にありがとう。)

…というメッセージをいただいていましたが、こないだのPDF版公開時にも似たようなことを書いていましたけど、他ならぬ僕自身がこの翻訳作業を一番楽しませていただいたように思えてなりません。

Frankさんと、作品を通して(かつ、ツイートでの紹介を通して)素晴らしい機会を提供していただけた志村さんには、この場を借りて改めて心からお礼申し上げさせていただきたく存じます。


ちなみにFrankさんからは、関連ツイートを英語と日本語でする予定ということ、それから改めて志村さんに翻訳版の方も献本する予定だという連絡もいただいていました。

(前者は既に、本日現地時間の朝にされていましたね。何か恥ずかしいので、英語版のツイートを貼らせていただきましょう(笑)。)


ちなみに、「する予定だよ」という旨のいただいたメッセージが「I am going to...」であったことから、せっかくなのでまた英語豆知識コーナーとして「willとbe going toの違い」なんかにも触れてみようかなと思ったんですが、もう大分長くなっているし、記事の主題と関係なさ過ぎるので、それはまたいつか機会があったら改めて取り上げることといたしましょう。

でも英語に関しては一つだけ、上記の「Thank you so, so much...」という言い回し、こういう書き方僕もよくするんですけど、これって日本人的な発想なのかなぁとずっと思っていたんですが、ネイティブの方も普通に使われるということで何よりでした。

 

あともう一点、Amazon公開に関して触れておこうかなと思った点があったんですけど、ちょっと時間が足らなかったので、まぁ次回、電話英語ネタの続きに入る前に、こそっと触れておこうかな、と思います。

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