おまえーっ!ゆるさーん!

f:id:hit-us_con-cats:20220327113757p:plain

今回は、前回のチラシのウラ漫画(詩野うらさん)から話を広げて、同じくウェブ掲載の作品が非常に面白かったため話題を呼び大人気となった作品・『金魚王国の崩壊』他でおなじみ、模造クリスタルさんを取り上げさせていただきましょう。


まず作者の模造クリスタルさんに関しては、こちらはそもそもサークル名のようなんですけど、噂では複数名によるサークルだということをその昔掲示板で見た記憶もあるものの、詳しい素性はほぼ不明で、謎に満ちた作家さんであるように思われます。

作風も相まって、そのミステリアスな感じも、何だかとてもいいですね…!


僕が初めて目にさせてもらったのは、上記「金魚王国の崩壊」という作品で、これまた上述の通りこちらはウェブ掲載作品であり、あれだけの話題を呼んだ傑作ですが書籍化はまだされておらず、Wikipediaによると2008年7月から掲載されているとのことですけど、なんと、十数年以上の歳月を経て、まだ時々思い出した頃に更新されているというかなりの大作…!

www.goldfishkingdom.client.jp
もちろん、Web漫画ということで、全話どなたでもいつでも無料で楽しませていただけるという、本当にありがたい・素晴らしい形になっています。

最新の11話の更新は2020年のことでしたけど、まだ普通に終わってはいないように思われるため、またその内気が付いた頃に、いつの間にか更新がされていること、心より楽しみにしています。


こちらはまぁ、ウェブ上で全部読めますし、余計なことは書かず「ぜひお読みください」で後は各自の鑑賞にお任せすべき(ネタバレとか、インパクトある部分を先出ししちゃうのもアレですしね…)ものかとも思いますが、とはいえやっぱりあまりにも印象に残る作品なので、ついつい語りたくなってしまいますねぇ。

まぁまず中身以外の点に触れておくと、各話の扉絵が非常に芸術性の高い絵(有名な絵画のパロディなんですかね?知識不足で、詳細不詳ですが…)になっておりまして(最初に貼った漫画画像内のやつは、最新11話の扉絵です)、もうそれだけで何といいますか、例によって「知性を感じる」みたいな雰囲気で、本当に味わい深いのです。

 

以下多少中身に触れるので、せめて最初の2話だけはご覧になってから読んでもらえるとありがたいですけど、こちらの話は主人公のミカゼちゃんがお祭りの金魚すくいで金魚をゲットした場面から始まります。

で、その金魚を可愛がるあまり、魚が食べられなくなってしまった…という所から、生物・生命・人間に対する哲学的な深いストーリーが怒涛のごとく展開していくわけですけど、この手の話は「そうかぁ?何いってんだコイツ…」となるか、あるいは哲学的過ぎてつまんない(逆に浅すぎて微妙すぎることも)感じになりがちにも思うんですけど、この金魚王国の崩壊は、その匙加減が絶妙で、少なくとも僕にとっては、ミカゼちゃんは(小学生なりに)一本筋の通った行動を取っており、説得力があるというか見ていて納得ができる上、地味に本質を捉えていて浅くはない感じになっている、しかしそれでいてきちんとエンタメ成分も存分に配合されており、読んでいて本当に続きが気になるレベルで熱中できる……という感じで、大きな話題を読んだのも納得の、ウェブ漫画史上最高傑作の1つに、僕は思っています。


特に印象的なのが、記事タイトルにもした「おまえーっ ゆるさーん バシーン」というバッタの場面なんですけど、「おまえー」で検索したら(漢字でも)サジェストにこの金魚王国に関するものが出てくるぐらいに有名で多くの人の心を捉えたこのシーン、なんと、ニコニコ大百科にも項目が作られているほどでした(↓)(笑)。

dic.nicovideo.jp
いや別にそこまでの山場とか深いシーンでも何でもなく、「何かシュールで面白い。異様に心に残る」というだけなんですけど(笑)、こういう多くの人の心に残る印象的な場面を産み出せるあたり、模造クリスタルさんのセンスはやはりとんでもなく高いものがあると思えてならないわけです。

