相田さんが与えてくれたのは、小さな漫画と温かい幸せ

f:id:hit-us_con-cats:20220323114916p:plain

こないだの記事木尾士目さんの素晴らしい作品群に触れながら「次はどの作品にしよっかなぁ~」などと考えていたんですけど、学園ものの素晴らしい傑作から連想して1つ、心の底から素晴らしい・こんなに真っ直ぐで応援したくなる学園生活もなかなかありませんよ…と思える、本当に最高としかいえないこちら、相田裕さんの『1518!イチゴーイチハチ!』を取り上げてみるといたしましょう!

f:id:hit-us_con-cats:20220323114936p:plain

「1518!イチゴーイチハチ!」最終巻(7巻)表紙より

…まぁ、相田さんについては、僕はあまりにも好きすぎるので、以前CES2022から「未来デバイス」について触れていた記事で、『GUNSLINGER GIRL』の1ページを半ば無理やり引用させていただいていたこともあったんですけど、(まぁやや寡作とはいえ)とにかく全作品が好き・打率10割で100点評価といえる、僕にとって恐らく唯一の漫画家さんかと思うのですが……

(他の大好きな作家さんも、初期の作品とかは流石に100点ではなく95点とかそのぐらいのこともやっぱりあるんですけど、相田さんは全てが100点では足りないレベルなのです)

…とりあえず順番に触れさせていただきましょう。


相田さんの商業連載デビュー作の「ガンスリ」は、キャラ達のその可愛らしい見た目とは裏腹にハードボイルドな作風で、ド派手なガンアクションなども見ものなイタリアを舞台とした殺し屋なんかが暗躍もする本格社会派漫画なんですが、一方連載2作目の「1518」は、平和な日本の平凡な高校生たちの普通の日常を描いた作品でして、あまりにも毛色が違いすぎて最初1518を読んだ時はたまげるレベルだったんですけど、全く違う作風なのにどちらも完璧に面白い、面白すぎる……

…全然違うテーマなのに、どちらも別ベクトルから楽しめる……これは結局、相田さんの漫画家としての力量が傑出して素晴らしいということに尽きるように思えます。


例によって、毎度それしかないんかい、って感想になりますが、本当にキャラクターが全員見事に生きているのです。

そして全員、下手したら悪役も含め、みんなのことを心から応援したくなるのです。

それは結局、キャラクターが作者のご都合で動くことはなく、血の通った1人の人間として描かれているからこそ、読んでいる我々はグッと心動かされるのではないかと思えるわけですよ。


特にガンスリは中盤以降、相当重苦しい展開も繰り広げられるんですけど、安易に人を殺したり不幸にしときゃいいだろみたいな精神は一切なく、根底にあるのが「人間および生きることへの希望」であることそれこそが、相田さんの作品を別格で光り輝かせてくれている大きな要因なのではないかと、僕なんぞは思うのです。

(もちろん、生命賛歌の作品なんて世の中いくらでもあるとはいえるんですけど、一連のよしながふみさんから沙村広明さん・木尾さんなどと同様、背景に大いなる知性が感じられてやまないといいますか、描かれていることに不自然さや浅さが全く感じられない含蓄に富んだものになっており、かつ、その一方で表現力が非常に高いこともあって、インテリジェンスをはらみながらも嫌味っぽさが微塵もない感じといえまして、とにかく本当に読んでいて心地よい気分を味わえるのです。)


まぁ相田作品の総評はその辺にして、とりあえずもうちょい具体的な作品紹介にいきますと、まずは最初に取り上げた1518ですが、こちらはとても珍しい、生徒会もの!

といっても、本当にしっかりとした取材をされているんだろうな……ということが伺える、よく漫画であり気な、生徒会が「こいつら日本を動かせるんじゃねぇか?」ってぐらい権力があったり、部活や同好会の活動なんかが作品内の全てで、生活のあらゆる時間でそれしかやっていないみたいな感じではない(もちろんそれはそれで面白いですし、真面目な運動部であれば、それがリアルともいえる気はするんですけどね)、本当に現実的でリアルな形の高校生活が描かれています。

したがって、これは同時に、血湧き肉踊るハラハラドキドキの大スペクタクル事件などが起こるわけでは一切ない、普っ通~に至って平凡な学生生活が描かれているだけともいえるんですけど、キャラが生きているおかげで、これが本当に面白い…!

もう心の底から彼らの、平凡ながらもみんな一生懸命に生きている学園生活を、永久に見守り続けていたいぐらいだぜ…!と思えるレベルで、抜群に面白すぎるのです。


無料お試し読みは、おなじみコミックシーモアでは結構なページ数がありましたが…

www.cmoa.jp

…まだまだこれだけでは良さが全然分からないといえる感じなので、本当にぜひお手に取って読んでいただきたい限りですね…!


