ソーダとか、カルシウムとか、合金とかのお話

なんだか毎度「前回書き忘れていた点の補足です」で始めている気もしますが、前回、金属の話をしたついでに触れようと思って忘れていた点があったので、本題に入る前に、簡単にまたその金属ネタに戻らせていただくとしましょう。

まぁ大した話じゃないんですけど、恐らく化学を選択されたことがない方はご存じないかもしれない点で、知っておくと便利かもしれない(…って、便利でもなんでもないかもしれないですけど(笑))豆知識についてです。

ズバリ、金属の名前ネタなんですが、金属というのは基本的に「○○ウム」(より正確には、「○○イウム」)という名前がつくルールになっています。

なので、ナトリウムとか、カルシウムとか、日常生活でもよく聞く「ウム族」の物質は結構あると思いますけど、これらは実はどれも金属なんですね。

前回は「意外かもしれませんが、体内にも金属が存在します。もちろん、固形物の塊ではなく、イオンとしての形ですがね」などと書いていましたが、例として挙げていた鉄よりも、塩(しお)として塩化ナトリウムを摂取しているのは誰でも知っているし、カルシウムが欠乏すると骨が終わるみたいな印象は誰しもお持ちだと思うので、あえて血液中の鉄とかいわなくても、人体に金属が必要というのは当たり前すぎる話だったかもしれません。

ただ逆に、もしかしたら、ナトリウムとかカルシウムとかが金属という印象がむしろ薄い可能性もあるのでは、なんて気もするのですが、これらは普通に金属元素なのです。

ただしこいつらは、純品で、固体としての金属(まぁ「単体」という用語の方が正確ですが)として日常生活でお目にかかることは滅多にないため、そのせいで金属という印象が希薄なのかもしれませんね。


先述の通り、金属元素は基本的に体内ではイオンとして水に溶ける、あるいは他の元素と結合して化合物として存在している形になっているわけです。

単体の金属(塊・固体として存在するもの)は、安定して存在するものは安定しすぎて人間には使えませんし、逆に普段金属として見ることのないやつらは不安定すぎる=不安定というのは「何かと反応しやすい」ということなので、あまりにも強く反応する結果、これも、人間には使えず、むしろ大変危険なシロモノとなります。

具体的には、例えばパチンコ玉を誤飲してしまったような場合、もちろん気道に入って息ができなくなってしまう…という危険性はありますが、普通に食道の方へいき、その後胃腸を通過していけば、恐らく便として排出されるだけなので、無害でしょう。
(胃の中は強酸性なので、表面のメッキが剥げていたりしたら、多少金属が溶けて金属イオンを摂取することになる、なんてこともあるかもしれませんが、まぁメッキされていれば本当に安定なので(メッキじゃなくても、銀とか金とかは、非常に安定です)、毒もなければ有効活用もできない、ただ上から下へ移動するだけ、という感じですね。)

一方、不安定な金属、例えば金属ナトリウムなんかは、これはバターみたいな感触の柔らかい物体で、下手したら美味しそうにすら見えるかもしれないんですけど、こいつを「白銀色の高級バターか何かかな?」とか思ってナイフでサクッと切って(金属なのに、ナイフで余裕で切られる雑魚(笑))、ペロリと飲み込んでみようものなら…!

まぁ、飲み込む前に、口の中の唾液と反応して爆発して、下手したら頭が吹き飛ぶので恐らく飲み込むことすら不可能ですが、仮に薬のカプセルみたいにコーティングして口の中では溶けないようにして金属ナトリウムを飲み込むとかしたら、カプセルが胃の中で溶けた瞬間、これも恐らく胃液と反応して爆発して、即お陀仏です。

金属ナトリウムがいかにヤベェやつか、この辺の有名動画をご覧になれば一発でしょう。

www.youtube.com
小石程度の大きさの金属ナトリウム(以前一度触れましたが、ナトリウムは別名ソーダと呼ばれるように、英語ではSodiumです)を池にポーンと放り込んだら、これですよ。

ヤバいレベルの爆発ですね。

ちなみにナトリウムは「アルカリ金属」と呼ばれるグループに所属しているのですが、水と反応して水溶液は強いアルカリ性を呈するので、爆発でも池の中の生物が亡くなってるでしょうし、その後溶け込んで池の水が圧倒的にアルカリ性に傾いて、下手したらこの池の中の生物はしばらく全滅したかもしれない、こんなことしていいと思ってるのか!と非難轟々・大炎上になる実験といえましょう…。

(なお、「じゃあそんなに不安定なら、ナトリウムはどうやって保存するんだよ!」という話になるかもしれませんが、これは、灯油につけて保存します。高校化学でも絶対に習う、生きる上で必須の知識ですね(…って、別に金属ナトリウムを保存するシーンなんて生きてて絶対に遭遇しないと思いますが)。)


…と、ナトリウムの話にもってかれちゃいましたが、あくまでも純品の、何物とも結合していない金属ナトリウムがヤバイというだけで、塩化ナトリウムみたいに、化合物を形成しているNa、イオンになっているNaは、むしろ生命維持に必須の、超重要元素に早変わりします。

カルシウムも同じですね。

金属カルシウムはそこまで不安定ではないので、危険ではないですが、放置するだけで空気中の酸素・水・二酸化炭素なんかと容易に反応して、すぐに安定な化合物へと変貌します。

