「実質無料」は、実際、無料ではないですよ的お話

これまで自信満々に、

コストコが会員権を無料で万人にばらまくことは絶対にしません。公式に確認しました。信じろ」

と言い続けていたのですが、何のことはない、気付いたら自分が実質無料で会員になっていたのでした。

これだからアメリカのカスタマーサポートは……ヤレヤレ…(責任転嫁)。


しかし、前回最後に書いた通り、実はコストコは一応、厳密には、無料で会員権をばらまいてはいないといえるんですよね。

…ん?どういうこと…?

順番に説明しましょう。

今回のTriple Playキャンペーンは、

・60ドルで入会60ドルで上級にアップグレード(+コストコクレジットカード登録
(計120ドルの支払い)

で、

・1~1.5ヶ月後、60ドルのコストコショップカードでキャッシュバック+1年後、最低60ドル保証のある、上級会員2%報酬分の、コストコ金券でのキャッシュバック
(計120ドルの払い戻し)

となり、トータルでは実質負担0で会員になれるという形になっていました。

しかし、冷静になってよく考えると(別によく考えなくても)、このキャンペーンを使っても、上級会員になるためには今すぐ120ドル払う必要があり、「ビタ1文払わずに、無料で会員になれる」ことには、全くなっていないのです!

「…いやいやおふざけにならなくてよ、ちょっと待てばその払った120ドルは返ってくるんだから、実質無料でしょう?変な難癖、つけないで下さる?」…と思われる方もいらっしゃると思うのですが、それはまぁそうなんです。

「実質」無料といえば確かにそうなんですけど、厳密には、コストコはいたずらに無料ばらまきをしているわけではなく、ちゃんとこのキャンペーン自体からも利益を出しているし、逆にいえば我々は、真の意味では完全に経済的な損失なしで会員権を得たことにはなっていない…的なことを言いたいのが、今回の話のポイントになるのです。


そのポイントは2点あるんですけど、まず分かりやすい方からいきますと、コストコのキャッシュバックは現金ではなく、「コストコでしか使えないポイントの形で」になってるんですよね。

つまり、コストコはキャッシュバックをしながら、同時に顧客の囲い込みもしており、 これを使うためには、我々は会員であり続けなければいけないのです。

(1つ目の方はコストコショップカードなので非会員でも使えますが、会員有効期限ギリギリに返ってくる2つ目の方は、いやらしいことに、会員でないと使えない金券の形で返ってくるようなのです。)

さすがは世界を代表する大企業、ビジネスの鬼、上手いことやってますね!

ちゃんと自社の将来利益につながる形にしているというわけなんですね。

(また、会員になり続ける/続けない抜きにしても、コストコからしたらその配った分はまた自社で使ってもらえることが確定しているので、その意味でもこのキャッシュバックはコストコにとって、全額損出しとなる支払いには決してならないのです。)

「それがどうした、私はコストコの会員であり続けるからなぁ、コストコで使えるポイントはねぇ、現金をもらえるのと完全に同じことなんだよぉ!」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんし、実際コストコ会員であり続けるならば、この点からは「実質無料≠無料」の図式は成り立たないといえましょう。

(本当は厳密にいえば、ポイントを使っての購入にはクレカのポイントがつかないので、コストコポイントでキャッシュバックされた場合、クレジットカードを使ってる人にはここでも損が生まれ得るのですが、現金払いオンリーの人であればここに損は発生しない(はず)ので、まぁそこは今回は目を瞑るとしましょう。)


この点はあくまで前座であり、今回の話の肝(キモ)ではありません。ではその肝とは一体何だというのか?

それが2つめのポイント、「入会に際し、ビタ一文払っていないわけではない」に関する話になります。

僕はこのキャンペーンでコストコ会員になるために、120ドル=約1万2000円をコストコに払っているわけです(まぁ実は僕は1円も払ってないんですけど(笑)。払ったのはビンスさんですが、まぁその辺は今は無視しましょう。)

「だ~か~ら~、その1万2000円は、コストコポイントだったとしても、その内手元に丸々返ってくるわけなんだから、1円も損はしてないでしょ?」

と思いたくなるのは分かるのですが、(太字にした)そこ!

厳密な経済学的視点に立つと、今払う120ドルと、将来、その内返ってくる120ドルとは、実は等価ではないのです!

どういうことでしょうか?

こういう場合は、一度極端な例を考えてみると良いでしょう。

ものの本によれば、大正末期、今からおよそ100年前の大卒サラリーマンの初任給(月給)は50-60円だったそうです。

それを踏まえて、例えば、コストコ(別にコストコじゃなくてもいいですけど)がこんな壮大なイベントを実施していたとしましょう。

『大盤振る舞いの大チャンス!今会員になっていただけますと、100年後、お客様の年収相当のキャッシュバックをさせていただくことをお約束します!
 入会費は、お客様のたった1日分のお給料で構いません!大切なご子孫に、「ご先祖様、ありがとう!」と思ってもらうため、ぜひこの機会にご入会を、どうぞ!!』

今で例えると、入会費1万2000円(ちょうど月収30~40万円=年収約400万円の人の1日分の給料ですね)を払う代わりに、100年後、なんと約400万円もの大金を受け取ることができるという、あまりにも魅力的なキャンペーンです。

受け取れるのが100年後とはいえ、1日分の給料が一気に三百うん十倍になるのですから、これにエントリーしない手はないでしょう。

しかし、これにもし大正末期の新社会人が参加していたとしたらどうでしょうか?

