ガンマレイ!

ようやく終わりを迎えることになりそうな放射線ネタ、前回は電磁放射線の一種であるX線について、まぁ発見者レントゲンさんの話ぐらいしかしていなかったものの、軽くそちらに触れており、最後はもう1つの電磁波タイプ放射線である、ガンマ線についてですね。

 

まずおさらいとしては、目に見えず痛みもないけれど浴びてしまうと細胞・分子レベルでダメージを食らってしまう放射線には大きく分けて2種類ありまして、実体のある粒子が高速で発射される粒子放射線と、エネルギーの波動が放射される電磁放射線の2つですね。


前者がα線β線中性子などに代表されるもので(更にマイナーなものもありますが、どうでもいいでしょう)、後者がX線γ線ですね。

(ちなみに、そもそもの「放射線」も、定義によってはいわゆる分子ダメージを与えない電磁波を指すこともある単語なので、場合によっては可視光線や紫外線なんかも放射線の一種とみなすことがあるんですけど、まぁそれもぶっちゃけどうでもいいでしょう。

…一応、区別をつける場合は、分子ダメージを与える能力のある超高エネルギーのものを「電離放射線」、そうでない可視光線や赤外線なんかを「非電離放射線」と呼ぶこともあるという形ですね。)


なお、先ほど「痛みもないけれど」と書きましたが、「超高エネルギーの電磁波とか、凄まじい威力の電子ビームとか、食らったら痛くないの?」と思われるかもしれないものの、これが不思議なことに、全く何の痛みも感じません。

まぁ、だからこそ、一切認識できないのに分子レベルで遺伝子とかをズタズタにしていくのが放射線の怖いところともいえるんですけど、恐らく影響を受けるものが(粒子線の場合は、弾丸そのものが)ミクロの世界すぎて、人間には痛みとして認識できないという形になっているのでしょう、実際僕も、先述の通りそれなりの放射線をぶっぱしている32Pの化合物をよく使いますが、ガイガーカウンターがどれだけ「ピピピッッ!!!」と鳴っているレベルであろうと、たとえ素手を近づけようとも一切何の痛みも熱も感じません。


まぁ実験で使うレベルの少量の放射線ならシールドを介さずに食らっても実質ほとんど健康被害はないわけですが、これがどのぐらい強力なものなのかは、過去に起きた臨界事故の例などからも明らかですね。

 

ja.wikipedia.org
1999年に起きたこの東海村の事故、僕は当時高校生でしたけど、大きなニュースとなり、まぁ当時は放射線の仕組みなど全く知りもしませんでしたが、ニュース記事やTVでは、被曝された方が亡くなられるまでの経過が写真付きで報道されていたのも見ましたし(幸い上記Wikipedia記事には写真はないものの、検索すれば見ることが可能ですね。かなり衝撃的なので、覚悟をもってご覧いただいた方がいいと思います)、本気を出した放射線の恐ろしさが筆舌に尽くしがたいものであるということは、どなたも知識としてご存知なのではないかと思います。


まぁ僕は致死量の放射線を浴びたことがないので分からないものの、この場合でも恐らく物理的な痛みがあるわけではなく、とはいえ全身のDNAが一気にズタズタにされますから、一瞬で全身に変調が起きるのは間違いないといえましょう。


↓の記事によると…

ja.wikipedia.org

「被曝後48時間以内の前駆期に出現するもので、悪心、嘔吐、全身倦怠など、二日酔いに似た非特異的症状である」とのことですね。

痛みはないけど、何かとにかくダルい…の究極版という感じでしょうか……

痛みを伴わないため、悪用されても気付かないわけですけど、個人が持ち出せる量なんて限界がありますし、致死量でもない限り即効性もないため、犯罪的な利用はされていないことを願うばかりですね。

 

まぁガンマ線についてはもうあんまり語ることがなかったのでそんな脱線ネタにも触れてみましたが、電磁放射線ネタに戻ってまいりましょう。


そんなわけで、ガンマ線というのは原子核から発射される、極めて短い波長の超高エネルギー電磁波だということですね。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ガンマ線より

まずX線ガンマ線の違いについてですが、まぁ上記WikP記事に全て書いてあるんですけど、ここ何回かの記事で見てきた通り電磁波というのは基本的に波長の長さで分類されるものの、こいつらだけはちょっと違うんですね。


一応、一般的にガンマ線の方が波長が短い(=エネルギーが大きい)という傾向はあるものの、一番波長の長いガンマ線は一番波長の短いX線と完全に被っているぐらいであり(なお、ガンマ線が現在認識されている電磁波の中で、最も波長の短いやつらですね。その長さ、実に10 pm(ピコメートル)=1兆分の10メートル以下ぐらい!)、波長の長さはX線γ線を区別する絶対指標にはなっていません。

