放射能のお値段~電磁波!

前回は、生化学実験でよく使う放射性物質がどんなものかについて、おもむろに語り始めていました。


あぁ、アップし終えた後に気付いてたんですが、僕も未だに時々研究試薬として買っているその放射性物質の値段について、当初触れようと思っていたのに、前回はすっかり触れ忘れていましたね…!

 

前回画像付きで見ていた32P-ATP、大体1瓶に20-30 μL(マイクロリットル…より分かりやすいmL=ccに直したら、0.02 ccということで、かなり微量であることがお分かりいただけるように思います)入ってるんですけど(製造工程の問題か、最低限の放射能が保証されているものの、どれぐらいの体積で納品されるかはマチマチで、毎回異なります)、これがマジで、特に近年、えげつないぐらい値上がりを続けているのです!


たったの0.02 cc入りのボトル(といっても、0.02 ccって、かなり大き目の水滴サイズではありますから、目に見えないレベルではないんですけどね)が、今うちの大学では契約割引価格にもかかわらず大体600ドルぐらいしまして、まぁ日本円に直す意味もあまりないものの今為替計算してみたら約8万4000円……つまり、水滴1粒程度で8万円以上するとか、化粧品もビックリの値段ですね。


なお、「値上がりエグイ」と書いた通り、やはり放射性物質は健康懸念から徐々に使われなくなっているのでしょうか、恐らく需要が激減しているからというのが最大の理由ではないかと思いますが、本当に毎年ガンガン値上がりしていて、(正確には覚えていないものの)10年前とかと比べたら多分10倍ぐらいの値段になってる気がしますね~。


このまんま行くと、100年後にはお値段100倍とかになってそうですが(そんな単純にいくかよ(笑))、そうなるともう本当に実験で放射性物質を使う人も絶滅してしまいそうに思えますけれども、恐らくそれも時代の流れってやつでしょうか……。


まぁ僕は言うほど放射線に愛着もないし、絶滅すんならしたで特に何の感慨もなくこれっぱかしも悲しくなんてないですけど(笑)、でもやっぱり、感度が極めて強いこと、それから、放射線以外の他の「分子検出方法」には例えば蛍光分子をくっつけるみたいな技法がありますけど、リン原子の中性子の数が増えただけで、原子やそれを含む分子自体の性質には全く何の影響も与えない放射性ラベルとは違い、蛍光分子(例えば以前見ていたGFPなど…「光るマウス」なんて記事(↓)で触れていましたね)を用いる場合、細胞内とか生体内での挙動を調べたい特定の分子に、結構な大きさのタンパク質であるGFPを接続する必要がありますから、その見たい分子の細胞内での挙動や生化学反応が、「GFPをつなげたこと」で影響を受けてしまう可能性が皆無だとは言い切れない問題もあるため……

con-cats.hatenablog.com

…場面によっては、今でも放射性物質を使うのが一番便利で確実ということも、なくはないんですよねぇ~。


(まぁ挙動に関しては、適切に対照群(コントロール)を取ればGFPをつなげたことによる影響は排除できるわけですけど、放射能ラベルはマジで感度が高いので、GFPの蛍光ラベルでは全く見えないような少ない分子に対しても、十分検出可能というメリットも本当に大きいです。

…というか、上の記事を見直してみたら、ここで見ていた蛍光物質はFITCなどの低分子化合物で、大きなタンパク質であるGFPと比べると遥かに小さいですが、それでも中性子が1つ増えただけの放射性ラベルと比べた場合、明らかにデカい異物がくっつく形になっている(=検出したい目的分子の挙動を変えてしまう可能性は十分ある)といえますね。)


…と、生化学系の実験に馴染みがない方には何のこっちゃという話になってしまった気がしますが、ポイントとしては、

放射能ラベル実験は、生命科学系ではちょっと時代遅れになりつつある

→需要激減で、放射能試薬がべらぼうに値上がりし続けていて困っちゃうぜ…

…という、何とも世知辛いお話でした。

 

それでは途中だった話の続きに参りましょう。

 

タイプの異なる放射線について見ていた前々回の記事で、4種類の放射線に触れていました。

まぁこれは前回も書いていた話なわけですが、アルファ線ベータ線中性子の3つは、既に何度も触れている通り、(粒子のサイズこそ違えど)実体のある粒子の弾丸原子核からぶっ放されるものでした。


では、詳しく触れなかったもう一つのグループ(といっても、2種類紹介されていることがほとんどですが)は、一体何者なのか…?


名前としては既に出していたわけですが、第四の放射線(別にこれが第四であるいわれもなく、今勝手にそう呼んでるだけですけど)がズバリ、X線と、γ (ガンマ)線ですね!