『ひいひい…ひい孫の、大正110年(2021年)弥生にこれを見ている我が子孫よ…。
 こすとこ社の大奮発きゃんぺゑんにより、わずか1日分の給料で、私の年収に相当する金額※※円(←虫食いで読めず)をお前に託すことに成功した。
 日本も昨年国連に加盟し、21世紀には、ますます豊かな国になっていることと思う。ここに同社の血判状も同封するため、これを持って最寄の銀行へ赴くがよい。この銭金が、お前の生活の足しになることを、心より願う』

というご先祖様の置き手紙を、あなたは実家の納屋から偶然発見し、都合いいことに今日がその100年目の満期でした!

おめでとう!年収相当額という莫大な金額が、子孫であるあなたの口座に振り込まれるのです!

「ひいひい…おじいちゃんありがとう、今日、私はあなたの年収をありがたく受け取らせていただきます!」…と、意気揚々と口座を見てみたら、なんと!!

当時の入会費は給料1日分にあたる2円であり、年収に直して約600円が、子孫のあなたが受け取れるタイムカプセル資産だったのでした!

…今日日(きょーび)、んなもん小学生でも喜ばんわ!(いや小学生なら嬉しいかもしれませんが)というなんとも悲しい事態に…。

結局、100年の時を経て、当時の年収相当額であった600円という金額は、今現在、雀の涙ほどの価値に目減りしてしまっているということなんですね。

そう、人間が日々行い続ける生産・消費活動により、経済というものは成長していきますから、この世は原則として、時とともにインフレが進行していくのです。

(…いや、色々考えて分かりやすい具体例を出したつもりだったんですが、正直ちょっと回りくどいというか長くなってるだけで、あんまりいい例になってませんでしたね…。)

つまり一言でいいますと、

「今日支払う1万2000円と、将来受け取る1万2000円は、決して同じ価値ではない。後者は、前者より価値が毀損している」(一言じゃなかった)

ということになるわけです。


また、関連して、インフレに対抗するため(もちろん別にそれだけが目的ではないと思いますが)、この世には金利というものが存在します。

今日銀行から1万2000円を借りたら、1年後には利子をつけて、1万2300円とかにして返さなくてはいけないのが、この資本主義社会の常なんですね。

「別に私は誰かにお金を貸しても、利子なんてつけたりしないけど…」という方もいらっしゃると思いますが、それはあなたの人柄が優れているだけで、厳密な経済学的視点に立って述べるのであれば、同額のお金の貸借を行った場合、貸したあなたは損失を被っており、借りた人は利益を得ていることになるのです。

つまり、本当に損得なしでお金の貸し借りを完結させたいのであれば、お金を貸した人は利子をつけた金額を返してもらわなければいけないし、借りた人は利子をつけて返さなくてはいけないのです。

そういう考え方が好きか嫌いかを問わず、現在の資本主義社会で人間が経済活動を行う以上、これは否定できない事実なんですね。

(もちろん、それは何というかあくまで「経済学的に」に限った話であり、現実的には、いちいちそんなこと言う奴は人望を失う以前に何かキモいですから、総合すると人生において損してるといえる気もしますけどね。
 世の中、お金がすべてではないということでしょう。)

なので、経済的思考力に優れた人の口からよくいわれることですが、大学とかでよくある無利子の貸付型奨学金、あれは、経済学的視点に立てば、100%当たる宝くじとほぼ同義の、利用者完全有利な信じられないレベルのお得な仕組みになっていますから、絶対に、全力で可能な限り目いっぱい借りまくらなければいけないお金といえるんですよね。

一方、返すときは、できる限り遅らせるのが、圧倒的に自分に利益のある、経済的最善手であるとされているようです。
(繰り返しですが、金利がかからず、額が不変なのであれば、時とともにその実質価値は低下していくため。
 100年前、当時の年収にあたる600円を無利子で借りた人は、100年後の今返せば、小学生のお小遣い程度=1時間バイトして稼げる金額を返すだけでよくなるのです!)