タイトルにも「バシーン」まで書きたかったですが、あんまりネタバレもしたくないので(何のネタバレだよ、って話ですが(笑)、やはり作品紹介前にあんまり書くのも初見インパクトに影響を与えちゃうかもしれませんしね)、控えておきました。


まぁそういう面白シーン(真面目なシーンなんですが、とにかくインパクト大です)のみならず、本当にストーリー・キャラの考えや葛藤とかが中々に深いからこその名作なんですけど、大元に戻るとそういう「動物が食べられなくなる」みたいな話、これ僕たまに思うんですけど、「本当に繊細な人なら、普通にそうなるのも分からんでもないなぁ…」と、実は思えてしまうのです。

僕はその辺図太いので、僕自身が繊細さからビーガンになるみたいなことはほぼ100%ないんですが、本当に心優しい人だったら、動物を食べられなくなってしまうのはよく分かるし、どれだけ綺麗事を並べても、命を食べるのはやっぱりエゴだと思う…ってのは、否定できない事実に思います。

(改めて、僕は「だから、家畜を飼うのをやめよう!動物を殺さないで、食べないで!」とはならず、「自分が生きるためには仕方ない…」と割り切る普通の凡人なんですけど、再度改めて、そう思って自分自身が行動に移される人をバカにすることはできないし、そういう方は本当に純粋で心が真っ直ぐな人なんだろうなと本心からそう思える…という話ですね。

…もちろん、それを他者に強要するようになると、「それはどうかな、それはやっぱり個人の自由じゃないかな」とは思えちゃいますが、それでも動物を食べない方ご自身の意思まで否定したくはないと思えてやみません。)


この辺の話は結局、絶対的な答がないので、どうしても主義主張で対立してしまいがちなんですけど、「理解はできるし、そうする方の心は本当に繊細で美しいと思うけれど、自分は動物を食べることは仕方ないと思うし、『食べるな』を他人に押し付けるのは良くないと思う」というスタンスの僕としては、こういうネタ動画(↓)を見てハハハと笑えるただのクズなのかもしれませんが……

…でもまぁ、多分このミートイーターはビーガンの方も笑えるんじゃないかと思うので(ココナツをバシーンとする所、毎回吹きますね(笑))、みんな楽しく生きましょうよ、ってのが個人的なスタンスかもですね。


話は逸れましたが、ミカゼちゃんは自分の考えを他人に強要する子ではないというのも、この物語の良い所に感じます。

一人で思い悩み苦しむミカゼちゃん……今どの辺までストーリーが進んでいたか、11話を読んだのは2年前なので正直もうほとんど忘れちゃってますけど(笑)、確か、悩みながらも少しずつ確実に成長していってくれていたように記憶しています。

マジで応援したいキャラ・ミカゼちゃん、ってことですね。


(ただ、こないだ最終回を迎えた『タコピーの原罪』という、ジャンププラス掲載の、ネット上で毎週大盛り上がりを見せていた傑作があるんですが、そこのコメント欄でちょうど「タコピー、か弱い少女に残酷なことさせるギャップがあるだけの、普通な話じゃねぇか?金魚王国の崩壊とかもそう思ったけどさ」みたいな感じの、やや否定的なコメントをたまたま目にしたんですけど、これにはハッとさせられました。

 まぁいうほどハッとはしてませんけど(どっちだよ(笑))、こないだ「レイリ」で「レイリが女性である必然性って、実際あんまりないかも」的なことを書いたのは、このコメントを見ていたからこそでして、実際、特に男性読者は、か弱い少女が残酷なり酷い目なりに遭うだけで、もう中身どうこう以前にそれだけで惹きつけられがちになるみたいなものも、やっぱりあるのかもしれないなぁ、と思った感じですね。