カルシウムを水に加えると、水酸化カルシウムになり水素が発生しますが、この溶液は石灰水といわれていて、中学理科でも聞いた覚えのある、おなじみの輩かもしれません。

まぁ色々カルシウムの化合物や物性について触れてみようかとも思いましたが、面白くなさ過ぎるのでやめておくとしましょう。

カルシウムの化合物は結構ややこしいので、高校化学の難所の1つかもしれませんね(石灰水・生石灰消石灰・炭酸カルシウム・炭酸水素カルシウム…とか、とにかくややこしい!)。

まぁせっかくなので1つだけ日常生活でもおなじみのカルシウム利用法について触れておくと、生石灰酸化カルシウム)と水が混ざるとかなり発熱して高温になるという性質を使って、お弁当とかを温める、いわゆるジェットボックスで有名なアレは、この仕組みを使ってるんですね。

ナルホットという商品の説明記事から、画像を拝借させていただきます。

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https://www.shingi.co.jp/naruhot/より

 

なお、新幹線で使うと、五郎さん状態になるので注意しましょう(笑)。

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孤独のグルメ第6回より

名前ネタに戻ると、「いや金属は『~ウム』という名前をつけるルールです…って、鉄は何なんだよ!」と思われるかもしれませんが、原子レベルで物質のことを調べられるぐらいに化学が発展する前の時代から知られていた物質は、当然そのルールが制定される前にもう慣用名が使われていたので、そういう人類にとって太古の時代よりなじみのあるやつらは、独特の名前をもっているということなんですね。

いわば古参すぎて慣用名を持つことが許された、例外だということです。

具体的には、鉄・銅・銀・錫・白金・金・水銀・鉛あたりが漢字すら存在する金属(一応、白金は英語でplatinumで、英語では辛うじてウム族かもしれませんが)、あとはカタカナですがウム族ではない金属として、マンガン・コバルト・ニッケルといった割と基礎化学でおなじみの物質から、タングステンという割と歴史は新しいのにウムのついていない珍しい例外などがありますが、それ以外は少なくとも英語なら「~um」という名前になってるのがほとんどですね。

しかし逆に、「あれ?!声が変わるので有名なヘリウムは?あれは風船に入れるようなガスじゃなかった?ガスの金属なんて存在すんの?」と思われるかもしれませんが、ヘリウムだけが唯一の例外で、これは、「この形の元素の存在が予想されたときに、金属だと思われたためにつけられた名前だから」と聞いたことがあります。

…と、調べてみたら、その辺含め元素名についてより詳しく解説してくれている記事が見つかりました。

面白かったのでリンクを貼らせていただきましょう。

www.chem-station.com
記事によると、ヘリウム以外にも、セレンも英語ではSeleniumなので、ウムで終わる非金属元素だったんですね。

なお、記事の一番最初に、理研が発見した113番元素についての情報がありますが、こちらはまだ命名が決定する前の記事のようで、決定した名前については書かれていませんでしたけど、これも5年前に決定されて、結構ニュースになっていましたね。

僕も、記事と同じく、「Jで始まる元素がないんだし、ジャポニウムとかでいいのでは?」と思ってましたが、公募などで決定したのはニホニウムで、現在、最新の元素の1つですね。


あと他には、「あれ?ステンレスって、いかにも金属だけど、『ウム』で終わらないじゃない。さっきの例外にも挙がっていなかったし、どーいうことだよ!!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これは元素ではなく、合金なんですね。

いくつかの金属の混ぜ物なので、元素の命名ルールとは無関係ということです。

前回、「合金の話はまぁ置いておきましょう」とか書いていましたが、せっかくなので、高校化学でも習う代表的な合金について、名前だけ見ておくとしましょうか。

・銅+錫(すず)→青銅(ブロンズ。銅のことを英語でブロンズと覚えてる方もいるかもしれませんが、銅はCopperですね)

・銅+亜鉛黄銅真鍮(しんちゅう)とも呼ぶ)

・銅+ニッケル→白銅(100円玉!)

・鉛+錫→はんだ(いうまでもなく、半田ごてで使われるはんだですね)

・鉄+クロム+ニッケル→ステンレス(ステンレスは、Stain-lessで、「サビなし」という意味の言葉になります。なお、クロムはchromiumなので、一応ウム族です)

・ニッケル+クロム→ニクロム(電気ストーブの電熱線などでおなじみ、ニクロム線で使われるやつですね)

・アルミニウム+銅+マグネシウムジュラルミン(個人的には高校化学で初めて聞いた名前でしたが、とても軽く、とても強い性質から、航空機の素材とかで割と有名な物質らしいですね)


あと以下の2つは合金というより表面のメッキなんですが、なじみのある物質なので、触れておきましょう。これも高校化学で覚えるやつですね。

・鉄+錫(表面をすずで加工)→ブリキ(ブリキのおもちゃも、もう全然見かけなくなりました)

・鉄+亜鉛(表面を亜鉛で加工)→トタン(トタンって、クッソぼろっちいイメージしかないので、加工する意味あるん?鉄より劣化してない?って気もしますが、物性的には、鉄より遥かに錆びにくくなっている形です。でも、トタン屋根って、本当にチープな印象がありますよね)


まぁ、だから何なん?という、ただの合金の羅列でしたが、こういうのはやっぱり、男の子には受けのいい、ワクワクする話といえましょう。

マテリアル系の話、名前を見てるだけでも面白いです。


当初、分析技術のラストについて書こうと思って始めていた記事ですが、ナトリウムの時点で「あぁこりゃもう余談だけで終わるわ」となったので、予定を変更して、今回は金属について色々少し見てみる感じとなりました。

次回は予定通り、非常に優れた分析法について見ていこうと思っています。 

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