タダで借りられるものは全力で借りて、しかも、返済は可能な限り先延ばしにする……これが、経済強者の持つべき思考・取るべき態度の大原則だということですね。

まぁ僕なんかは典型的日本人よろしく、借金をするってどうしても何かマイナスなイメージがあるので、返す必要がある奨学金を、必要もないのにあえて頑張って借りるなんてことは絶対しませんし、もし借りたら、一刻も早く全額返して楽になろうとするように思いますが、そういう考えに至る人は、残念ながら、経済学的素養がないゴミカスだ、といえてしまうわけです。
(繰り返しですが、「人としてゴミ」と、「経済学的側面から見たクソザコ行為」とは、得てして真逆なものになっている、ってことに注意が必要ですね。)

よって、インフレを抜きにしても、金利というものが存在するこの世の中では、コストコに120ドルを渡して、1年後に同額返してもらうというのは、経済学的視点からいえば、「は?1年も金預けてたのに、同じ額しか戻ってこないとか、そんなの実質減ってるのと同じじゃん…」と思って然るべきの話……

すなわち、一見同額のやり取りに見えて、実は、先に払った我々が損をして、後から返したコストコが得をしているといえるわけです。

 

…と、色々偉そうにしたり顔で語りましたが、僕は経済の専門家でも何でもない(どころか、政治経済の話はからきし)ので、これ以上あまり深入りするのはやめておきましょう。
(っていうか、実際これ以上つっこんでは語れないだけですが。)

もし専門家の方がいらっしゃって、明らかに見当違いな話になっている点がありましたら、ご指摘いただけると幸いに存じます。

まぁ実際、これは完全なる詭弁というかこじつけ理論で、たった1年の違いで120ドルの価値が有意に変わるわけもありませんし(実際コストコ商品の値段のほとんどは、1年後も同じままでしょうし)、事実上、完全無料と同じともいえるんですけどね。

でも一応、改めて「厳密に」いえば、

「入会費とキャッシュバックの資金の流れだけに着目する限り、顧客はこのイベントで、経済学的損失が0で会員になれたわけではない
(「120ドルを払って、1ヵ月後に60ドル・1年後に60ドルを受け取る」という形態は、インフレ率・金利等を考慮して総合すると、恐らく数十円程度の経済的損失を被っていることになるから)

…というお話でした。

「だから、『コストコは、会員権を無料でバラマキはしません』は、一応間違った物言いにはなっていないのでセーフ」
…と、それだけのクッソしょうもない結論に持っていくためだけに、無意味な長文をかましてしまったこと、改めてお詫び申し上げます(いや全然申し訳なく思ってないだろ(笑))。

(またちなみに、僕はそういう経済知識(=同じ120ドルでも、今と将来の価値は、等価ではない)を持っているので、実際に初期費用を払ってくれたビンスさんに対し、執拗に「いや、今120ドル払わなきゃいけないのは事実なんだから、半分の60ドルは渡しておくよ」と申し出ていた感じです。
 しかし、どうやらビンスさんはそういう経済知識を持たないクソザコナメクジ(=人として素晴らしい人格者ともいう)だったようで、「いや、いずれ戻ってくるお金だから、別にいいよ」と大人の余裕を見せていた、というお話ですね。)


ちなみに、僕がこういう思考を身に付けたのはアメリカに来てからのことで、日本にいた頃は、そういう考えは一切持っていませんでした。

何が変わったきっかけだったかといいますと、まず、アメリカは、本当に年々物価が上がっていくんですね。

唯一、生産技術の向上か、農家の努力か、はたまた政府の方針なのかは分かりませんが、食料品だけは顕著な値上がりがないという、いわば最重要項目だけは例外となっており、それだけは本当に嬉しいというかありがたい限りなのですが、それ以外のあらゆるものは、本当に、ガンガン値上がりしていきます。

家賃なんかも、日本は家が古くなるとともに安くなるのに、アメリカでは、逆に必ず上がり続けますからね。

具体的に自分が最も驚いているのが、研究で使う試薬類です。

僕は試薬を自分で発注してるんですけど、例えば月1回注文する消耗品とか、見るたびに、毎月レベル必ず値上がりしています。

1年ぶりに注文するものとかですと、去年は100ドルだったのが、今年は120ドルになってるとか、「そういうのもある」ではなく、ほぼすべてがそうです。

こっちへ来て割とすぐの頃、あまりにもあらゆるものが値上がりするので、仲良くしてた学生に、

アメリカ、やばない?試薬、永久に値上がりし続けるじゃん!ちょうどこないだ家賃の更新もしたけど、普通に値上がりしてたんだけど…。日本だと、こんなの考えられないよ!」

と文句をいってみた所、

「うん。でも、君の給料も、支給される研究費とかも、それに応じて上がってるだろ?経済が成長するとは、そういうことなんだ

と返されて、衝撃を受けましたね。

「そうか、物価が上がらない日本が逆に特殊であって、これがむしろ普通のことだったのか…。
 物価が上がるというのは、一見嫌だけど、国も自分も豊かになっていることと、ほぼ同義ともいえるわけか…。
 ずっと物は安いほうがいいと思ってたけど、それはデフレの時代しか知らない自分の幻想であって、本当はそうじゃなかったのかもしれないなぁ…」

という気付きというか、考え方が少し変わるきっかけを得た、という、そういうお話でした。

まぁ、くどいですが、僕は経済のエキスパートでもなんでもないので、その気付きが本当に正しいかどうかは分からないんですけどね。

大したことない話のつもりだったのに、相変わらず文字だけでめちゃくちゃ長くなっちゃいましたが、次回はコストコ入会~経済の話から派生して、クレジットカードの話でもしてみようかと思っています。

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