ガンスリより間違いなく誰でも楽しめる一般受けしそうな作品に思えますし(まぁ、物語にドキドキワクワクのみを求める方の場合、ちょっと違う可能性もあるというか、その場合ガンスリの方が合ってる可能性もありますが…)、マジで「つまらんかったら返金したるから、大人買いして一気に読んでくれよな!」としか思えない、(まぁ例によってそれは冗談ですけど(笑)、そう自信をもって言い切りたいぐらい)本当にあまりにも温かくて優しい、素晴らしすぎる作品なのです。


おっと、もうちょい踏み込んで紹介しようと思ったものの、無料範囲ではまだ登場すらしていなかったので詳しくは避けたい所ですが、主人公は間違いなく女の子の丸ちゃんなんですけど、同じく男側の主人公は、冒頭に出てくる野球少年・公志郎くんなんですけれども、このコウシロくん、マジでいい!!

主役の男キャラなのに、バチバチにカッコいいタイプではなく、(まぁネタバレでもないのでその程度だけ触れておくと)ケガで野球を諦めざるを得なく、何だか暗く沈んだ状態から始まるんですけど、もうね、あらゆる言動が「うっわ、こういう男でありてぇ…!」と思える、ホンマにコウシロさんの漢(おとこ)っぷりは太平洋に響き渡るでぇ!…と思えるぐらいに、本当に最高なのです。


僕は漫画とかでどんな高校生活を見ても、「うらやましい」とか「応援したい…!」とかはそこまであんまり思わないんですけど、こればっかりは心の底から「こういう高校生活、いいね!」と純粋に思えましたし、公志郎(やその他もちろん全員ですが)のことを本っ当に応援したくなる、芯から真っ直ぐであまりにも気持ちのよい男なわけですよ。

結局、これは丸ちゃん目線で見た公志郎の再生と成長の物語ともいえる気もするんですけど(別に全然そんなことないかもですが(笑))、本当に要所要所でグッと来るシーンの多い、最高の大傑作といえましょう。


恒例の女性キャラ評としては、まぁやっぱ丸ちゃんとなら「結婚したいぜ!」と思えるぐらいに彼女は魅力的ですし、会長先輩も本当に強い女性でカッコ良すぎてマジで好きだし、三春先輩も本当に全てが神懸かってますし…で、結論としては……おっとまたまた来たぜ、「誰でも大好き!!」

ま、強いて一番好きな子を挙げるなら……吹(すい)部・トランペットガールのナカナツとか、めっちゃいい子でこれまた大好きでしたけど……いやまぁ上記生徒会グループの女性陣と比較して、1位ってこたぁねえかな(笑)。

結局、相田さんの描く女性キャラは、あまりにも魅力的過ぎて選べやしねぇ…!というのが結論といえましょう。

 

一方デビュー作のガンスリも、せっかくなのでチョロッとだけ触れておくと…

f:id:hit-us_con-cats:20220323115619p:plain

GUNSLINGER GIRL」1巻と9巻表紙
(画像:https://aucfree.com/items/s711981189より)

僕は1巻の帯の『少女に与えられたのは、大きな銃と小さな幸せ。』というキャッチコピーといいますか宣伝文句があまりにも好きでして(本当に大好きなので、今回記事タイトルにも流用させていただきました)、帯付きの画像を検索して、出てきたオークションサイトから写真を拝借させていただきましたが、なんと、ついでに、あまりにも良すぎて本当に僕にとって宝物といえる存在の9巻も並べて表示されているとは……この出品者、実に分かってらっしゃる…!

まぁ詳しくは触れませんが、この9巻はヤベェですよ。

僕はもう、恐らく瞳から24リットルの涙を流したぐらい、この巻は凄まじいのです。

何がどう凄いのか……それはもう、ぜひご自分の目でお確かめください……。


ただ、ガンスリは、上述の通りハードボイルド作品でして、鉄砲パンパン系に微塵も興味がない&理解力もかなり悪い僕は、正直ぶっちゃけ、初読時1巻を読んだだけでは、何が起こって誰が何で何なのか1%ぐらいしか理解できておらず、キャラが可愛らしいからよぉ分からんけどとりあえず読み進めたるけど…というしょうもない読み方をしていたのですが……

