亜鉛!銅!!偉大なる金属・ミネラル

前回に引き続き、日本人の食事摂取基準(2020年版)で挙げられているマイナーミネラルを順番に見ていきましょう。

多分、掲載されているのは、人体に含まれている量の順番ですね。

(…と思ったら全然違いました。でもまぁ元素の大きさも違いますしね(ナトリウムは小さいので、同じ量あっても重さ的には小さい、みたいな)。

概ね成人の体内には、平均して…

 1. ナトリウムは約100グラム
 2. カリウムは約120-200グラム
 3. カルシウムは約1キログラム
 4. マグネシウムは約25グラム
 5. リンは約800グラム
 6. 鉄は約4グラム
(「ナトリウム 成人の体内 含まれる量」などで検索してヒットした情報より)

…が含まれるとのことですが、やはり前回の鉄以降は大分マイナー感が否めませんね。)

続いて7番目に挙げられていた亜鉛から見ていきましょう。
 

7. 亜鉛(Zn)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/亜鉛より

亜鉛というのはまぁ間違いなく聞いたことのある金属かと思いますが、何に使われてる?と聞かれると、案外「知らんがな」としかいえないかもしれません。

一番身近なものだと、やはり電池でしょうか。

といってもよく聞く電池はマンガン電池・アルカリ電池・リチウム電池と、亜鉛の名前はどこにもないんですけど、マンガン電池やアルカリ電池といった古典的な電池の電極に、実は亜鉛が使われているという形になっています(リチウム電池は、亜鉛ではなくリチウムが使われていますが)。

まぁ電池も、高校化学で習う、元素・イオン・電流などが絡む結構大きな単元ですが、電池の章で最初に習うのが、世界で初めて作られた電池ことボルタ電池、これはすぐ電圧が失われるゴミではあるものの、電圧の単位ボルトはこれを作ったボルタさんから採られていることからも分かる通り、ここから電気化学が大いに発展していった、偉大なる発明ですね。

ボルタ電池では、電極として、負極に亜鉛、そして正極には次に出てくる銅が使われていました。

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https://kotobank.jp/word/ボルタ電池-134560より

でもまぁ電池の仕組みについて深入りするのは、やっぱりかなりややこしいし面白くもなんともない話でしかないですから、今回はやめておきましょう。

またイオンの話をしたときにでもちょっと触れてみるぐらいでちょうどいいかもしれませんね。

ただ、電池といえば、ボルタ電池と、その改良型であるダニエル電池というものを高校化学でしっかりと習うわけですが、その次に乾電池やリチウム電池についても簡単に触れるものの、「乾電池やリチウム電池の放電の仕組みについては、よく分かっていないことも多い」という感じで簡単に流されていたのが非常に印象的です。

「は?こんだけ世界中で日常的に使われてて、『仕組みが分かってない』って、そんなことある?」とこれを聞いた生徒全員が思ったわけですが、実際これマジなんですよね。

東工大で電池の研究をされている平井さんのインタビュー記事(↓)でも、ズバリ表題からそういわれています。

www.titech.ac.jp
とても不思議ですが、逆に理解が進むことでさらに性能の優れた電池が生まれる余地があるともいえるわけですし、ポータブルデバイス、さらには電気自動車の発展なんかでますます需要が増し続ける電池ですから、もっと長く、より効率的にエネルギーを蓄えて使えるいい電池の開発に期待したい限りです。


まぁ亜鉛については、電池の他にも、こないだ書いていた合金やめっきでよく使われる金属ですけど(真鍮とか、トタンとか)、真鍮やトタンと聞くとくすんでいる印象で、途端に安っぽいイメージになりますが、こないだの記事では触れていなかったものとして、洋白あるいは洋銀と呼ばれる合金(亜鉛20%)もあり、こいつは500円硬貨に使われている合金ですけど、500円と考えると、途端に豪華感がある気もしてきます。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/洋白より

…つっても、それは500円玉の価値ありき(コインの大きさや、硬貨で一番高いという現実的な面から)で、そもそも500円玉の豪華さはニッケルによるところが大きく、亜鉛が増すほど見た目・触感が落ちていく気がするので(実際、さらに亜鉛の割合が大きく30-40%になると、まさに何かしょぼい真鍮(黄銅)・5円玉になるので(↓))、やっぱり亜鉛ってカスだわ、って話かもしれません。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/黄銅より