 

話は「こいつらが何者なのか?」なわけですけど、いやぁこれねぇ~、分かりやすく説明するのは、ちょっと無理があるやつなんですよねぇ~。


まず、言葉だけで書くなら、こいつらはズバリ「電磁波」と呼ばれるものになります。


まぁ電磁波なんてゲームとかでめっちゃ聞く気がする小学生でも知ってそうな単語ですけど、その実態を正しく理解するにはやっぱりどうしても大学教養レベルの知識が必要となるといえる、考えるだけで脳がムカムカしてくる厄介なやつなのです(笑)。


何が分かりにくいかというと、結局電磁波ってのは目に見えないのはもちろんのこと、これまで見ていた「電子の弾丸」「中性子の弾丸」のような実体をもった物質ではない……つまり、「これが発射される1つの弾丸ね」と、明確に手の平に乗せて示すことが不可能な、いわば「波動」でしかない、って点がまずありますね。


とはいえ、「波動って何だよ、動きがあるなら何かがあるんやろがい」と思えるかもしれませんが、実際、電磁波という波を産み出すものは「光子」と呼ばれるものであるともされるわけなんですけれども、この光子がまたクズみたいやつでして(笑)、何と、その光子というのは質量がゼロなんですね!


「極めて小さい・軽い」ではなく、「完全に質量がゼロ」と考えられるものであり、「重さゼロってなんだよ、それ、存在してないのと同義じゃん」と思われるかもしれませんが実はその通りで、いわば「いるけどいない」的な、実体はなくても概念としてその存在を仮定して考えていかなければいけないもの=脳内にのみ存在するといえるかもしれないという、科学の世界にあってオカルトにも思える、まさにキモすぎるやつなのです(笑)。


まぁそれは半ば脚色して面白おかしく書いてるだけで、実際はアインシュタインさんに端を発する天才たちが20世紀に凄まじいまでの理論を構築されて発展し続けた、20世紀物理学の花形といえる学問領域の、まさに主役中の主役ともいえる立派すぎるやつ(「キモいクズ」なんてとんでもない話で(笑))なんですけど、これについて考え出したら大学で物理学を専攻しても終わらないぐらいの話になるので、ひとまず「何者か」は無視して、より実態に近い話をしていきましょう。


電磁波というのは、エネルギーの波といえるものなわけですが、とりあえず一旦それが何なのかはともかく、その波1つの長さ(波なので、上に行ったり下に行ったりの繰り返しですが、ちょうどその繰り返し単位の1つですね)によって持つエネルギーが変わってくるという性質をもっています。

 

実はこれ、既にずっと前、ちょうど「楽しい有機化学講座」で、ビタミンAについて見ていた記事(↓)から何回か脱線的に触れていた話でして…

con-cats.hatenablog.com

…この記事では、波長によってエネルギーが変わるとともに、「ごく一部の波長の波は、人間の目には色がついて見える」(これを可視光線と呼んでいます)ということについて触れていました。


しかし、可視光線というのは様々な長さが存在している電磁波のホンのごく一部のものにすぎず、世の中にはもっと波長が短いもの・長いものも存在しているのです。

(なので、先ほど「電磁波は目に見えない…」と書いていましたが、正確には「可視光線を除く電磁波は…」となる感じですね。)


日本語版の「電磁波」記事にはいい画像がなかったものの、英語版の対応ページに、波長とそれが何と呼ばれるのかが明示されているよい画像が見つかりました。

お借りさせていただきましょう。

https://en.wikipedia.org/wiki/Electromagnetic_radiationより

ちょうど真ん中よりやや左、波長(グレーのバー下の数字、λ(ラムダ)と表記されている方)でいうと10-7 mあたり…10のマイナス9乗を意味する「n(ナノ)」という倍数単位を用いて、画像では380~750 nmまでが拡大されて表示されていますが(画像には単位が省略されていますけど)、まさに色付きで表示されているこの領域が可視光線で、それより短い波長のものがUV(ウルトラ・バイオレット=紫外線)、そしてさらに短い波長のものが、ついに来ました X rays(X線、そしてγ rays(ガンマ線と呼ばれる電磁波だったんですね!


長い波長側にも興味深い電磁波がいるわけですが、ちょっと今回はまたしても、あまりにも時間がなくて、電磁波スペクトルを紹介しただけで時間切れとなってしまいました。


こいつらが一体何なのか……は、例によって難しすぎて説明不可能ですけど(笑)、もうちょいサワリ程度の話を、また次回ちょろっとだけ見ていこうかなと思います。

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