 幸い僕は作品のクリエイターではないのでその辺あんまり関係ないというか気にする必要もないものの、実際もしタコピーと出会ったのが冴えないおっさんだったら……もしもミカゼちゃんではなくキモオタが同じことを考えて悩んでいたら……果たしてそれは同じぐらい面白い作品になるのだろうか…?みたいなことは、よく考えてみたら不思議というか難しい所があるなぁ、って気はしちゃうかもしれません。

…でもまぁ個人的には、作品というものには何らかのキャラクターは絶対必要であって、何らかの設定はされる必要がある以上、せっかくなら見てて面白い設定の方が絶対いいし、実際面白ければそれでいーじゃん、固いこと言うなよ!…ってのが例のタコピーコメに対する僕の意見かもですね(笑))


…とまた話は逸れましたが、現在掲載中の全11話の中にはミカゼちゃんではなく全く別の登場人物が出てくるエピソードが混じっていまして、まぁ話数を示すマークがエビになっている4話と9話がそうなんですけど、水谷香歩ちゃんという、エビが大好きな子も出て来るのですが…

f:id:hit-us_con-cats:20220327114957p:plain

作者公式サイト(http://www.mozocry.com/#goldfish)より

この、真っ黒な目と、W字の口が特徴なカホちゃん、この変わった子も、マジで何かメッチャいいのです!

生物部に所属して、生き物(特になぜかエビ(笑))を愛しているけれど、「ウォウ~」という口癖を筆頭に言動が謎で不思議ちゃんかと思わせておいて、実はミカゼちゃんと同じく、しっかり色々ちゃんと考えてるし一本芯が通ってるのは、模造クリスタルさんの設定や描写の確かな力の賜物といえましょう。


ぶっちゃけ金魚編と同じかそれ以上に楽しみなエビ編、今の所はミカゼちゃんとカホちゃんに交わりはなかったと思いますけど、いつか交差する話が出てくるのかこないのか、それは全く不明ですが、とにかくまだまだこの先も楽しみでなりません!

(ちなみに、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』というこれまた傑作漫画があるんですが、そこで、似たような顔のキャラに向かって「『ウォウ~』とか言いそうな顔しやがって…」という、この金魚王国ネタが使われていて、両方好きな僕としては大層嬉しかったものです(笑)。)


…と、金魚王国だけで長くなりましたが、模造クリスタルさんは書籍も上梓されており、直近の作品だと先月発売されたばかりの短編集・『スターイーター』!

www.cmoa.jp

それから金魚王国に次ぐ長編と思われる、こちらもウェブ上で結構な数の話が公開されている、(ただし、最後の方は書籍のみ)『黒き淀みのヘドロさん 』!

www.mozocry.com

ヘドロさんの公開分もかなり多いですけど、最後の方は、書籍2巻で楽しめる形ですね。


個人的には、やっぱり思い入れが深いこともあり、金魚王国が個人的にはモゾクリ作品で一番のお気に入りですが、どちらも間違いなく楽しめる、手に取る価値のある作品なので、「金魚が良かった、ヘドロさんも楽しめた」という方は、ぜひ単行本の方もお読みいただきたい限りです。

(絵は、金魚の初期とかは完全手書き風で、経験上、手書き絵が苦手な方は結構多い気がするため、(特に金魚は)絵がイマイチ…と思われる可能性も高いですけど、ヘドロさんなんかはもう完全に小慣れてシャープな絵柄になっていますね!
 僕は何気に初期含め金魚的な絵柄もどちらも大好きですが、より大衆受けしやすい絵は、やっぱりヘドロさんかな、という感じでしょうか。

 あぁ、上記以外にも書籍化作品は複数冊ありますが、そういえば僕はまだ手に取っていませんでしたねぇ…。
 せっかく取り上げさせていただきましたし、今度コミックシーモアのポイントを使うとき、以前の作品も楽しませていただこうと思います。)


また長くなりましたが、模造クリスタルさんの味わい深い独特な世界観、改めて本当にオススメです、という話でした。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村