まぁ以上はミネラルとはほぼ関係ない金属亜鉛の話でしたが、生体成分ミネラルとしての亜鉛は、これまた鉄同様、クッソ重要です。

高校生物までで出てくることはほぼないかと思いますが、大学教養課程以降で出てくる生命科学では、むっちゃんこよく出てきます。

具体的には、「ジンクフィンガードメイン」という語でよく出てくるのですが、こいつは、多くのタンパク質に共通して見られる非常に特徴的な構造を総称して呼んでいるもので、意味としては(そのままですが)、ジンクはまさに亜鉛の英語(Zinc元素記号ZnはまさしくZincのZnですね。日本人的には、覚え辛すぎぃ!)、フィンガーは当然指、ドメインはこれもネット用語とかでおなじみ、領域とか部位とかそういう意味ですね。

つまり、亜鉛フィンガー部という名の通り、この構造をもつタンパク質は、指のような感じで亜鉛を挟む構造を取ることが可能になっていまして、亜鉛存在下においてそういう特別な形になることで、特有の機能を発揮することが知られているわけです。

ジンクフィンガーファミリー(ジンクフィンガーをもつタンパク質のグループ)は特にDNAに結合するものが多いことで有名で、これはつまり(もちろんそれ以外にも色々な機能を有すものも沢山ありますけど)、DNAに結合して、「遺伝子のスイッチ」として働いているものが多いということですね。

要は、亜鉛イオンは、ジンクフィンガーファミリーに特有の構造を取らせることで、様々なタンパク質の合成のスタートを管理するコントローラー・監督のようなものなのであるということですから、いかに生命活動において重要な存在かは、あえて強調するまでもないといえましょう。
(改めて、タンパク質というのは、めちゃくちゃ多様な機能のものが存在する生体分子の主役、生物そのもので、これを必要なときに必要な量作るのが、生命活動の根幹です。)


という分子レベルのつまらん話はさておき、現実的な亜鉛という栄養素の話に戻ると、検索したら、今回はグリコの解説記事が目に付きました。

個人的には企業のサイトは営利目的でやや誇大広告になっていたり単なる商品の宣伝になっていたりすることもままある印象で、どちらかといえばやはり情報ソースとしては大学とかのアカデミックなものの方が好きですが、まぁ江崎グリコぐらい大きな企業だと、宣伝中心ではなく、いわば社会貢献というか、ちゃんと正しい情報を分かりやすく乗っけてくれてるな、という印象があったので、こちらを紹介させていただくとしましょう。

cp.glico.jp
記事にある通り、成人には約2グラム程度の亜鉛が存在しており、味覚・抗酸化作用・免疫・成長・髪や肌・生殖機能・うつ状態といった様々な観点の健康維持に大きな貢献をしていることが知られています。

この内特に、サプリ関連でとても有名なのは、やはり男性の生殖機能、記事にもある通り、精子形成に必須なことが知られているので、精力増強に極めて効果的、ってことがよくいわれていますね。

僕は亜鉛サプリを摂取した経験がないので分かりませんが、まぁ仕組み的にも(DNAに結合して働くわけですから、明らかに遺伝子を生産しているというイメージぴったりでしょう)、精力増強に役に立つのは間違いないと思うので、精力減退に悩んでいる方は積極的に摂取してみるのもいいかもしれませんね。

亜鉛を多く含むので知られる食品は、筆頭として、牡蠣が挙げられるようです。その他やっぱりタンパク質を摂ることで亜鉛も一緒に摂取できることが多いので、高タンパクの食事を心がけるようにするとよいでしょう。

ただし、亜鉛イオン自体に毒性はほぼないものの、グリコの記事にもある通り、過剰摂取で悪影響が出ることも知られているので(まぁ亜鉛に限らず、どんなものでも、水ですら大過剰に摂取するとよくないですしね)、(サプリとかで)あんまりバカみたいに摂るのもよくないかもしれませんが、普段健康的な食生活をされていない方には、恐らくとても効果が実感できるものではないかと思います。

8. 銅(Cu)

銅は、もちろん人類史における鉄器時代の前が青銅器時代だったように、鉄よりむしろ古くから人類に使われていた最もなじみ深い、石器から脱却して人類文化が著しく発展していくことの皮切りとなった偉大なる金属ともいえるわけですけど、生体反応においては、正直鉄やマグネシウム亜鉛ほどには親しみがない気がしちゃいますね。