大体そうですね、ピノッキオが出てきた辺りから、ちゃんと理解していなくてももうマジで圧倒的にのめり込めるぐらいの盛り上がりで、そこからずーっと最後まで山場であり続けるぐらいに濃密な作品なんですけど(なお、理解してから読み直したら、当たり前ですが最初からちゃんと色々物語はしっかりしていました)、僕のようにイタリアマフィアとかハードボイルドとかに1ミリも興味がないばかりか苦手な方には、恐らく1巻は「???」で終わってしまうぐらいかと思うんですけど、こればっかりは絶対に面白くなることが確定しているので、リタイアせずせめて3巻ぐらいまでは読んでいただきたいと思えてやみません。
(なので、無料お試し読みは、ガンスリに関してはリンクを省略しましょう。)


ガンスリも魅力的な女の子がウジャウジャ出てくるわけですけど(笑)、そうですねぇ、作者の相田さん自身が「この子を産み出せたことが、自信につながった」的なこと(ちょっと違う表現だったかもですが)をおっしゃっていたトリエラとか最の高ですし、まぁ1巻表紙のヘンリエッタが好きというと変態っぽいのでそこは避けるとして(言ってるも同然ですが(笑))、あとは二期生的なペトラもたまらなく好きですけど、そうそう、ペトラの相棒サンドロの先輩・伝説的スパイのレディ・ロッソ(赤髪の女)ことロッサーナさんとか、マジで狂おしいほど好きですねぇ~。

ま、例によって節操なく全員好きという、何の自己紹介にもなってない話でした(笑)。


そして最後に、相田さんは、完結作品としてはまだガンスリと1518の2作だけという寡作な作家さんではあるんですけど、現在は、『勇気あるものより散れ』という、明治時代を舞台にした新作を連載中!!

f:id:hit-us_con-cats:20220323115833p:plain

「勇気あるものより散れ」最新刊2巻表紙より

僕は、明治やら刀やらにも1ミリも興味がない、野郎の風上にも置けない軟弱マンなので、相田さんの作品じゃなかったらまぁ手に取ってなかったかな、って感じなんですけど、当然相田作品は永久に全てチェックしているので読ませていただいた所……改めて、面白すぎる…!!

連載中ですし、具体的には話を避けますけど、そういえばそろそろ2巻が出てもいい頃…??と思っていたら、まさかの最新2巻は来週3月29日(火曜日)発売!!

マ~ジで楽しみすぎるわけですが、1巻のお試し読みは、こちらはシーモアAmazonはめちゃ短く、白泉社公式が一番しっかり、結構いいシーンまで掲載してくれていたので、↓の公式サイトより試し読みをして続きが気になった方はぜひ、1-2巻まとめて絶対ぇ手に取ってくれよな!

www.hakusensha.co.jp
まぁ、この「より散れ」それから「ガンスリ」も当然として、よしながさんの「大奥」とか、沙村さんの「無限の住人」「ベアゲルター」など、時代物・ハードボイルド物とか、「一切全く興味がない」とかいいつつ何気に結構な数の作品がめちゃんこ好きですし、食わず嫌いなだけで実は読んでみたら意外なほど面白い作品は、これに限らずどんなジャンルでもあるものなのかもしれませんね。


あぁ、この作品は「不死」もそのテーマの1つですが、ずっと「リアルな作品が好き」と書いてますけど、それは別にSFがダメというわけではなく、詰まるところ「描かれているキャラクターがリアルかどうか」に尽きるので、現実を舞台にしていても面白くない作品は好きにはなれないし、魔法とかフィクションでも、キャラやストーリーに説得力があれば、それは大変な傑作だと思えるのです。

いうまでもなく、相田さんの作品は、後者ということですね(あぁ、ガンスリも、リアルな社会派作品ではあるものの、フィクション要素も混じっています)。

(関連して、凄く印象的な話で、僕は元SMAP中居くんが話が面白くてめっちゃ好きなんですけど、中居くんはちょっとでもフィクションが混じるとマジでダメみたいで、
「魔法とか必殺技とか、それ現実じゃねぇべ?誰かが勝手に作ってる話だべ?…って思えて、読めねぇのよ」
…みたいな感じで、ドラゴンボールすら読んだことがない(読むのは、ドカベンとか、現実の野球作品のみ(笑))…なんてエピソードを個人的に強く覚えてるんですけど(多分TVで何度かされているので)、僕はそこまでのフィクションダメ派ではない、ってことですね。
 しかし、そういう物語系に今まで一切触れずに生きてきてあれだけ面白い話ができるって、中居くんの頭の中は凄いなぁ、どうなってるんだろ…と思えてやみません。)


いずれにせよ、相田さんの作品は、「銃とハードボイルド」「生徒会」「明治と刀と不死」という、パッと見あまり一般受けし辛い印象があるかもしれないものの(少なくとも、ジャンルでいえば、僕はあんまり惹かれない(笑))、ジャンルの垣根など越えて死ぬほど面白いので、未読の方はぜひぜひ読んでみてくださいませ、というお話でした。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村