この場合は、「どこから電磁波が生じるか」によって区分けされており、ガンマ線は上述した通り、かつ画像にもあった通り、原子核から電磁波が放出され、一方、X線というのは原子核の外、主に周りをビュンビュン飛んでいる電子から電磁波が放出されるものとして定義されています。

 

この辺の話に関して…というか放射線全般に関しては、我らが環境省が公開されているものに、流石は親方日の丸、大変優秀な方がまとめられたのでしょう、非常に分かりやすく網羅的なPDFファイルがあったので、今までの話のおさらいとして…というか、そもそも全ての説明も「これをお読みください」で正直完全に事足りる話だったかもしれませんが(笑)、とてもためになる読み物でオススメですね。


とりあえず関連ネタの参考として、1ページ目の、放射線の種類を画像付きで説明されている部分のスクショだけ貼らせていただきましょう。

https://www.env.go.jp/content/900413498.pdfより

 

まさにこのように、ガンマ線は高エネルギー状態となった原子核から、一方X線は電子が軌道を変えたときなどに発射されるものだということですね。

「なぜ電子が軌道を変えたときにX線が出るのか」など、それ以上の詳しい仕組みについては、例によって、最早入門編を超えているので省略します、という形でなあなあにさせていただきましょう(笑)。


あとは…資料の20ページ(PDFファイルでいうと、8ページ目)にありましたが、ガンマ線X線といった電磁放射線は、粒子放射線よりもかなり遠くまで、遮蔽されなければ数十メートルから数百メートルは飛ぶという特徴もある感じです。


とはいえ、こいつらは粒子放射線と比べると威力は弱いので多少体を貫通してもそこまで問題はないわけですが(まさに、レントゲン撮影のように)、そうはいってもやはり放射線には変わらないので、扱う際はきちんとした場所で使わないと、とんでもない事故になりかねないのは先刻ご承知の通りといえましょう。

東海村臨界事故は中性子線が原因だったようですが、まぁどのタイプの放射線かに関わらず、扱いには注意が必要ということですね)。

 

X線はレントゲンで使われていましたが、ガンマ線の方の実世界での応用例は……まぁこれもウィキP記事にありましたけど、特に僕もお世話になってるものとして、実験器具や医療機器の滅菌に、ガンマ線照射が使われる、ってのが代表的な利用例かな、と思います。


まぁ自分でやるわけではなく、「滅菌済み製品」を購入すると、ほぼ確で「ガンマ線照射済み」という表示を見る感じなんですけどね、医療器具などにガンマ線をぶち当てることで、仮に生きた菌が付着していてもヌッ殺すことが可能となるという感じで、これは大変高い信頼性を誇る滅菌方法となっています。


生命科学系研究で誰しもが使う細胞培養用のクリーンベンチでは、使用後にUV照射することで滅菌を行うわけですけど、常日頃からUV(紫外線)を照射し続けると、中にある器具は品質が劣化してしまいます。

例えばプラスチックのチューブ立てとかをクリーンベンチの中に置いたままUVを当てることもありますが、使用時以外はずーっとUV照射を続けてる研究室なんかですと、マジでプラスチックが劣化してボロッボロの、粉とかふいてて、これ崩れてまうんちゃうか?…ってぐらいに劣化してることが多いんですけど、ガンマ線滅菌は新品の商品に用いられることもあり、そういう悩みがない印象が強いですね。


…とはいえ、冷静に考えたら当たり前でしたが、電磁波としてガンマ線の方が圧倒的にエネルギーが大きい(短波長なので)ため、以下の記事を見てみた所、実はガンマ線滅菌も材質の劣化があるらしいですけど……

ja.wikipedia.org
まぁ非常に強力な電磁波なだけに、UVのように延々と照射する必要はなく、一瞬当てるだけでほぼ完全に滅菌できる感じでしょうから、相対的にやはりガンマ線滅菌は品質の劣化が少ないんじゃないかな、なんて気がします。

(とはいえまぁ、UVの殺菌作用も強力なので、バカみたいに延々とUVをONにし続けなければ、UVランプ照射滅菌でもそこまで劣化することはないと思いますが、まぁ運用的に延々とONにする使われ方も多いですし(給食室とかで、誰もいない時にずーっとUVランプが点いている学校なんかも、あると思います)、やっぱり「UV滅菌は強力だけど、当てられた所がボロボロになっちゃう」って印象が大変強い感じですね。)


という感じで、今回もちょっと非常に時間がなかったため大した話には踏み込めなかったものの、概ねこんな所で放射線ネタは一区切りを付けられた感じですね。


それではまた次回から、途中状態になっていたご質問に戻っていこうと思います。

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