生化学の講義でも、ほとんど出番はないように思います。

検索して出てくる記事も少なくなってますし、記事そのものの中身もスカスカになってきている感がありますね。

今回は、その中でもよくまとまっていたように思えた、日本成人病予防協会の解説記事を貼らせていただきましょう。

www.japa.org
こないだ金属イオンについてみていた最初の記事でタコやイカの血液の話をしていましたが、ヒトの血は、ヘモグロビンで鉄を使っている関係上、どんなに冷血な人でも赤い血であり、タコやイカみたいな青っぽい血をしている畜生どもとは全然違うわけですけど、上の記事にある通り、銅はヘモグロビンの合成を助け、貧血予防につながる、ということもよくいわれていますね。

ただまぁ銅が重要といってもこれはつまり、結局何かを合成したり反応を引き起こしたりするのはタンパク質なので、亜鉛もそうだったしこの銅も、さらにはいずれ見るビタミンも、そういうビタミン・ミネラル類は結局どれも「その反応を行うタンパク質が、パートナーとして使う成分」に過ぎないのです。

だから、「銅はヘモグロビンの合成を助ける」というのは、「ヘモグロビン合成酵素(タンパク質)が反応を進めるために、銅イオンが必要だ」ということなわけですね。

銅自身が自分の力で合成するのではなく、あくまでもタンパク質が合成を進める(銅はその反応を行うための手助けをしているだけ)ということで、タンパク質ファンとしては、改めて「大切なのはタンパク質だからね!」ということを強調しておきたくなった、というただそれだけでした(笑)。

もちろん、銅が重要なことには変わらないですけどね。

銅は体内に約0.1グラム程度含まれているということで、ついにミリグラムの領域に突入ですが、わずかミリグラムであっても、もし存在しなければいくつかの反応が進められなくなってしまう必須因子であることは上述の通りです。

ヘモグロビン以外にも、メラニン色素の生成に重要というのもよく目にする気がしますね。黒々した髪を維持するために、大切なミネラルといえる感じでしょうか。


銅は、普通の食生活をしていて不足することはまずないし、逆にサプリとかで見かけることもまずないので過剰摂取の心配もほぼないとのことですが、上の記事に、「銅の容器に酸性の食品を入れると高濃度の銅が溶け出し、嘔吐、下痢、肝障害、貧血などの中毒を起こすことがありますので、注意が必要です。」という、前回のひじきに似たような話の注意書きがありました。

面白いですね!

…って、「銅製の容器なんて今時使う?中世かよ!」…って気もしますが、化学反応的に実際これはバカにできないものなので、特に化学的知識のなかった昔の人は、この手の中毒事故ももしかしたら結構あったんじゃないかな、なんて気もしますね。


…と、ミネラルとしての銅には大した話もないですが、金属の銅に話を戻してみると、誰もがご存知、銅というのはこういう…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/銅より

からあげクンかよ!と思える(笑)、橙赤っぽい色合いですが、銀白色じゃない金属というのは意外と珍しいですね。

まぁ、イメージ的なものかもしれませんけど、銀白色の金属よりチープに見えるのが玉に瑕ですが…。


英語ではCopper(カッパー)なのに、元素記号がCuという罠のような感じですが、これまたラテン語cuprum由来とのことです。

そしてこれまたこないだの記事でも書いていましたが、銅というのは単体の金属としてはこんな赤いイメージである一方、イオン化すると青い色を呈することが多く、水溶液もキレイな澄んだ青~水色をしていることが多いです。

水溶液の画像はWikipediaにありませんでしたが、銅イオン、特に高校化学でなぜか覚えさせられる特徴的な名前のテトラアンミン銅(II)イオンの化合物はこんな感じで…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/銅より

銅とは思えない、本当にキレイな真っ青な色ですね。

あとは銅といえば電線なんかでよく使われてる印象ですが、地味に電気伝導度は銀の方が上で、でも銀はコストが高すぎるから、普通の電線には安い銅が使われている……という、知名度でも鉄の下、メダルも金銀の下、お金でも10円というクソみたいな金額(5円よりマシ?)、電気伝導度という物性でも銀に負けている…と、何とも1番になりきれない物質ではあるんですけど、それでも人類にとっては大切な元素ですし、僕も嫌いにはなりきれない金属ですね(まぁ、嫌いになる金属なんて存在するかよ、って話かもしれませんが(笑))。

というわけで、今回は亜鉛と銅だけでいい分量になってしまいました。

次回以降は完全にクソドマイナー元素になっていくので、多分「特記事項、なし!(笑)」とか、まぁあっても一言とか、そんなもんで終わることでしょう。

面白い話もなさそうですし、パッパと終わらせちゃいたい限りです。

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